歌う生物学 必修編

歌う生物学
本川達雄 著
  • 書籍:定価4180円(本体3,800円)
  • A5判・並製 /208ページ/CD3枚付
  • ISBN978-4-484-02231-4
  • 2002.12発行

ベストセラー『ゾウの時間ネズミの時間』の著者が贈る“声に出して読みたい生物学”。高校「生物」が聞いてわかる! 歌って覚えられる! 生物学の基本をマスターできる全70曲と解説。著者みずからが歌うCD3枚が付いた、楽しくてわかりやすい生物学入門書です。

書籍

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内容

1. テキスト「高校生物ソングブック」
学習指導要領にもとづいて、生物学の基本キーワードをもれなく盛りこんだ「高校生物のうた70」(全70曲)の歌詞と楽譜、要点のわかりやすい解説「ここがポイント」を収録。

2. CD「高校生物のうた70」
ソングブック掲載の全70曲を、演奏とともに収録したCD3枚付き。[歌:本川達雄 演奏:歌う生物学バンド]

目次

part1 生命の連続性
♪1838細胞説♪細胞はふえる♪四つの秘密♪単細胞♪道管は水道管♪シダ植物の生活環♪精子のぼやきのうた♪等割する等黄卵♪ハイヨー節♪動物は水のつまった袋♪1865メンデルの法則♪遺伝子ワルツ ほか

part2 環境と生物の反応
♪肝腎演歌♪血糖調節のうた♪勇気りんりんアドレナリン♪チャンネル音頭♪耳のうた♪光走性・屈性・傾性♪動物行動学の三人♪いとよき本能行動♪植物ホルモンのうた ほか

part3 生物現象と物質
♪酵素こそわがいのちラップ♪消化唱歌♪ATPのうた♪歌う光合成研究史♪タンパクのタンゴ♪遺伝暗号♪ACTG Act Good!♪パフ♪バイオテクノロジーのうた♪発酵結構節 ほか

part4 生物の分類と進化
♪生物分類階層経♪維管束万歳♪母の愛は包む(被子植物のうた)♪脊椎動物進化節♪しろう46億年の歴史♪大絶滅♪いやあごく(1859)ろう種の起源♪変異ふらふらフラダンス ほか

part5 生物の集団
♪ロジスティック・ラップ♪作用・反作用の歌七首♪植物群系のうた♪伊豆大島遷移のうた♪食物連鎖のうた♪物質循環のうた♪ワカケホンセイインコ ほか

著者

本川達雄(もとかわ・たつお)
東京工業大学大学院生命理工学研究科教授。
1948年仙台に生まれる。東京大学理学部生物学科(動物学)卒(1971)。東京大学助手(1975-1978)。琉球大学講師、助教授(1978-1991)。東京工業大学敦授(1991-)。専門は生物学。 一般向けの著作に『ゾウの時間ネズミの時間』(中公新書)『時間~生物の視点とヒトの生き方』(NHKライブラリー)ほかがある。高等学校「生物」の教科書(啓林館)の編集に携わっている。
本川研究室(東京工業大学)

詳細

細胞はふえる(作詞・作曲・歌・解説 本川達雄)

1.
ふえる ふえるよ
わたしたちの細胞は ふえるよ
体細胞分裂で
ふえる ふえるよ

受精卵は 一個で
それが分かれて 二個になる
二個が 四個に
四個が 八個に
四日目には 四百個
生まれるときには
三兆個にもふえる
それが 二十歳(はたち)で
二十倍の 六十兆

ふえる ふえるよ
わたしたちの細胞ヘ ふえるよ
二つに分かれて
ふえる ふえるよ

2.
間期の あいだには
DNAが 二倍にふえるよ
分裂期に 入るのは
核で わかるよ
核膜がきえて
染色体は 太くなる
細胞の両端から
紡錘糸が のびてきて
紡錘体 つくられる 前期
染色体は みんな
赤道面に ならび
くびれてる 動原体には
紡錘糸が むすびつき 中期

3.
動いていくよ
娘染色体に わかれて
それぞれの極へと
いこう い後期

娘核も 二つ
膜に包まれ できあがる
動物では 細胞質
まんなかで くびれるし
植物では 細胞板 できてくる
細胞質が
分裂したら 終期
これで細胞は
数がふえた! 二倍

●ここがポイント
私たちの体は約60兆個の細胞からできていると言われている。しかし始まりはたった1個の受精卵という細胞。それが細胞分裂によって、これほどまでに数が増える。1個が2個に、2個が4個にと、細胞が二つに分かれながら増えていく。
細胞は分裂し、しばらくして、また分裂する。分裂している時期(分裂期)とその間の時期(間期)とを繰り返す。
1個の細胞が分裂して2個に増えるためには、増える分の材料を用意しなければならない。間期の間にDNAの合成が起こり、核中のDNA量は2倍になり、分裂に備える。(後略)

動物は水のつまった袋(作詞・作曲・歌・解説 本川達雄)

1.
動物は 水のつまった袋
膜につつまれ 水のつまった袋

太古の海の中を
ただよっていた 有機物が
自分のまわりの 海水を
油の膜で つつみこんで
仕切りをつくって 内と外とを
しっかり 区別した
それが 生命の
それが 細胞の
生命の 細胞の はじまり

