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人類vs感染症 新型コロナウイルス
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人類vs感染症 新型コロナウイルス

國井 修 著


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人類vs感染症 新型コロナウイルス

世界で今、何が起きているのか。

いまだ全世界で感染拡大を続ける新型コロナウイルス。
このウイルスの正体は?
各国はこの危機にどう対処しているのか?
日本モデルは効果的なのか?

感染症対策の第一人者が検証・提言。

  • 書籍:定価1760円(本体1,600円)
  • 2020.07.発行
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内容

【緊急出版】
新型コロナウイルスによるパンデミックの
始まりから今後の見通しまで
感染症対策の第一人者が検証・提言。
 
本書は、新型コロナウイルスに関する情報をグローバルな視点で解説し、
緊急提言をしてほしいとの依頼を受けて記した――
私は現在、スイス・ジュネーブの国際機関で、世界三大感染症と呼ばれるエイズ、結核、マラリア対策を行っているが、我々が支援している100か国以上の低中所得国にも新型コロナウイルス感染が蔓延し、ある地域では今まさに爆発している。これらの三大感染症と新型コロナウイルス対策を同時進行しなければならない。これらの情報を共有したい。(「はじめに」より)

はじめに

 Disease X(疾病X)──将来人類の脅威となるかもしれない、原因不明、対策もわからない新たな感染症。
 2018年、WHO(世界保健機関)は、エボラ熱、ラッサ熱、SARS(重症急性呼吸器症候群)など既知の危険な疫病に加えて、世界が優先的に研究開発すべき疾病リストを「研究開発ブループリント(R&D Blueprint)」に追加した。
「疾病X」のXは、Unexpected(予想外)の意味である。自然界に棲息する病原体が動物から人間に漏れ出し(spillover スピルオーバーという)、突然変異をして、ヒトからヒトに感染し始めることがある。天然痘、マラリア、ペスト……。人類がこれまで闘ってきた「疫病」の多くが、もともと自然界からやってきたものだ。エボラ熱、エイズ、SARSなど、近年世界を騒がせてきた新たな感染症を引き起こす病原体も、自然界からの贈り物だ。
 だから、「疾病X」がやってくることは、人類にとっては「予想内」、必然でもあった。
 しかし、それがいまの時代にこのような形で到来し、拡大し、これほどの悲惨な結果をもたらすことになるとは、誰が予想できただろうか。
 このウイルスはエボラ熱などとは違った戦法で忍び寄り、潜り込む。人間の油断に付け込み、意表を突いて奇襲攻撃をしかけ、気づいた時には驚くほどの犠牲者が生まれていた。
 感染は中国で始まり、アジアに広がり、欧州に飛び火して、各地で目を疑うような感染爆発や医療崩壊を起こした。100年前のスペイン・インフルエンザの悲劇を彷彿とさせる光景が、そこにはあった。
 心配ないと高をくくっていたアメリカにも感染は広がり、患者数と死者数はうなぎ上りに急増。世界最多となった。その死亡者数は、あれほど世界を騒がせた中国の30倍近くに上り、ベトナム・アフガニスタン・イラク戦争の米国兵士の戦死者総数をも超えた。
 1ミリの1万分の1の大きさの敵を相手に、世界が束になって現在も闘いが繰り広げられている。が、本稿執筆時点(2020年7月)でその勝利は見えていない。
 ただし、新型コロナウイルスが中国・武漢市で集団発生した当初、またWHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した頃、そして、イタリア・スペインで感染爆発・医療崩壊が起こった時期に比べると、この「見えない敵」に関するデータや情報は確実に増えた。敵の正体が少しずつ見えてきた。戦い方も見えはじめ、新兵器の治療薬やワクチンの研究開発も進んできている。

 本書は、新型コロナウイルスに関する情報をグローバルな視点で解説し、緊急提言をしてほしいとの依頼を受けて記した。
 私は現在、スイス・ジュネーブの国際機関で、世界三大感染症と呼ばれるエイズ、結核、マラリア対策を行っているが、我々が支援している100か国以上の低中所得国にも新型コロナウイルス感染が蔓延し、ある地域では今まさに爆発している。これらの三大感染症と新型コロナウイルス対策を同時進行しなければならない。これらの情報を共有したい。
 また、私が住んでいるスイスや、同僚たちの母国であるイタリア、フランス、スペインなどでも新型コロナウイルスが大流行し、ロックダウン(都市封鎖)が行われた。毎日の生活の中で感じたコロナとの闘い、また同僚たちとのやり取りの中で得た情報なども伝えたい。

