私が「白熱教室」で学んだこと
普通の女子高生が16歳で単身渡米。ボーディングスクールに進学し、ハーバードでMBAを取得して、グーグル米国本社に入社した。英語ネイティブでなく、IT業界の経験もない彼女の夢を叶えた「勉強」とは何か!?
- 書籍:定価1540円(本体1,400円)
- 電子書籍:定価1232円(本体1,120円)
内容
答えのない問題を考え続けること――
それが「勉強」の出発点。
アメリカでは、
ボーディングスクール(全寮制私立高校)から、
リベラルアーツ・カレッジ、
経営を教える最高峰の場である
ハーバード・ビジネススクールまで、
あらゆる教育現場に
「白熱教室」が用意されています。
学生たちが自分の頭を使って考え、
激しく議論をぶつけ合う。
この「勉強」がなかったら
私はいまシリコンバレーにいません。
考え尽くす「思考力」
言葉で勝つ「議論力」
自分を管理する「マネジメント力」
――ぜんぶアメリカの学校で身につけました。
目次
はじめに
Chapter 1
そもそも勉強するってどういうこと?
……答えを教えてくれないアメリカの教師
有名なマイケル・サンデルの授業、何が一体すごいのか
大切なのは教師の考えより個々の生徒の意見
日本人はどうして、ハウツーに一生懸命なのか
リベラルアーツ・カレッジとソクラテスの教え
アメリカで考えさせられる「答えのない問題」
ジャック・ウェルチが教えてくれたこと
何のために、そこまで学生たちを悩ませるのか
人生設計の授業で「成功の定義」をつくる
Chapter 2
考える、考える、答えは出なくとも考え尽くす
……アメリカの学校で徹底される「思考力」の訓練
まず問われるのは「君は何者なのか?」
「日本人とは結婚できない」と話したクラスメイト
日本という国を鳥瞰図で見てわかること
世界に出たいなら、まずは自国の歴史を知ろう
歴史の授業で「事実」をどう論証するかを学ぶ
「国語」の授業では文学でディスカッションする
テストは「持ち込み可」三~四問の論述形式ばかり
アメリカの高校に楽しい放課後はない
Chapter 3
認められるのは議論に勝ってから
……知識でなく言葉で勝つ「議論力」を身につける
表現力や議論する力は、学べば身につくもの
英語は下手でいい、「正しく」からはみ出そう
「議論すること」を重視する実践的な高校の授業
議論はまず、相手をリスペクトすることから
ハーバード流の「涙が流れる議論」の意味
これがハーバードのディスカッション技術
「予習」をすれば、発言力は鍛えられる
発言の機会を得るためのテクニックとは
あまり知られていない「協力型の授業」
なぜアメリカの学校はチーム研究を重んじるのか
Chapter 4
マネジメント能力を10代から問う教育
……勉強と大学受験を通して「自分を管理する術」を学ぶ
アメリカの学習環境における「個人主義」の難しさ
ボーディングスクールがとにかく厳しい理由
時間管理ができない人に勉強する資格はない!?
恋愛はご法度ではないが、「なぜここにいるか」を忘れないこと
アメリカの高校生にはカウンセラーがついている
群れることがないから、陰湿なイジメがない
進路を決めるときは、専門家に助言をもらう
学生側も大学側も「相性」を重視する
難関校に合格できたのは高校での「経験」のおかげ
リベラルアーツ・カレッジとユニバーシティの違い
リベラルアーツ・カレッジの利点と欠点とは
Chapter 5
成果主義はすでに始まっている
……遊ぶ暇があれば、学生時代から人生経験を増やそう
アメリカの大学生はここまで成績にこだわる!
授業がない日はインターンシップで実践をつむ
ハーバード・ビジネススクールの時間割は早朝7時半から!?
