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日記を書くと血圧が下がる 体と心が健康になる「感情日記」のつけ方

日記を書くと血圧が下がる
最上 悠 著
  • 書籍:¥1500(税別)
  • 四六判・並製/256ページ
  • ISBN978-4-484-18218-6 C0077
  • 5.30発売予定
高血圧、腰痛などの慢性痛、関節リウマチ、ぜん息、ヘルペス、不眠症、うつ、がんの痛みといった医療面から、学業成績や男女関係といった生活面まで、「1日15分、たった3回」書くだけで効果があることが科学的に検証された「感情日記」の方法を紹介。

書籍

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内容

1日15分、たった3回、自分の感情と向き合えば、
体調不良が改善し、幸福感が高まります。


●血圧が下がった
●腰痛が和らいだ
●ぜん息が改善した
●関節リウマチが改善した
●ヘルペスウイルスが不活性化した
●B型肝炎ワクチンの働きが高まった
●HIVウイルスの量が減った
●慢性の頭痛や腹痛が改善した
●慢性骨盤痛症候群の痛みが緩和した
●線維筋痛症やがんの痛みが和らいだ

●通院回数が減った
●不眠症が改善した
●集中力が高まった
●介護うつ、産後うつを防げた

●失業後、早期に再就職できた
●欠勤が減った
●夫婦間のコミュニケーションがよくなった

欧米医学界の最前線から、
上記のような結果が見られたさまざまな研究を紹介!

併せて効果的な「感情日記」の書き方についてご説明します。

はじめに

はじめに――ロンドンで出会った日記研究

 数年前、私は英国に留学し、ロンドン大学で客員研究員として働いていました。ある日のことです。心と体の結びつきに関する心理医学研究の世界的権威であるジョン・ワインマン教授の研究室内でのカンファレンスで教授のプレゼンテーションを聴き、その内容に非常に驚かされました。
 それは、「外科手術を受ける患者が、術前に1日15分の“ライティング”を3日間行ったところ、術後の傷口の回復スピードが変わった」という教授らの研究成果の紹介だったのです。
  
 “ライティング(writing)”とは「文章を書くこと」をいい、参加者には「過去に起こった出来事と、そのときに感じたストレスやつらい思いについて書く」という課題が与えられました。いわば時間を遡って心の日記を書くような作業です。そして、この研究で、ライティングをした人の傷の治りは、しなかった人に比べ、手術の約1週間後から明らかにスピードアップしたというデータ*が示されていたのです。
  
「ほんとうにそんなことが……?」、私は思わず自分の目と耳を疑いました。今は精神科医である私も、若い時代には大学病院や市中の総合病院で救急外来や外科をローテーションした経験がありますが、たかが文章を書いただけで傷の治りに差が出るなどという話はもちろん聞いたこともありません。
 しかしながら、こんな荒唐無稽なことが、世界の最先端をいくロンドン大学で大真面目に研究されていたのです。それどころか、学内の研究者の間では、「乳がんや重度の腎臓病で苦しむ患者らにライティングを奨励し、病状の悪化を防ぐ」という研究計画まで進められており、その案がカンファレンスの場でも真剣に議論されていたのでした。が、そんなアカデミックな場でのやりとりを目にしてもなお、過去の出来事や感情をちょっと記述したぐらいで病気の予後を改善することができるとは、私にはにわかには信じられませんでした。
  
 ただし、この話題は精神科医としてたいへん興味をそそられるものでもありました。頭痛・不眠・胃腸の不調など自律神経失調による不定愁訴の症状の場合、感情について文章に書いてみることが、メンタル面になんらかの影響を与え、健康づくりに結びつくと考えられなくもなかったからです。
 とはいっても、「明らかな体の病気の場合、そんな日記のようなものでどこまで改善するのだろうか……」という疑問はなかなか消えるものではありません。
 そこで、医学專門のデータベースで検索してみたところ、予想もしなかったほどのおびただしい数の文献が見つかったのです。
 欧米を中心に諸外国ではすでに膨大な数のライティング研究が行われており、その中にはメタ解析という現代医学ではもっとも信頼性が高いといわれる研究手法で行われたものも複数含まれていました。しかも、その研究の歴史は長く、たとえば、この分野の草分けといわれる米・テキサス大学のペネベーカー博士は、1980年代の半ばにライティングと健康の関わりに着目し、以来、30年以上にわたって、「感情について書くことが心身にもたらす影響」、「より効果的なライティングの仕方」、「書いた文章の活用法」など多岐にわたる研究を続けていました。その研究には、これまでに何千人もの人が参加したという実績すらあったのです。
  
