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世界”笑いのツボ”探し
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世界”笑いのツボ”探し

世界”笑いのツボ”探し

大学教授とジャーナリストが笑いのグローバルスタンダードを求めて、NY、日本、パレスチナ、北欧、アフリカなど世界へ旅に出た! 「笑いは本当に『百薬の長』なのか?」「日本の笑いは外国人にも通用するか」など“笑い”を巡る疑問を解き明かす。

  • 書籍:定価2420円(本体2,200円)
  • 電子書籍:定価1936円(本体1,760円)
  • 2015.04.16発行
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内容

笑いにグローバルスタンダードはあるのか!?
壮大なテーマを大学教授とジャーナリストが追いかける!

「コマネチは世界通用するのか?」
「女性と男性、ユーモアセンスがいいのはどっち?」
「笑いは本当に『百薬の長』なのか?」
「日本の笑いは外国人にも理解できるか」

あらゆる角度、あらゆる場所でユーモアを掘り起こす、傑作ノンフィクション誕生!

この本は僕の海馬をおおいに刺激した。
――A・J・ジェイコブズ『聖書男』著者
 
二人は「何が人を笑わせるのか」をみごとに説明してくれた。
科学と、物語と、風刺と、ニットベストの完璧な合わせ技で。
――アダム・グラント『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』著者

笑いの仕組みを追い求めるすばらしい旅の物語だ。
――スーザン・ケイン『内向型人間の時代』著者

インディ・ジョーンズ的でもあり、ティナ・フェイ的でもあり、ときに『CSI:科学捜査班』をも思わせる。
――チップ・ハース『アイデアのちから』著者

 

はじめに

何がものごとを「おもしろく」するのか? 古来、僕ら二人よりはるかに賢く有名な人々がこの謎に挑んできた。プラトンとアリストテレスは西洋哲学の基礎を築きあげる一方で喜劇の意味を考え、トマス・ホッブズはかの名著『リヴァイアサン』で数ページを割いてこの点を考察した。チャールズ・ダーウィンはチンパンジーがくすぐられたときにあげる楽しげな鳴き声に笑いの起源を見いだし、ジークムント・フロイトはジョークの裏にある動機を「無意識」の奥底に求めた。
 
今まで誰一人として、この謎を解いた者はいなかった。だが少々訳あって、僕らは自分たちなら、この前人未到の謎に迫れるのではないかと考えている。

いったい僕ら二人は何者なのか? ノーベル賞に輝いた科学者と、エミー賞受賞のコメディ作家? いや、ちょっと違う。

まずは、僕の共同執筆者である相方の紹介からはじめよう。ピーター・マグロウ。いわば今回の作戦のブレーンだ。冒険心あふれる研究者で、この奇妙な旅の提案者でもある。マーケティングと心理学の教授としてコロラド大学ボルダー校で教鞭をとる彼は、馬鹿げた事柄に理屈をつけ、混沌から秩序を導き出すのが大好きなタイプだ。大学のオフィスも、一分の隙もなく整理整頓されている。大量の雑誌記事や学術論文(そのテーマは「銃器展示即売会に見る経済学」から「巨大教会のマーケティング」まで多岐にわたる)は柱のごとく几帳面に積み上げられ、付箋で規律正しくラべリングされている。この世の不思議を解き明かすため、なんと船で世界一周の旅までしてしまった。しかも二回もだ。授業のしかたにも、同じく細かに気を使う。できるだけエネルギッシュで魅力ある講義ができるように、最近では「さあ、楽しいパーティーの始まりだ」と自分に言い聞かせて講義に臨むのだそうだ。「マグロウ教授」ではなく「ピート」とあだ名で親しまれるような教授になるには、堅苦しさやまわりくどさは厳禁だ。
 
そんな彼にとって、「何がおもしろさを生み出すのか」という問いに明確な答えが見つからないというのは到底耐えられないことだった。何か立派な、理路整然とした説明を見つけなくては――。

