KAITEKI化学 サスティナブルな社会への挑戦
気候変動、エネルギーや資源の枯渇、水や食糧不足など人類はこれまで経験したこともない危機的状況を迎えている。この難問に立ち向かう1つのキーワード、それが「KAITEKI」だ。本書はSustainability(資源・環境の持続可能性)、Health(健康)、Comfort(快適)を包含する「KAITEKI」に資する科学・企業・経営にあらゆる角度から迫った渾身の1冊。
- 書籍:定価1650円(本体1,500円)
- 2010.12発行
英語版も登場!
Good Chemistry for KAITEKI
内容
気候変動、エネルギーや資源の枯渇、水や食糧不足など人類はこれまで経験したこともない危機的状況を迎えている。この難問に立ち向かう1つのキーワード、それが「KAITEKI」だ。本書はSustainability(資源・環境の持続可能性)、Health(健康)、Comfort(快適)を包含する「KAITEKI」に資する科学・企業・経営にあらゆる角度から迫った渾身の1冊。
目次
はじめに
第1章 なぜKAITEKIなのか――
健康、快適、そしてサスティナビリティ
増え続ける人類と地球、エコジレンマを乗り越えるために/「KAITEKI」と「資源・環境の持続可能性」「健康」「快適」/水道哲学と地下の「ワイン」が枯れるとき/植物からつくる永遠の資源を求めて/エネルギー効率のよい素材、デバイスへの挑戦/低炭素、脱炭素社会ではなく、「新炭素社会」を!/化学産業は錬炭素術、カーボンの細工師である/改めて問う、なぜいまKAITEKIなのか
第2章 最先端科学から見た「快適」の定義
「他人の不幸は蜜の味」を脳が証明する/金銭の獲得と褒められることは同じ価値がある/身体のように心は「痛む」/怖がっている顔や悲しい顔は不快である/魅力的な顔を見ることも「報酬」の一つ/美人やイケメンはよい人である!?/万国共通で感じる美しさ/報酬系にも古い部分と新しい部分がある?/“生”へのモチベーションを上げる快適/味覚の「快適」を化学する/快楽をもたらす味、苦痛をもたらす味/人間が「おいしさ」を感じる四つの要因/世界初、五味を数値化する「味覚センサー」/プリン+醤油、イカの塩辛+生クリームは何の味!?/安心・安全をキーワードに、進化する味覚研究/「味覚センサー」技術が世界を救う!?
第3章 感性価値を実現する「KAITEKI」
積極的な「快」適と消極的な快「適」/変化を楽しむことも快適である/健康を維持する快適な空間とは/灯りの新たなる革命――LED照明/個々人の要望と快適に応える知的照明/LED照明は色の魔術師/点光源から面光源へ――有機EL照明への期待/自然の音を愛でる感性がセラピーに生きる/人に癒しをもたらすハイパーソニック・サウンド/健康で快適な入浴を実現する「人工炭酸泉」
第4章 サスティナブル・コミュニティを形にする「KAITEKI」
五感と心で感じる「快適」/高齢化社会にいかに向き合うか/市民主導で21世紀型モデルを構築せよ/高齢化社会のインフラは自然と融合すること/モビリティが快適圏を広げる/路面電車を公共交通の核とした歴史都市/自転車と徒歩、人優先で活気が戻ったまち/エコタウンとして生まれ変わった工業都市/高架道路を撤去して親水公園として川を再生/快適に資するまちづくりとは
第5章 次世代医療と健康のための「KAITEKI」
医療を根底から変える再生医療の可能性/身体のあらゆる組織、臓器に変化できる細胞/期待される病気の原因やメカニズムの究明/創薬や副作用の研究にも/最大の課題は安全性の確立/いつでも治療に使える細胞バンク/介護が必要な期間、男性は7年、女性は9年/究極の予防医療の薬「情報薬R」/人の心を動かす情報/インターネットの禁煙マラソンが成功する理由/健康管理から超予防医療へ/早期発見・治療のためのバイオマーカー/どのようなバイオマーカーが求められているのか?/バイオマーカーが実現する医療の姿/リスク予測はどこまで必要か?/バイオマーカーと新薬開発/自分の人生を自分でコントロールできる時間を長くするために/多くの疾患に共通する酸化ストレス
第6章 新炭素社会を拓く「KAITEKI」
世界および地域の一次エネルギー消費量の実績と将来予測/食料も水もエネルギー資源に頼っている/輸出され輸入される「見えない水」/ウォーター・フットプリントという考え方/水と食料とエネルギーの相互関係/21世紀は化学の時代/あらゆるものに太陽電池を――有機太陽電池/風力発電の未来を拓く/よりエネルギー効率の高い電池を求めて――リチウムイオン電池材料/さらなる効率化の追求――IIIーV族半導体基板/透明電極も炭素でつくる――ITOをグラフェンへ/海水から飲み水を生む高分子膜――逆浸透法による海水淡水化技術/下水・排水処理も膜技術が解決――MBR(Membrane Bioreactor)/浸透圧を利用して発電も――塩分濃度差発電/点滴灌漑の10分の1の水で栽培――超節水型農業技術/どこでも安心で新鮮な野菜を――コンテナ型植物工場/身近な植物も炭素源だ――植物由来プラスチック/緑の油田からプラスチックをつくる――藻類による化学品の製造/究極の再生可能エネルギー――太陽光による水素製造
終 章 地球快適化に向けて
MBA、MOT的な経営の限界/サスティナビリティを経営に/MOS がKAITEKIにつながっていく/利潤の追求とMOSの関係/KAITEKIへの筋道を示す「地球快適化インスティテュート」/KAITEKI社会のための化学と科学/強いものが生き残れるわけではない
あとがき
付録 KAITEKI指標について/株式会社地球快適化インスティテュートとは
編著者
小林 喜光(こばやし・よしみつ)
1946年山梨県生まれ。1971年東京大学相関理化学修士課程修了。1972年ヘブライ大学(イスラエル)物理化学科、1973年ピサ大学(イタリア)化学科留学。1974年三菱化成工業株式会社入社。中央研究所にて触媒の研究を担当した後、光ディスクの研究に従事。1996年三菱化学記憶材料事業部長兼三菱化学メディア株式会社取締役社長、2005年三菱化学株式会社常務執行役員に就任、R&Dの統括を担当。2007年4月株式会社三菱ケミカルホールディングス代表取締役社長および三菱化学株式会社代表取締役社長に就任。2009年4月株式会社地球快適化インスティテュート代表取締役社長に就任。理学博士。
●造本・装丁/毛利則之(梅田敏典デザイン事務所)