考える人とおめでたい人はどちらが幸せか 世の中をより良く生きるための哲学入門

考える人とおめでたい人はどちらが幸せか
シャルル・ペパン 著

永田千奈 著

  • 書籍:定価1870円(本体1,700円)
  • 電子書籍:定価1496円(本体1,360円)
  • 四六判・並製/280ページ
  • 978-4-484-13108-5 C0010
  • 2013.06発行

悪法も守るべきか? 美の魅力とは? 学校で何を学ぶべきか? 信仰は人を強くするか? 民主主義は最良の制度か? 幸福な人生とは? 月曜日から日曜日まで、7日間の“フランス流”白熱講義が、あなたの思考力を徹底的に鍛えてくれます。

書籍

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内容

「不幸」を乗り越え
「これから」を生き抜く力をくれる
1週間の実践的哲学入門。

ロダンの「考える人」はどうみても幸せそうではありません。
その体は不安の重圧に折れ曲がっています。
「考える人」というより、「悩む人」といったほうがいいかもしれません。
これとは対極にあるのが、いわゆる「おめでたい人(幸福な愚者)」です。
何の疑問も抱かず、手の届く範囲の人生に満足し、
ちょっとした冗談や、ビール、肘掛け椅子があれば充分に幸せそうな人。
結局、どちらが幸福な人生を送れるのでしょう?(本書冒頭より)

考えることは苦しい。周囲の「おめでたい人」「能天気な人」のほうが楽しそうだし、人生を謳歌しているように見える。「考える人」になることで幸せになれるわけでもない。
ならば、「考える」ことに、どんな意味があるのだろう?

月曜日のこの問いに始まり、
「たとえ悪法でも絶対に守るべきか?」(火曜日)
「なぜ私たちは美しいものに惹かれるのか?」(水曜日)
「どうして学校に行かなければならないのか?」(木曜日)
「神を信じるべきか?」(金曜日)
「民主制は本当に最良の政治制度か?」(土曜日)
「幸せな死はあるのか?」(日曜日)
の7つの問いに答えながら、
「考えるとはどういうことか」、本書が身をもって示します。

「訳者あとがき」より

本書は、Une semaine de philosophie: 7 questions pour entrer en philosophie, Charles Pepin, Flammarion, 2006 の全訳である。

著者シャルル・ペパンは、1973年パリ郊外のサン・クロー生まれ。パリ政治学院、HEC(高等商業学校)を卒業、哲学の教授資格をもつ。哲学に関する著作を発表するいっぽう、テレビの教養番組への出演、雑誌への寄稿も多い。なかでも出色なのは、彼が2010年からパリ5区の映画館オートフイユ(Hautefeuille MK2)で毎週月曜日に行なっている一般公開の哲学講座だろう。ペパンはつねに、「開かれた哲学」「生活のなかの哲学」を提唱してきた。いわゆる哲学者や哲学科の学生ではなく、ふつうの人と一緒に考えることが彼のめざす哲学なのだ。ペパンは高校の教師でもある。フランスの高校では「哲学」が必修科目なのだ。当然、バカロレアと呼ばれる大学入学資格試験にも、哲学の試験がある。参考までにある年の出題例をあげてみよう。

●理数系コース
「私たちには真実を求める義務があるのか」
「国家がなければ、私たちはより自由になれるか」

●社会経済系コース
「自然な欲望は存在するか」
「働くとは、たんに役に立つということか」

●文系コース
「人は働くことで何を得るか」
「すべての信仰は理性に反するか」

さて、あなたなら、こうした問いに何と答えるだろうか。こうした出題の仕方からもわかるように、哲学を学ぶとは、哲学書を「読む」ことでは終わらない。著者自身が本書で述べているように、古代哲学、現代哲学を問わず、それを今の自分にいかに結びつけるかが重要なのだ。

月曜から日曜まで、本書の問いかけは実にシンプルなものばかりである。だが、どれも即答できるものではない。シンプルなものだけに、ふと足元を掬われるような不安に襲われる問いもある。一般論で片づけようとしても、納得がいかない。さらに、自分のこれまでの経験を思い返してみると、必ずしも一筋縄ではいかないことに思い当たる。自分の考えと行動に矛盾を発見することもあるだろう。考えることは、疑うことである。疑いはじめると、不安がわいてくる。それでも、逃げてはいけない、と著者は呼びかける。人間らしく生きるために、より深く、より良く生きるために考えてみよう、というのだ。

今からでも遅くない。高校生も、もう学生ではない私たちも、考えることはできる。そして、考えてしまったら、もう考えるだけでは終わらない。思考は行動に結びついているからだ。たとえば、環境について考える。考えてしまったその日から、今までのように物を買ったり、捨てたりすることができなくなる。だからこそ、考えることはつらい、面倒くさい。そして、有意義で豊かなことなのだ。

現実を前にして、本当にそれでいいのだろうか、と立ち止まって考えてみる。そして、行動に結びつけてみる。思考から行動へ、フランス流から学ぶべき点は大いにありそうである。

略歴

[著者]
シャルル・ペパン Charles Pépin
1973年、パリ郊外のサン・クロー生まれ。パリ政治学院(シアンスポ)、高等商業学校(HEC)卒業。哲学の教授資格をもつ。高校で哲学を教える一方、著述活動も行う。また、雑誌に連載コラムをもち、テレビの教養番組に出演、さらにパリの映画館で一般公開の哲学講座を行うなど多方面で活躍中。著書の多くはベストセラーとなっているが、邦訳は本書が初めてとなる。

[訳者]
永田千奈(ながた・ちな)
1967年東京生まれ。翻訳家。役所に、ルソー『孤独な散歩者の夢想』(光文社)、モレリ『戦争 プロパガンダ10の法則』(草思社)、ルリエーヴル『サガン――疾走する生』(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

●ブックデザイン/萩原弦一郎、玉造能之(デジカル)
●編集協力/片桐克博(編集室カナール)

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