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カスタマイズ 【特注】をビジネスにする新戦略

カスタマイズ

M&Mのパーソナライズ・チョコ、マテルの特注バービー人形……大量生産から低コストの「特注量産」時代へ。20代でベンチャーを立ち上げ、素材も味も栄養も自分好みに作れる「オーダーメイドのシリアルバー」で成功した起業家が綴る、21世紀のものづくり革命!

  • 書籍:定価1980円(本体1,800円)
  • 電子書籍:定価1584円(本体1,440円)
  • 2014.10発行
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内容

The New York Timesベストセラー
大量生産から低コストの「特注量産」時代へ

20代でベンチャーを立ち上げ、
素材も味も栄養も自分好みに作れる
「オーダーメイドのシリアルバー」で成功した
起業家が綴る、21世紀のものづくり革命!

食品からファッションまで、あらゆる業界のトップ企業が、
大量生産を捨て、カスタマイゼーションへ移行しようとしている。
また、完全オーダーメイドのビジネスモデルをもつ企業が
あちこちに出現し、時価総額10億ドルの壁を突破し始めている。
もはや非効率なビジネスモデルではない。
われわれは今、「カスタム革命」の入り口に立っているのだ。

ナイキのオーダーメイド・シューズ
M&Mのパーソナライズ・チョコ
マテルの特注バービー人形
ビスタプリントのオリジナル印刷物
スターバックスのカスタマイズ・コーヒー ……
[付録] カスタマイズ製品を提供する企業一覧(700社超)

「すべてのアントレプレナーと、
商業の未来に関心を持つ者の必読書」
――フランク・ピラー(MITスマート・カスタマイゼーション・グループ長)

第1章 21世紀のカスタム革命(抜粋)

ブラックベリーの振動音で目が覚めた。手に取ってメールを見てみると、何千通の受信がある。すると今度は電話が鳴った。オンライン決済サービス会社のペイパルからだ。「今、お時間よろしいでしょうか」と電話の声。「はい」と答えると、ペイパルの社員はこんなことを言ってきた。「先週、お客様のアカウントに非常に高額の入金があったので、違法行為に関わっていらっしゃらないか確認させていただく次第です。どういったご商売をされているのでしょうか?」

私は唖然とした。「シリアルバーの販売です」と答えたが、ペイパルの社員は、私の言ったことを信用していない様子だ。だが実は、こんな説明では彼が納得できないのも無理からぬことだった。

私がそれまで革命的な新ビジネスの立ち上げに心血を注いできて、その苦労が、電話の前の週に突然実を結んだという事実をこの人は知らない。舞い込んできた何千通のEメールは、顧客からのオーダーだった。私は「ユーバー(YouBar)」の経営者、アンソニー・フリン。私のシリアルバー・ビジネスは、あの二〇〇八年二月の一週間だけで、『ニューヨーク・タイムズ』紙、デイリーキャンディ〔訳注:全米大都市のライフスタイル情報サイト〕、ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)の「マーケットプレイス」、ABC、NBC、FOXのテレビ局各局で、「ここのシリアルバーはすべてのオーダーが特注」「あなたの味覚と想像力次第」「あなたのためにあなたが作るシリアルバー」といった見出しで取り上げられた。

これらの見出しには、ペイパルに説明していないキーポイントが詰まっている。私の仕事は、ただシリアルバーを売っているだけではない。私の会社の神髄は、完全カスタムメイドのシリアルバーを売るところにある。わが社は、材料も、味付けも、栄養も、すべて顧客一人ひとりのニーズにぴったり合ったシリアルバーを作り、市場に出回る高品質のシリアルバーとほとんど変わらない価格で販売しているのだ。

私のビジネスは、シリアルバー業界に革命をもたらした。しかし、われわれのやっていることは、実は製造業全体に今起きている大変動のほんの一例にすぎないのだ。二〇一〇年半ばには、食品からファッションまで、アメリカのすべての製造業における業績トップの企業が、大量生産を捨て、カスタマイゼーションに移行しようとしていた。この変動は、きわめて大きく広範囲なもので、今後数十年の輪郭を形作ることになるだろう。その勢いは、産業革命が一九世紀と二〇世紀を特徴づけたのと同等のレベルと言ってよいと思う。二〇一二年の今、われわれは、二一世紀の「カスタム革命」の入口に立っているのだ。

