「日本国破産」を生き抜くための資産防衛術
「国破れて個人資産あり」と言えるために、今やっておくべきことは何か?誰も頼りにできない時代の資産運用について、金融商品のからくりを熟知する著者が具体的に指南。
- 書籍:定価1540円(本体1,400円)
- 2012.05発行
内容
ここ20年の経済的停滞に加えて、昨年の大震災、超円高、ユーロ危機といった最近の状況から、日本国債暴落説がにわかに信憑性をもって語られています。現国会で審議中の消費増税法案が成立しなければ、「日本国破産」もありえない話ではなくなってきた今、「そのとき、個人資産をどう守ればいいのか」。
日米欧の3銀行に20年勤務、金融業界を熟知する著者が、「そもそも投資オンチで資産運用も他人まかせ」の一般的日本人に向けて、たとえ国が破産しても生きていけるように、どう考え、どう行動すればいいのか、今どんな準備ができるのかを具体的に指南します。
まえがき
まえがき 戦後これだけ不安感が募ったことはない?
ユーロ危機の発端となったギリシャの債務危機は、本書の執筆時点(2012年4月)で、まだ完全収束していません。欧州諸国によるギリシャ支援を国民が受け入れていないのです。福祉や雇用の危機発生以前のレベルでの確保が難しいからだとされています。
ところで、ギリシャ政府が万が一、ディフォルト(債務不履行、つまり破産ということです)を起こしてしまうと、これが他のEU(欧州共同体)加盟国家へ甚大な影響を与えると懸念されています。具体的に名前が挙がっているのはポルトガル、スペイン、イタリアなどです。そして、ドイツがマルクを復活させてユーロから脱退する、というシナリオを描く人も、ごく一部ですがいます。
世界共通通貨の前触れとして欧州の単一通貨を目指したユーロは、このまま衰退、あるいは崩壊の道をたどってしまうのでしょうか。仮にそうだとすれば、誰が得をして、誰が損をするのでしょうか。私には、日本は損をする部類に入ると思えてなりません。理由は以下の四つです。
第一に、ユーロの次に狙われそうな通貨が円だからです。円は過去30年、40年の間、投機にさらされ続けてきました。歴史的なプラザ合意(1985年)で、その前日(9月21日)の東京で取引されていた円ドル相場(銀行間仲値)が1ドル241円70銭であったのが、一挙に210円台に突入し、その10ヵ月後の1986年7月末には154円15銭になったことを覚えておられる読者もあると思います。
同様の(あるいはそれ以上の)インパクトを持つ円高(1ドル70円台後半のレベル)に2012年初春に見舞われた日本経済は、大企業だけでなく中小企業までが海外に生産をシフトしているなか、円への投機が始まると経済の屋台骨まで揺るがす可能性があり、大変心配です。円高が1ドル80円台になった今日(2012年4月半ば)でも、この懸念はリアルです。
二番目の理由は、ユーロが衰弱した欧州経済圏が保護主義的な動きに向かう可能性です。経済が破壊されるのを防ぐために域外からの商品やサービスの輸入を制限するようなことがもしあると、日本企業と日本経済は打撃を受けます。保護貿易的な動きは欧州から米州や他の地域にも波及するかもしれません。そうなると、2011年に貿易収支が三十数年ぶりに赤字となった日本の未来はさらに暗くなります。
三番目には、かつてアジア危機で見られたような、外資(欧州以外の資本)による欧州内の企業の買収が加速する恐れです。双方向に資本が動くのならよいのですが、一方的に欧州外から欧州内に資金が流れ、そしてまた回収されてゆくというのは欧州の企業群にとってためになりません。アジア通貨で得をしたのが誰であったかを思い起こせば、今回のユーロ危機の仕掛け人の姿も見えてきます。
