マーケターの知らない「95%」 消費者の「買いたい!」を作り出す実践脳科学
グーグルやシティバンクも採用するニューロマーケティングとは何か? ニューロマーケティングの第一人者が初めて明かす、ブランド・商品開発・店舗環境・広告への知見。
- 書籍:定価2200円(本体2,000円)
- 2011.07発行
内容
グーグルやシティバンクも採用するニューロマーケティングとは何か?
脳の情報処理の最大95%は「潜在意識」が行っている。
商品を売るためには、その95%に働きかけなければならない。
ニューロマーケティングの第一人者が初めて明かす
ブランド・商品開発・店舗環境・広告への知見。
●アンケート調査に答える時、脳は本来のデータを書き換えてしまう
●高齢者に対しては「楽観的要素を強調する」と共感を得られて効果的
●女性向けのマーケティングでは、必ず情緒に訴える要素を盛り込め
●ママ世代には常に正直で率直であるべし。一度信頼を失えば次はない
●店舗では商品陳列棚の角や縁を丸くすると、売り上げがアップする
●パッケージに多様な書体を使うと効果が減少。文字の向きも影響する
●「間違った」広告、「あいまいな」広告には人を引き付ける力がある
「プラディープ博士は、多角的なマーケティング・ツールとして、ニューロマーケティングというダイナミックな新分野の可能性を描き出す。それも、熱意と知性と洞察に満ちた筆致で。本書は、一歩先を行きたいと願うすべてのマーケターの必読書だ」
――デービッド・ポルトラック(CBSコーポレーション市場調査部門責任者)
「神経科学はすでに、研究室を飛び出し、マーケターと消費者の間のコミュニケーションを変えつつある。プラディープ博士は、神経科学とマーケティング戦略の原理を用いて、あらゆる種類のビジネスに役立てるべく、ニューロマーケティングという新分野に息を吹き込んでいる」
――ラジブ・ラル(ハーバード大学教授)
序文
マーケティング戦略のプロとして、私のキャリアを通じての最大の関心事は「どうしたらお客様の心をのぞき込めるか」ということだった。
マーケターの例に漏れず、私もこの分野で何世代にもわたって親しまれてきた各種のツールを利用してきた。消費者への直接的なインタビューによる一次調査をしたり、アナリストの意見や学術研究といった二次資料に頼る調査を行ったりもした。そうした情報で武装した私は、自社のチームや広告代理店を指導して広告やウェブサイト、トレードショーの展示ブースなどを作らせ、フォーカスグループ(訳注:グループ対話形式で自由に発言してもらう手法)やA/Bテスト(訳注:複数のバージョンを用意してどれが最も効果的か利用者の反応を調べる手法)を通じてそれらの効果を測定してきた。
私は、そうした自分のやり方が正しいと信じ込んでいた――本書『マーケターの知らない「95%」』を読むまでは。
本書を読み進めるうちに、これまで自分が消費者の脳のほんの一部にしか注意を払ってこなかったことを思い知らされた。世間の大半のマーケターと同様、私も氷山の一角にこだわりすぎていた。つまり、消費者の目に見える部分、触れられる部分、そして聞こえる部分にしか注意を払っていなかったのだ。
私は消費者が心の中で「意識」している部分を探るための質問しかしてこなかった。たとえば、「この広告は好きですか」とか「このブランド名を聞いて最初に連想する動物は何ですか」とか「このボタンの色は赤と緑のどちらがいいと思いますか」といった具合に。しかし、こうした質問への答えは、消費者の脳内の「潜在意識」で起きている膨大な量の活動から知りうる内容と比較すると、まったく陳腐きわまりなく思えてしまう。
この注目すべき新著において、A・K・プラディープ博士は、脳の情報処理の最大95%は「潜在意識」によって行われている事実を論証している。そうだ、読み間違いではない。実に95%である。
マーケティング関連の書籍で、タイトルに「秘密(secret)」という言葉が使われている場合は要注意だ。よくて誇張、ひどい場合はでっち上げだと言ってもいい。しかし本書(訳注:原題はThe Buying Brain: Secrets for Selling to the Subconscious Mind)には、そのどちらもまったく当てはまらない。私にはマーケティング関連の著作もあるし、この分野に関してそれなりの知識を有し、実践経験もあるが、本書のどの章にもまさに目からうろこが落ちるような発見があった。
