ナパ 奇跡のぶどう畑 第二の人生で世界最高のワイナリーを造りあげた〈シェーファー〉の軌跡

ナパ 奇跡のぶどう畑
ダグ・シェーファー/アンディ・デムスキィ 共著

野澤玲子 著

  • 書籍:定価2200円(本体2,000円)
  • 電子書籍:定価1760円(本体1,600円)
  • 四六判・並製/400ページ
  • ISBN978-4-484-14117-6
  • 2014.09発行

47歳で脱サラし、丘陵の荒れ果てた土地でぶどう栽培を始めた父。人生を懸けた挑戦は息子に引き継がれ、極上のカルトワインが生まれた――カリフォルニアを代表するファミリーワイナリー〈シェーファー・ヴィンヤーズ〉の現社長が、同社のあゆみを回想しながら、僻地のワインが世界を魅了するまでを振り返る。

書籍

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内容

47歳で脱サラし、丘陵の荒れ果てた土地でぶどう栽培を始めた父。
人生を懸けた挑戦は息子に引き継がれ、極上のカルトワインが生まれた――

カリフォルニアを代表するファミリーワイナリー〈シェーファー・ヴィンヤーズ〉の現社長が、同社のあゆみを回想しながら、僻地のワインが世界を魅了するまでを振り返る。

いまやボルドーにも劣らないワイン産地として知られる、カリフォルニア州ナパヴァレー。40年前、「中年の危機」に直面したジョン・シェーファーは、会社役員という安定した地位を捨てて、ここに荒れ果てた土地を買い、まったくのゼロからぶどう栽培を始めた。のちにはワイン醸造も手がけ、世界を虜にする名品を生みだすが、そこに至る道のりには、害虫との戦い、放火による大規模な山火事、産地認定への長い道のりなど、苦難が絶えることはなかった。それでも信念を貫いた男と、ともに歩んできた家族の物語。

〈シェーファー〉が創業から四〇年のあいだに手にいれた栄光はすべて、いかにビジネスを進めていくかという、この家族の教養や哲学なくしてはありえなかっただろう。よいときも悪いときも、〈シェーファー・ヴィンヤーズ〉というワイナリーは、最高の品質を追求することに全力を注いでいる誠実な人たちで成りたっている。彼らは、つねに謙虚であり、つねにワイナリーのすべての利害関係者になにかよい結果を残そうという努力をおこたらない。
多くの人々が喜ぶような方法でなにかをうまく成し遂げるためには、先見の明と、ゆるぎない信念が必要である。しかし、ジョン・シェーファーと彼の家族、そして彼の仕事仲間にとって、これは、ビジネスをするうえで唯一の自然なやり方なのだ。
――序文より

目次

序 文  ダニー・マイヤー(ユニオン・スクエア・ホスピタリティ・グループ(USHG)最高経営責任者)

 

プロローグ

1 ジョン・シェーファー
2 一九七三年一月
3 荒野にあらわれたワインカントリー
4 揺れる振り子
5 到着――九七三年
6 ぶどう品種
7 カベルネ・ソーヴィニヨン
8 ぶどう畑の運命
9 アルフォンソ

10 一九七六年
11 丘陵のカベルネ・ソーヴィニヨン
12 ファミリーワイナリー
13 ワインを売る
14 リビィ
15 ニューヨーク
16 チェーンソー
17 ナパヴァレー・ヴィントナーズ
18 放火事件 
19 トラブル 
20 一九八三年一月

21 一九八二年のカベルネ・ソーヴィニヨン
22 別のラベル
23 イライアス
24 ナパヴァレー・ワイン・テクニカルグループ
25 フードワインの時代
26 ヒルサイドセレクト
27 よいこと、悪いこと、とても悪いこと
28 アポストロフィの戦い
29 AVA(認定ぶどう栽培地域)
30 ディストリクト
31  公聴会
32 シャルドネ

33 フィロキセラ
34 サステイナブル(持続可能な)農法
35 アイデンティティの危機
36 奈落の底からの好転
37 サンジョなんたら
38 アイデンティティの危機(今度は個人的なこと)
39 走りつづけの九〇年代
40 シラー
41 カルトワイン
42 エルニーニョ
43 新世紀
44 ソーラー発電

45 ホスピタリティ
46 テレビの現実
47 インターネット
48 ポイント 
49 経済危機 
 
おわりに――スタッグスリープの現在と未来
 

謝 辞
訳者あとがき

序文

 本書は、ひとことで言えば、ひとりの男の選択が、そのあとの彼の家族の運命を決定づけたという話である。
 
 とはいえ、それだけなら、ジョン・シェーファーと彼の家族のストーリーは、ここまで興味深いものにはならなかっただろう。実際、 をたずさえて西部に向かおうと妻と子供たちを説得するだけなら、だれにでもできる。しかし、サンフランシスコから五〇マイル北にある、名も知れぬ丘陵に新しい植物の根―つまりぶどう樹―を植えるために、安定した会社役員としての実績と快適な生活に見切りをつけ、「中年の危機」に真っ向から挑戦しようとする人間は、そうはいない。

 だが本書には、「中西部出身の成功した中年会社員が西に移住する」という話よりも、はるかに豊富な情報がつまっている。これは、四〇年という年月をふりかえり、ひとりの男が抱いた夢が、あまりにも華麗に、堅実に、かつ完全に実現されたという事実があったからこそ、詳細な調査と理解のもとに著述された、きわめて稀少な読みものにほかならない。

