里山を食いものにしよう 原価0円の暮らし
『里山資本主義』著者・藻谷浩介氏推薦!「この本を読んでから、『里山資本主義』を書くべきだった……! これこそ里山資本主義者の聖典(バイブル)だ」――広島の山奥に暮らす「日本里山史上最大の怪(快)人物」が語る、お金よりも大切な"本当の豊かさ"とは。
- 書籍:定価1540円(本体1,400円)
- 電子書籍:定価1232円(本体1,120円)
- 2014.06発行
内容
この本を読んでから、『里山資本主義』を書くべきだった……!
これこそ里山資本主義者の聖典(バイブル)だ。
――『里山資本主義』著者・藻谷浩介氏推薦!
広島の山奥に暮らす「日本里山史上最大の怪(快)人物」が語る、
お金よりも大切な"本当の豊かさ"とは。
「里山を食いものにしようなんて許せない」が多くの人たちの反応でしょう。しかし、生き物は(もちろん人間を含めて)何か弱いもののいのちを食いものにして生きています。その中で人間だけは、道具や火を使うことを覚え、強いものを食いものにしている、生き物の世界では「許し難い生き物」だというのが正解ではないでしょうか。(「はじめに」より)
マネー資本主義を補完するサブシステムとして、里山を利用した生活を取り入れれば、「50年後に素敵な日本の暮らしが手に入る」とする『里山資本主義』の中で、「素敵な暮らしを今やっている人」と紹介され、今や全国に引っ張りだこの和田芳治さんが提案する、原価0円・楽しく楽しく、とにかく楽しい人生の送り方を余すところなく紹介する1冊です。
もくじ
はじめに
第1章 原価0円生活
エコストーブでご飯がうまいうまい!
一家に一台! エコストーブ大浮上
「過疎を逆手にとる会(現・逆手塾)」誕生!
里山資本主義の実践家
なぜ公務員の私が脚光を浴びるようになったのか
大型冷蔵庫のない豊かな暮らし
「○食処和み亭」開店物語
里山を食いものにする「里山快席」
「できる野菜」が中心の和田家の「食べ事」
交換具は「交歓具」
燻製器もピザ窯もある「倶楽部里山木族」
里人生活が最高!
第2章 我が傍流人生がくれたもの
地元で農家を継ぐという選択
自ら選んだ道は傍流
レクリエーションが馬鹿にされている時代にレクリエーションで生きていく
音痴のレッテルを貼られた歌を武器に
企業誘致特命職員となってわかったこと
里山の魅力を発見
「ない」からできることもある
できない理由は探さない
女性が味方になってくれた
傍流という逆境をバネに輝く法
第3章 まちづくり奮戦記
反対されると俄然やる気になる
「頼母子講」で楽しく、楽しく
県北青年友好祭で培った「参加者をこき使う法」
参加者を主催者にせよ
人を動かすにはやっぱり飲んで食べて
金を使わずにPRする法
まちづくりの極意は「遊び半分」
「遊び半分」がくれた出会い
オンリーワンは、真似から始まる
1万人を呼んだ「抱きしめて笑湖ハイヅカ」
捨てられていた野菜を活用した「正直めし」(「備北湖域生活活性化事業」)
空き家の利用で小さな歓交施設の創出
高齢者を使いまくれ
「フツー人」を本気にさせるには
第4章 楽しく楽しく、とにかく楽しい人生
「のうなんか症」になったのは妻のせい?
「里山木族」で極める里山の暮らし術
ピザで里山と人が元気に?
「人間幸学研究所」とは何か?
「総領の甚六」その心は?
造語はスポーツ新聞で学んだ
打てば響く人になろう
「笑顔」が成功のものさし
「鏡は先には笑わない」で生きる
第5章 里人の信条
「日本復興大反対」その心は
唱歌「ふるさと」が嫌い
3つの循環、食、エネルギー、人が大事
「無縁社会」なんて無縁です
夫婦輝業なら里山生活が成り立つ
三所懸命の生き方のすすめ
「里人」という選択肢
東京、都会でもできる里山生活のエッセンス
「本当の豊かさ」を問い直してみる時
「里山拡命」のすすめ
おわりに
はじめに
「里山を食いものにしようなんて許せない」が多くの人たちの反応でしょうね。
しかし、生き物は(もちろん人間も含めて)何か弱いもののいのちを食いものにして生きています。その中で人間だけは、道具や火を使うことを覚え、強いものをも食いものにしている、生き物の世界では「許し難い生き物」だというのが正解ではないでしょうか。
「食いものにする」とは、辞書によると「自分の利益のために人やものを利用する」と極めて否定的に書かれています。しかし、私が住む里山は、持続可能な環境、システムである「里山」として世界中から注目されています。だから「里山」はそのまま「ザ・サトヤマ」として世界に通用します。
里山の大切さに気づいた環境に関心があるボランティアや行政が、里山保全のための取り組みを始めています。しかし、その営みの中でつくられる里山は、「里山公園」止まりです。本当の里山は、人間が生きるために活用する(食いものにする)以外には手に入らないと私は思っています。
里山はかつて、薪や炭といったエネルギーを得るだけでなく、山菜や果物など、豊富な食料を得られる場所として機能していました。まさに人間は「里山を食いものにしてきた」のです。
