理系のトップはなぜダメなのか
ロジックにこだわる、発言がすぐにぶれる、目標を甘く見る……そんな理系人間があなたの上司になってしまったら? 理系出身の著者が説く、「理系にできること、できないこと」。理系礼讃の風潮に異議あり!
- 書籍:定価1650円(本体1,500円)
- 電子書籍:定価1320円(本体1,200円)
- 2012.02発行
内容
鳩菅政権の迷走……それはまさに「理系的思考」が生んだ悲劇。
ロジックにこだわる、発言がすぐにぶれる、目標を甘く見る……
そんな“鳩菅”のような理系人間があなたの上司になってしまったら?
理系出身で現在は営業部長職に就く著者が、「まともな理系の育て方」を教えます。
■もし理系人間が「上司」になったら……
シビアな数字管理はできないと思え
人脈&キャラクターを有効活用せよ
■もし理系人間が「同僚」になったら……
専門分野は任せてしまうことがベスト
交渉の現場ではサポートが必要
ビジネス責任が発生する場を任せない
■もし理系人間が「部下」になったら……
若いうちなら現場を徹底的に経験させる
人的交流の場を経験させる
聞く耳こそ重要であることを教える
■もし理系人間が「パートナー」になったら……
理屈で勝負しない
くだらないこだわりは見て見ぬふり
男社会を生き抜いてきた理系女子は強い
すべてに文系に読んでほしい、「理系にできること、できないこと」
理系礼讃の風潮に異議あり!
はじめに
未曾有の災害となった東日本大震災。2011年3月11日の記憶は、まだ生々しいものとして、我々の心の奥深くに残っている。福島第一原発での大事故を含め、日本は「歴史上の岐路に立たされている」と言っても過言ではない。
ところが、そんな重大な局面であったにもかかわらず、国家のリーダーたる総理大臣のマネジメントに、大きな疑問符が投げかけられた。まさに国民にとっては、異常かつ深刻な事態となってしまった。
それだけではない。
日本政治史上における大きなターニングポイントになるはずだった「政権交代」で生まれた鳩山内閣も、あっという間にスキャンダルまみれとなり、その終焉を迎えてしまった。
こんな惨めな政権運営状態が続いてしまった理由について考えてみると、実は「理系出身のトップ」による、世間知らずなマネジメントに根本的な原因を求めることができる。
◇訳のわからない「朝令暮改」を繰り返す
◇追及されると発言がぶれる
◇危機管理に疎く、タイミングを逸する指示命令が続く
これらはそのごく一端だが、では、なぜ「理系のトップ」はこんな愚かな行動を繰り返してしまうのだろうか?
それを考えてみようというのが本書の目的である。
拙著『「理系人間」との仕事術』(西東社、2009年)では、理系人間たちの思考パターンを面白おかしく描写し、彼らとのつきあい方について述べさせていただいた。
今回は、見方をさらに生々しくして、理系のリーダーが陥る宿痾とも言うべき、ミスジャッジやミスリードの原因をつまびらかにしていく。
これは他人事ではない。不幸にもあなたの近くに、重大なミスリードを平気でする「理系」のリーダーがいたら、大いに迷惑を被るのはあなたなのだ。
彼らの思考パターンの間違いについて、その原因を知り、うまく立ち回ることもあなたにとって必要かつ重要な作業である。
私は元々、理系人間として、「理系ムラ」の中で社会生活を送ってきた。
その後、偶然にも本社営業部門へと異動になり、今では営業部長を務める身となったのだが、生まれ育った理系ムラでは経験し得なかった、いくつもの仕事上の壁にぶち当たってきた。
そんな経験から理系リーダーの「欠陥」や、そこに至る「道筋」が手に取るようにわかるのだ。文系リーダーなら当たり前にできることが、なぜ彼らにできないのか……この悲しい性についても理解することができるようになった。
本書では残酷だが、鳩山由紀夫、菅直人両元総理に「悪いサンプル」としてご登場願い、なぜトンチンカンなマネジメントによって周囲を混乱させてしまったのか、それを考えていく。
そして、失敗に至ってしまった本質的な原因を徹底的に掘り下げ、理系思考のリーダーの問題点を暴いていく。また、皆さんの身の回りにいるかもしれない「困ったちゃん」の理系人間たちをどう扱っていったらよいのかについて、その処方箋を示したい。
「理系礼讃」の風潮に、もうひと味加えて「まともな理系の育て方」を提案してみたい、というのが本書の目的である。
目次
はじめに
第1章 鳩菅政権で露呈した「理系リーダー」の限界
1 繰り返し起きた「朝令暮改」の原因とは?
