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AI時代に輝く子ども STEM教育を実践してわかったこと

AI時代に輝く子ども
中村一彰 著
  • 書籍:¥1500(税別)
  • 電子書籍:¥1200(税別)
  • 四六判・並製/240ページ
  • ISBN978-4-484-18234-6 C0037
  • 2018.12発行
公立小学校のプログラミング教育実績№1!
ものづくり型STEM教育スクール「ステモン」主宰者が、子どもたちの「本当の賢さ」を引き出す「教育のこれから」を語る。

書籍

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内容

欧米で重視されているSTEM教育、すなわち

Science(科学)
Technology(先端技術)
Engineering(工学技術)
Mathematics(数学)

これらをONするという意味の
STEMON(ステモン)」というスクールを展開している著者による、
これからの時代の教育論。



気づけば5年で1000人以上の幼児、
小学生とかかわってきました。
そのなかで、どんな育児や教育による学びが
子どもたちの能力を輝かせるのかも見えてきました。

AI社会の到来は恐れるに足りません。
学校でしっかり学力を身につけ、
それ以外のところで自分の好きなこと、
得意なことをとことん追求していけば、
自然とAI社会に必要な能力は身につきます。

そうした能力を磨いていくためのちょっとしたコツを、
本書でみなさんとシェアできればと思います。(著者)







はじめに

はじめに 子どもの未来を決めるのは、“AI時代を生き抜く力”

 AI時代がやってきたら、こんな世の中になる――。
 最近はそうした話題をよく耳にします。どんなものにも一長一短あるものですが、新しい技術が台頭するとき、「こんなに便利な世の中になる」というプラスイメージの話題がまず広まります。そのあとで、「いやいや、いいことばかりではないんですよ、こんな困ったことも起こりうるのですよ」という話題が出てくるものです。
 いつの時代でもそうでした。テレビが出てきてしばらくすると、「一億総白痴化のメディアである」と喝破した著名な評論家がいたそうです。インターネットが登場してしばらくすると、やはり同じような議論が起こりました。それがいまではAIに起こっています。
 AIとは、artificial intelligenceの略で、「人工知能」と訳されています。AIの台頭も例によってプラスイメージを想起させるものより、仕事がなくなるなどの不安をあおるような話題が多くなってきています。そのもっとも衝撃的なものが「AIに仕事が奪われる」といったものでしょう。
 そのため、「AIに奪われないような仕事ができるようにならなければならない」という考えも出てきますし、子育て世代の親たちは、「AI時代に活躍できる子に育てなければ」と焦りを感じているかもしれません。
 小学校では2020年度から新しい学習指導要領に沿った学習が始まります。今後のグローバル社会化、AI社会化を見据えた改革になる見通しです。
 いま教育はこうした過渡期であるがゆえに、私たちも不安になりがちですが、そう心配する必要はありません。時代の流れにはあらがえませんし、子どもたちの力を信じて、彼らがイキイキと生きていけるような環境や仕組みを整えていけばいいのです。
 AI社会で輝く子とは、常識にとらわれずに、仲間とコンピュータでコラボレーションできる子です。学力はもちろん大切ですが、これからの時代に輝くために子どもたちに身につけてほしい能力について、本書ではお話ししていきます。

