函館をめぐる冒険
2016年3月26日、待望の北海道新幹線がいよいよ開業!! 今もっとも注目を集める街の物語を、地元で絶大な支持を誇るローカルマガジンから選りすぐってご紹介。見る、食べる、触れる、出会う――読めば、きっと行きたくなる。「イカや夜景だけじゃない函館」の話、あります。
- 書籍:定価1650円(本体1,500円)
- 電子書籍:定価1320円(本体1,200円)
- 2016.03.25発行
まえがき
人口およそ27万人。北海道では札幌、旭川に次ぐ規模をもつ中核都市・函館。
しかし年々、人口はゆるやかに減少を続け、その影響による税収の減少や地元経済の停滞など、例外なく他の地方都市と同じ悩みを持っているのは紛れもない事実だ。
そんな函館も、かつて東北以北で最も賑わいをみせていた都市の時代、つまり「都会」だった時代があった。それは今から160年以上前。日米和親条約によって開港都市となって以来、港湾・海運・倉庫の各分野で躍進をとげ、さらに都市整備が進んだ。日進月歩で都会化していく函館には、先進国の外国人や本州の商売人が大挙してやってきた。そこで何が起きたか。さまざまな「文化の種」が蒔かれたのだ。洋食、洋菓子、パン、珈琲などの食文化。異国の建築様式や暮らしのスタイル……。
都市が発展すれば、文化も発展する。そして、その文化を維持しようと人が動く。これが現在まで脈々と続き、やがて築かれた「函館の特異性」だ。前述の通り、地方都市としての問題は山積している。それでも、街としての輝きをひとつも失わない不思議な力が、この街にはある。
本書において綴るのは、函館のあらゆる分野の歴史と文化と人が交錯する物語。平たく言えば「イカや夜景だけじゃない函館」の話だ。夜景がきれい、食べ物がうまい、坂や教会がある街の風情が素敵。たしかにその通り。でも、それだけで括れるほど単純明快な街ではない。
この街は、幾重にも生地が折り重なったクロワッサンのように、早熟の歴史と文化が重なりあって形成されている。その重なりの中心にできた空間のなかに、今を支える「人」が存在する。それは函館において何物にも代え難い財産で、我々が光を当てたいのは、まさにそこだ。
パブリックイメージから逸脱した新鮮な姿でもいい。また、あの頃のなつかしい函館の姿でもいい。どんな形であれ、本書を読んだすべての方に「函館の魅力的な姿」を発見してもらえたらうれしい。
読めば、きっと行きたくなる。そして、もっと知りたくなる。
さぁ、函館をめぐる冒険へ出かけよう。
目次
見る――いつまでも残したい函館の風景
路面電車のある風景
函館のリノベーション建築
【函館リノベの歴史】すべては『カリベビ』から始まった。
函館の美しい庭
食べる――函館の奥深い食文化
愛される函館の焼き菓子
【函館の祈りの味】トラピストクッキーがおいしい理由。
函館の和菓子をめぐる旅
【函館四大和菓子】大沼だんごのものがたり。/江戸に始まる羊羹の話。/
千秋庵の千秋庵たる所以。/宝船が運んで来る、日本一のきびだんご。
函館のおいしいパンの話
【明治生まれの函館パン】抱き続けるのは、新しさと本物を求める姿勢。/
〝市民のパン屋〟として蒔いた文化の種。 /
あの頃と変わらない場所。/今も健在。伝説のベーカリー。
函館の贅沢、ご飯の友
【函館塩辛物語】創業100年。昭和初期から木樽で仕込むいか塩辛。/
年100万個を売るヒット作「社長のいか塩辛」誕生秘話。
コーヒーが香る街角へ
【函館珈琲物語】「黒いお湯」から「珈琲」へ、函館美鈴の貢献。
触れる――函館の海と大地の話
道南のおいしい野菜
【道南の野菜人】奇才・技術屋・野菜名人・勉強家。
数々の異名を持つ篤農家、松本久の創意あふれる農業人生。/
有機農業の先駆者が語ったのは
「最新でもなんでもないよ。昔の方法に戻しただけ」という言葉。
函館の海は、こんなにも美しい
【函館の海人】海は宝、海は命。網元という仕事。
出会う――函館の愛すべき人々
【函館人列伝】レンズ越しに綴られる函館昭和史。
街の生きた風景を残し続けた〝記録写真家〟。/
どこまでも高く、どこまでも遠くへ。「たこ先生」の創作人生。/
才能などない。だから、生涯をかけてジャズを追い続ける。
函館をめぐる地図
略歴
peeps hakodate ピープス函館
函館の新しい「好き」が見つかるローカルマガジン。
開港都市としての名残を今も色濃く漂わせる函館という街の文化と、その背後にいる人々にスポットを当て、フリーマガジンとしては異例の「読み物」にこだわった誌面づくりで、函館のみならず全国で人気を集める。2014 年には「日本タウン誌・フリーペーパー大賞」で大賞を受賞。
月10日発行。道南圏の約200か所に設置されるほか、札幌市内、東京都内などでも一部設置。
月10日発行。道南圏の約200か所に設置されるほか、札幌市内、東京都内などでも一部設置。
●編集/吉田智士
●文/平野陽子、品川真一郎、茎沢直子
●写真/ さえる、品川真一郎、ヤマグチマサアキ
●協力/ 函館蔦屋書店
●カバーデザイン/黒羽拓明
●本文デザイン協力/ SANKAKUSHA
●地図制作/デザインワークショップ ジン