一方、コンビの片割れである僕、ジョエル・ワーナーは、相方よりは多少慎重派だ。ジャーナリストとして働きながらも、僕は常にどこかしっくりこない自分を抱えてきた。同僚記者たちが警官の不正や市議会の汚職ネタを追いかけるなか、僕はヒーローの扮装で人助けをする「リアルライフ・スーパーヒーローズ」の話題や、ビールを運んでくれるロボットのニュースに心惹かれるのだ。明るくて笑えるニュースを好む僕にとって、喜劇より悲劇を重んじるこの業界は、どこか居心地の悪い場所だった。だからもし、ピートと組んで人生の明るい面にまつわる謎を解くことができたら│自分のこの違和感も少しは解消するのではないかと思ったのだ。

さて、こんな平凡な僕らが、歴史上の偉人たちにも解読できなかった「笑いの暗号」を解こうなんて、どだい無理な話に思えるかもしれない。だが、こちらにもいくつか有利な点はある。まず、時代だ。喜劇は文明の夜明け以来この世に存在してきたが、現代ほどそれが広く普及し、アクセスしやすくなった時代もないだろう。アメリカではウィル・フェレルやティナ・フェイといったコメディアンが超有名セレブとしてもてはやされ、『ザ・デイリー・ショー』や『コルベア・リポート』などの風刺ニュースショーはあらゆる世代の情報源だ。テレビCMのざっと四分の一はコミカル路線のもので、インターネットはいまや二四時間営業の「笑いの総合ショップ」と化した。どこに目を向けても、誰かがジョークを飛ばしている――つまり、ジョークの研究はいまだかつてないほどやりやすくなったというわけだ。
 
しかも、僕らには科学とテクノロジーという強い味方がいる(これは何もGoogle検索だけの話ではない)。科学者たちは日々進化するテクノロジーを武器に、パズルのピースをつなぎ合わせながら人間の複雑なありように迫っている。心理学者は人間の無意識に潜む動機を探り、生物学者はヒトの進化の起源へとさかのぼり、コンピューター科学者は新たな形の人工知能を開発し――こういった諸々の研究が、この宇宙の大いなる謎だけでなく、「なぜ人はオナラで笑うのか」をも解き明かす手助けをしてくれるのだ。

僕らの計画は、シンプルに言えばこうだ。科学とコメディという、今までは必ずしも相容れなかった二つの世界をミックスさせる。つまり、最先端の研究技術を駆使して笑いという広大な世界に切り込む一方で、誰にも身近なギャグや皮肉やオチを研究室に持ち込み、徹底的に分析しようというわけだ。

~~~つづく

もくじ

はじめに

1:コロラド  前フリ
 

2:ロサンゼルス  「おもしろい人」の秘密
 
3:ニューヨーク  笑いのつくりかた
 
4:タンザニア  人はなぜ笑うのか
 
5:日本  コメディとロスト・イン・トランスレーション
 
6:スカンジナビア  ユーモアの暗黒面
 
7:パレスチナ  この世で最も悲惨な地に、ユーモアはあるか?
 
8:アマゾン  笑いは百薬の長?
 
9:モントリオール  最後のオチ

謝辞
訳者あとがき
脚注

略歴

ピーター・マグロウ Peter McGraw
コロラド大学ボルダー校准教授。同大学のHuRL(ユーモア研究所)所長。人間の感情と行動経済学が交わる分野を専門とし、この分野を牽引する研究者。その研究内容はウォール・ストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズ、『サイエンティフィック・アメリカン』、BBC など著名なメディアで取り上げられている。コロラド州ボルダー在住。
Webサイト:petermcgraw.org Twitter:@PeterMcGraw
 
ジョエル・ワーナー Joel Warner
ジャーナリスト。手がけた記事は数々の賞を受賞している。デンバーの教養紙『ウェストワード』の記者を経て、現在は『ワイアード』、『ブルームバーグ・ビジネスウィーク』、ボストン・グローブなど、さまざまなメディアに寄稿している。コロラド州デンバー在住。
Webサイト:joelwarner.com Twitter:@joelmwarner

柴田さとみ
翻訳家。東京外国語大学外国語学部欧米第一課程卒業。ドイツ語と英語の翻訳を手がける。主な訳書に『母さん もう一度会えるまで』(毎日新聞社)、『ソフィー 9つのウィッグを持つ女の子』(草思社)、『すべては心理学で解決できる』(サンマーク出版)などがある。
翻訳協力/(株)リベル
校正/円水社
装丁/ TYPEFACE