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元・中国人、日本で政治家をめざす
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元・中国人、日本で政治家をめざす

元・中国人、日本で政治家をめざす

2月、日本国籍取得。4月、新宿区議選出馬――中国と日本、昼と夜という境界線を生き抜いてきた「歌舞伎町案内人」は、なぜ、批判と罵声を覚悟で、あえて政界に飛び込もうとするのか。文革時代の思い出から、歌舞伎町での27年間、“はじめて”の選挙権、祖国への思い、新宿への思い……波乱の半生と新たな挑戦のすべてを語る。

  • 書籍:定価1760円(本体1,600円)
  • 電子書籍:定価1408円(本体1,280円)
  • 2015.07.30発行
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内容

歌舞伎町から永田町へ――新たな挑戦!!
 
2015年4月の統一地方選で全国的に大きな話題を集めたのが、
この年の2月に日本国籍を取得したばかりの元・中国人で、
「歌舞伎町案内人」として知られる著者・李小牧の新宿区議選出馬。
そこで彼が体験したのは「生まれて初めての民主主義」だった。
 
27年間、「在日中国人」として生きてきた著者が、
なぜ今、日本に帰化し、逆境の中で政治家をめざすのか。
これまで明かさなかった父の思い出から、
悪化する日中関係への苦言まで、思いのすべてを語る。
 
【目次】
はじめに――なぜ「歌舞伎町案内人」は政治家をめざすのか
第1章 文革に翻弄された少年時代
第2章 すべてはティッシュ配りから始まった
第3章 人生を変えたベストセラー
第4章 歌舞伎町での新たな挑戦
第5章 変わる歌舞伎町と中国への“凱旋”
第6章 そうだ、帰化して立候補しよう
第7章 不思議の国ニッポンの不思議な選挙
第8章 失敗だらけの選挙運動
第9章 元・中国人が日本の政治家になってできること
おわりに――亡き父の「大志」とともに

はじめに

なぜ「歌舞伎町案内人」は政治家をめざすのか


2015年4月27日午前8時。
 
私はJR大久保駅前で、月曜日の職場へと急ぐ通勤客に向かって、ハンドマイクを握っていた。足元には、秋葉原まで出かけて買った8万円の高性能スピーカー。この2か月あまり、ともに戦ってきた〝相棒〟だ。
 
私、李小牧は、新宿・歌舞伎町で27年間、「案内人(ガ イド)」として生きてきた。外国人客たちに、この東洋一の歓楽街を案内するのが役目だ。ネオン輝く不夜城での暮らしは、単調さとはまったく無縁。時に黒服に身を包んだキャッチに追いかけられ、中国人マフィアと「シマ」を巡る戦いを繰り返し、さらにはベストセラーを執筆して映画にも出演、もちろん数々の恋にも生きる。
 
毎日明け方に寝て夕方に起きる……そんな生活を長年続けてきた私が、月曜日の早朝に駅前に立っているのは、ほかでもない。この前日に投開票された新宿区議会議員選挙に立候補したからである。初めての選挙戦が終わってからわずか数時間後、朝日の輝くこの場所で、私はどうしても直接、有権者に今の気持ちを伝えたかった。
 
選挙戦で疲れ切った体に鞭を打って、通勤客に語りかける。笑顔を絶やさないよう努力するが、そのうち言葉は出なくなり、私はただただ頭を下げていた。

街に立つのが好きだ。
 

選挙戦を通じて、私は自分の原点を再発見した。

1988年に中国を〝脱出〟し、私は憧れの日本、そして新宿・歌舞伎町にたどり着いた。だが、バブル真っ盛りの日本と、改革開放政策が始まってまだ10年という中国との経済格差は、中国人観光客が歌舞伎町のドン・キホーテで「爆買い」する今からは想像もできないほど大きかった。

一介の私費留学生が、生活になんの心配もなく勉強に集中できるはずはない。ラブホテルの清掃、ティッシュ配り、たまに中国時代の経験を生かしたダンサー……。さまざまなアルバイトをこなしながら、日本語学校やファッションの専門学校に通った。
 