 AI時代に高めるべき能力とは何でしょうか。
 まずは「広くて深い思考ができること」であると、私は考えています。
 2012年に起業したヴィリングという会社で、私は小学生を対象に「STEMON(ステモン)」という日本初のSTEM(ステム)教育スクールを2014年から開校しています。
 STEMとは、「Science(科学)」「Technology(先端技術)」「Engineering(工学技術)」「Mathematics(数学)」それぞれの頭文字をとった言葉で、科学・技術・工学・数学の教育分野を総称しています。STEM教育はこの4つの学問の教育に力を注ぎ、IT社会やグローバル社会に適応した国際競争力を持った人材を育てようという21世紀型の教育システムです。
 ただ、単に「科学技術」や「IT技術」に優れた人を育てるというだけでなく、その根底には自発性、創造性、問題解決力といった諸々の能力を高めていくという意図があります。
 さて、このステモンで子どもたちに教える講師を募集すると、東大、東工大、慶應大、早稲田大といった大学の、理工系の優秀な学生が応募してくれます。
 彼らに面接で、「周りに絶対にこの人にはかなわないなというほど頭の良い友人はいる?」「その人とは何が違うの?」と聞いてみると、おもしろいことに、みな異口同音に「思考の広さ深さが格段に違う」と言います。それは具体的にどういうことかと聞いても、「とにかく思考の広さ深さが圧倒的に違うとしか言いようがない」と答えるのです。
 ステモンでは、「物理などの原理」や「ものの仕組み」を学んで制作物をつくることで、知識をリアルに感じて学んでもらうことを目指しています。知識として習うものの仕組みは、実は技術や工夫となってさまざまな生活の場面で活用されていることを理解し、それが私たちの社会を豊かにし、さらにはみんなの幸せにも寄与していることに気づくーーこれこそが“学ぶ”意義だと言えるでしょう。
 そこに気づくことができれば、子どもは自らどんどん学びたくなります。
 一方で、勉強が嫌いになる子は、学んだことを理解しているかどうかあとで試されることを意識しています。そして試された結果、点数化され、比較されることをイメージします。結果が悪ければ叱責されることもわかっているので、「学ぶ=苦しい」と思ってしまうのです。
 学びとは、「新しいことを発見する喜びと、世の中を便利にしたり安全にしたりするために活用するもの」であると捉えるのか、それとも「知識を覚えて後で試され、評価され、比較されるもの」と捉えるのか。
 ステモンでは、本来の学びとは前者であると定義しています。“学び”に対するこの両者の捉え方の違いは非常に大きいのです。とくに10歳までにどう捉えるかが大事だと考えています。
 この価値観に慣れた子どもは、考えることを楽しみ、「わかった!」という発見をする喜びを感じながらぐんぐん伸びていきます。そして「広くて深い思考」ができるようになっていくのです。これが、「本当の賢さ」につながっていきます。学力だけでなく「本当の賢さ」を持った子は、AI社会でも活躍することができるでしょう。
 私は大学の教育学部で学んでいながら教師にはならず、大手の民間企業に就職しました。その後、創業間もないベンチャー企業に転職し、上場するまでのあいだ、新規事業と人事部を任されました。その経験のなかで、大手企業ではどのような能力が求められるのか、ベンチャー企業で必要とされる能力は何かを知りました。
 起業してからは、ステモンのほかにも探究型学習スクール「BOKEN(ぼうけん)」、次世代型の民間学童保育「スイッチスクール」を主宰し、学校や塾、そして家庭とも違う環境での子どもたちの姿を見てきました。最近では東京と大阪の教育委員会からの委託を受け、2020年度から始まるプログラミング教育の推進事業者として、公立小学校のプログラミングの授業で実際に教鞭をとったりもしています。
 気づけば、5年で1000人以上の幼児・小学生とかかわってきたことになります。そのなかで、どんな育児や教育による学びが子どもたちの能力を輝かせるのかも、見えてきたのです。
 本書では、これからの時代に必要な本当の賢さを身につけるための手段として「STEM教育」を念頭に置きながら、私が経験から培ってきた教育観をお話ししていきます。本当の賢さとは何か。それを再定義し、これまでの概念を変えていくための一助になればと思っています。そして、それが少しでも、育児や学校選びに悩むみなさんのお役に立てば嬉しい限りです。
 AI社会の到来は恐れるに足りません。AIは敵ではなく、頼りになる部下になるのです。学校でしっかり学力を身につけ、それ以外のところで自分の好きなこと、得意なことをとことん探究していけば、AI社会に必要な能力は身につきます。そうした能力を磨いていくためのちょっとしたコツを、本書でみなさんとシェアできればと思います。



目次

はじめに 子どもの未来を決めるのは、“AI時代を生き抜く力”

第1章 子どもたちの能力は「STEM教育」で変わる
 子どもたちの「自由」を取り戻す
 「正解」を求めてしまう子どもたち
 算数が苦手になる子の意外な理由
 学校には〝正解〞が用意されている
 AI社会は“いい子”ほど生きにくい
 子どものうちにやっておきたいトレーニング
 親子ですぐにできるSTEM教育
 「ステモン」で輝き始める子どもたち

第2章 将来活躍できる子になるために、育てておきたい“能力”
 
AI社会は恐くない――コンピュータを相棒にしよう
 AIの苦手分野こそが強みになる
 思考力を鍛えるために大切な2つの力 
 本当の「賢さ」って何だろう?――必要なのは6つの「C」
 「学ぶ」は自分を変える、「つくる」は社会を変える
 「ゼロからイチをつくる」の意味
 「人と違う」のは悪くない――まず育てたい“自己肯定感”
 上場企業とベンチャー企業で感じた「必要とされる能力」
 学力と仕事のパフォーマンスは比例しない
 「初動力」がある子は、結果を出せる
 感性と直観がさらに子どもを伸ばす
 縦ではなく、横に広げて育もう
 子どもの力を引き出すために、親にできること
 親は子どもの一ファンになろう
 STEMで「イキイキと生き続ける」ことができる子に

第3章 「STEM」を「ON」にすると能力が開花する!
 
