ハーバード・ビジネス・スクールの投資の授業
あのウォーレン・バフェットをはじめ著名投資家たちの「目利き力」の秘密を解き明かす、HBSスター教授陣の「研究成果」を初めて公開。ハーバード流「最強の投資家」のつくり方。
- 書籍:定価2200円(本体2,000円)
- 電子書籍:定価1760円(本体1,600円)
- 2016.07.22発行
内容
多くの経営者を輩出する名門ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)。
そこではビジネスだけでなく、「投資」についても
厳密な研究がなされ、成果が蓄積されているという。
HBS留学時、3人のスター教授から授業、ケース・スタディ、
論文、課外活動などを通じて直接それに触れた著者が、
そこで吸収した「世界トップレベルの投資術」を紹介。
さらに、個人投資家がそれをどう活用するかも解説。
本書の構成
本書は、HBSが教える投資術について紹介するものですが、一言に投資といっても投資対象は無限にあり、投資家の種類も異なります。例えば、
・上場株式からデリバティブまで幅広く投資する、ヘッジファンド。
・未公開企業のターンアラウンドを目指す、プライベート・エクイティ・ファンド。
・スタートアップ企業に投資する、ベンチャー・キャピタル。
このように多種多様なタイプの投資家がいる中で、本書の主役は、主に米国の公開株式市場を主戦場とする投資家たちとなります。本書では、HBSの授業で取り上げた、米国以外のケース・スタディ(例えば日本のケース・スタディ)も登場しますが、主に米国の公開株式に投資する投資家についてのケース・スタディや研究を中心に紹介していきます。
これは、HBSの投資に関するケース・スタディの対象や研究のフォーカスが、このタイプの投資家たちに集中しているためです。もちろん、未公開株を対象とするプライベート・エクイティやベンチャー・キャピタルの研究も進んでおり、それらを対象とした専門のコースも存在しますが、相対的には少ないのが現状です。要因としては、米国株式市場の規模と透明性が挙げられます。米国の株式市場は世界最大の市場であり、多種多様なプレーヤーが切磋琢磨する上で透明性が確保され、過去に遡って豊富なデータが蓄積されています。研究対象としては最高の条件が揃っているため、ケース・スタディや論文の質も向上し、数も多くなります。そして、それらを活用した専門的な授業やクラスが多く開講されており、著者を含む投資家を志すHBS生たちを魅了しています。
また、プライベート・エクイティやベンチャー・キャピタルと違い、米国の公開株式市場には日本の個人投資家でもアクセスが可能です。これらのケース・スタディや研究を中心に取り上げることにより、みなさんにも投資を身近に感じていただくとともに、本書で紹介するいくつかのコンセプトを自身の投資にて実践していただければ幸いです。
本書では、投資家を志すHBS生が、授業、ケース・スタディ、論文、課外活動などを通じて習得するコンセプトを、厳選してご紹介していきます。
まず、第1章では、スター投資家たちの「目利き力」についてご紹介します。スター投資家と普通の投資家の違いは、一言で言えばその「目利き力」にあります。そもそも目利き力とは何のことか。そして、なぜHBSがスター投資家たちの目利き力に注目するのか。HBSが定義する目利き力とは何なのか。そういったことを中心に取り上げていきます。
そして、第2章では、「スター投資家養成所」としてのHBSをご紹介します。世界最高峰のMBAとしてビジネス・リーダーを輩出し続けるHBSは、実はスター投資家の養成所でもあります。また、そのスター投資家養成所にて最先端の研究を発表し続けるスター教授陣についてもご紹介します。さらに、投資家というキャリアとMBAの関係についても触れます。
第3章では、いよいよHBSが教える投資術の本質に入っていきます。「目利き力」と言うと、「何に」投資するかの判断にだけ長けていると思われがちですが、HBSが教える目利き力の源泉はそれだけに留まりません。「何に」投資するかに加えて、「どのように」投資するか、「誰が」投資するか、「何を」投資するか、といったことを総合的に勘案して、目利き力があるかないかを判断します。これらの要素について、HBSのスター教授陣の研究をご紹介しながら、それぞれ深掘りしていきます。
「何に」投資するか、については、一言で言うと「情報を制する者が投資を制する」ということです。情報は、取り方と解読法で差をつける。それが目利き力に繫がる。このポイントについて最先端の研究をご紹介します。
「どのように」投資するか、については、一言で言うと「自分を制する者が投資を制する」ということです。投資判断をするプロセスにおいて差をつける。それが目利き力に繫がる。このポイントについて最先端の研究をご紹介します。
「誰が」投資するか、については、一言で言うと「インセンティブを理解する者が投資を制する」ということです。誰がどのようなインセンティブを持って投資しているかを事前に把握しておくことで差をつける。それが目利き力に繫がる。このポイントについて最先端の研究をご紹介します。
「何を」投資するか、については、一言で言うと「投資業界の聖杯を制する者が投資を制する」ということです。運用する資金の性質によって差をつける。このポイントについては、世界屈指の機関投資家であるハーバード大学基金のケース・スタディを基に深掘りしていきます。このケース・スタディは、「何を」に加えて、「誰が」「どのように」投資するかについても示唆に富んでいますので、併せてご紹介します。
最後に、第4章では、HBSが教える投資術を、みなさんが日々の投資に取り入れられるように、実践に当てはめていきます。HBSはあくまでも経営や投資判断のコンセプトを教える場ですので、その使い方は担い手に委ねられています。ここでは、第3章でご紹介したコンセプトを、スター投資家たちの最先端のプラクティスなどを参考にしながら、「実践法」としてご紹介します。
以上が本書の構成となります。HBSが教える投資術や、その実践法をご紹介するにあたって、スター投資家たちをも魅了する投資の世界の本質をみなさんに少しでも感じ取っていただければ、著者としてこれ以上の幸せはありません。
目次
はじめに
第1章
スター投資家たちの秘密――「目利き力」とは
1 投資家の祭典
2 投資とは
なぜ投資をするのか――「チャンスの女神に後ろ髪はない」
投資とは、将来に受け取る価値を増やすこと
投資とギャンブルの違い3
3 目利き力とは
投資は目利き力が全て
HBSが目利き力にこだわる理由
4 目利き力の対価
世の中にタダ飯は存在しない――目利き力の対価
ビジネスの基本は、付加価値を創造し、享受すること――目利き力も同じ
大半のプロは目利き力がない?
