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GENIUS MAKERS Google、Facebook、そして世界にAIをもたらした信念と情熱の物語

ケイド・メッツ 著

小金輝彦 訳

GENIUS MAKERS

ロサンゼルス・タイムズ、フォーブス、ワシントンポストが大絶賛!!

持病で7年間1度も座ったことがないAI技術者ジェフリー・ヒントン。
従業員わずか3人の彼の会社をグーグル、マイクロソフト、バイドゥが大金をかけて奪い合うオークションから物語は始まる。
個性的な研究者と野心的な事業家たちを追ったスリル満点のノンフィクション!

  • 書籍:定価2200円(本体2000円)
  • 電子書籍:定価1760円(本体1600円)
  • 2021.10.19発行
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世界中から絶賛の声!

AIについて書かれたほかの多くの書籍と違い、本書から学び、本書を楽しむのに、科学や工学の学位は必要ない。科学、技術そして人類の文化の未来に熱烈な好奇心をもつ人なら誰でも、明快かつ簡潔に書かれた本書を、面白く有益だと思うことだろう。人工知能が生みだす社会的な勢力に取り組む、あらゆる政策立案者、政治家、警察官、弁護士、裁判官、意思決定者にとっての必読書と言っても過言ではない。人工知能は、いずれ誰にとっても重要なものとなる。
――ロサンゼルス・タイムズ

 
いつか近い将来に、コンピューターが道路で安全に運転したり、完全な文章で人間に話しかけたりするようになったとき、私たちはケイド・メッツの的確で圧倒的な『ジーニアス・メーカーズ』を、意識をもつコンピューターが生まれた創世記を描いた誕生物語として読み返すことになるだろう。
――ブラッド・ストーン、『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』の著者。
 
 
非常に面白く、読みはじめたら止まらないこの本は、人工知能を人間の視点で描いている。ジェフリー・ヒントンやほかの主要人物の人生を通して、メッツはこの変革的なテクノロジーを説明し、その探求をスリルに富んだものにしている。
――ウォルター・アイザックソン、ニューヨーク・タイムズのベストセラー『レオナルド・ダ・ヴィンチ』『スティーブ・ジョブズ』の著者。

『ジーニアス・メーカーズ』は、読者をとりこにする、人工知能の最も信頼できる近代史だ。ケイド・メッツの詳細な語りは、経営幹部、開発者、投資家によってなされた重要な決断を明らかにし、そうした決断が人類の未来にもたらすであろうあまりにも大きな影響を予示している。
――エイミー・ウェブ、『BIG NINE 巨大ハイテク企業とAIが支配する人類の未来』の著者

 
人を引きつける新しい本だ。メッツの明快な著述は、機械が「ディープラーニングを行う」「自身の経験を通してタスクを習得する」が何を意味するのかわからない(私のような)テクノロジーに疎い読者のために、専門用語を完璧に分かりやすい言葉に置き換えてくれている。
――クリスチャン・サイエンス・モニター
 
 
複雑に入り組んで変わりつづける登場人物たちを描いた本書には、物語に味わいと劇的な要素を加える啓蒙的なエピソードが満載されている。『ジーニアス・メーカーズ』は、今日の世界を変えつつある「ディープラーニング」の発達に最も重要な役割を果たしたと誰もが認める、カナダを活動拠点とする英国人、ジェフリー・ヒントンの話から始まっている。
――ワシントンポスト
 
 
読者は、人類の歴史のなかできわめて重要な出来事となるかもしれない何かを目の当たりにする。メッツの文体は容易に、かつ楽しく読むことができる。まぎれもない傑作だ。
――フォーブス

 
『ジーニアス・メーカーズ』のなかで、ケイド・メッツは、AI技術がどのように進化し、またその出現が私たち人類にとってどんな意味をもつかについて、明確な見解を述べている。根気強い報告と心躍る記述によって、本書は現代における最も重要な物語のひとつとなっている。AIを理解するために本を読みたいと思うのなら、本書はまさにそのための一冊だ。
――アシュリー・ヴァンス、ニューヨーク・タイムズのベストセラー『イーロン・マスク 未来を創る男』の著者
 