たとえば、男女の脳にはマーケターにとって見過ごすことのできない重要な違いがあることもそのひとつである。また、脳は経年によって変化し、その変化の本質について知れば年齢層に応じてツボにはまったマーケティングを展開できることもそうだ。新生児の母親に対する効果的なマーケティングの手法についてさえ、この本から教えを受けた(彼女たちの脳は出産によって変化するからだ)。
プラディープ博士は、世界の最先端を行くニューロマーケティングの研究所で指導的立場にあり、世界有数の大企業や先進的な多くの企業が彼のアイデアを採用している。ニューロマーケティングとは、神経科学と市場調査を組み合わせ、脳の反応を計測することで消費者の心理や行動を把握しようという試みだ。これらの企業は神経科学における最新の研究成果を、ブランドや製品、ウェブサイト、パッケージデザイン、マーケティング・キャンペーン、店舗環境などの開発に応用している。
本書は、ニューロマーケティングが提供する強力なアイデアへの格好の入門書といえるだろう。楽しみながら読み進めるうちに、基本的な知識がすっと頭に入ってくる構成になっている。
人間の脳を理解すればよりよい製品やサービスを開発し、より効率的なマーケティングを展開して売り上げを伸ばすことができる―マーケターたちもそのことには随分前から気付いていた。しかしニューロマーケティングの登場によって、彼らはついに人間の脳全体を徹底的に理解し、その知識を応用する手段を手に入れたのだ。
目次
序文 デービッド・ミアマン・スコット
第I部 買いたくなる脳 導入編
第1章 脳の「説得」は1兆ドルの難題
第2章 ニューロマーケティングの技術
第3章 消費者の脳は10万年前と同じ
第4章 脳科学入門
第5章 買いたくなる脳と五感の関係
第6章 高齢脳が買い物をする時
第7章 女性脳が買い物をする時
第8章 母親脳が買い物をする時
第9章 共感脳が買い物をする時
第II部 買いたくなる脳 実践編
第10章 ニューロマーケティングの数値と測定法
第11章 消費ロードマップ
第12章 脳とブランド
第13章 脳と製品
第14章 脳とパッケージ
第15章 脳と店舗環境
第16章 脳と広告
第17章 脳とスクリーンとソーシャルメディア
第18章 未来へのビジョン
謝辞
情報ソースと参考文献
索引
略歴
[著者]
A・K・プラディープ Dr. A. K. Pradeep
米カリフォルニア州バークレーに本社を置く世界有数のニューロマーケティング会社、ニューロフォーカス社(NeuroFocus, Inc.)の創設者、CEO。神経科学(脳科学)をマーケティングや広告、パッケージ、製品開発などに導入する「ニューロマーケティング」を開拓した研究者であり、同社のクライアントにはCBS、マイクロソフト、グーグル、ペイパル、シティバンクなどのグローバル企業が名を連ねる。カリフォルニア大学バークレー校、MIT、ハーバード大学、ヘブライ大学における神経科学やマーケティング領域での研究成果を活用。同社は2008年よりニールセンと提携。
[監訳者]
ニールセン ジャパン Nielsen Japan
100ヶ国以上でビジネスを展開する世界有数の情報・調査企業、ニールセンの日本法人。様々なマーケティング情報を洗練された分析手法を用いてクライアントに提供している。日本におけるニューロフォーカス社の事業展開も担う。
[訳者]
仲 達志(なか・たつし)
1954年東京生まれ。ニューズウィーク日本版の創刊プロジェクトに編集者として参加。副編集長を務めた後、マイクロソフトのポータルサイト「MSN」でウェブマガジンの創設などに携わる。マネージングエディターを経て、現在フリー。訳書に『父さんのsh*t発言、つぶやきます――毒舌オヤジとぼくとツイッター』がある。
●ブックデザイン/岡本健+
●DTP・校正/朝日メディアインターナショナル