第2章
「スター投資家養成所」としてのHBS
1 スター投資家を輩出し続けるHBS
2 なぜ投資家というキャリアはHBSで最も人気があるのか
3 HBSの投資の授業とスター教授陣
4 HBSのスター教授陣とスター投資家たちの補完関係 .
5 投資家にMBAは必要か
第3章
HBSが教える投資術
1 HBSが教える目利き力の基本
有名な企業より、聞いたことのない企業に注目しよう
今話題の企業より、旬が過ぎた企業に注目しよう
株価に勢いがない企業より、動きがある企業に注目しよう
2 HBSの最先端の研究から学ぶ❶
「何に」投資するか――情報を制する者が投資を制する
情報は取り方で差をつける
A 情報は足で稼ぐ
B 投資先は地元で探す
C ソーシャル・ネットワークを活用する
情報は解読法で差をつける
A インサイダーによる取引が示唆するもの
B 決算が悪かった企業にはしばらく手を出さない
C 企業同士の関係に注目せよ
D 企業の公開電話会議に隠されたメッセージ
E 業界のスパイを活用せよ?
3 HBSの最先端の研究から学ぶ❷
「どのように」投資するか――自分を制する者が投資を制する
投資家の最大の敵は自分自身?
投資家が陥る典型的なワナ
A 利益と損失は不平等
B 判断すること自体を判断しない
C 思い出しやすい事象を過大評価
D ホットハンドと平均回帰
E 数字は言ったもの勝ち? ――アンカリング
F お金には色がある? ――メンタルアカウンティング
G 振り返れば、物事はいつも自明? ――ハインドサイトバイアス
投資は経験がモノを言う?――過去の経験の認知バイアスを活かす
自動で運用してワナを回避?――クオンツ対ファンダメンタル投資家
投資の宝探し――一物二価を探す
投資戦略を構築する
A市場の間違いを特定する
Bカタリストを特定する
C取引方法を特定する
4 HBSの最先端の研究から学ぶ❸
「誰が」投資するか――インセンティブを理解する者が投資を制する
雇われ投資家のインセンティブを理解する
インセンティブがもたらす千載一遇のチャンス――日経平均の構成銘柄入替のケース・スタディ
取引動機の重要性――ノン・エコノミック・セラーを特定する
アクティビスト投資家は経営改善を本当に望んでいるのか
企業側のインセンティブを理解する――親子上場が多い日本はチャンスの宝庫?
国会の動向が株価を左右する?
5 HBSが実践する投資手法から学ぶ
「何を」「誰が」「どのように」投資するか――ハーバード大学基金の目利き力
HBSが誇るケース・スタディ――ハーバード大学は世界屈指の投資家 1
投資業界の聖杯を有するハーバード大学基金
投資家の目利き力を見極める目利き力
目利き力もニッチによって価値が違う――相関の重要性
第4章
HBSが教える投資術を実践する
1 総合編
世界有数のヘッジファンド、ハーバード大学基金、そして個人投資家に共通するものとは?
レバレッジにはご用心7
ハーバード大学基金の運用手法を取り入れる――ハイブリッド型投資のススメ
2 資産を他人に預ける――担い手の目利き力を見極める目利き力
3 自分で直接運用する
情報は取り方で差をつける――地の利とソーシャル・ネットワークを活かす
情報の解読法で差をつける――スター投資家とともに投資する
自分を制する――投資家としての心を整える
A 認知バイアスを認識する
B 投資を放置する勇気
C バフェット流――都会の喧騒から離れて
D メディテーションのススメ
E 学びを活かす――チェックリストのススメ
インセンティブを理解する――投資の「誰が」を意識する
A ノン・エコノミック・セラーの探索
B 投資家としての企業の目利き力を見極める
4 上級編 投資アイディアの格闘技――ストックピッチに挑戦する
あとがき
参考文献
略歴
[著者]
中澤知寛 なかざわ・ともひろ
デルファイ・キャピタル・マネジメント 投資プロフェッショナル。ニューヨーク在住。
1979 年生まれ。小学校から高校まで米国ケンタッキー州で過ごす。2003年、東京大学法学部卒。2013年、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)を成績優秀者(Distinction)として卒業。
大学卒業後、東京海上火災保険株式会社(現・東京海上日動火災保険株式会社)入社。以来、一貫して資産運用業務に従事。国内外のストラクチャード・クレジット投資、米国支店駐在員を経て、HBSに留学。HBSでは、竹内弘高教授の指導の下、実際の授業の題材となったケース・スタディを共同執筆。また、エズラ・ヴォーゲル・ハーバード大名誉教授が主宰するハーバード松下村塾の共同代表幹事も務めた。現在は、ニューヨークにて著名投資家の下、クレジット、オルタナティブから株式まで、幅広いアセット・クラスのポートフォリオ・マネジメントに従事。
http://www.tomonakazawa.com
●装丁・本文デザイン/松田行正+日向麻梨子+倉橋 弘
●校正/円水社
●企画協力/NPO法人 企画のたまご屋さん