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恋するサル 類人猿の社会で愛情について考えた
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恋するサル 類人猿の社会で愛情について考えた

黒鳥英俊 著

恋するサル 類人猿の社会で愛情について考えた

支配しない。理解する。
伝説の飼育員が見た、「男女の愛」「血を超えた親子の愛」「種を超えた愛」。
人間関係に疲れたら、動物園へ出かけよう。

育児放棄された赤ちゃんチンパンジーを、まったく血のつながりがないメスがわが子のように育てる。強い握力を持つゴリラが、小さなダンゴムシをそっとやさしくペットのように扱う。ときには、飼育員に恋もする。飼育員が困っていると率先して助けてくれるオランウータンもいる。上野動物園や、多摩動物園で、長きにわたり大型類人猿(ゴリラ、オランウータン、チンパンジー)を担当してきた伝説の飼育員が目撃した、心あたたまる愛の実話。

飼育員といえば、動物の世話を「してあげる」人たちと思われているが、そうではない。動物に「仕えている」というスタンスで仕事をするのが、彼らと仲良くするコツだ。高度な知能を持つ大型類人猿に対して、私たちは、それでもやはりヒトのほうが賢いと思っている。しかし、彼らのいちばん身近で過ごす飼育員だった私は、彼らのほうがずっと賢いと思うことがよくあった。たとえば、言葉を持たないゴリラを納得させようとすると、その場しのぎのごまかしや嘘、先送りは通用しない。納得するまで、相手としっかり向き合わなければならない。言葉があるせいで誤解し合ったり、揉めたりしてしまう私たちのコミュニケーションに比べると、ゴリラとのコミュニケーションはシンプルだが、心を通わせるという意味においては、ずっと本質的かもしれない。大型類人猿と私たちとでは流れる時間が少し違う。それでも、焦らず、支配しようとせず、理解しようとする。種を超えた生き物どうしが仲良くする秘訣であり、これは違う人間どうしが仲良くする場合のヒントとなるかもしれない。

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