ブレーンステアリング 10億ドルのアイデアを生み出す新発想法
- 経済・経営
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マッキンゼーの国際戦略実践部門を主導した著者が、「Z-1-4企業」(ゼロから年商10億ドルを4年以内に達成した企業)の分析から導き出した「光り輝くアイデア」の体系的創出法。
- 書籍:定価1980円(本体1,800円)
- 2012.03発行
内容
あなたもすでに実感されているように、
ブレーンストーミングはアイデア発想の手段としては、効果的でも能率的でもありません。
本書では、人間が問題解決にのぞむときの心理をより重視して開発された新しいアプローチ、
「ブレーンステアリング法」の全体系を、130以上の事例を紹介しながら解説します。
ブレーンステアリングとは―――
(1)「正しい質問」を導き出し、(2)「正しいプロセス」を踏むことで、
思考をより生産的な方向に誘導(ステアリング)する手法です。
「はじめに」より
誰でもクリエイティブになれる
人は誰でも、いいアイデアを必要としている。画期的なアイデアを、毎日、絶え間なく。
ビジネスの世界では、起業家や社長が新しく作る会社や事業部門のアイデアを求め、製品企画や研究開発の責任者は新製品や新サービスの革新的なアイデアを探している。製造部長は、時間と労力を節約し、コストを削減できる実用的な製造工程のアイデアを毎年のようにひねり出さないと、競争に追いつけない。
非営利分野では、大学教授や学校の先生が斬新な授業計画のアイデアを考え、学生たちは独創的な期末レポートのアイデアはないかと首をひねる。公務員には、担当する地域のニーズを満たしながら政治的に容認できる施策のアイデアが必要だ。
そしてプライベートな生活でも、「今年の教会の慈善パーティーは何をしよう?」「双子の娘たちの誕生日パーティーを思い出深いものにするには?」「ずっと書きたいと夢見ていた大作映画の脚本のテーマは?」などと、誰もがつねに説得力のあるアイデアを探している。
なかには、何百、何千ものアイデアが必要な人もいる。たとえば、あなたが毎晩テレビの前で、ろくに見もしないでチャンネルを替えてしまうような番組を作っているプロデューサーがそうだ。こういうテレビプロデューサーたちは、あなたの関心を引きつけ、スポンサー企業に莫大な広告料を請求できるような目新しくて面白いストーリーのアイデアを、毎日、毎週、毎月、何年にもわたって絶え間なく考え出さなくてはならない。ラジオ番組のパーソナリティやウェブ開発者、広告会社の重役、カタログ通販業者、その他アイデアを売り物にする様々な生業の人たちも、みな同じ悩みを抱えている。
では、新しい、よりよいアイデアを毎日絶え間なく思いつくには、どうしたらいいのだろうか? あるいは、せめて必要なときだけでも思いつくには? クリエイティブな才能があるかどうかだけの問題か? 単純に、できる人もいればできない人もいるということなのか?
それは違う。誰でもクリエイティブになれると、われわれは信じている。いや、実を言えば、形態も規模も様々な組織や個人を対象とした調査・コンサルティングプロジェクトに14年にわたって携わってきた経験から、誰でもクリエイティブになれることをわれわれは知っている。クリエイティブなアイデアは、どこからともなく突然ひらめくとは限らない。それどころか、ほぼあらゆる類のよりよいアイデアをより多く、いつでも生み出せる可能性を劇的に高めてくれる、実証済みの原則とわかりやすい実践法に基づく具体的な手法があるのだ。われわれはこの手法を、「ブレーンステアリング」と呼んでいる。
ブレーンステアリングとは
ブレーンステアリングは、われわれ著者のひとりが世界的な大手コンサルティング会社、マッキンゼー・アンド・カンパニーで戦略実践のグローバル統括リーダーを務めていたときに主管したある大規模調査プロジェクトに端を発する。この調査プロジェクトで発見した原則と実践法は、その後数年間にマッキンゼーの200件以上のクライアント向けプロジェクトで利用され、成果を収めた。その成果をもとに、われわれはブレーンステアリング法をさらに充実させ、営利、非営利を問わず広範囲のクライアントと実施したワークショップで応用した。ワークショップの目的はクライアントによって実に様々で、新製品や新規サービスの考案や、顧客層の拡大、業務プロセスの効率アップ、コスト削減などなど、あげれば切りがない。
ブレーンステアリングは、ほぼどんな状況でも効果を発揮する。従来のブレーンストーミングで普通使うことになる創造的エネルギーのすべてを、より生産的な方向に誘導(ステアリング)し、創造的な問題解決場面における人間の実際の思考と行動のパターンを、よりうまく活用する手法だからだ。これを使えば、どんな種類のアイデア発想にも今までとは全く違う心構えで、全く新しいレベルのエネルギーと好奇心を注いで取り組めるようになり、全く違う視点から物事が見えるようになる。そして何より嬉しいことに、これまで想像もできなかったアイデアを次々と生み出せるようになるのである。
目次
はじめに なぜ「ブレーンステアリング」なのか?
誰でもクリエイティブになれる
ブレーンステアリングとは
基本原則(1)――「正しい質問」をする
基本原則(2)――「正しいプロセス」に従う
本書を最大限に活用するには
PARTI 「正しい質問」でいいアイデアを引き出す
1章 アイデア発想に役立つ「質問」の確かなパワー
「正しい質問」が最高のアイデアを導き出す
「正しい質問」が前にも使われていたら?
