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歌舞伎町より愛をこめて
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歌舞伎町より愛をこめて 路上から見た日本

歌舞伎町より愛をこめて

ヤクザとも政治家とも接点をもち、日本社会の裏も表も知り尽くした「歌舞伎町案内人」が、日本国に、日本人に、物申す。苦言に不満、新たな発見、そして日本への愛――。 Newsweek日本版 人気コラム待望の書籍化!

  • 書籍:定価1760円(本体1,600円)
  • 電子書籍:定価1408円(本体1,280円)
  • 2009.12発行
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内容

在日21年―― いまや中国一有名な在日中国人となった
「歌舞伎町案内人」による、初の“日本論”

Newsweek日本版 人気コラム待望の書籍化!
ヤクザとも政治家とも接点をもち、日本社会の裏も表も知り尽くした「歌舞伎町案内人」が、日本国に、日本人に、物申す。苦言に不満、新たな発見、そして日本への愛――。性事から政治まで、李小牧の眼で切り取った日本とは?

序言(まえがき)

この本は歌舞伎町案内人こと私、李小牧のニューズウィーク日本版の連載「TОKYO  EYE」と、週刊大衆増刊の連載「闇の邂逅」から抜粋したコラムをまとめたものである。これまで日中合わせて十六冊の本を出版した私にとって、この本はさしずめ十七番目の「孩子(子供)」、そして自分自身以外のことを書いた初めての“評論集”である。

来日十六年目、ちょうど「歌舞伎町案内人」として売り出し中だった私のところに、ニューズウィーク日本版編集部から「新しく始まる在日外国人リレーコラムの執筆陣に加わってほしい」とメールが送られてきたのは二〇〇四年三月のことだった。

「あのニューズウィークがどうして歌舞伎町案内人の私に?」と、最初は編集部の意図を理解しかねた。当時は「やわらかい」雑誌で記事は書いていたが、国際ニュース雑誌で長期連載ができるのか、という不安がまず先に立った。

だが今になって振り返れば、編集部の狙いは正しかったようだ。

第一に、わずか0.5平方キロメートルほどの面積しかない土地に、酔っ払い客からヤクザ、ホスト、ホームレス、そして外国人までが集まる新宿・歌舞伎町は、日本そして世界の縮図といっていい存在だ。世の中の変化はまずこの街に表れる。その歌舞伎町の路上に毎夜立ち、彼らを定点観測し続けている私は、余人をもって代えがたい「国際情勢ウォッチャー」(笑)である。

タイミングもよかった。ちょうど連載が始まったころは、坂道を転がるように中日関係が悪くなっていった時期。中国と日本の関係が悪くなるのは、中国で生まれ、日本で青春時代を過ごした私にとっては悲しむべきことだが、作家・李小牧としてはネタが豊富になる事態だと言えた。

北京オリンピックに四川大地震、チベットやウイグルでの騒乱と大きな事件が続いた中国だけでなく、日本も〇五年の小泉自民党の大勝利から、〇九年の民主党による政権交代へと大きく揺れ動いた時代だった。

この本は、中日関係からホリエモン、東京の五輪招致まで幅広いテーマを扱った「TОKYO EYE」と、歌舞伎町に生きる人たちを描いた「闇の邂逅」という、一見異なるコラムをまとめてある。「TОKYO EYE」の「宏観(マクロ)」な視点と、「闇の邂逅」の「微観(ミクロ)」な視点を通じて、私たちが生きる日本とわが母国・中国、そして世界を多層的に理解してもらいたかったからだが、結果的に一冊で二つの内容を楽しめるおトクな本に仕上がっている。

私はさっそく、この本の中国語版の出版を計画していて、その題名は『第三只眼睛看日本』と決めている。意味は「第三の眼で見る日本」だ。右の眼だけでも左の眼だけでも、日本からだけでも中国からだけでもない「第三の眼」で歌舞伎町や日本や中国、そして世界を見つめたとき、新たに見えてくるものがある――というのが、この本を貫くテーマである。

ニューズウィーク日本版の連載が始まるとき、編集部から「肩書きは作家にしますか?」という問い合わせを受けた。そのときも今も、私の答えは同じ。「歌舞伎町案内人です!」だ。私は今も誇りをもって歌舞伎町の路上に立ち、この街に息づく人々と世界を見つめている。

さあ、堅苦しい挨拶はこれくらいにして、読者のみなさんにはさっそくページをめくってもらいたい。性事から政治まで(笑)、ありとあらゆるテーマを「歌舞伎町案内人の眼」で切り取ったコラムを楽しんでもらえるはずだ。

李小牧

目次

序言(まえがき)