 ペネベーカー博士の著書でまず目を惹くのが、「1日15〜20分、3〜4日連続でライティングを行うことで、心と体の健康に変化が生まれる」という冒頭の話です。それを読み、思わず私はこうつぶやきました。
「たかが三日坊主の日記で、健康になれるというのか……!」
  
 それからまもなく、英国の総合診療医学雑誌『Journal of General Practice』で、私はふたたびライティングの話題に遭遇することとなりました。
 総合診療医(General Practitioner)とは、ひとことでいえば町のかかりつけ医のことです。最近はNHKで『総合診療医ドクターG』というバラエティ番組が放送されたので、ご存じの方も多いかもしれません。この“G”がまさにGeneralの頭文字なのですが、その特徴は内科・外科などの専門分野だけでなく、精神科も含めた幅広い分野の診療を行うことのできるゼネラリストであることで、イギリスの公的医療制度では、だれもがまず自分のかかりつけの総合診療医の診察を受けるのが原則となっています。
 そのため、日本以上にかかりつけ医の存在感は大きく、眼科・耳鼻科といった専門医のいる総合病院や大学病院も、かかりつけの総合診療医の紹介があってはじめて受診することができます。英国のこの総合診療医システムは世界的にも先進的な医療制度といわれており、諸外国では医療制度作りの目標とされています。
  
 その権威ある英国総合診療医の学会誌の2012年12月号に、「より効率的で、気軽にできる健康法」としてライティングが紹介されていたのです。
 トビラページには効果が期待される病気・症状も紹介されており、過敏性腸症候群、高血圧、ぜん息、関節リウマチの痛みや歩行障害、大腸がん・乳がん・前立腺がんなどが列挙されていました。大腸がん・乳がんに関しては、症状の改善と併せて医療機関の利用頻度が減少すること、ぜん息については発作時に用いるβ刺激薬の使用量が減少することも書かれていました。
 さらに精神医療の分野でも、うつ病や神経症(不安症)、さらに治療が簡単ではないといわれるPTSD(心的外傷後ストレス障害)に効果が認められているということが記載されていたのです。
  
 日本と同じように、英国では近年、医療費の増大が社会問題となっており、いかに病気を予防するか、いかに病気にかかったときの通院日数を減らすかといったことが重要な課題となっています。
 それもあって、「ライティングで病気を改善」というアプローチが注目を浴びたのだと思いますが、いずれにしても、英国総合診療医学会の学会誌で取り上げられたという事実は、ライティング研究がそこまで医学界で真剣に取り扱われているということを示唆するものでもありました。
  
 その後、日本に帰国した私は、このライティング療法を臨床で試す機会を得ました。大動脈解離を起こした50代の男性に感情日記を書いてもらったのです。
 心臓につながる大動脈は体の中でももっとも太い血管で、この血管が破れる大動脈解離は命に関わる大病です。男性は手術によって一命をとりとめましたが、とにかく二度と血管が破れないようにするには、高い状態にあった血圧をしっかりと下げることが不可欠でした。
 しかし、どれだけクスリを調整しても、上(収縮期)の血圧は170超(㎜
Hg)という危険な範囲を脱しません。そこで、この男性にライティングをすすめたのですが、その結果、クスリを調整してもなかなか下がらなかった血圧が、約3週間後には100(㎜Hg)台前半まで下がったのです。
 男性が日記を書いたのは1日15分程度でした。ご本人の承諾を得て中身を見せてもらったところ、そこには家庭や職場でのつらい出来事や苦悩が繰り返し書かれていました。
 感情日記を書いていた3週間は降圧薬の変更もなければ、精神科のクスリも使わず、他のセラピーも行っていません。その中で得られたこの血圧の劇的な変化は驚くべきことであり、どこかまゆつば感を捨て切れなかった私もようやく「ライティングの効果は本物だ」と確信するに至ったのです。その後も、ライティングはクスリや運動で血圧のコントロールができない方々に試していますが、書くことでなんらかの効果が得られている人は少なくないのです。
  
