機長の「集中術」

機長の「集中術」
小林宏之 著
  • 書籍:定価1540円(本体1,400円)
  • 電子書籍:定価1078円(本体980円)
  • 四六判・並製/144ページ
  • ISBN978-4-484-10210-8
  • 2010.03発行

集中力は「捨てる技術」! 乗務歴40年、JALで唯一すべての国際路線を飛んだ“グレートキャプテン”が教える、いつでもどこでも集中を発揮できる方法。集中力アップで、仕事も人生も、もっとうまくいく!

書籍

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内容

《メディア大注目! テレビ・新聞の取材殺到!!》
乗務歴40年、JALで唯一すべての国際路線を飛んだ“グレートキャプテン”。
首相特別便や湾岸戦争時の邦人救出機の機長も務めた経歴をもつ、
日本を代表するベテラン機長。

そんな著者が、いつでもどこでも集中力を発揮する秘訣を伝授。
集中力アップは、人生でもビジネスにおいても、
成功のカギを握っている。
とはいえ、思うように集中できないことが多いのも事実。
しかし、多くの命をあずかるパイロットたちには、
そんな言い訳は許されない。
彼らはまさに「集中力のプロ」。

「集中力は「捨てる技術」!
集中すべきこと以外のものはすべて捨ててしまう、
その思い切りの良さに他ならない。
そして、スキルである以上、年齢に関係なく、
誰でも確実にアップさせることができる。
60歳を超えてなお世界中を飛び続けてきた私が、それを証明します。
ご自分で納得できたら、是非、実行してください。
あなたの集中力は、確実に向上することでしょう。」 小林宏之

Prologue――私の「集中力」失敗例

人間の能力に、それほど差はありません。しかし、結果には大きな差がつくことがあります。
その要因のひとつが、集中力の差です。
私は今まで、多くの人を見てきました。同じ土俵に上がった者同士、同じ会社に入社した者同士、当初は、能力の差というものはほとんどありません。それなのに、時間とともに、大きな差が出てきてしまいます。
集中力のある人とそうでない人とでは、同じ仕事をやっても、集中力の発揮の仕方の差によって、その結果に大きな差がついてしまいます。
人それぞれ、誰もがもっている素晴らしい能力の使い方や、集中力の差が、結果として大きな差となって現れてくるのです。
したがって、目的を実現するためや、目標を達成して、仕事でも人生でも良い成果を得るためには、自分のもっている能力を最大限に活かすような、集中力を身につけていけばいいのです。
こんなふうに偉そうなことを言う私自身も、思うように集中できず、あるいは真剣に集中しようとしなかったために、多くの失敗や回り道をしてきました。
そこで、まず私自身の経験のなかから、集中力不足による失敗例をあげてみたいと思います。みなさんにも心当たりのある失敗例があるのではないでしょうか。

●不満足に終わった定期訓練と審査
機長には、年に3回の訓練と2回の厳しい審査があります。訓練や審査の前には当然、勉強をします。その勉強中に、ついラジオを聴いたり、携帯電話やパソコンでメールのチェックをしたりして、何度も集中力が途切れてしまったことがあります。その結果、計画していた勉強の質、量ともに足りないまま、訓練と審査を受けることになりました。
もちろん訓練も無事終了し、審査にも合格はしたものの(不合格となった場合は、機長として飛べなくなります)、自分が目標とした内容にはほど遠い、不満足なものになってしまいました。

●風邪を引いたままシミュレーター訓練
入社以来42年間、フライトも地上業務も休んだことはなかったのですが、ある日たまたま、シミュレーター訓練の前に、風邪を引いてしまいました。
そのまま訓練を受けたのですが、当然、集中力だけでなく注意力も低下しており、このときも出来の悪い訓練結果となってしまいました。

●母の死の翌日に講演
5年前、ある講演の前日に母が亡くなりました。しかし、対外的な仕事だったためにキャンセルはせず、通夜は弟に任せて講演を行ないました。
肉親の死という、大きなストレスを抱えての講演です。自分では集中しているつもりでしたが、心の底では、しばしば母のことが思い浮かび、今思い返してみると、講演もどこか浮わついたものになってしまったように思います。

●周囲の話し声が気になる
会社のデスクで仕事をしているとき、周囲の話し声のなかから、自分に関係のあることや興味のあることなどが少しでも聞こえてくると、ついそっちに意識がいってしまいます。
そして、目の前の仕事の内容など、うわの空になることは、度々です。

●達成できない年間目標
毎年、正月には「今年の目標」を立てることにしています。
しかし、年間目標というものは、まだまだ十分に時間があるという意識が続くため、結局、年末になっても目標を達成できずに終わってしまったことが、何度もあります。

●その場しのぎの身体検査
パイロットは、厳しい航空身体検査を半年毎に受けます。それに合格しないと、飛行機には乗務できません。そのため、航空身体検査の1か月ほど前からカロリーコントロールや運動をして、体重や血圧、血糖値などを下げる努力を必死にやります。
しかし、身体検査に無事合格すると、次の検査は半年先だと気が緩んでしまい、体重も血圧などの数値も、すぐに元どおりになってしまいます。

●寒さや乾燥に左右される
学生の頃、冬の寒い部屋のなかでいくら勉強を頑張ろうとしても、肩に力が入って集中できなかったということを経験しています。
また、乾燥しすぎると、喉を痛めて咳が出てしまい、それによって集中力を削いでしまうということもありました。

