「オバマ」のつくり方 怪物・ソーシャルメディアが世界を変える
YouTube、Facebook、Twitterなどのソーシャルメディアを、オバマ選対チームがどう使い、「オバマ・ブランド」はどうつくられたのかを徹底解説。ビジネスへの応用法をアドバイスする。
- 書籍:定価1870円(本体1,700円)
- 2009.12発行
内容
2008年の米大統領選でバラク・オバマを勝利に導いたのは、YouTube や Facebook、ブログ、携帯アプリなどのソーシャルメディア。無名の新人を「世界ブランド」に押し上げたこの新しいメディアは、企業のマーケティング戦略にとっても無視できない存在だ。大きな力を秘めた「怪物」ソーシャルメディアをうまく活用し、消費者と有益なコミュニティーをつくることができる企業には大きなチャンスが広がっている!
オバマ選対チームにいた著者がその戦略を徹底解説し、ビジネスの現場で応用するテクニックを詳しく紹介。ベストセラー『ウィキノミクス』著者のドン・タプスコット氏絶賛!!
日本語版の読者へ (抜粋)
ソーシャルメディアは、包括的なデジタル・コミュニケーション戦略と組み合わせれば、その真価を最大限に発揮する──バラク・オバマの陣営はそのことを初めて選挙で証明した。企業はオンライン・ツールをおまけのように考えがちだが、オバマ陣営の ニューメディア部門は違った。一般市民と意見を交換したり、複雑なことを解説したり、仲間に引き込んだりする有効な手段になることを明らかにした。
オバマはカリスマと知性にあふれた指導者で、彼が大統領選に出馬すると発表すると、Facebook や Google、CNN など名だたる企業の有能なスタッフが仕事を投げうって応援にかけつけた。こうして世界はアメリカで無名の上院議員が、知名度抜群の対立候補を次々と倒して、アフリカ系アメリカ人として初めて大統領の座に就くのを目撃した。
オバマ陣営はブログや携帯メール、オンラインビデオ、そしてソーシャルネットワーキング・サービス(SNS)を駆使して、何百万人もの市民をボランティア隊に変身させた。ボランティアは仲間同士で連携を取り合って、戸別訪問や電話勧誘、献金集めをした。重点が置かれたのは5ドル、10ドル、15ドル、25ドルという小口献金を何度もしてもらうこと。この画期的な戦略によって、オバマ陣営は最終的に7億5000 万ドルを集めた。このうち5億ドルはネット献金だった。
とても幸運なことに、私はこの選挙活動にボランティアとして参加することができた。この本はシカゴにあるオバマ選対本部のニューメディア部門で私が見たことや経験したことをつづっている。そこでは複雑で画期的な戦略が作られ、ほぼ完璧な形で実践されていた。この本では選対の「進化」をたどりながら、オバマ陣営のニューメディア戦略で様々なオンライン・ツールが不可欠の役割を果たしたこと、そして選挙事務所とい う、かけ出しの企業に似た組織から一般企業が学べることを紹介していく。
ソーシャルメディアは、消費者とブランドの関係を根本的に変えた。企業がブランド・アイデンティティー(ブランドが打ち出したいコンセプトを明確に表現したもの)を練り上げて、一方的に消費者に押し付ける時代は終わった。今日のブランドは常に変化し続ける流動的な概念であり、ネット上での消費者を交えた活発な対話によって形成される。
企業が力を入れるべきことも、単に商品を売ることではなく、コミュニティーを構築することへと変わった。この点で成功しているブランドもあれば、苦戦しているブランドもある。
ソーシャルメディアは、あなたの会社の強みと弱みを映し出す鏡だ。ネット上での評判は、消費者があなたの会社のブランドをどう見ているかを表している。ソーシャルメディアを小手先の戦術として使ったり、物事を実際よりカッコよく見せるために使うのはもう古い。時代はもっと先を行っているのだ。
ソーシャルメディアの時代はもう到来している。あなたの会社はその準備ができていますか?