 このころから私はライティングのことを〝感情日記〞と呼ぶようになっていました。
 オリジナルは“expressive writing"や“emotional disclosure"といい、日本語では“感情筆記”または“筆記開示”といった訳され方をすることが多いようです。しかし、個人的には、日本語としてちょっと不自然で耳慣れない言葉に感じます。それよりも、ストレスとなっている出来事や、過去、心に傷を負った出来事について、日記を書くような感覚で記述していく、そして、書きながら、感情的になったり、本音を出したりしていくことができる……、この作業には、感情日記という言い方のほうがしっくりすると思ったのです。
 筆記や開示といったかしこまった表現だと敷居が高く感じがちですが、感情日記ならだれにでもイメージしやすく、気軽に始められそうな印象があり、モチベーション・アップにも役立ちそうだと臨床的に感じられました。
 臨床で自分のことを書いた患者さんたちからも、感情日記と表現したほうが、日記感覚で気軽に始めやすいとの感想が多く寄せられました。そして、実際にペンを動かしはじめると、感情が大きく動き、途中から涙を流したり、震えたり、怒りに顔をしかめたりされる方もおられたようです。そこで、本書でも呼び名は、感情日記、日記研究、日記療法としていきたいと思います。
  
 さて、前述の通り、欧米を中心とした諸外国では多数の日記研究が行われており、さまざまな疾患・症状との関連が報告されています。中には書くことで医師や弁護士の資格試験の成績が良くなる、数学の能力が上がる、仕事の欠勤率が下がったり、再就職率が高まったりする、パートナーとの関係性が改善するなどといったユニークな研究もあり、その裾野の広さにも驚かされます。
 感情日記が病気や健康の改善に働くメカニズムには、いくつもの学説が唱えられています。いかがわしい健康法と紙一重であるこういった医科学的な介入の効果の有無は、公平かつ客観的な科学的評価法に基づき、検証されなければなりません。その中でもっとも厳密な検証法は、RCT(ランダム化比較試験)と呼ばれるもので、被験者の人々をくじ引きでグループに分けて、効果を統計的に比較するというものです。
 RCTの発祥は英国で、「ミルクティー(英国ではホワイトティーと呼ぶ)を淹れるときは、紅茶を先に入れるか、ミルクを先に入れるかで、おいしさが変わる」という、いかにも英国らしいテーマを検証する際に導入されたのがはじまりだと言われています。
 日記研究においては、このRCTが多岐にわたって用いられており、有意な効果を示しているものも多数認められています。有意とは、「偶然の結果とはきわめて考えにくい」という統計学の専門用語であり、言い換えれば、感情日記のもつ健康づくりの効果や病気の治療効果は、医科学的に信頼性の高い水準にあることが示されているわけです。
 また、それら複数のRCTを集めることで、より信頼性を高めたものをメタ解析と呼ぶのですが、それによれば、「感情日記には、がんの痛みさえも緩和する効果がある」という驚くべき結果さえ、信頼すべき統計数値とともに示されています。本書では基本的にRCTもしくはRCTをまとめたメタ解析の研究結果に裏付けされた信頼性の高い研究をご紹介していきます。
  
 はじめに明記しておきますが、日記療法の多くは現代医療を否定するものでもなければ、既存の医療の代替でもありません。感情日記を書くことからは数々の恩恵が多くの人に期待できますが、万人に効果があるわけでもありません。さらに、いま現在、なんらかの病気・症状が発症しているのであれば、第一に信頼できる医科学的治療を受けることが原則です。
 ただ、慢性疾患を中心に、既存の医療が完全ではないのも否めないことで、そのために多くの人々が苦しんでおられるという現実もあります。
 そんなとき、たった3日間の日記がほんとうに心身に好影響をもたらすのであれば、クスリだけに頼らない、だれにでもできるプラスアルファの健康法として、日常生活に取り込んでいくことには意義があると思います。お金がかからず深刻な副作用も報告されていない健康法ですから、とにかく一度、試してみる価値はあるのではないでしょうか。
  
「苦しい体験をしたのは事実だが、そんな昔のことにいつまでもこだわってもしょうがない」。そんなふうに、頭では思っていたとしても、「胸につかえた感情のしこりが消えず、いまも引っかかったままでいる」、「理屈ではわかっていても、どうしても気持ちがすっきりしないため、いつまでも腑に落ちない」……。感情日記は、そんな悶々とした苦しみを抱えている人にはとくにぴったりの方法であり、高い効果が期待されると考えられています。
 本書では欧米の多彩な研究を解説するとともに、健康づくりに役立つ感情日記の書き方を披露していきます。できるだけ簡単で、続けやすい方法を中心にご紹介していきますので、みなさんもぜひ挑戦してみてください。
 なお、書き方の章にも明記していますが、心身になにかしらの疾患を有する人は、感情日記のメリットとデメリットを主治医と十分に相談のうえでその指示に従い実践するようにしてください。