 
ケイド・メッツは、人工知能の進化に関する、読者をとりこにするような物語を生みだした。主要な人物、将来的に大きな影響力をもつ会議、きわめて重要なブレイクスルーを、得意の観察力をいかして、時代を特徴づけるこのテクノロジーの劇的な歴史のなかに組みこんだのだ。
――李開復(カイフー・リー)。『AI世界秩序 米中が支配する雇用なき未来』の著者。
 
 
本書は、グーグルやフェイスブックをはじめとするハイテク企業にAIが浸透した経緯についての内部事情を物語っている。また、シリコンバレーとその巨額の資金がいかにしてAIに入りこみ、その方向性を変えたかを明らかにする物語でもある。舞台裏のエピソードやひねりの効いたユーモアが満載で、人類を変えつつあるテクノロジーの真実を、読者は知ることになる。
――オーレン・エツィオーニ、アレン人工知能研究所CEO
 
 

プロローグ 座らなかった男

ジェフリー・ヒントンは、タホ湖に向かうためにトロント市街でバスに乗り込んだ時点で、すでに七年間座ったことがなかった。
「最後にまともに座ったのは、二〇〇五年だった」と、ヒントンはよく口にした。「そしてそれが間違いだった」。
最初に腰を痛めたのは、一〇代のころ母に頼まれてヒーターを持ちあげたときだった。五〇代後半になると、座れば必ず椎間板ヘルニアを起こすようになり、ひとたびそうなってしまうと痛みのために数週間寝たきりになる恐れがあった。それで座るのをやめてしまったのだ。トロント大学の研究室では、立ったまま作業のできる机を使っていた。食事のときは、クッション材の入った小さなパッドを床に敷き、テーブルの前にひざまずいた。その姿はまるで瞑想に入る前の仏教僧のようだった。車に乗るときは、後部座席で体を伸ばして横になった。そして長距離を移動する際は、列車を使った。飛行機にはーー少なくとも民間の航空機にはーー乗ることができなかった。離着陸のときに必ず着席させられるからだ。
「自分は肢体が不自由なので、その日一日を無事に過ごせるかどうかもわからないと思うまでになった。だから真剣に受けとめることにしたのだ」とヒントンは言う。
「それを完全に受け入れた生活を送れば、何の問題もない」
その年の秋、ヒントンは新しい会社を設立していた。ニューヨークへ向かうバスの後部に横たわり、シエラネバダ山脈の高山地帯に位置するカリフォルニア州トラッキーまではるばる列車に乗ってから、タクシーの後部座席いっぱいに体を伸ばしたまま山道を三〇分登ってタホ湖にたどり着く前の話だ。その会社には、ヒントンのほかにふたりしか社員がいなかった。ふたりともトロント大学のヒントンの研究室で学ぶ大学院生だった。何の製品もつくらず、今後もつくる計画がない会社だった。会社のウェブサイトは、「DNNリサーチ(DNNresearch)」という社名を載せているだけで、ウェブサイトと呼ぶのもおこがましいものだった。
くしゃくしゃの白髪頭にウールのセーターといういで立ちで、二歩先をいくユーモアのセンスをもつ六四歳のヒントンは、学会のことは熟知しているようだったが、ふたりの学生に説得されるまで、自分が起業したいのかどうかさえよくわかっていなかった。だがタホ湖に到着すると、起業したばかりの彼のスタートアップ企業に対して、すでに中国の最大手企業が一二〇〇万ドルという値段を提示してきた。そしてすぐに、ほかの三社が入札に加わった。そのなかには米国のテクノロジー大手の二社が含まれていた。
ヒントンは、タホ湖の南側にあるスキー場のふもとにそびえ立つ「ハラーズ」と「ハーベイズ」というふたつのカジノ・リゾートへ向かった。ネバダ州に多く見られるリンバーパインという松の木を見下ろすように建つ、ガラスと鋼鉄と石でできたこの施設は、コンベンションセンターも兼ねていて、数百の客室と数十の会議室と多種多様な(そこそこの)レストランがあった。その一二月、ここでNIPSと呼ばれる、コンピューター科学者たちの年次会議が開催された。
NIPSは、「神経情報処理システム」の略称で、コンピューター科学の未来を深く研究する人工知能(AI)を専門に扱う学会だ。一九七〇年代初頭から、英国、米国、カナダの大学でAIという最先端領域を研究してきたロンドン生まれの学者であるヒントンは、ほぼ毎年NIPSへ参加していた。中国が自分のつくった会社に関心があるのはすでにはっきりしていたが、ほかにも興味をもっている企業があることをヒントンは知っていた。そのため、オークションを開くにはNIPSが理想的な場に思えたのだ。
二カ月前、ヒントンと学生たちは、コンピューターによる世界の見方を変えていた。ニューラルネットワークと呼ばれる、脳の神経回路網を数理モデルで表現したものを構築したのだ。それによって、かつては不可能だと思われていた、花や犬や猫といったありふれた物体を正確に識別することが可能になった。
ヒントンと学生たちが明らかにしたように、ニューラルネットワークは、膨大な量のデータを分析することによって、この非常に人間的な技能を習得することができた。
ヒントンはこれを「ディープラーニング」と呼び、その潜在力は非常に大きかった。コンピューター・ビジョンだけでなく、音声デジタル・アシスタントから自動運転車や創薬まで、すべてを一変させるのは確実だった。
ニューラルネットワークの概念が生まれたのは一九五〇年代に遡るが、初期の先駆者たちは、期待していたような結果を一度も出すことができなかった。世紀が変わるまでには、ほとんどの研究者がこの考えを放棄していた。誰もが技術的な行き詰まりを感じていて、こうした数学的なシステムが、なんらかの方法で人間の脳の働きを再現するという五〇年前の奇抜な思いつきに、とまどいを覚えていたのだ。このテクノロジーを研究していた者たちは、いまだに学術誌に論文を寄稿する際には、何か別のものであるかのように装い、「ニューラルネットワーク」という言葉を、科学者仲間をあまり刺激しないような別の言葉に置き換えることが多かった。
ヒントンは、ニューラルネットワークがいつの日か期待した成果をあげると固く信じていた数少ない研究者のひとりだった。
ニューラルネットワークが、生物学、医学、地質学やそのほかの科学の謎を研究する新しくより鋭敏な方法を提供し、物体を認識するだけでなく、話し言葉を識別し、自然言語