――簡潔なロジックで世の中は動かない
理系ロジックの限界
鳩山総理「温室効果ガス25%削減宣言」
菅総理「参院選前に消費税アップに言及」
中曽根総理「選挙圧勝後に消費税導入」
トップの発言に求められるもの
視覚での伝達力
「元トップ」の発言
2 「自らの限界」を理解できない理系リーダーの悲哀
――「知っていること」と「自らができること」は全く異なる
勉強すればわかること・わからないこと
鳩菅政権でのボタンの掛け違い
第2章 「理系リーダー」の弱さの源泉とは?
1 「正しいこと=ベストの解」ではない
――「教科書秀才」の陥りやすい罠
正しいことイコール良いことなのか?
人間が動く基準
馬鹿にできない「顔見知り」人脈
根回し下手の陥る罠
「ロジックバッター」の悲劇
困難な状況における航海図の定め方
2 目標を甘く見る「理系眼」
――物事は「結果」が勝負
「目標」に伴うのは「遂行責任」
理想と現実の違い
ビジネスに「努力賞」はない
数字を「追う」か、数字に「追われる」か
結果や途中経過とどう向き合うか
3 知識だけでは事業運営はできない
――経験知を軽視するな
すべてに真面目に対応してしまう癖
大学で学ぶ知識は「入門編」
マネージャーになれないピーターパン
[Column]仕事を身につけるスパンとは?
4 文系の眼を意識できないお気楽さ
――「理系ムラ」から出たら社会人にならなければいけない
「説明責任」とは何か
文系の「理系アレルギー」を軽く考えるな
実家を恋しがるのもほどほどに
[Column]文系と理系の交流は役所の方がお上手
第3章 あなたの周りに「理系人間」がいたら
1 「理系上司」の対処法
――理系とハサミは使いよう
シビアな数字管理はできないと思え
理系トップの使い方(1) 人脈の有効活用
理系トップの使い方(2) キャラクターの有効活用
2 「理系同僚」の対処法
――任せることと、任せないことをはっきり分けよう
専門分野は任せてしまうことがベスト
交渉の現場ではサポートが必要
ビジネス責任が発生する場を任せない
3 「理系部下」の対処法
――「使える理系」に育てよう
若いうちなら現場を徹底的に経験させる
人的交流の場面を経験させる
聞く耳こそ重要であることを教える
4 「理系パートナー」の操縦法
――理解しがたい人が生涯のパートナーになったら
対「理系夫」その(1) 理屈で勝負しない
対「理系夫」その(2) くだらないこだわりは見て見ぬふり
対「理系妻」では?
第4章「その時」歴史を動かすには、どうすべきだったのか?
1 「鳩菅」の敗因を分析する
――理系ロジックの限界をもう一度見直す
リーダーシップの勘違い
トップの「居場所」とは?
指揮系統と戦力配置
「結果」よりも「解答」を求めてしまった人たち
2 人間軽視で組織は動かせない
――人の心には敏感なひだがある
トップの「お仕事」とは?
「わかっちゃいるけど、やめられない」のが人間
おわりに
略歴
[著者]
諒 純也(まこと・じゅんや)
1963年東京生まれ。
東京大学大学院工学系研究科化学エネルギー工学専攻修士課程修了後、大手材料系メーカーに就職。15年余の技術者生活を送った後、自ら開発した商品とともに営業部に異動。ここ数年はプロジェクトリーダーとして新規事業立ち上げの責任者を務める。
著書『上司は〝だまして〟使え!』(阪急コミュニケーションズ)、『「理系人間」との仕事術』(西東社)。
理系出身。
諒 純也の“そそらっぺ”ブログ
http://archemist223.seesaa.net/
●ブックデザイン/萩原 睦(志岐デザイン事務所)
●組版・DTP/大山陽子(志岐デザイン事務所)