ニューヨークが教えてくれた “私だけ”の英語 "あなたの英語"だから、価値がある
- 文芸・エッセイ
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自分の英語に自信が持てるようになる1冊
家族の反対を押し切り、高校時代に憧れのアメリカへ留学。
「ストレート」も通じず、「私は、バカなの?」と泣き暮らした日々はやがて──。
ニューヨークの大学院で学び、現地で取材を重ね、見つけた大切なこと。
完璧でなくていい。
私にしか話せない私だけの英語で、心を伝える。
その原点は、中学英語だった。
2大ロングセラーシリーズ、「ニューヨークの魔法」シリーズ(文春文庫)と『奥さまはニューヨーカー』シリーズ(幻冬舎文庫)を描いてきた著者が、
どんなふうに英語を学び、挫折を乗り越え、モノにし、活かし、人と心を交わしてきたかを、初めて語る。
- 書籍:定価1540円(本体1400円)
- 電子書籍:定価1232円(本体1120円)
- 2022.06.21発行
はじめに
アメリカ行きのスーツケースにいつも私は、中学英語の教科書を詰めた。誰もが慣れ親しんだ3冊の本が、ニューヨークでもこんな出会いをもたらしてくれるから。
Wait! Wait! Wait! 待った!待った!待った!
70代くらいのアフリカ系アメリカ人女性が、停留所に止まっているバスに向かって必死に叫ぶ。私もそのバスに乗り遅れまいと、大きな買い物袋を手に、ダッシュする。
ちっ、行っちまったよ、と女性がつぶやく。その人も同じバスに乗りたいのかと思ったら、どうやらバスを降りたばかりで、歩きやすいように荷物をまとめ始めた。
私のためにバスを呼び止めようとしてくれたの? と聞くと、そうだよ、と答える。
I know everyone is trying to get home. みんな、家に帰ろうとしてるんだからね。
そう言うと、女性は目の前の店に入っていく。入口近くの棚の上に手を伸ばし、何か取ろうとしているのが、ガラス越しに見える。背の低い彼女には、届かない。
私は、その店に用はなかったけれど、中に入り、女性に声をかけた。
Maybe I can help you with that, even though Iʼm about as short as you.
私が役に立てるかも。といっても、私、あなたと同じくらい背が低いんですけど。
女性が笑う。彼女がほしがっているコーヒーに、腕を伸ばす。でも、届かない。
Iʼm sorry. I couldnʼt help you. 役に立てなくて、ごめんなさい。
Thatʼs all right. Thank you. We have to help each other, you know.
その気持ちだけで、うれしいよ。お互いに助け合わなきゃ、そうだろ?
ああ、この人と私は、同じ地球の上で、“今”をともに生きている! 私は胸がいっぱいになった。難しい言葉はひとつもいらない。そこにあるのは、中学英語だけ。
初めて英語と出会った時、「英語って、なんてつまらないんだ」と思った。
そんな私が、英語に恋をした。「英語って、生きている」。そう実感した瞬間に。
もくじ
Chapter1 アメリカの高校で過ごした1年
・「便秘」に青でアンダーライン
・「うるせー、黙れ!」とダッドにどなってしまった!
・話せないのに、アメリカ人より文法ができる!
・私の英語をみんなが笑った など
Chapter2 私は英語に恋をした
・家じゅうに貼った英単語カード
・世界への扉は、カーペンターズの歌
・バイブルは、中学英語の教科書
・受験英語は、基礎を鍛えてくれた など
Chaper3 再びアメリカ留学。書く仕事がしたい
・英語のポジティブさが、私を変えた
・大量のリーディングで、ぐんと伸びた速読の力
・ニューヨークで、一流の作家に学ぶ
・母語ではないからこそ、クリエイティブになれる など
Chapter4 ニューヨークで生きていく
・みんな、英語を話そうとがんばっている
・心を打った片言の英語
・誰もが発信できる時代
・「ニューヨークの魔法」シリーズも音読を など
Chapter5 “あなただけの英語”を愛おしむ
・自信をもつには、まず自分を好きになる
・日本人であるだけで、感動される
・「おかえりなさい」は最高のおもてなし
・カタカナ英語を、どんどん利用しよう など
Chapter6 英語が好きになる13の方法
・英語を楽しくするのは、あなた次第
・どうしたら、ネイティブみたいに話せるの?
・楽しい英語に囲まれる暮らし
・Siri といつでも、おしゃべりできる など
Chapter7 英語で心を通わせるということ
・笑顔で相手の心をノックする
・会話のきっかけは、お節介とほめ言葉
・聞き上手になるコツ
・会話を続けるコツは、相手の言葉にある など
著者略歴
岡田光世(おかだ・みつよ)
作家、エッセイスト。
読売新聞アメリカ現地紙記者を経て、現職。高校、大学、大学院で各々米留学。85年からニューヨークに住む。現在は、東京とニューヨークを行き来しながら執筆を続ける。
著書に、『ニューヨークのとけない魔法』をはじめとする「ニューヨークの魔法」シリーズ(全9冊、文春文庫)、『泣きたくなるほど愛おしい ニューヨークの魔法のはなし』(清流出版)、『奥さまはニューヨーカー』シリーズ(全5巻、幻冬舎文庫)、『アメリカの家族』『ニューヨーク日本人教育事情』(ともに岩波新書)などがある。
ブックデザイン*吉村朋子
校正*株式会社 文字工房燦光