カスタム革命は二一世紀の産業革命

ちょっと周囲を見回せば、いたるところでカスタム革命の火がついていることがわかるはずだ。ナイキのカスタマイズ・シューズ、バーバリーのカスタムメイドのトレンチコート、リーバイスのカスタマイズ・ジーンズ、デルのカスタム・パソコン、マテルのカスタム・バービー人形、ホールマークのレコーダブル絵本〔訳注:自分の声を録音して読み聞かせができるようにする絵本〕、マースのカスタムM&M〔訳注:色を選ぶだけでなく、写真やメッセージを表面に印刷できるチョコレート菓子〕、フォードのカスタム・マスタング、ポッタリーバーンのカスタム家具、そしてもちろん、スターバックスのカスタマイズ・コーヒーなどがある。

カスタム革命は、日常生活の非物質的な側面でも広まっている。映画やテレビ番組をオンデマンド配信するネットフリックスは、個人の好みに合わせたおすすめ番組を提示し、パンドラは、リスナーの好みに合わせた曲を自動的に流すラジオ型配信〔訳注:配信曲を一曲ずつ選ぶ必要がない〕を行っている。イーハーモニー〔訳注:独自の相性診断システムが高精度と評判のオンラインお見合いサービス〕は、個人の性格やプロフィールに合わせたマッチングサービスを提供している。

グーグルはあなただけのサイドバー広告、フェイスブックはあなただけのニュースフィード、アマゾンはあなただけのおすすめ商品を、ユーザー履歴に基づいて表示する。そしてグーグルマップと連動して、今いる場所の近くの映画館情報を提供するiPhoneアプリや、その帰りに立ち寄れるおすすめレストランを教えてくれるアプリもある。

アメリカは、カスタマイズ大国への道を進んでいるのだ。全米共通の新しいビジネスの成功法則はいたってシンプルである。それは、顧客にカスタマイズサービスを提供することだ。二月のあの日にペイパルが見たものは、麻薬取引でもマネーロンダリングでもない。新しい、カスタム革命の息吹なのだ。カスタマイゼーションが、われわれのビジネスのやり方を根本から覆している。本書では、その大きな変革の成り行きと、これまで書かれることのなかったその正しい手法を説明しよう。

(後略)

目次

第 I 部 カスタマイズ大国へ

第1章 二一世紀のカスタム革命

カスタム革命は二一世紀の産業革命
もう非効率なビジネスモデルではない
カスタマイゼーション時代の新しいルール
本書出版の経緯

第2章 大量生産の終焉
──アメリカはカスタマイズ大国になった

二〇世紀は欲張りな時代だった
ロングテールのはじまり
一人というニッチ── 二一世紀初期のカスタマイゼーション
他業種もカスタム化で追随する
リーバイスの失敗と成功
二一世紀──CIYカスタマイゼーションへの転換が始まる
カスタマイゼーションが経済にもたらすもの
投資家のカスタマイズ志向

第3章 カスタム世代
──二一世紀の消費者がなんでもカスタマイズしたがる理由

ビジネスとしての可能性
可能であるならカスタマイズを選ぶ
カスタマイゼーション育ち
カスタム・ライフスタイル

第4章 選択肢のパラドックス

多ければよいというものでもない
選択肢が多すぎるという問題を克服する
選択肢のパラドックスを克服するための法則
見返り──「自己満足」現象

第5章 メイド・イン・YOU.S.A.
──カスタマイズ企業は顧客のいる国で製造する

アメリカの製造業の未来
カスタマイゼーションの節税効果

第6章 商業の未来
──いつでも、どこでも、なんでもカスタマイズ

デジタル・マニュファクチャリング
ネットや自宅からだけでなく
より静かで、エコで、やさしく、関連性が高い

第Ⅱ部 カスタマイズ企業を目指せ

第7章 CIYビジネスを立ち上げる

あなたもデルのように
典型的なCIY新興企業のケース
カスタマイズ事業を成功させる七つのステップ
カスタマイズ事業のための補足情報

第8章 既存の事業にCIYを加える

1.無料のパブリシティが得られる
2.高めの価格で販売できる
3.無料で市場調査ができる
4.ギフト市場で強くなる
5.リピート販売が増え、返品が減る
6.ネットでの存在感も、顧客との絆も強くなる
7.小売店を怒らせずに消費者に直接販売する
8.顧客ロイヤルティーが高まる
9.売り上げが上がる

