パリのマルシェを歩く
-
原田幸代 著
- 書籍:定価1650円(本体1,500円)
- 電子書籍:定価1320円(本体1,200円)
- B6変型判・並製/152ページ
- ISBN978-4-484-16223-2 C0095
- 2016.09.29発行
フィガロブックス /
色とりどりの新鮮野菜、養鶏場直送の卵や地鶏、ブルターニュの牡蠣や魚、リムーザンの仔牛、各地方のチーズにワイン……見て回るだけで元気がもらえるパリのマルシェ。季節ごとの楽しみ方を紹介します。旬の素材を使ったオリジナルフレンチレシピつき!
内容
東京のファッション界から心機一転、パリへと移り住んだ著者がはじめたのは、「食」に関する仕事。
著者が足繁く通うパリの35のマルシェの紹介(マップ付き)から、
マルシェへ行ったら立ち寄りたいおいしい食材店に、季節の食材を使った簡単なフレンチレシピまで。
フランスを巡る「食」のガイドブックは、
恵まれた“テロワール“を誇るフランスならではの、人生の楽しみ方まで教えてくれます。
はじめに
パリ暮らしとマルシェ
「ああ、フランス人はいつも楽しそうでいいなあ」
モードの仕事に携わっていたとき、自身のブランドの新作発表のためにパリへ出張するたびに、そんなふうに思っていた。
そして13年前、とうとうそれまで経営していた会社を閉じて、自分がすごくリラックスできる場所、パリへ。
ある日、今後のことをぼんやり考えながら街を歩いていたら、突然「あの時のおにぎりの人〜!」と声を掛けられて……!ああ、すっかり忘れていた、しばらく前に日本からパリコレに参加していた友人のアトリエへ、おにぎりを差し入れしたことを。「私もそこにいたのですが、とっても感激しました」と言ってくれた彼女の嬉しそうな表情にびっくり。食という字は、”人を良くする”と書く。「食べることは、人を幸せにするんだなあ」と「食」に関係することを仕事にするのがいいかもしれない……とそのときと思ったのが、いまの仕事をはじめるきっかけになる。
いやなことがあってクヨクヨと落ち込んでしまい、このままではどうにもならない!というとき、とりあえずマルシェに行ってみる。
季節の野菜の彩りや形の美しさを眺めているだけで元気が湧いてくる。土から生まれ出てくるものにみなぎる、底知れないエネルギーの波動を感じる。新鮮な野菜、果物、肉、魚を見るたびにワクワクし嬉しさが込み上げてきて、食べたいもの、作りたいものが頭に浮かんでくる。
そして、おいしいものは、すぐに誰かと分かち合いたくなる。とびっきりの旬の材料を好きなだけ使って料理をする、レストランでは味わえない贅沢にもうゴキゲン。温かい手料理でお腹が満ちると気分も落ち着いて、またがんばろう!と思えてくるから不思議。
季節の野菜の彩りや形の美しさを眺めているだけで元気が湧いてくる。土から生まれ出てくるものにみなぎる、底知れないエネルギーの波動を感じる。新鮮な野菜、果物、肉、魚を見るたびにワクワクし嬉しさが込み上げてきて、食べたいもの、作りたいものが頭に浮かんでくる。
そして、おいしいものは、すぐに誰かと分かち合いたくなる。とびっきりの旬の材料を好きなだけ使って料理をする、レストランでは味わえない贅沢にもうゴキゲン。温かい手料理でお腹が満ちると気分も落ち着いて、またがんばろう!と思えてくるから不思議。
マルシェとともに四季を暮らす
パリ近郊農家で作られている野菜、養鶏場直送の卵や地鶏、ブルターニュからの牡蠣や魚、バター、ロワールやサントル地方の豚肉、リムーザンの仔牛、東北ピカルディーのりんごにシードル、さまざまな地方のチーズにワイン……。恵まれた“テロワール”を誇るフランスの広大な大地で育まれたものを中心に、コルシカ、シシリアの島々、そしてスペイン、ドイツ、オランダと、地続きのヨーロッパ大陸から、個性豊かな食材が一堂に集まる。
雪解けがはじまった頃の早春のたんぽぽの葉。まだまだ凍えるような地面に懸命に根を這わせるたくましい命。また巡りくる“一年の始まり”を感じて、たんぽぽの葉に「今年もまたおいしく食べて、元気に過ごせますように……」と心の中で掌を合わせる。
優しい緑のアスパラガスやプチポワ(グリンピース)を見つけると、「ああ、やっと春が来た!」と微笑む。初物というのは何度出合っても嬉しくて、長くて暗い冬を耐え忍んできたご褒美のよう。春野菜のシーズンの幕開けには、Ail nouveau(新にんにく)、 Carotte primeur(はしりのにんじん)……“新しい、始まり”という名が付くものは、とにかくありがたく感じる。この響きの初々しさよ!