──ラハフ・ハーフーシュ
目次
日本語版の読者へ
序文 ドン・タプスコット
PART1 「無名」からの挑戦~ムーブメントの始まり
Chapter 1 新米上院議員をよろしく――新しいコミュニティーの誕生
既存のグループを活用する/メッセージを行動に移す/「正しい」インセンティブを与える/体験のパーソナル化/ユーザーとの関係づくりは時間をかける
Chapter 2 クリントンに挑む――選挙戦のルールを書き換える
イベントを仕掛ける/自分たちのペースに引き込む/オンラインからオフラインへ/正直かつ率直に語る
Chapter 3 本選への切符――論争をリードする
小さな努力のパワー/ピンチをチャンスに変える/ユーザーに手本を示す/やる気のある人に仕事を任せる
Chapter 4 過去の教訓を活かす――ネット選挙の歴史
カスタマイズしたメッセージ/ネット上の選挙運動/新しいテクノロジーの出現/イノベーションの前提条件
【ドキュメント】 Personal Experience 「『オバマランド』へようこそ」
PART2 ブランドの確立~魅力的なビジョンを打ち出す
【ドキュメント】Personal Experience 「選挙戦は続く」
Chapter 5 世界ブランドの誕生──希望をデザインする
Chapter 6 公式SNS──ポイントは「地域密着」と「リアル」
ユーザーに目標を意識させる/ユーザーを「その気」にさせる/クリエーティブな活動を促す
Chapter 7 クチコミ──ターゲットはお隣さん
ユーザーが気楽に参加できる環境を整える/小規模な活動を頻繁に実施する
Chapter 8 メール──「あなただけ」のメッセージの威力
目的を明確にして行動を呼びかける/メッセージ性を持たせる/モチベーションを与える/身近な話題を含める
Chapter 9 携帯メールと携帯アプリ──いつでもどこでも素早くアクセス
いつもユーザーに選択肢を与える/対話を生み出す/移動先でも参加してもらう
Chapter 10 ブログ──ユーザーをつなぐハブ
人間味のあるエピソードを紹介する/古い機能を新しい方法で使う/ネットワークの入口を作る/主役はユーザー
Chapter 11 SNS──あらゆる場所で存在アピール
ターゲットの消費者がいる場所に行く/適切なSNS を選ぶ/数ではなく関係の深さを大切にする/ソーシャルエチケットを理解する/SNS を流通プラットフォームに変える/社内外のコンテンツを活用する
Chapter 12 動画──キーワードは「感動」
楽しませながら宣伝する/消費者に直接語りかける/動画は短く楽しく/コンテンツをシェアする
Chapter 13 分析とオンライン広告──重要なのはトラフィックの質
エンドユーザーの視点で考える/プロジェクトの効果を分析し改善し続ける
PART3 大統領として~新しいスタート
【ドキュメント】 Personal Experience 「大統領選投票日」
Chapter 14 新しい政府のかたち─デジタル政権
謝辞
著者
ラハフ・ハーフーシュ(Rahaf Harfoush)
ニューメディア・ストラテジスト。テクノロジーがコミュニケーションや仕事、娯楽にどのような影響を与えるかというテーマに取り組む。ドン・タプスコットの『ウィキノミクス──マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ』や『デジタルネイティブが世界を変える』のリサーチなどにも携わる。
訳者
杉浦茂樹(すぎうら・しげき)
翻訳者。訳書に『ハッカーを撃て!』(阪急コミュニケーションズ)、『やっぱり、あるあるマーフィーの法則』(共訳、同上)、『ユダの福音書を追え』(共訳、日経ナショナル ジオグラフィック)、『銀むつクライシス』(早川書房)、『ヨーロッパに架ける橋』(みすず書房)など。
藤原朝子(ふじわら・ともこ)
翻訳者。ニューズウィーク日本版、ロイター通信、フォーリン・アフェアーズ日本語版で翻訳を担当。『世界難民白書 1997/98』(読売新聞社)、『緊急対応ハンドブック』(UNHCR日本・韓国地域事務所)、『オバマ大統領演説』(コスモピア)などの翻訳に参加。
●ブックデザイン/伊藤 猛(Ti-Works)