第9章 カスタマイゼーションの七つの教訓

教訓1 大量生産と張り合うスピード・品質・価格を目指せ
教訓2 最高のカスタマーサービスを提供する
教訓3 顧客が商品を気に入ることを再三保証する
教訓4 どんな場合でも顧客に選択肢を与えすぎない
教訓5 顧客行動を促す感情をターゲットにし、
     技術をダイレクトに売り込まない
教訓6 顧客が自社を褒めやすい環境を作る
教訓7 顧客の声を聞く(それが成長のカギだ)

第10章 マーケティングをカスタマイズする

プル型マーケティング
ソーシャルメディア・マーケティングのルール

第11章 CIYビジネスを成長させ続ける    

1.材料費と配送コストを抑え維持する
2.ノーと言われてもあきらめない
3.でも自分はノーと言えるようになる
4.任せられないと会社が成長しない
5.上等なコンフィギュレーターを組み込む
6.ブログを書く
7.毎月ウィッシュリスト・ミーティングを開く
8.海外進出を検討する
9.事業拡大のために外部からの資金調達を検討する
10.大口注文を取るようにする

あとがき 食品をカスタマイズして完璧なスタイルと健康を

長寿を手に入れる
減量を達成する
自己表現となる
ビジネスチャンス
年間市場規模六〇〇億ドルのダイエット食品市場
年間市場規模二六〇億ドルの食品アレルギー・不耐症市場
年間三九〇億ドル分の機能性食品を消費するベビーブーマー世代

謝辞

原注
付録 カスタマイズ製品・サービスを提供する企業一覧

略歴

[著者]
アンソニー・フリン(Anthony Flynn)

2006年に南カリフォルニア大学経営学科を卒業後、シリアルバーをカスタム製造する世界初の会社「ユーバー(YouBar)」を、母、エイヴァ・バイスと共同でロサンゼルスに設立する。以来「ユーバー」を、数億ドル単位の年商を上げるまでに成長させてきた。「ユーバー」やカスタマイゼーションについて頻繁に取材を受け、『ニューヨーク・タイムズ』紙や『ウィメンズ・ヘルス』誌、「グッドモーニング・アメリカ」などのテレビ番組、NPR「マーケットプレイス」などのラジオ番組で取り上げられた。また、カスタマイゼーションに関する講演や、カスタム食品販売を始めようとする企業へのコンサルティングも行っている。仕事の合い間(まれではあるが)には、行きつけのジム「クロスフィット・ハリウッド」でワークアウトをしたり、ハリウッドの看板までランニングをしたり、友人に会ったりしている。

エミリー・フリン・ヴェンキャット(Emily Flynn Vencat)

コロンビア大学英文学科を卒業後、2002年にロンドンに移住し、『ニューズウィーク』誌でジャーナリストとしてのキャリアを踏み出す。同誌ロンドン支局の特派員として5年間にわたって世界経済動向を追い、2006年に同誌のビジネスライターとなってからは、2年間でカバーストーリー5本を含む、100本以上の記事を書く。その後、AP通信記者となり、2008年の世界金融危機をレポート。『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』紙、『USA トゥデイ』紙など世界の各紙に署名記事が載る。現在、夫と2人の息子と共に、コネチカット州で暮らす。

[訳者]
和田美樹(Miki Wada)

東京生まれ。1987年より米国在住。長年の輸出入販売会社勤務を経て、幅広い分野の出版・映像翻訳に従事する。主な訳書に『HIGH LINE──アート、市民、ボランティアが立ち上がるニューヨーク流都市再生の物語』(アメリカン・ブック&シネマ)、『アルツハイマーになる人、ならない人の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。

翻訳協力 株式会社トランネット

●装丁・本文デザイン/轡田昭彦、坪井朋子
●校閲/円水社