クレーム対応の技と心得 お客様との妥協点は必ずある
クレームはビジネスチャンスだ! 実績1万件以上、75%のクレーム削減に成功したスペシャリストが教える、「お客様にクレームを言わせない」ための33カ条。上司説得術からクレーム対応者のメンタルケアまで。
- 書籍:定価1650円(本体1,500円)
- 電子書籍:定価1320円(本体1,200円)
- 2012.02発行
内容
クレームはビジネスチャンスだ!
実績1万件以上、75%のクレーム削減に成功したスペシャリストが教える、
「お客様にクレームを言わせない」ための33カ条
●クレームは「不当要求」、苦情は「正当要求」
●「電話をかけてきた人すべてがお客様」ではない
●「クレームを言う人=悪人」は間違い
●クレームは「処理」ではなく「対応」でなければならない
● 交渉決裂は、コールセンターの存在意義が消えるとき
●あなたは「社長代行」
● 話をこじらせない断り方
●「上司はクレーム対応が下手」と思え
● 泣きたければ泣いてもいい
●「お客様第一」ではなく、まずは「従業員第一
「クレーム」と「苦情」の違いをはっきりさせ、
クレーム発生のメカニズムと対応の極意&テクニックを紹介。
さらに、お客様以上の難関である上司を説得する裏ワザや
クレーム対応者のメンタルケアまで。
はじめに──お客様対応をしている、すべての人へ
「コールセンターを作る」
ある日突然、上司から言われたこの一言が、私の人生をまったく違ったものにしてしまいました。
私はもともと、技術屋一筋の仕事をしてきました。「我が人生は物づくりや開発にあり」と考え、その仕事に打ち込んできたのですから、まさに順風満帆でした。ところが、この上司の一言で、事情が一変しました。その日の出来事は、今でも鮮明に覚えています。 コミュニケーションとは無縁の世界で、黙々と作業を行ってきた私が、ピーク時には100名以上の一次対応者や二次対応者から相談を受け、なおかつお客様に対応することになるなど、まったく考えていませんでした。
最初のクレームは、コールセンター開設5日目にありました。当時の私にはお客様対応に必要なスキルなどなく、自分の経験知の範囲で回答し、とんだ間違いを犯してしまいました。その結果、お客様のお宅に訪問して、3時間も正座してお詫びしなくてはなりませんでした(ちなみに、お客様宅では最長12時間の対応をしたことがあります)。
そのとき、お詫びしながらも「なぜ私が?」という思いが頭の中をよぎり、情けなさで涙が出てきました。
それから15年。気がつけば頼られる存在になっていました。
お客様との駆け引きは、先の先の、さらにその先を読むようなものです。悪い言い方をすれば、将棋やオセロなどのゲームのようなものです。それは、コールセンターでも対面窓口でもまったく同じです。
クレーム対応に関する本は数多く出版されていますが、著者自身のエピソードを武勇伝のように語るものが多く、それではお客様と向かい合う勇気は湧いてきません。
そこで、私なりに考えてみました。かつて開発部で培った分析力が、お客様の次の一手を読む手立てにつながり、独自のノウハウが生まれたのです。しかし、それをマニュアル化することはできません。それは、将棋やオセロで100%の勝率を挙げる方法をマニュアル化できないのと同じことです。
お客様対応においてミスは許されません。自分自身で考えて行動する手法を、この本では紹介します。
クレーム対応は、多くの人にとっては「つらい」の一言でしかないでしょう。その先に“鬱”が待っていると言っても過言ではない仕事です。
しかし、このご時世、仕事を選ぶことはできません。どんな事情であれ、クレーム対応の任についてしまったならば、プロフェッショナルを目指そうではありませんか。
プロフェッショナルになれば、心も身体も楽になります。心に余裕ができて、クレームを言うお客様へ共感を持てるようになります。この共感が、CS(顧客満足度)を上げる最大の武器になります。CSが上がれば、お客様から感謝の言葉をもらえるでしょう。苦痛だった業務も楽しくなるはずです。
クレーム対応が情けなくて退社した人、退社できずに鬱になってしまった人、そんな人たちを私はたくさん見てきました。会社を辞めることは、いつでもできます。その前に本書を手に取っていただき、ぜひ参考にしていただければと思います。
目次
はじめに──お客様対応をしている、すべての人へ
1 クレームとは何か
──まずはクレームを分析してみよう
1 「クレーム」と「苦情」の違い
2 苦情・クレーム発生のメカニズム
3 コールセンター最大の過ち
4 「クレームを言う人=悪人」は間違い
2 クレーム対応の心構え
──クレーム対応を行う前に知っておいてほしいこと
5 お客様の声は絶対正論と考えろ
6 「上司はクレーム対応が下手」と思え
7 二十四時間クレームから逃げるな
8 「お客様第一」ではなく、まずは「従業員第一」
9 お客様をプロファイリングしろ
10 お客様に何ができるか考えろ
11 交渉決裂は、コールセンターの存在意義が消えるとき
3 クレーム対応の極意
──妥協点を探り出すための技と心得
12 第一声は元気よく
13 あなたは「社長代行」
14 妥協点は必ずどこかにある
15 要望以上は望まれない
4 上司攻略術
──妥協点に納得しない上司の説得法
16 お客様より説得が難しいのが上司
17 上司もプロファイリングせよ
18 上司にクレームの経緯を話しても無駄
19 納得できなくても上司の意見を反映させろ
20 お客様の甘いささやきに心を動かされるな
5 電話応対トレーニング
──「伝える」プロになるためのトレーニング法
21 伝えることの難しさを理解する
22 話をこじらせない断り方
23 発声の幅を広げれば言葉の幅も広がる
24 お客様を説得してみよう!
25 180度逆の意見を正当化してみよう
6 クレーム対応者のメンタルケア
──心が折れてしまう前にできること
26 お客様の痛みがわかる担当者ほど離職率が高い
27 自分の身は自分で守れ
28 事務的な担当者を生み出さないために
29 お客様のために努力した自分を褒める
7 CSを上げるために
──従業員だって「お客様」です
30 CSを上げるには、まずESから
31 ESを上げれば業務効率も上がる
32 泣きたければ泣いてもいい
33 すべての原点はコミュニケーション
おわりに──クレーム対応は「蟻の穴から堤も崩れる」
略歴
[著者]
安藤栄一(あんどう・えいいち)
1967年大阪生まれ。90年、大手電機メーカーのソフトウェア会社に入社。同社のお客様相談室で1万件以上のクレームを扱い、75%のクレーム削減を実現。2010年独立。現在は地域密着型のPCサポート事業のかたわら、「@コールセンター. jp」でクレーム対応についてのコラムを連載、また企業向けセミナーも多数こなす。
www.cssapofuse.com
●装丁・本文デザイン/轡田昭彦・坪井朋子