出産の五日後に試験を受け、ハーバードを卒業した
「家族の時間」をどこまで大切にできるか
Chapter 6
アメリカでは就職後も「勉強」が続く
……全米一「働きたい会社」グーグルで働くということ
アメリカに残ることを私が決めた理由
よい人生のパートナーを選ぶことの重要性
一〇〇社に落とされた私が、グーグル入社をつかむまで
どうすれば毎日を効率的に過ごせるか
仕事で大切なのは、「ノー」と言えること
授業中の発言で身についていた必須のビジネススキル
社会人になっても勉強し続け、成長し続ける
Chapter 7
日本の学校で教えてくれない、本当に大切なこと
……なぜ世界中の若者がアメリカに勉強しに来るのか
「英語が苦手」で閉じこもる日本の若者たち
いちばん大事なのは、英語環境をつくること
日本の女性には、もっと頑張ってほしい
「日本」という小さな枠を捨てて
本当の成功をつかむための勉強をしよう
おわりに
はじめに
一九九八年 高校中退して渡米、ボーディングスクール(全寮制私立高校)入学
二〇〇一年 オバマ大統領も通った、リベラルアーツ教育で有名な四年制私立大学のオキシデンタル・カレッジ入学
二〇〇八年 卒業後は日本で起業していたが、再びアメリカに渡り、ハーバード・ビジネススクールへ
二〇一〇年 ハーバードで出会った夫と在学中に結婚、出産したのち、ビジネススクールを修了してMBA(経営学修士)取得
二〇一一年 世界で最も働きたい会社の一つとされる、シリコンバレーのグーグル本社に入社
たかだか一〇年ちょっとですが、これが私の経歴になります。こうして並べると、さぞかし優秀なのだろうとか、超エリートのように思われる方もいるかもしれません。
けれども、とんでもありません。アメリカに行くまでは、私はごくごく普通の女子高生だったのです。しかも英語は大の苦手でした。
それがどうして子連れでMBAを授与され、アメリカ人にとっても超難関とされているシリコンバレーの企業で働くような、型破りな日本人女性キャリアになってしまったのでしょう?
そこには学生時代のほぼ全般にわたってアメリカで行なってきた、日本とは違う勉強の影響があるのだと思います。
アメリカでの勉強と、日本での勉強で、何がどう違うのでしょうか。
ハーバードの「白熱教室」は、日本でもマイケル・サンデル教授の授業が紹介されて話題になりました。私もハーバード・ビジネススクールで、「白熱教室」を経験しています。学生たちが自分の頭を使って考え、激しく議論をぶつけ合う。また、あまり紹介されないのですが、「協力し合う勉強」によってチームで一つの目的を達成する喜びも知りました。
これは「白熱」そのもの。当時体験した感動は、いまも私のなかに残っています。自ら体験して獲得するスキルは、教えられる知識以上に、ビジネスの現場で私たちが生かせる問題解決力となってくることは確かでしょう。
けれども「白熱教室」は、ハーバードの大学・大学院のみのものではありません。アメリカではもっと初期の段階から用意されているのです。
とくに私が経験した二つの学校、ボーディングスクールとリベラルアーツ・カレッジでは、それが顕著に見られます。
ボーディングスクールとリベラルアーツ・カレッジ。一体それは何なの? という方も多いのではないかと思います。
ボーディングスクールとは、一般にはアメリカのエリート高として知られる私立高校です。全寮制で厳しい監督下のもと、生徒は私生活の自己管理までを含めた勉強を余儀なくされます。
そしてもちろん「白熱教室」もある。私自身ビックリしたくらい、ここでは自由な「大人の議論」が授業中に展開されます。
リベラルアーツ・カレッジもまた、日本ではあまり知られていない形態の大学ですが、日本流では「一般教養大学」ということになるのでしょうか。
つまり、専門的な学問を習得する前に、当然身につけておくべき学問の素養を学ぶための大学。ですから科目は、意外かもしれませんが歴史学、哲学、文学、心理学や社会学といった「人文科学」が多くなります(もちろん理数系も多く用意はされていますが)。
さらにリベラルアーツ・カレッジは、ほとんどが学生数一〇〇〇~二〇〇〇人ほどの少人数制の大学です。ですから、日本で言うところの「私塾」の雰囲気が強くなります。授業はほとんどマンツーマンで、師と弟子が意見をぶつけ合うような「白熱対話」がくり返さるのです。
この大学を卒業した学生の大半は大学院へ進み、今度は経済学や経営学や法学、また医学といった世に出るための学問を学んでいきます。
このような、まったく日本と違う「白熱勉強」の選択肢が用意されていることも、アメリカで言う「勉強」の特徴なのです。
そして、そんなアメリカの、自由で、つねに自分の頭で答えを導き出さなくてはならない厳しい勉強が、私をここまで導いてくれました。日本では起業も経験し、ハーバード・ビジネススクール在学中に結婚し、子どもも生んだ、それでもグーグル本社に勤め、さらに新たなチャレンジを模索している――。
仕事のキャリアも人生のキャリアも未熟な私ですが、それでも積極的にさまざまなリスクに挑んでいこうとする価値観は、それを「正しい選択」と見なしてくれるアメリカの勉強があったからこそ育まれたものでしょう。
はたして日本式の「勉強」で、そういうことが起こるでしょうか?