硬かった木々の新芽がみるみる膨らみ芽吹いてくると気持ちも弾む。春の草を食んだヤギや牛の乳を搾って作ったチーズ、バターの味が、ほかの季節のものとこれほど違うなんて知らなかった。
オレンジ色が鮮やかなアプリコット、いちごにさくらんぼがマルシェに顔を出すと、初夏のサイン。これから秋まで、色どり豊かなフルーツが豊富でおいしい時期。生ハムのお供は瑞々しい桃やネクタリン、甘みが強烈な南仏カヴァイヨンのメロン。新鮮な野菜で作るガスパチョや、上質なオリーブ油と塩だけで食べる元気な夏野菜。夕方からテラスで弾ける泡を片手にアペリティフを愉しむのは、この季節ならではだ。
夏の終わりを感じるのは、アルザスから黄金色のミラベルが届く頃。いちじくとセップ茸やジロール茸が出てきたら、もう秋。名産地アルデッシュから大粒の栗が到着。それから、くるみ、りんご、梨……。立派なホタテ貝やアンキモ、さらにはバスクの1本釣りのカツオを見つけたら、大感激!
冬が迫ってくると、肉屋さんには野鳥やうさぎが並び、ジビエがはじまる。名残のセップ茸と入れ替わりに、森からピエ・ド・ムートン(羊の足)というきのこが出てくる。サルシフィ(西洋ごぼう)やトピナンブールなど、根菜もぐっとおいしくなってくる。
まるで、旬の食材が暦のように、移りゆく季節を知らせてくれるのだ。
マルシェに通いつめるわけ
マルシェにはグルメで料理好きな人が集まってくる。野菜や魚を選んでいる人に「これで何を?」と尋ねると、どの人の顔もぱっと輝き、嬉々としてレシピを教えてくれる。おばさまおじさまたちは、長く生きている分、うんちくも体の厚みもモノ凄い。おうち秘伝の味、おばあちゃんのお惣菜、時にはシェフ達のアイディアまで、どれも本では決して得られないもの。おいしそう!やってみよう!と、すぐにその気になってしまう……そんなやり取りが何よりも楽しい。そして、パリ20区それぞれのエリアのマルシェとそこで暮らす人々のキャラクターもくっきり際立っていて、興味深い。
マルシェに通いつめるうちに、この国の食生活の豊かさ、長く培われてきた食文化が見えてくる。フランス人は食べること、毎日の生活を大切にして生きること、自分たちの命を養うことに労力をいとわない。フランス語の“Jouir de la vie ”、これは日々、人生を愉しむという意味。そのために、「食」にまつわる作り手も買い手も、つねに情熱を傾けている。
わたしのパリ暮らしと楽しみの原点、マルシェへとご案内しましょう。
目次
はじめに――パリ暮らしとマルシェ
春 printemps
マルシェ・ポール・ロワイヤル Marché Port – Royal
マルシェ・コンヴァンション Marché Convention
マルシェ・アンヴェール Marché Anvers
マルシェ・プラス・デ・フェット Marché Place des Fêtes
マルシェ・クール・ド・ヴァンセンヌ Marché Cours de Vincennes
マルシェ・グルネルとクレール商店街 Marché Grenelle et Rue Cler
春のレシピ
夏 ete
マルシェ・ドメニル Marché Daumesnil
マルシェ・モンジュとムフタールの市場通り Marché Monge et Rue Mouffetard
マルシェ・ベルグランド Marché Belgrand
夏のレシピ
秋 automne
hiver
マルシェ・サックス・ブルトゥイユ Marché Saxe-Breteuil
マルシェ・シャロンヌ Marché Charonne
マルシェ・オーギュスト・ブランキ Marché Auguste-Blanqui
マルシェ・プレジダン・ウィルソン Marché Président Wilson
マルシェ・ポパンクール Marché Popincourt
秋のレシピ
冬 hiver
マルシェ・エドガー・キネ Marché Edger Quinet
マルシェ・ビオロジーク・デ・バティニョール Marché Biologique des Batignolles
マルシェ・ダリーグル Marché d’Aligre
冬のレシピ
Mes marchés de Paris
〈地図〉パリのおすすめマルシェprintemps
著者略歴
原田幸代 Sachiyo Harada
料理クリエイター:服とバッグブランド「hoa*hoa」のデザイナーをはじめモードの仕事に携わった後、2003年渡仏。料理学校でフランス料理のCAP(フ
ランス国家資格職業適性証書)を取得、ホテル・ムーリス、京料理店、寿司店などで研修を行う。現在は、パリで日本料理教室、東京でフランス料理教室を開催。また、フランスの料理専門誌や料理本で、コンサルティングやレシピ&スタイリングを担当する。2016年春、ベジタリアン向けの料理本『LA CUISINE VÉGÉTARIENNE』をフランス全土と海外県、ベルギー、スイス、イギリスなどヨーロッパ各地で発売。