細胞は 水のつまった袋
膜につつまれ 水のつまった

2.
動物は 水のつまった袋
膜につつまれ 水のつまった袋

細胞が並んで膜に
三種の膜に 分化して
外胚葉は 外つつむ
内胚葉は 腸になり
中胚葉は まん中で
水をつつみこむ
それが 体腔
水のつまっている
中胚葉つつんでる 体腔

体腔は 水のつまった袋
膜につつまれ 水のつまった袋

●ここがポイント
生命は太古の海の中で生まれた。海水中に漂っていた高分子が、自分のまわりの水を膜で包んで「ここから内が自分だ!」と主張したのが生命の始まりと言ってもいいだろう。
水を区切る膜なのだから、膜は水をはじく材料である油でつくれば良い。油の膜で包まれた水が初期の生命であり、この基本形は今でも変わってはいない。生命は細胞でできているが、細胞とは、まさに油の膜で包まれた水なのである。(後略)

勇気りんりんアドレナリン(作詞・作曲・歌・解説 本川達雄)

1.
勇気りんりん アドレナリン
瞳ぎんぎん アドレナリン
心臓どきどき アドレナリン
鳥肌ぞくぞく 手には汗
血糖上がるぞ アドレナリン
交感神経 ノルアドレナリン
副腎髄質 アドレナリン
勇気がりんりん 湧いてくる
2.
チロチロチロチロ チロキシン
甲状腺から チロキシン
ちろちろちろちろ 火がもえる
体の中で 火がもえる
代謝が上がるぞ 熱が出る
ヨウ素が四つだ チロキシン
分化の促進 チロキシン
チロチロチロチロ チロキシン
3.
グルグルグルグル グルカゴン
ぐるぐるぐるぐる 血がめぐる
グルグルグルグル グルカゴン
グリコーゲンは 減少し
ごんごん上がるぞ 血糖値
ランゲルハンスの A細胞
そこから来るか グルカゴン
グルグルグルグル グルカゴン

●ここがポイント
動物のホルモンはたくさんあって、名前と働きを覚えるのはとてもやっかい。その中でも血糖調節に関わるものは入試にもよくでるので覚えざるをえない。そこで血糖を上げる代表的なホルモン3種を語呂合わせの歌にしてみた。
アドレナリンは副じん髄質から分泌されるホルモン。ノルアドレナリンは大変よく似た働きをする物質で、これは交感神経の末端から放出される神経伝達物質である。交感神経が興奮すると、いざ勝負! という「戦闘モード」になる。血糖値が高くなって、瞳ぎんぎん心臓どきどき手に汗握り、勇気りんりん瑠璃の色、気分は少年探偵団である。
グルカゴンはすい臓のランゲルハンス島のA細胞(α細胞)から分泌されるホルモンで血糖値を上げる。(中略)
チロキシンは甲状腺から分泌されるホルモンで、ヨウ素が4つついたもの。チロキシンはグルコースをふやし(燃料を供給し)、組織の酸素消費量を上げ(さかんに火を燃やして)、熱を発生させる。だからチロキシンは、体の中でちろちろと火が燃えているイメージをもてばいいだろう。
チロキシンはオタマジャクシに変態を起こさせ、ほ乳類においても成長や分化に働いているホルモンでもある。

酵素こそわがいのちラップ(作詞・作曲・歌・解説 本川達雄)

生体触媒 その名は酵素
どんなものだか 特徴あげると
自分自身は変化はしないが
なかなか進まぬ化学反応
反応速度を ぐんぐん上げる

酵素は働く 酵素は働く
一番働く温度があるのは?
最適温度!
一番働く水素イオン濃度は?
最適pH!
働く相手が決まっているのは?
基質特異性!

消化酵素は加水分解
水を加えて二つに分解

口の中は何性? 中性!
働く酵素は? アミラーゼ!
最適pH? pH7!

基質は何だ? デンプン!
胃袋の中は? 酸性!
働く酵素は? ペプシン!
最適pH? pH2!
基質は何だ? タンパク質!

十二指腸は? 塩基性!
働く酵素は? リパーゼ!
最適pH? pH9!
基質は何だ? 脂肪!

酵素は働く 酵素は働く
体が働く主役は酵素
働いてるのがいのちというもの
すなわちいのちの主役が酵素
酵素 酵素よ 酵素こそ
酵素 君こそ わがいのち!

●ここがポイント
体の中ではとても複雑な化学反応がさかんに起こっている。生きているとは、この化学反応の総体であると言ってもいい。 私たちの体温は37℃。体内の気圧は大気圧。ところがふつう化学工場といえば、ものすごく高い温度と圧力を使う。こうしなければ、化学反応がすみやかに起こらないからである。 この違いは私たちのもっている酵素の働きにある。酵素は触媒であり、化学反応をすみやかに進めるが、その過程で自分自身は変化することはない。常温常圧でどんどん化学反応を進めることのできる酵素があるからこそ、私たち生きものがこうして存在しているのである。(中略) これはラップなので、適当に叫べばよい。?と!が組になっているところは、問いかけて答える形。先生と生徒の間で掛け合いをやれば、叫んで覚えられるようになっている。

●装丁/松田行正+中村晋平

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