だが、ティッシュ配りで学んだことが、私の人生を切り開いてくれた。このアルバイトを通して私は、外国人客を優良店へ案内して、店側から一定のバックチャージを得る「案内人(ガ イド)」というビジネスを確立したのだ。その後、案内人としての経験を生かして作家デビュー、さらに、わが故郷である湖南省の激辛料理を提供するレストランの経営者へと、私の人生は飛躍する。
 
そんな私の仕事観の中心にあったのは、常に「他人に喜んでもらう」というサービス精神だ。ポケットティッシュを政策パンフレットに持ち替えた選挙戦でも、私は大いにサービス精神を発揮した。
 
街は、私に多くのチャンスを与えてくれる素晴らしい場所だ。

(後略)

目次

はじめに――なぜ「歌舞伎町案内人」は政治家をめざすのか

 
第1章 文革に翻弄された少年時代


元軍人で「政治家」だった父
英雄だった父が「反革命分子」に
紆余曲折を経て、憧れの歌舞団へ
改革開放の波に乗ったが……
母の死と父の浮気
深圳の「スーパー営業マン」
「復讐」を逃れて日本へ

 
第2章 すべてはティッシュ配りから始まった

初めて目にした歌舞伎町
「歌舞伎町案内人」の誕生
「シマ」を巡る争い
事件の目撃者
歌舞伎町を変えた2つの事件
仲間、そしてライバルとのバトル
離婚、結婚、離婚、結婚……
強盗事件と4人目の妻
 

第3章 人生を変えたベストセラー

東京モード学園での日々
在日中国人向けの新聞を立ち上げる
旅券偽造? 拳銃所持?
作家への道
ファッション誌記者として
良い映画、悪い映画
もうひとつの大切な映画

 
第4章 歌舞伎町での新たな挑戦

歌舞伎町をつくった男
演劇界の「仁義なき戦い」
政治家をめざす原点
経営者になるための人間修行
ついに《湖南菜館》オープン
 

第5章 変わる歌舞伎町と中国への“凱旋”

歌舞伎町“浄化”作戦
石原氏への反論
歌舞伎町と東京はどこへ向かうのか
震災をきっかけに中国に情報発信
微博の力を借りて
今度はテレビのコメンテーターに
中国リベラル紙での連載も
 

第6章 そうだ、帰化して立候補しよう

きっかけはニューズウィークの連載
コラムで「出馬宣言」
中国民主活動家たちとの交流
コスモポリタンとして
帰化に向けて
野党第一党トップからのメール
帰化、本日も認められず
「もうダメか……」
元・中国人に味方してくれた法改正
「リー・シャム」から「り・こまき」へ
 

第7章 不思議の国ニッポンの不思議な選挙

「政治活動」と「選挙運動」
「おごり禁止」という地雷原
民主党公認か、無所属か
「選挙戦は告示日に終わる」?
選挙とは「紙の戦争」
立候補予定者説明会という名の出陣式
思いもよらぬ民主党の「結論」
いざ、街頭へ
日本らしい演説の「時間割」
街頭演説という新たな舞台
メディア戦略は大成功
同志からの砲撃
 

第8章 失敗だらけの選挙運動

4月19日(日曜日)・告示
4月20日(月曜日)
4月21日(火曜日)
4月22日(水曜日)
4月23日(木曜日)
4月24日(金曜日)
4月25日(土曜日)
戦いはまだ終わらない
 

第9章 元・中国人が日本の政治家になってできること

初めての投票
そして、開票へ
近くて遠かった当選ライン
戦いすんで……新たな戦いが
政治家にならなくてもできること
それでも、政治家にしかできないこと

 
おわりに――亡き父の「大志」とともに

略歴

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李小牧(り・こまき)
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供する日本で数少ないレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬する。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『歌舞伎町より愛をこめて』『微博の衝撃』(いずれもCCCメディアハウス)など著書多数。
http://leekomaki.com/

●Photo & Design/Kozo Fujita

●Hair & Makeup/Aki Matsuhashi (Lorimer management+)