都会の人たちが田舎に来てありがたがる「自然豊かな風景」は、薪や炭、山菜や果物を得るために、人が山に手を入れることで出来上がってきたものなのです。「里山を食いもの」にしなければ、木は密集して山の中は暗くなり、木のそばには草も生えず、昆虫も寄りつかない、うっそうとした密林になってしまいます。これが山の「荒れ果てた」状態です。
今、その里山は、「食いもの」にする元気な人たちを失い、自然を利用する人も少なく「荒れ果て」ています。
私の住む総領町木屋地区(広島県庄原市)は、春一番に咲く「節分草の日本一の自生地」です。節分草は、小さな可憐な花を咲かせる、多くの人々から愛される里山の春の山野草です。昔は、栃木県の日光あたりから広島県の私たちの町あたりまで、日本の太平洋側の山裾にはどこにでも咲いていました。しかし、牛の餌や田畑に入れる肥料として草が利用されなくなり、節分草はそうした草に圧到され、絶滅危惧種に指定されるまでに激減してしまいました。カタクリなどと同じで草を刈ってやらないと咲かないのです。
その花が総領町に多く自生することが確認されたのは、1985年のことです。
総領町ではまだかろうじて山に人の手が入っていたため、節分草が咲いていたのです。地元では「貧乏草」と呼ばれていた節分草を、観光資源にする取り組みを私たちは長年続けています。
「西日本一の自生地であることは間違いないが、日本一かどうかは確認していない。しかし、日本一だと思う」と言われる、ある自然愛好会のリーダーの言葉を信じ、印刷屋さんが「西日本一」の「西」を落としたことにし、「愛あるサギ師」と言われる私は「日本一の節分草の自生地」で勝負しているのです。
おかげで、2月の中旬から3月中旬の1ヶ月間で、毎年3万人以上の観光客を生み出してくれます。「花」が「華」になったのです。
マネー資本主義を補完するサブシステム(保険)として、里山を利用した生活を取り入れれば、「50年後に素敵な日本の暮らしが手に入る」とする『里山資本主義』(角川oneテーマ21新書)がベストセラーになっています。その中で、その「素敵な暮らしを今やっている人」として私は紹介されています。
私はもともと総領町(現・島県庄原市総領町)の農家の長男として生まれ、跡継ぎとなりました。農業の傍ら、青年団活動を熱心にやっていたため、町役場の教育委員会で社会教育をやることになり、勤め人になりました。
その後、総領町総務課課長補佐(企業誘致特命職員)となり、さらに教育委員会教育長も務めました。
2003年に役場を退職しましたが、その間も今も「まちづくり」活動を、社会教育で培ったレクリエーションの技術を武器に一貫して続けています。同時に、私生活では里山暮らしを存分に楽しんでもいます。
私の住んでいる地域は過疎を30年も前に通り越して、現在、すでに限界集落(経済的・社会的な共同生活の維持が困難になった地域)になっています。客観的に見れば、「主流からは遠い場所に置かれた傍流暮らし」が私の人生です。しかし、私は、「すべての新しい営みは傍流から生まれる」と信じています。節分草が良い例です。
私は勝手に、「里山拡命」(里山暮らしの良さを広げる革命)の旗手と名乗り、「私が変われば世界も変わる」と、仲間たちと手に入れた「エコストーブ」を武器に、「与直し」から始める「世直し」に取り組んでいます。
「人のため社会のために」なんて志を高くかざし、「ドン・キホーテ」と馬鹿にされても怯まず前へ前へ―妻からは「傍迷惑族」と言われていますが……。
そんな私が、「里山と日本とあなたを元気にしたい」との願いを込めて書くのが、この本です。主流の「金が一番(合利主義)」のものさしに対して、「金よりも大切なものがある」という傍流のものさしをかざして戦っています。
「面白がればなんだって面白い!」の私の言葉を信じて、最後までおつき合いいただければ望外の喜びです。
2014年春 志×志=甚六(4×4=16ししじんろく)
略歴
和田芳治(わだ・よしはる)
1943年、広島県庄原市生まれ。日本人が昔から大切にしてきた里山暮らしを現代的にアレンジし、真の「豊かな暮らし」として広める活動を約30年前から開始。まちおこしを行う「過疎を逆手にとる会」(応援団長は永六輔氏)や里山暮らしの知恵を研究する「人間幸学研究所」などの活動から、里山暮らしの楽しさとまちづくりをテーマとして、全国を講演してまわっている。レクリエーション・コーディネータの肩書ももつ。
1943年、広島県庄原市生まれ。日本人が昔から大切にしてきた里山暮らしを現代的にアレンジし、真の「豊かな暮らし」として広める活動を約30年前から開始。まちおこしを行う「過疎を逆手にとる会」(応援団長は永六輔氏)や里山暮らしの知恵を研究する「人間幸学研究所」などの活動から、里山暮らしの楽しさとまちづくりをテーマとして、全国を講演してまわっている。レクリエーション・コーディネータの肩書ももつ。
NHK「里山資本主義」出演(のちに、角川oneテーマ21新書『里山資本主義』でも登場)、テレビ朝日系列「人生の楽園」などにも取り上げられたユニークな里人(さともり)。
●編集協力/岸川貴文(ザ・ライトスタッフオフィス)
●校正/桜井健司(コトノハ)
●文中写真/著者提供
●カバーイラスト/平澤一平
●装幀/坂川栄治+永井亜矢子(坂川事務所)