 本書は8章構成となっている。
 第1章では、新型コロナウイルスとその感染症とはどのようなものなのか、簡単に整理して解説する。
 第2章では、2020年6月までの、新型コロナウイルスによる世界大流行(パンデミック)の推移や影響など全体像を説明し、併せて主要国の状況をデータで示す。
 第3章では、中国、韓国、台湾、シンガポール、ニュージーランド、オーストラリアなどアジア・オセアニアの国々の事例を説明し、教訓を整理したい。
 第4章では、イタリア、スペイン、イギリス、ドイツ、スウェーデン、アメリカなど、欧米の国々の事例を説明し、教訓を整理する。
 第5章では、イラン、ロシア、インド、ブラジルなど、中所得国、または新興国の中で感染拡大している国々の事例を説明したい。
 第6章では、多くの発展途上国を抱えるアフリカでの感染流行の現状、リスクと対策などを説明する。また、紛争などで国家が機能していない、いわゆる「脆弱国家」についても触れたい。
 第7章では、ワクチンや治療薬などの研究開発、その他の対策に関する国際協力・協調について述べる。
 そして第8章では、日本の対策を含め、これまでの新型コロナウイルスのパンデミックとその対策から得た教訓をまとめ、将来どうすべきかについて検討し、私見を述べたい。

2020年7月  著 者

目次

はじめに 

第1章 新型コロナウイルスとは
どんな病原体か?
ウイルスと感染症の正式名称は?
他のコロナウイルスとの違いは?
季節性インフルエンザとどこが違うのか?
どこから来たのか? 
どのように伝播するか
どのようにヒトの体内で感染・増殖するのか? 
どんな検査方法があるのか?
一度感染しても再感染するか?
どのくらい死亡のリスクがあるか?
新型コロナは突然変異しているのか? 感染力が強くなっているのか?
ワクチンはいつになったらできるのか?
治療薬はあるのか?

第2章 パンデミックの全体像と世界の比較 
タイムライン
感染者数・罹患率
死者数・死亡率・致命率 
検査数・検査率
主要国の感染流行・死亡に関するデータ 

第3章 アジア諸国の感染流行と対応
●中国 すべてはここからはじまった
●韓国 「韓国モデル」と世界が注目した国
●台湾 専門的知見を政治的決断につなげた国
●シンガポール 「明るい北朝鮮」の挑戦
●ニュージーランド 世界で最も厳しいロックダウンを実施した国 

第4章 欧米諸国の感染流行と対応 
●イタリア・スペイン 感染爆発と医療崩壊を起こした国
●イギリス 公衆衛生トップからコロナ死者数欧州トップに移行した国 
●ドイツ 欧州の優等国 
●スウェーデン 独自路線を崩さなかった国 
●アメリカ 医療費世界一、感染者数世界一の国 

第5章 新興国・中所得国の感染流行と対応
●イラン なぜこんなところに? と不思議がられる国
●ロシア 感染急増しながら死者が増えない国
●インド 感染爆発中で止まらない国
●ブラジル 政治的決断の重要性を思い知らされた国

第6章 アフリカ・紛争国――懸念が残る地域
アフリカの強み/弱み
対策を行う上での問題
今後のアフリカの展望
紛争国・脆弱国
イエメン
アフガニスタン
イラク

第7章 国際社会はどう動いたか 
G7(主要7か国)の取り組み
G20(主要20か国)による取り組み
国連による取り組み
グローバルファンドの支援
WHOの役割 
市民社会・民間の役割

第8章 新型コロナ流行から得た教訓と未来 
なぜ日本は感染を抑え込めたのか
介入措置 
政治的決断と専門的知見との融合 
情報の収集・分析・発信
公衆衛生と経済対策のバランス
産学官民連携・パートナーシップ
国際協力
ウィズコロナ、ポストコロナの時代

あとがき
主な参考文献

略歴

國井 修(くにい・おさむ)
グローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)戦略・投資・効果局長。
1962年10月20日、栃木県大田原市生。学生時代にインドに留学し伝統医学とヨガを学ぶ。1988年、自治医科大学卒業。公衆衛生学修士(ハーバード
大学)、医学博士(東京大学)。内科医として病院や奥日光の山間僻地で診療するかたわらNGO を立ち上げ、国際緊急援助や在日外国人医療に従事。1995年、青年版国民栄誉賞である「人間力大賞(TOYP)」外務大臣賞とグランプリを受賞。国立国際医療センター、東京大学、外務省などを経て、2004年、長崎大学熱帯医学研究所教授。2006年より国連児童基金(ユニセフ)に入り、ニューヨーク本部、ミャンマーでの活動を経て、2010年より内戦中のソマリアで子どもの死亡低減のための保健・栄養・水衛生事業を統括。2013年2月より現職。これまで110か国以上で人道支援、地域保健、母子保健、感染症対策、保健政策の実践・研究・人材育成などに従事してきた。グローバルファンドは世界で最も多くの人命を救っている国際機関のひとつで、2002年の創設よりこれまでに3400万人の人命を救ってきた。

●カバー写真/gettyimages
●ブックデザイン/轡田昭彦+坪井朋子
●校閲/竹内輝夫