英語を社内公用語にしてはいけない3つの理由
英語の社内公用語化が日本を救う?とんでもない!英語の公用語化は日本を衰退させかねない危険をはらんでいます。グローバル化の側面だけではわからない英語社内公用語の「危険性」を考えるための必読書。
- 書籍:定価1650円(本体1,500円)
- 2011.06発行
内容
英語の社内公用語化が日本を救う? とんでもない!
英語の公用語化は日本を衰退させかねない危険をはらんでいます。
グローバル化の側面だけではわからない
英語社内公用語の「危険性」を考えるための必読書。
楽天とユニクロが英語を社内公用語にするというニュースを知った津田幸男・筑波大学教授は、なんとしてもこれを止めなければ、と両社に抗議文を送りつけました。
本書では、その抗議文を掲載するとともに、英語社内公用語化がなぜ問題なのかを徹底的に追及します。
英語を単なる道具だと考えている人は多いですが、言語にはそれ以上の大きな役割があります。英語によって社会格差が拡大し、日本語で考える権利を奪われるとしたら……。
「本文」より
英語を純粋無垢な道具ととらえて、ただ勉強すればよいと思っている人は星の数ほどいるでしょうが、そのような単純な言語観では英語の正体はつかめません。
現在、英語は大きな権力になっています。英語をつかむ者はのし上がり、そうでない者は落ち目になるというように、「格差」と「序列」と「不平等」を生む権力なのです。ですから安易に英語を社内公用語などにしてはいけないのです。
この大きな権力を安易に日本の中に根付かせることは、日本社会の根幹を揺るがすような影響をもたらします。私たちはこの権力としての英語の「恐ろしさ」を忘れずに、英語への警戒心をしっかり持つべきです。
目次
序章 楽天、ユニクロへの手紙
本書の概要と構成
1章 英語社内公用語の実態–英語化する企業
主要5企業の「英語化」と「英語社内公用語化」
(1)日産自動車 (2)パナソニック (3)ユニクロ (4)楽天 (5)シャープ
企業の英語重視政策–採用、昇進に英語力がどれほど求められているか?
「英語力」を採用条件にしているか?
「英語力」を昇格の条件に入れているか?
楽天、ユニクロ社員のホンネ–「プレジデント」の特集より
2章 英語公用語論の歴史–公用語とは何か?
森有禮の「英語採用論」
志賀直哉の「フランス語採用論」
2000年の「英語第二公用語論」–その副産物と誤謬
「公用語」とは政府・会社が使用を約束する言語
3章 英語を社内公用語にしてはいけない理由(1)–日本語の衰退を招く
日本は英語偏重社会になっている
(1)実用英語に傾斜する大学教育
(2)英語教育の早期化
(3)「英語力」が人生を左右する
(4)文科省「英語が使える日本人」育成政策
英語偏重は日本語の衰退を招く
(1)深まる「英語信仰」、広がる「日本語軽視」
楽天・三木谷氏の「英語信仰」と「日本語軽視」
「人格形成」よりも「競争力」を強調する三木谷氏の教育論
英語偏重は日本語の衰退を招く
(2)英語が「上位言語」、日本語が「下位言語」
(3)英語への「乗り換え」が起きる
100年後、日本人は日本語を話しているだろうか?
4章 英語を社内公用語にしてはいけない理由(2)–格差を拡大する
英語が格差を生み出す
(1)英語力が高収入、高位置につながる
(2)「英語を使う人」と「英語を使わない人」の収入格差
(3)「英語が出来る階層」と「英語が出来ない階層」への分裂
(4)「日本語ができない外国人」の増加
(5)日本企業に就職できない日本人の増加
英語社内公用語が格差を拡大する
(1)「英語偏重社会」から「英語格差社会」へ
(2)「二重言語社会」が日本を分断する
(3)日本が「ガイジン天国」になる
(4)「英語特権階級」の出現
5章 英語を社内公用語にしてはいけない理由(3)–言語権を侵害する
「言語権」とは何か
言語権と基本的人権、人格権、精神の自由権
世界言語権宣言–広がる「言語権」意識
「英語の強制」はさまざまな権利を侵害する
(1)「英語の強制」は基本的人権の侵害である
(2)「英語の強制」は「人格権」の侵害である
(3)「英語の強制」は「精神の自由権」の侵害である
(4)「英語の強制」は「自己決定権」の侵害である
法律の専門家も疑問視する「英語社内公用語」
「言語」は「単なる道具」ではなく、「権利」である
6章 もしあなたの会社が英語を社内公用語にしたらどうすべきか?
積極的順応
消極的順応
闘争的抵抗
平和的抵抗
分離
「英語社内公用語」が日本のためになるか考えよ
7章 日本語優先主義のすすめ
英語より日本語を
日本語優先主義の5つの主張
(1)日本人の英語信仰が日本を滅ぼす
(2)日本人とは日本語人である
(3)日本語は日本の基盤であり共有財産である
(4)国際主義ではなく日本回帰を
(5)世界の平和のために
「英語優先」から「日本語優先」に軌道修正せよ
終章 経済至上主義から文化至上主義へ
経済至上主義–戦後パラダイムの終焉
文化至上主義–災後の新しいパラダイム
文化至上主義の目標–環境保護と伝統文化保存
日本からの発信–日本型ソフトパワーの輸出
あとがき
著者
津田幸男(つだ・ゆきお)
1950年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院人文社会科学研究科教授。専門は英語支配論、言語政策、国際コミュニケーション論。都立高校の英語教師を務めた後、1985年に南イリノイ大学で博士号を取得。名古屋大学教授などを経て、2001年より現職。著書に『英語支配の構造』(第三書館)、『侵略する英語 反撃する日本語』(PHP研究所)、『英語支配とは何か』(明石書店)、『日本語防衛論』(小学館)など。
●カバーデザイン/ヤマダ・マコト(志岐デザイン事務所)
●カバーイラスト/カワチ・レン
●本文デザイン・DTP/萩原 睦、沖田匡宏(志岐デザイン事務所)
●校正/熊澤華栄