●気分まかせの中期計画
1か月毎の中期計画を作成して、数種類の事案を1か月以内に完成させる計画をしていましたが、そのときの気分にまかせて、それぞれを少しずつ、つまみ食いするように作業を進めた結果、いちばん重要な案件を完成できなかったということがあります。

●あの人に良く思われたい
本当は、これをやりたい、やるべきだと分かっていても、あの人に良く思われたいとか、格好良く見せたいという思いで、それほど必要でもないことに集中力を発揮してしまい、大事なことができなかった、という失敗をよくしたものです。

●三日坊主
よしやるぞ、と意気込んで始めたことも、三日坊主になってしまうことは、私自身、今まで何度もあります。そして、その度に後悔しています。

このように、私自身も、集中力が足りずに失敗した例は枚挙に暇がありません。
しかしながら、パイロットという職業柄、厳しい訓練や審査が年に何回もあります。集中力のコントロールが、そのまま飛行の安全性にも結びついてくる、という厳しい職種でもあります。
入社してから数年というものは、集中力を発揮することがなかなかできず、不甲斐ないパイロットでした。それでも、63歳を超えても現役の機長としてフライトできたのは、明確な目標、目的意識をもって、自分をコントロールできるようになってきたことによるものだと思います。
「集中力とは何か」「集中力を発揮するためには、どうしたら良いか」ということを、自分なりに考え、工夫してきました。

この本では、そのようにして私が身につけた、自分をコントロールして集中力を発揮する方法を紹介していきます。そして、それは誰にでもできる当たり前のことばかりです。問題は、それをどれだけ徹底できるか、ということなのです。
その当たり前のことを、日常生活やビジネス、そして人生のなかでも応用することができれば、きっと良い成果を期待できるものと思います。

目次

Prologue――私の「集中力」失敗例
不満足に終わった定期訓練と審査
風邪を引いたままシミュレーター訓練
母の死の翌日に講演
周囲の話し声が気になる
達成できない年間目標
その場しのぎの身体検査
寒さや乾燥に左右される
気分まかせの中期計画
あの人に良く思われたい
三日坊主

Chapter1――集中力とは?
能力の配分と集中させる力 自己コントロール力(Self Control)
凝集力と持続力のバランス
集中力はスキル(技術)
集中力は年齢とは関係ない
集中力は捨てる技術
集中力も習慣
集中力は能力のリソースマネジメント

Chapter2――集中力の種類
一点に瞬間的に集中する(集中力の深さ)
全体に気配りをしながら大局を把握する(集中力の幅)
流れや変化を読み取る
持続する集中力(時間を意識した集中力)
本質・重要度を見極める

Chapter3――集中力を阻害するもの
自分に関係のあるさまざまな情報
空腹感と満腹感
睡眠不足
疲労
体調不良、病気、怪我
不快な気温や湿度
他人の目が気になる、良く思われたい
過度の緊張やリラックスのしすぎ
迷い、不安、心配
欲張り
動機、目標がない
期限がない
さまざまな誘惑(携帯電話、メール、インターネットなど)

Chapter4――集中力を発揮する方法
好きになる、興味をもつ、面白くやる
今、ここに集中する(Now! Here!)
はっきりとした具体的な目的意識・目標をもつ
目標には期限をつける(目標は短期・中期・長期で)
健康の維持・向上
緊張とリラックスの切り替え、バランス
疲れや睡眠不足に対するマネジメント
具体的かつ詳細にイメージする
誘惑を取り除く(勇気をもって捨てる習慣をつくる)
優先順位、緊急性をつける
「間」をとる
自律心
自分をコントロールする
柔軟性
ストレスに対する免疫力
五感を研ぎ澄ませる
目の訓練、耳の訓練で集中力アップ
環境を整える
習慣化する
時間の捉え方、使い方で集中力を高める
与えられたことを感謝して、まずやってみる
集中力アップのキーワード

Chapter5――集中力を発揮する際の落とし穴
集中力とヒューマンエラー
落とし穴に陥らないために

Chapter6――どうしても集中できないときは
集中できない要因を探す
集中できない要因が分かったら
時間があり余って集中できないときは
緊張感に強弱、緩急がないときは
何をしても集中できない(集中力が続かない)ときは

Chapter7――集中力とその周辺力
集中力とストレス
集中力とEQ
情報力と集中力
集中力とリスクマネジメント・危機管理
集中力とリーダーシップ
集中力と決断力

Epilogue――「集中力」が私の人生を変えた

著者

小林宏之(こばやし・ひろゆき)
1946年、愛知県新城生まれ。
68年、東京商船大学航海科を中退し、日本航空入社。81年、機長昇格。飛行技術室長、運航安全推進部長、運航本部副本部長などを歴任。2006年10月に定年退職するが、翌11月より広報部付機長となる。乗務した機種はB727、DC8、B747、DC10、B747-400。乗務した路線は、日本航空が運航したすべての国際路線および主な国内線(すべての国際路線を飛んだ、最初で最後の機長)。総飛行時間1万8500時間(地球800周に相当)。首相特別便および湾岸危機時の邦人東南アジア人救出機の機長も務める。2010年3月、引退。
機長時代より大学、医療機関、原子力関係機関、その他の企業・団体などで「危機管理」「リスクマネジメント」「ヒューマンエラー対策」等の講演多数。今後は危機管理・リスクマネジメントの専門家、航空評論家として活動する。

●カバーデザイン/ヤマダマコト(志岐デザイン事務所)
●本文デザイン・DTP/萩原睦(志岐デザイン事務所)
●校正/円水社

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