2018年4月
精神科医・医学博士 最上 悠

目次

はじめに――ロンドンで出会った日記研究

第1章 三日坊主の日記で血圧が下がった

感情日記をつければ血圧が下がる
日記をつければ手術後の回復が早い
日記をつければ腰痛が和らぐ
 
第2章 病気悪化の背景に“感情”があった

心と体は密接につながっている
精神的ストレスが“生きるための脳”の調子を狂わせる
ネガティブな感情がふくらんだときは要注意
“感じきる”ことで感情は浄化される
なぜ、書くと感情が癒されるのか
 ――“感情日記”のメカニズムを説明する5つの理論
 日記の作用① 一次感情の発散(カタルシス効果)
 日記の作用② 感情馴化の観点による仮説
 日記の作用③ 歪んだ二次思考の修正という仮説
 日記の作用④ 感情に振り回されやすい状況の改善
 日記の作用⑤ 脳のワーキングメモリーの強化
三日坊主でも、しばらくは残存する日記の効果
感情表現の苦手な人にはより大きな効果が
 
第3章 [実践編]感情日記を書いてみよう

より効果が期待できる感情日記の書き方
 ・書き始める前に
 ・なにを書くか
 ・どのくらいの時間を費やすべきか
 ・いつ、どこで、書くとよいか
 ・スムーズにスタートするには
 ・書いた日記はどうするか
四人のケース
 記述例1 難病で通院中のKさんの日記(男性/50代)
 記述例2 不倫相手との別れに苦しむYさんの日記(女性/40代)
 記述例3 大動脈解離を治療中のTさんの日記(男性/60代)
 記述例4 拒食症で通院中のFさんの日記(女性/30代)
 
第4章 感情日記が健康づくりに働くメカニズム

1 自律神経
 感情の高ぶりと自律神経について
  ・成人型ぜん息
2 免疫系
 ストレスと免疫反応の深い関係
  ・関節リウマチ
  ・ヘルペスウイルス
  ・B型肝炎とワクチン
  ・HIVウイルスとエイズ
3 慢性の痛み
 痛みの種類はさまざま
 痛みの“心理・社会的要因”について
 痛みが慢性化する仕組み
 慢性疼痛にクスリは効かない!?
  ・慢性頭痛
  ・反復性腹痛(過敏性腸症候群など)
  ・慢性下腹部痛(慢性骨盤痛症候群)
  ・線維筋痛症
  ・がん
4 生活の質(Quality of Life)
 暮らし
  ・健康維持――日記をつければ通院回数が減る
  ・不眠症――日記をつければ眠れるようになる
  ・ワーキングメモリー
    ――日記をつければ数学力が上がる、試験に強くなる
 心と体
  ・介護うつ――日記をつければ心の燃え尽きを予防できる
  ・産後うつ――日記をつければ新米ママの心の病気を予防できる
  ・ALS(筋萎縮性側索硬化症)
    ――日記をつければ余生のQOLが高まる
 社会生活
  ・失業――日記をつければ早期の再就職が実現する
  ・職場での幸福度――日記をつければ欠勤が減る
  ・男女関係――日記をつければコミュニケーションがよくなる
 
第5章 [応用編]感情日記の書き方 Q&A

Q:なにを書けばいいのか、よくわかりません
Q:感情といわれても、よくわからないのですが
Q:いやな出来事についても、書かなければいけないのですか?
Q:つい、人の悪口を書いてしまうのですが
Q:好きなテーマで書いてもいいですか?
Q:昔の思い出が湧いてきたら、それを書いてもいいですか?
Q:ものすごくいやな気持が湧いてきてしまうのですが
Q:感情は湧いてこないのに、体に反応が出てしまいます
Q:ブログ形式で日記を書いてもいいですか?
Q:家族と交換日記をしてみたいのですが
Q:どうしても感情が深まっていかないのですが
 
あとがき

略歴

最上 悠(もがみ・ゆう)
精神科医、医学博士。うつや不安、依存の治療に多くの経験をもつ。薬だけでなく、最先端のエビデンス精神療法の専門家としても活躍。早い時期から食やサプリメント、読書や運動などの代替医療も自ら積極的に実践してきた。複雑なこころの治療では、“ハンマーを持つと、すべてが釘に見える”專門家より、多
彩な“道具”を持つ「オールラウンド治療者」こそ実戦的、が持論。著書に『きっと、心はラクになる』(かんき出版)、『家族をうつから救う本』『薬を使わずに「うつ」を治す本』『世界の精神科医がすすめるメンタルサプリ』(河出書房新社)、『ネガティブのすすめ』(あさ出版)、『「脳の炎症」を防げば、うつは治せる』(永岡書店)など多数。
●著者エージェント/アップルシード・エージェンシー
 http://www.appleseed.co.j
●編集協力/萩原美智子
●装丁・本文デザイン/竹内淳子(慶昌堂印刷)