これから「お金」のいろいろなことを述べていこうとする、その最初に、「マネー」と「ダイエット」の共通点は何か、などと言うと、戸惑う方がいらっしゃるかもしれません。しかし、人生を勝ち抜いていく上でとても大切なことが両者を見ればわかるのです。
まず、ダイエットです。言うまでもなく、ダイエットとは食事制限をすることなどで体重を減少させることを指します。その場合、人間が体重を減少させていくのに必要な「原理原則」はたった一つしかありません。
「入れるエネルギーよりも、出すエネルギーを多くする」
つまり、食べたり飲んだりする量を減らすとともに、走ったり泳いだりして普段より多くのカロリーを消費すれば、出すエネルギーのほうが多くなるので体重が減るわけです。「そんなこと、いちいち言われなくても、わかっているよ」。気の短い方からお叱りをちょうだいしそうですが、それでは、誰もがわかるほど簡単な「原理原則」なのに、「ダイエットに成功した」という話をあまり聞かないのは、どうしてなのでしょうか。
ダイエットは書籍が扱う一大テーマで、これまで数限りないベストセラーが出ています。しかし、それは、それほどダイエットに成功する人が少ないということの裏返しでもあります。
確かに日常会話でも、「努力しているのに、なかなかやせられない」「体重が落ちたと思ったら、すぐリバウンドしてしまった」などと、ダイエットは難しいという話はよく聞きますが、「3カ月で10キロやせた」などという成功談を聞くことはめったにありません。
もう一度、言います。「原理原則」は簡単なのに、どうしてほとんどの人がダイエットに成功しないのでしょうか。 実は、このこととまったく同じ構造が「マネー」にもあります。
お金を貯めたい、殖やしたい―本書のテーマであり、誰もが抱く願望です。では、お金を殖やすには、どうすればいいのでしょうか。ダイエットと違ってたった1つではありませんが、それでも「原理原則」は3つしかありません。
① 収入を殖やす
② 支出を減らす
③ 今あるお金を運用して殖やす
「収入-支出=貯蓄」。誰もが理解できる、この数式を見ればわかるように、収入から支出を引いた貯蓄を殖やしていこうと思ったら、この3つを単独で行うか、あるいは組み合わせる以外に、お金が殖える方法はないことに気づきます。
こちらも少し考えれば誰でもわかるほど簡単なことです。しかし、それを実行できている人が世の中でどれぐらいいるかというと、ダイエットと同様、ほとんどいないと言っても過言ではありません。「お金が貯まらない」「月末になると、いつの間にかお金がなくなってしまっていて……」などという話はよく耳にするものの、「面白いほど、お金が貯まる」「意識していないのに、勝手にお金が殖えていく」などという話は聞いたことがありません。
人間の本質と、それを打ち破る方法
ダイエットとマネーのこの同じ構造は、何を意味しているのでしょうか。私は、実は、ここにこそ人間の本質が如実に現れているのではないかと考えています。私が立てた仮説は、次のようなものです。
「人間は、原理原則はわかっていても、その通りに実行できない動物」
もう説明しなくても、わかりますよね。ダイエットには原理原則はたった一つしかなく、マネーが殖える原理原則も3つしかないのに、実行できる人間が極端に少ないということは、人間がこのような性質を持つ動物であると考えれば、無理なく理解することができます。
そして、もし、この仮説が正しかったとしたら(私は正しいと思っています。もっとも、それを科学的に証明しろとなるとできませんが)、ダイエットを成功させ、マネーを殖やすことについて何をすればいいのかが見えてきます。そうです、原理原則がわかっていても、その通りに人間は実行できないのですから、その原理原則や、絶対に知っておくべき基礎知識を繰り返し学んで、知識が無意識のうちに頭に浮かんでくるようになったり、やるべきことを自然と実行できるようになったりすればいいのです。
要するに「習慣化」ですね。
本書は、マネーについて、まさにこのことを追求していきます。マネーについて先に述べた原理原則を基本に、最低限、知っておくべき基礎知識を紹介し、そこからマネーが貯まるようになるにはどうすればよいかを生活ベースに落とし込んで解説していきます。
「人生は計算できる」
ただし、ほかのマネー本にありがちな、日常生活でのこと細かな節約術や、投資の裏技的なテクニックについては一切述べていません。あくまでマネーの原理原則に則った、お金を殖やす考え方に絞って、その習慣化を促しています。どうしてテクニック的なノウハウを重視しないのかと言うと、人生におけるマネー戦略は10年、20年、30年……と、長期的に考えないと意味がないからです。
テクニックを学んで短期的にお金が貯まったとしても、お金の本質を理解しないままでは、すぐにお金はなくなってしまいます。どういう場面でどのようなお金が必要になり、それを貯めるにはどうしていけばいいのかを、自分の人生に当てはめて具体的に考え、それを着実に実行していくことが大切になります。
「数年先のこともわからないのに、そんな先のことなど考えられない」という方が多いかもしれません。そんな方は、どうぞ、すぐ1章を読んでみてください。そこで皆さんにお示しすることは、皆さんの、これまでの「常識」を根底から覆すことになるでしょう。数年先どころか、結婚から子育て、熟年、そして老後まで、皆さんの人生とお金の関係については、ほとんどすべてが現時点で、しかも具体的な数字で把握できてしまうからです。
「人生は計算できる」
「習慣化」と併せて、これが本書を貫くもう一つの原理原則になります。
この2つは不即不離、いえ「表」と「裏」といってもいい関係を持っています。人生におけるお金は現時点で計算できてしまうのだから、お金のことは長期的に考えなくてはならない→人間はわかってもいても実行できない動物。長期的にお金と付き合うには、お金の貯め方を「習慣化」するのが手っ取り早い。こんな連想が、たちどころに働きます。
いずれにせよ、両者が合致すれば、お金は貯まりやすくなります。そして、本書に書かれていることを実践すれば、それだけで年間100万円、お金を殖やすことができるようになるはずです。そうです。皆さんは明日から、お金について「できる人」になれるのです。