そして四番目。もしユーロが使われなくなることがあれば、世界は再び多通貨の時代に逆戻りし、経済の失策を為替相場で調整するという「誤った」経済政策が幅を利かせるようになると思うからです。少し前から、私は「固定相場制」のほうがよいのではないかと考え始めています。本書でも触れますが、投資ではなく「投機」が行きすぎて、実体経済を上回る規模で外国為替が取引されている今日、自由に取引できる通貨の数が多ければ多いほど投機筋にはうまみがあると思えてならないのです。
貿易収支が悪くなれば、通貨を切り下げる、それでもダメならもっと切り下げる。各国がこんな悪循環に陥るようになると、世界経済へのインパクトは破壊的です。市場が完全ではないことを考慮に入れて、外為(外国為替)相場を管理する知恵が必要だと思います。
のっけから暗い観測になってしまいましたが、ユーロ危機が次に日本危機になってしまうことは充分に予想されます。それは、日本国債の暴落という形を取るかもしれませんし、あるいは日本株のさらなる下落ということも考えられます。円建てのGDP(国内総生産)がじわじわと低下している最中に国債や日本株までが下がってしまうと、これは単なる「紙の上の損」とばかり言っていられなくなります。本格的な「日本売り」が始まってしまうかもしれないのです。
本書は、日本国という大屋台に仮に何かが起こったとしても、その上に乗っかっている私たちが資産を防衛する方法はあるのか、ないのかということを主要なテーマにしています。私はあると思っていますが、その結論に至るまで、今の日本をめぐる動きをあれこれ見てみたいと思います。
読者のみなさんが私の結論に賛同されるか、されないか。一緒に考えつつ、読み進めていただければ幸いです。
目次
まえがき 戦後これだけ不安感が募ったことはない?
第1章 日本国破産の足音が聞こえる
ストックだけでなくフローも危うい
日本国債が紙クズになる日は来るのか
国債がダメなら、銀行預金はどうか
第2章 国がダメでも企業は大丈夫か
経済一流、政治三流と言われた日本だが……
海外移転をしている企業の論理
円高が円安になったらどうなる?
国がダメなら企業に頼れるか
第3章 日本以外なら安心して投資できるか
ユーロ危機・ドル下落の本質
欧米や新興国の企業株なら大丈夫か
中東危機が世界危機に?
第4章 他人頼みにできない時代の投資法
投資・運用に対する基本的な考え方を改める
すべて自己責任の世界
スワップとオプションについて
迷ったら、好き嫌いで決める
第5章 手を出すべきでない、ちょっと危ない商品
まだこんな商品が売られている
買ってから気づく、隠されていたリスク
ローリスク・ハイリターンの商品は本当にあるのか
こんな商品は危ないが、これならいける?
資産防衛に関するアドバイス
第6章 個人でできる資産防衛法
高リスクと知って新興国に賭ける?
躍進のアジアにも落とし穴はある
金融資産で持たない方法
第7章 あなたが変わると、世界も変わる
カネがなくても生きられる世界
戦争や大災害から逃れられるか
悲観論に沈まないために
国や権威と私たちの関係を考え直そう
あとがき いつ死んでも「これでよかった」と言えるために
略歴
[著者]
津田倫男(つだ・みちお)
株式会社フレイムワーク・マネジメント代表。1957年生まれ。都市銀行、外資系投資銀行に20年ほど在籍後、外資系ベンチャーキャピタル日本代表を経て独立。企業アドバイザーとして、M&A、企業防衛、海外進出、戦略的提携、新規事業開発などの助言を行なっている。スタンフォード大学ビジネススクール卒業(MBA)。著書に『日本のマイクロファイナンス』(マイコミ新書)、『60歳からの「熟年起業」』(講談社+α文庫)、『老後のカネ 老後の生き方 心配はいらない!』(講談社)、『老後に本当はいくら必要か』(祥伝社新書)ほか多数。
●装丁・本文DTP/島村龍胆(企画室ミクロ)
●校正/麦秋アートセンター