目的に合う「正しい質問」を思いつかなかったら?
2章 「正しい質問」の蓄えを増やす
「正しい質問」の基準(1)――今までなかった視点をとるよう迫られる
「正しい質問」の基準(2)――探るべき概念空間が限られる
「正しい質問」の基準(3)――探る概念空間が限られても、魅力ある可能性が数多く見つかる
「正しい質問」の基準4――とにかく成果が出る
「正しい質問」を収集する
(1)顧客が抱える未解決の問題を見つける
(2)平均と異なる利用者や使い方を見つける
(3)意外な成功の可能性を探る
(4)完璧を想像する
(5)未知の「空き領域」を見つける
3章 よりよいアイデアの見つけ方
ふさわしい質問をリストから選ぶ
質問の手直しと指針例の利用
最適のプレゼントを探せ
(1)心温まるプレゼント
(2)趣味や興味に関するプレゼント
(3)贈り主中心のプレゼント
PARTII 個人のアイデア発想力を最大限に伸ばす
4章 質問群構築の体系的アプローチ
「MECE」の概念
MECEはつねにシンプルに――「ロジックツリー」
本当に役に立つロジックツリーを作る
5章 アイデア発想のための「分析」の使い方
分析を無視すれば危険が待っている
分析はつねに必要
新しいアイデアの発想に分析を利用する
新しいアイデアの評価に分析を利用する
適切なタイミングで適切な分析を
分析の第一段階――第一印象分析
分析の第二段階――早期発見
分析の第三段階――机上計画
6章 個人のアイデア発想力を最大限に発揮するために
(1)感情が創造性に及ぼす影響を理解する
(2)感情的負荷を抑える
(3)内発的・外発的動機づけに対する自分の反応を把握する
(4)自分のスタイルに合ったアイデア発想プロセスを作る
「地獄からのアイデア依頼」に対処する
PARTIII チームのアイデア発想力を高める
7章 お粗末なブレーンストーミング・セッションから
最高のブレーンステアリング・ワークショップへ
お粗末なブレーンストーミングのコスト
効果的なブレーンステアリング・ワークショップの概要
ワークショップを始める前に
ワークショップの実施
ワークショップのまとめ
ワークショップ終了後
8章 部下からよりよいアイデアを引き出す方法
(1)成功の基準を定める
(2)ブレーンステアリング法を教える
(3)適切に権限を委譲する
(4)フィードバックをためらう原因を克服する
9章 アイデア工場を作る
(1)アイデア発想プロセスを様式化する
(2)「正しい質問」の源泉を増やす
(3)「正しい質問」ライブラリを制度化する
(4)不健全なパターンに陥らないようにする
(5)システム全体を定期的に刷新する
PARTIV グランドフィナーレ
10章 10億ドルのアイデアを目指せ!
(1)真剣な決意をする
(2)広大な市場をターゲットにする
(3)質問の強度を高める
(4)一切容赦のない評価を行う
付録 画期的なアイデアを生み出す「正しい質問」101
新製品や新サービスを生み出す「正しい質問」
営業活動の成果を拡大する「正しい質問」
コスト削減のための「正しい質問」
最適のプレゼントを探すための「正しい質問」
謝辞
出典について
原注
略歴
[著者]
ケビン・P・コイン KEVIN P. COYNE
エモリー大学ゴイズエタ経営大学院の講義担当教授。マッキンゼー・アンド・カンパニーの元シニアパートナーで、国際戦略実践部門を主導した。「ハーバード・ビジネス・レビュー」「マッキンゼー・クオータリー」「スローン・マネジメント・レビュー」その他の主要誌やオンライン版ビジネスウィークに記事・論文を寄稿。マスコミでも活躍し、ウォールストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズ、ファイナンシャル・タイムズ、フォーチュンなどの主要紙誌に取り上げられたほか、ニュース専門局CNBC、全米公共ラジオ、フォックス・ビジネスニュースなどに出演している。
ショーン・T・コイン SHAWN T. COYNE
25年のキャリアを持つ経営コンサルタント。P&G、マッキンゼー・アンド・カンパニーほか有名企業で戦略、マーケティング、組織リーダーシップのコンサルティングに携わってきた。「ハーバード・ビジネス・レビュー」「エグゼクティブ・ディシジョン」、オンライン版ビジネスウィークなどに寄稿するほか、ウォールストリート・ジャーナルに掲載、フォックス・ビジネスニュースに出演。
著者2人がともに取締役を務める小規模の専門コンサルティング会社「コイン・パートナーシップ」は、官民両部門の上級執行役員や取締役会をクライアントに、戦略、イノベーション、組織有効性の分野のコンサルティングを行っている。
[訳者]
古賀祥子(こが・さちこ)
翻訳家。東京外国語大学英米語学科卒。コンピュータ・メーカー、外務省所管の公益法人勤務を経て実務・出版翻訳に携わる。主な訳書に、『「透明社員」を使え!』『アイデアマップ』(阪急コミュニケーションズ)、『ワールド・イズ・ブルー』(日経ナショナルジオグラフィック社)、『なぜ女は昇進を拒むのか』(共訳、早川書房)、『マインドマップ営業術』(共訳、アスペクト)などがある。
●装丁/轡田昭彦、坪井朋子