これからの社会に必要なSTEMとは何か
 日本各地を巡ってやっと見つけた、ステモンの出発点
 「理想的な教育」と「現実に選ばざるを得ない教育」
 STEM教育が有効である4つの理由
 「つくることで学ぶ」が子どもに良い理由
 身につくのは、時代にフィットした能力――「創造力」「表現力」「活用力」を育む
 日常のすべてで「思考力トレーニング」ができる子に
 誤解されがちなプログラミング教育――育てたいのはプログラマーじゃない
 思考力を鍛えるには「体験」も大事
 学びのキーワードは“フロー状態”――幸福感と喜びが学習の原動力に
 学び合いで子どもは育つ
 大切にしたいのは、ゆるやかな集団で学ぶこと
 なぜSTEM教育は受験にも強いのか?
 新大学入試で求められる力とは
 20年後はみんなが小さな起業家になる

第4章 学校教育でできること、できないこと
    ――変わる社会と、変われない学校のジレンマ

 自分の「これだ!」を探す試み――スイッチスクールの事例 その1
 自分で決めて自由に過ごす――スイッチスクールの事例 その2
 これからの学びのキーワード「探究」
 「新学習指導要領」はこれまでとココが違う
 “プログラミング教育必修化”よりもっと革新的な3つの改訂
 学習指導要領が踏み込む「教師たちの聖域」
 閉ざされた学校から、開かれた公教育へ
 プログラミング教育の現状とこれから
 変わりたくても変われない!? ――学校教育が変われない4つの理由
 それでも公教育が大切なのにはワケがある
 30人学級でもできたアウトプットのトレーニング
 子どもが自ら学びたくなる理由は仲間
 変わりつつある教師の役割――「教師1・0」から「教師2・0」へ
 これからの時代に求められる「教師3・0」――「個性化・個別化」へ
 先生の役割をアップデートするとき
 民間教育だからこそ、できること

第5章 STEMと探究型学習から見えてきた「幸せ」に向かう教育
 
「働く能力」と「人としての豊かさ」は矛盾しない
 コラボレーション好きな子を育てよう
 「かもめのジョナサン」で生きる
 大切なのは、子どもがイキイキとできるコミュニティ
 人と人とのあいだで子どもは成長する
 からだで安心安全を感じてこそ、子どもは伸びる
 国際バカロレアの理念を参考とした学び
 AI社会で輝く子
 日本の教育は次のステージへ

あとがき



略歴

中村一彰(なかむら かずあき)
STEM教育スクール「ステモン」主宰、株式会社ヴィリング代表取締役。
1978年5月23日生まれ。埼玉県出身。埼玉大学教育学部卒。小学校教員免許、中学・高等学校教員免許取得。教師を志していたが、学生時代の教育実習で小・中学校の画一的な集団形成教育に違和感を抱き、民間企業に就職。営業職に4年半従事したのち、医療・介護向け人材ベンチャーの株式会社エス・エム・エスに転職。同社の創業期からマザーズ上場、東証一部市場変更までの成長過程において、看護師人材事業を立ち上げ、新規事業開発、人事のマネジャーを歴任した。同社での従業員採用と育成を通じて児童期の教育に改めて関心を持ち、2012年10月に教育事業を行う株式会社ニコフカを創業、代表取締役に就任。2014年に株式会社ヴィリングに社名を変更。現在、ものづくり型のSTEM教育スクール「ステモン」のほか、探究型学習スクール「BOKEN」、民間学童保育「スイッチスクール」などを主宰している。公立小学校のプログラミング教育実績ナンバー1。2017年度には小金井市立前原小学校に理科講師として勤務した。自身、2児の父親でもある。






●文・構成/岸川貴文
●編集協力/山本貴緒
●校正/新井弘子
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