第1章 李小牧的日本人論
プライドを切り売りできる唯一の国、日本
漫画ばかり読む現実逃避の大人たち
日本のホームレスよ! ハングリーで行こう
誇るべき「世界遺産」歌舞伎町を救え
ケンカっ早い中国人。退屈な「いい人」日本人
FM局開設の夢は「公共性」の前に潰えた
女性にモテたいのなら、外見より脳ミソをセクシーに
まだ侍は日本にいる。ただし、外国人だ
プロの男が女性に声をかける、日本ならではの光景
中国の新聞を笑えない、自由な国の不自由なメディア
土台がスカスカの「偽装天国」で暮らす不安
歌舞伎町で見聞きした日本の「怪異」
協調力こそ日本らしさ。メリットしかないじゃん!
「美しい国」の監獄と、五回離婚した私の生き方
ラーメンから風俗嬢まで! ランキングに支配される人々
ただの豆腐が京都の名物? 寿司は全部しょうゆの味!
言葉を濁す「甘口文化」は辛い料理で吹き飛ばせ
熱さを失った東京に一国二制度の活力を!
和を尊ぶはずの日本にイジメの文化がある
ジャッキー・チェンも苦笑した日本人の建前主義
上に政策あれば下に対策あり。日本の活力は「欲望」だ
東洋一の歓楽街には「ヒルズ」が必要だ
日本政界に必要な「鉄娘子」小池百合子
尊敬する石原知事へ、歌舞伎町をラスベガスにしよう
五輪招致の失敗を乗り越え、東京も石原知事も「再出馬」せよ
日本人にもお勧めしたい、脳を活性化する「不眠健康法」

第2章 路上で出会った日本人たち
派手でもなく貧乏でもなく、淡々と生きるホスト
偽装結婚ブローカーも敬遠した、ある家出少女の転落
路上の見張り番は老獪なホームレス
悪徳「寄生虫」刑事は中国人ママと破滅した
そして元ヤクザは裏DVD売りになった
何十年も生き残ってきた老婆キャッチの正体
ディスコのカリスマ店員だったタクシー運転手の半生
敏腕キャッチに教わった案内人稼業のコツ
坪あたり三千万を売り上げた夜の街の粋な花屋
桃源郷のキャバクラから若き起業家が出現
オカマがみんな頼る謎の町医者先生
元ヤクザのバイク便はただのバイク便じゃない
恋愛仲介人が取り持った女子大生ストリッパーの恋
司法書士になって戻ってきた、狡猾で貪欲な不良刑事
私は疫病神なのか……事故に遭った名刺デザイナー
昼は大企業のOL、夜はハプニングバーのドM
作家志望の元ヤクザに、私は助言を求められた
中学生で歌舞伎町デビュー、筋金入りの映画脚本家
天国にいる裏本屋の店長はなにを思うだろうか
本番エステ好きなお笑い芸人は消えていった
印刷会社の営業マンがポーカーのスタープレーヤーに
危険人物を嗅ぎ分ける職質のプロがいた
「昔のことはいいですよ」年老いたマック店員は言った
リーマン・ショックで消えたホスト好きの女社長
四歳のストリートチルドレンが新宿コマ劇場の前にいた

第3章 反日・反中が吹き荒れた五年
政治や歴史はトリビアでしかないのか
在日中国人にとって、秋はメランコリックな季節
日本嫌いを育てる監視付き観光ツアーの愚
反日地震の後、意を決して訪れたヤスクニ
アジアの同胞たちのため、旧正月も祝ってほしい
日本を責める前に学ぶべき「負の歴史」
詮索好きな日本人がスパイ行為に怒る不思議
鈴木喜兵衛の遺志を継いで、日中韓が手を結ぶとき
桜との上手な接し方は外国人が知っている
東京と北京は姉妹都市。なぜ助けてくれないのか
毒ギョーザ事件でわかった日本のケンカ下手
地震チャリティーで見た、KYで無頓着な人たち
日本愛に目覚めた中国を無視しないでほしい
入りやすく住みにくい日本に、新たな「鎖国制度」を
留学生イジメをやめ、「日本語人」を増やせ
これで日本人はもう中国野菜を拒絶できない
日本には男と女、そして参政権のない外国人がいる

第4章 この国で生きる外国人たち
九〇年代の中国美人ホステスは愛を捨て、権力を渇望した
副業で中絶薬を売り、半殺しにされたコック
歌舞伎町で幸せになったラオス人ホステスの悲しい過去
ファンだという美女はストーカーになった
故郷の家族のために働き、オランダへ移住した料理人
二人の夫をもつ中国人ママの幸せとは
実業家として成功した韓国人キャッチ
強引な黒人の客引きたち。でも真面目でいい奴もいた
華やかな中国人ママは「MDMAの女王」
日本人が学びに来る職人気質の四川料理シェフ
中国人留学生のおいしいバイトとは
成功した亡命ミャンマー人の「裏ビジネス」の仕組み
歌舞伎町大学で学んで帰国した上海「飲食チェーン」オーナー
レンズ越しに十年以上、街を見続けてきた韓国人
ネットカフェ難民に部屋を貸す、中国人の不動産業者

後記

著者

李小牧(Lee Xiaomu)
1960年8月27日、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日、東京モード学園に入学する。新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始めた後、作家としても活躍。2002年のデビュー作『歌舞伎町案内人』(角川書店)はベストセラーになり、これまでに日本のほか、中国本土、香港、台湾で計16作を上梓した。現在、講演や日中ビジネスの仲介といった活動に加え、ニューズウィーク日本版オフィシャルサイト(newsweekjapan.jp/)でコラムを執筆。歌舞伎町のレストラン「湖南菜館」プロデューサーとしても多忙な日々を送る。
●公式サイト www.leexiaomu.com

●装幀・本文デザイン/神田昇和
●写真/権徹
●DTP/マッドハウス