 だれよりも機知に富み、やさしく、粘り強く、純粋な人間である息子のダグ、そして卓越した才能と細やかな神経をもつワインメーカーのイライアス・フェルナンデスを中心に、すばらしい仕事仲間に恵まれたジョン・シェーファーは、ひとりの中年男性の夢を、もっとも偉大なカリフォルニアワインのストーリーとして花開かせたのである。

 私のまわりには、〈シェーファー・ヴィンヤーズ〉に深い愛着を抱いていない人間はひとりもいない。〈シェーファー〉のファンはだれもが、最高傑作である《メルロ》(私はこの品種の決定版だと思っている)、きりりとした骨格の《レッドショルダー・ランチ・シャルドネ》、力強い《リレントレス・シラー》、心ゆくまで満足できる《カベルネ・ソーヴィニヨン》、エレガントで個性豊かな《ヒルサイドセレクト・カベルネ・ソーヴィニヨン》といった卓越したワインこそが〈シェーファー〉の魅力だと思っているだろうが、〈シェーファー〉が穏やかに、かつ謙虚に、ワインの世界で偉大なる名声を築くことができたのは、おそらく、あまり知られてはいないほかの理由があるからだ。

 ジョン・シェーファーは、まさに運命によって、ナパヴァレーのスタッグスリープ・ディストリクトに導かれたと言える。一九七二年に彼がこの土地を購入したとき、ここはワイン愛好家にもほとんど知られていない場所だった。だが現在は、ナパヴァレーのなかで、驚くほど柔軟でシルクのようにエレガントなぶどうができる生産地として、すっかり有名になっている。その卓越した特性だけでも、ワイナリーを成功させるには十分だったかもしれない。しかし〈シェーファー〉は、この土地の優れた生産者たちのなかでも、ひときわ異彩を放っているのだ。

 私の判断だが、〈シェーファー〉が創業から四〇年のあいだに手にいれた栄光はすべて、いかにビジネスを進めていくかという、この家族の教養や哲学なくしてはありえなかっただろう。よいときも悪いときも、〈シェーファー・ヴィンヤーズ〉というワイナリーは、最高の品質を追求することに全力を注いでいる誠実な人たちで成りたっている。彼らは、つねに謙虚であり、つねにワイナリーのすべての利害関係者になにかよい結果を残そうという努力をおこたらない。

 なによりもまず、〈シェーファー〉のチームは、全員がお互いに愛すべき家族のような関係だ。ぶどう栽培者にも、ワインメーカーにも、管理業務スタッフにも、仲間に対する尊敬と信頼を心から感じとることができる。〈シェーファー・ヴィンヤーズ〉で働くことができたら、きっと楽しいことがたくさんあるのだろうな、そう思わずにはいられない。確固たる基盤のうえで、それぞれの人間が自分の立場をよく理解している。自分の家にいるような安心感と心地良さを感じながらも、〈シェーファー〉のチームは、お客様に対してより一層の努力をするチャンスを決して見過ごすことはない。ビジネスの取引先の人たちの生活や人生についても、つねに積極的に関心をもち、気を配っている。彼らはただワインを愛しているだけではない。ワインの向こう側にいる人々を愛しているのだ!

 本書を読みすすめると、〈シェーファー〉のワインがどのように造られていったのかがよくわかる。じつに魅惑的な話だ。つねに寛容なジョンは、ぶどうを栽培し、ワインを造っている人々からの信望も厚い。だが、謙虚な性格ゆえに、人々から信頼されることが誠実なワイナリーであることにつながるわけではないという。彼のいう誠実なワイナリーとは、人々を深く思いやり、環境に対する自己の責任を理解し、地域社会において寛容さと優しさをもって優れた主導的役割を果たすことだ。寛容さと優しさ、私が味わったすべての〈シェーファー〉のワインを表現するとしたら、このふたつの言葉にまさるものはないだろう。

 どのような職業にせよ、四〇年もの年月をあきらめずに耐えつづけるのは、根気のいるすばらしいことだ(私がいる業界などは、新しいレストランを開業しては一年もしないうちに閉店させてしまうことで悪名高い)。しかし、〈シェーファー〉のストーリーというのは、ある意味、はじまったばかりだという気もする。

 多くの人々が喜ぶような方法でなにかをうまく成し遂げるためには、先見の明と、ゆるぎない信念が必要である。しかし、ジョン・シェーファーと彼の家族、そして彼の仕事仲間にとって、これは、ビジネスをするうえで唯一の自然なやり方なのだ。だからこそ〈シェーファー・ヴィンヤーズ〉は、長い年月に耐える〈シェーファー〉のワインのように、この先もずっと持ちこたえるであろうワイナリーを造りあげたのだ。
 

ユニオン・スクエア・ホスピタリティ・グループ(USHG)最高経営責任者
ダニー・マイヤー

略歴

[著者]
ダグ・シェーファー Doug Shafer
米国カリフォルニア州ナパヴァレーにあるワイナリー〈シェーファー・ヴィンヤーズ〉の現社長。
 
アンディ・デムスキィ Andy Demsky
ナパヴァレーを拠点とするライター。また、〈シェーファー・ヴィンヤーズ〉の広報コンサルタントも務める。
 

[訳者]
野澤玲子 のざわ・れいこ
翻訳家。一般社団法人日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート。東京女子大学英米文学科卒業。訳書に『ブルゴーニュ 華麗なるグランクリュの旅 その歴史と土壌をたずねて』『テロワールとワインの造り手たち ヴィニュロンが語るワインへの愛』『ワインを極める!トリビア・クイズ600』(いずれも作品社)、『ビートルズシークレット・ヒストリー』(プロデュースセンター出版局)、『ザ・クオリーメン ジョン・レノンの記憶』(リットーミュージック)など。
 
 
 

●装丁/鈴木正道(Suzuki Design)

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