を理解し、会話を続行して、人間が自分では解決できないような問題も解くことができるコンピューターをつくれると考えたのだ。そうしたヒントンの姿勢は、大学内でも奇抜なものと見られていた。そのため、みずから学習するようなコンピューターをつくるという、長く曲がりくねった探求の道を一緒に歩む教授をもうひとり雇って欲しいというヒントンの要求を、大学は長年拒絶してきたのだった。「こんな研究を好んでするようないかれた人間は、ひとりで十分というわけだ」と、ヒントンはよく口にした。

(以下省略)※続きは本書でご確認ください。

もくじ

プロローグ 座らなかった男

第1部:新しいタイプの機械

第1章 起源
第2章 約束
第3章 拒絶
第4章 ブレークスルー
第5章 決定的な証拠
第6章 野望
第2部:知能は誰のもの?

第7章 対抗意識
第8章 誇大広告
第9章 反誇大広告
第10章 爆発
第11章 拡張

第12章 夢の世界

第3部:混乱

第13章 欺瞞
第14章 傲慢
第15章 偏見
第16章 武器化

第17章 無力

第4部:人間は過小評価されている

第18章 公開討論
第19章 自動化
第20章 信仰
第21章 Xファクター

略歴

【著者】ケイド・メッツ:
『ニューヨーク・タイムズ』のテクノロジー記者で、人工知能、自動運転車、ロボット、仮想現実、量子計算、そのほかの新興分野を担当。前職は、雑誌『ワイアード』の編集委員。本書がデビュー作となる。

【訳者】小金輝彦:

英語・仏語翻訳者。早稲田大学政治経済学部卒。ラトガース大学MBA。訳書に『シャドウ・ウォー』(原書房)、『アメリカが見た山本五十六』(共訳、原書房)などがある。

 

装丁・本文デザイン:見増勇介(ym design)
DTP:茂呂田 剛(エムアンドケイ)
校正:麦秋アートセンター