アメリカという国に多少の問題はあるかもしれませんが、ここで行なわれる勉強が世界中に多くの成功者を輩出しているのは、間違いない事実でしょう。ハーバード・ビジネススクールのみならず、たとえばノーベル賞をとる日本人の科学者でも、ほとんどはアメリカでの勉強を経験しています。
すでにグローバル時代が訪れている現在、世界に目を広げようと思えば、将来のためにアメリカをはじめとした国外で学ぼうと考えることは必然のことかもしれません。
ところが二〇一〇年に来日したハーバード大学学長のファウスト教授は、読売新聞の取材で日本人留学生の減少を危惧しています。
彼女によると、ハーバードの学部・大学院を合わせた留学生数で、日本は九九~二〇〇〇年度に一五一人だったのが、二〇〇九~一〇年度には一〇一人に減少したそうです。ちなみに同期間に中国は二二七人から二倍以上の四六三人に、韓国は一八三人から三一四人に急増しました。そして二〇一〇年度の学部への日本人留学生は、わずか五人にすぎなかったそうです。
もし読者の方が学生であれば、やはり私は留学を勧めたいところですが、なかなかそうはいかないビジネスパーソンの方もいらっしゃると思います。
けれども、アメリカ流の「勉強」を理解することは、現在の仕事にも大きな付加価値をつけることになるはずです。なぜなら、アメリカで学ぶ勉強とは極めて実践的だからです。
とくにアメリカでは、勉強は入試や就職といった一時期の課題突破のためのものなく、生涯にわたって人生を切り開くために必要なものだと教えられます。だからこそ私は、家庭をもち、就職した現在でも勉強を続けます。
おそらく皆さんにとっても、勉強は生涯にわたって必須なものであるはずです。
とくに日本では、ハーバードのような専門性の高い大学の勉強はよく紹介される反面、高校や一般教養大学のような、「勉強についての考え方」を基礎から学べる場での「勉強法」はあまり紹介されません。
幸運にも私は、日本人でありながら、ボーディングスクールとリベラルアーツ・カレッジを経験し、ハーバード・ビジネススクールで経営学を修めることができました。そこで学んだことから、多くの日本の皆さんの役に立つ、普通の勉強法という枠を超えた、いわば「思考法」が引き出せるのではないかと思っています。
ぜひ本書を、「何のために貴重な時間と労力をかけて勉強するのか?」ということを考えるきっかけに役立てていただければ、著者としてこれ以上の喜びはありません。
石角友愛
略歴
[著者]
石角友愛(いしずみ・ともえ)
日本の暗記中心の教育がイヤになり、周りの白い目を気にしながら、東京のお茶の水女子大学附属高校を中退。16歳で単身渡米する。少人数ディスカッション式の名門ボーディングスクール(全寮制私立高校)に進学し、リベラルアーツ教育で有名な、オバマ大統領の母校でもあるオキシデンタル・カレッジを卒業(心理学士)。在学中に思いついた起業アイデアを実行すべく、帰国して起業家を支援するインキュベーションビジネスを立ち上げ、3年間運営する。2008年、再びアメリカに渡り、ハーバード・ビジネススクールへ。戦略コンサルティング会社やベンチャーキャピタルで経験を積みながら、2010年に長女出産と同時にMBA(経営学修士)取得。現在は子育てをしながらシリコンバレーのグーグル本社で働く。
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