アステイオン83
特集 「マルティプル・ジャパン――多様化する「日本」」苅部 直 /三橋順子/谷口功一/東 優子/樋口直人/サンドラ・ヘフェリン /工藤正子/川田順造/上野 誠[論考]野澤 聡/加藤 徹[対談]大栗博司+山崎正和+三浦雅士(司会)[インタビュー]スコット・ベイツ+宮田智之[連載]「リズムの哲学ノート」山崎正和
- 書籍:定価1100円(本体1,000円)
- 電子書籍:定価1100円(本体1,000円)
- 2015.11.13発行
内容
十年ほど前から「多文化共生」のかけ声が、日本のあちこちで聞こえるようになってきた。グローバル化の進むなか、海外からやってきて国内に定住する人々の多様性が、けた違いに高くなっている。世界中のさまざまな文化が複雑にいりまじる形へと、日本社会は大きく変わったのである。
しかし、そうした意味での「多文化」状態のとらえ方は、平板にすぎないだろうか。かつては性的マイノリティと呼ばれていたLGBTについての理解が高まってきた。それは、言語や宗教といった文化の違いとは別の地平に横たわる、多様な人々の共存状態を明るみに出す。さらに経済格差の問題を考えれば、かつて「階級」と呼ばれた社会の分割線の存在も、いやおうなしに視野に入るだろう。
いまや日本社会が含む多様性は、さまざまな次元が重なりあう、立体的なものになった。さらに遠い過去の史料や言語のあいまからも、「日本文化」の単一性のイメージを裏切るようなものが浮かびあがってくる。クール・ジャパンならぬ「マルティプル・ジャパン」。歴史と現代を通じて、多様なものが共存する「日本」の姿をふりかえってみよう。
目次
特集 「マルティプル・ジャパン――多様化する「日本」」
巻頭言
・・・・・苅部 直
歴史の中の多様な「性」
・・・・・三橋順子
郊外の多文化主義――「同胞」とは誰か
・・・・・谷口功一
排除と包摂のせめぎあいーLGBTをめぐる近年の動向
・・・・・東 優子
エスニック・ビジネスから考える
・・・・・樋口直人
「ハーフ」という幻想
・・・・・サンドラ・ヘフェリン
在日ムスリム社会のダイナミクス
・・・・・工藤正子
「日本」はどのようにして生まれたのか
・・・・・川田順造
漢字を飼い慣らす知性―日本的知識人の誕生
・・・・・上野 誠
・論考
これからの科学像を求めて
・・・・・野澤 聡
日中美意識の比較――方正・円順・自己相似の視点から
・・・・・加藤 徹
・写真で読む研究レポート
オリエントの東――トルコ国立宮殿局所蔵日本美術工芸品をめぐる物語
・・・・・ジラルデッリ青木美由紀
・対談
自然科学と哲学の対話
・・・・・大栗博司+山崎正和+三浦雅士(司会)
・世界の思潮
人文研究への願い――ソシュール最期の日々
・・・・・互 盛央
・・・・・互 盛央
豊かなアメリカのパラドクス
・・・・・中澤 渉
・・・・・中澤 渉
雑音狂時代――音楽のモダニティとその臨界
・・・・・長門洋平
・時評
光悦・宗達の詩書画三重奏――「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」をめぐって
・・・・・芳賀 徹
宇宙的スケールの造形世界
・・・・・高階秀爾
・・・・・高階秀爾
京都市の大胆な実験
・・・・・待鳥聡史
「ウクライナ」を創るプーチン
・・・・・待鳥聡史
「ウクライナ」を創るプーチン
・・・・・田所昌幸
映画〈〈東京オリンピック〉〉は何を「記録」したか
・・・・・渡辺 裕
オリンピックと建築家
・・・・・藤森照信
・・・・・藤森照信
アリの貴族、または怠惰について
・・・・・奥本大三郎
・インタビュー
米国政治とシンクタンク
・・・・・スコット・ベイツ+宮田智之
・・・・・スコット・ベイツ+宮田智之
・連載
リズムの哲学ノート 第六章 リズムと自然科学(後編)――近代科学が哲学に教えるもの
・・・・・山崎正和
・フォーラムレポート
グローバルな文脈での日本
●アステイオン編集委員会委員
委員長 田所昌幸
池内 恵
苅部 直
張 競
細谷雄一
待鳥聡史
顧 問 山崎正和
●ブックデザイン/熊澤正人+村奈諒佳(POWERHOUSE)
●翻訳協力/ジャネット・アシュビー
●校閲/竹内輝夫
●編集協力/CCCメディアハウス書籍編集部