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高校生が学んでいるビジネス思考の授業
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ロジカル・シンキングから統計、ゲーム理論まで 高校生が学んでいるビジネス思考の授業

高校生が学んでいるビジネス思考の授業

2003年から導入された高校の必修教科「情報科」は、パソコンを学ぶだけの授業ではない。「高校の学習内容と現実社会のつなぎ役」としての情報科には、ビジネスに必要なコミュニケーション能力と問題解決力の基礎がつまっているのだ。本書で「『考える』ための7つ道具」を手に入れよ。

  • 書籍:定価1760円(本体1,600円)
  • 電子書籍:定価1408円(本体1,280円)
  • 2014.04発行
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内容

Q.「このサプリメントを飲んでいる人のうち、70%の人が効果を実感しました」という情報があります。さて、その効果を判断するのに足りないものは?

 

2003年から導入された高校の必修教科「情報科」を知っていますか?
パソコンの使い方を学ぶ授業だと思われがちですが、さにあらず。ビジネスに必要な「コミュニケーション能力」と「問題解決力」の基礎はすべて、この情報科につまっています。

早稲田高校で情報科を受け持つ現役教諭である著者は、情報科は「高校の学習内容と現実社会のつなぎ役」であると言います。そして、「デジタル論理式」「議論の論理」「ゲーム理論」「マインドマップ」「モデル化」「統計」……などを授業で扱い、生徒たちに「『考える』ための7つ道具」を授けているのです。

本書は、「ビジネスパーソンにこそ学んでほしいビジネス思考の授業」です。

考える」ための7つ道具◆

デジタルな論理式――論理の効用と限界を知って使いこなそう
考え方の作法――根拠も反論も1行で書いてみよう
駆け引きの科学――ゲーム感覚でゲーム理論を楽しもう
最大の情報源は自分である――マインドマップの使い方あれこれ
自然現象・社会現象をモデルで斬る――モデル化からシミュレーションまで
あいまいの科学――統計の勘どころをつかむ
コンピュータ――あらゆる場面で使える強力な道具

本文に登場する設問例―――――

Q.次の文章は正しい論法か、それとも間違った論法か? 「あなたは私のことが好きじゃないのね。だって、好きだったら私に優しくしてくれるはずなのに、ちっとも優しくしてくれないんだもん」[デジタル論理式]

Q.マンホールの蓋はなぜ丸いのか? 理由を3つ、それぞれ1行で書きなさい。[議論の論理]

Q.冷戦時代、アメリカ大統領は考えた。「このまま軍拡競争を続けたら、経済が破綻してしまう。なんとか軍縮に切り替えたい。でも、アメリカだけが軍縮したのでは、ソ連に世界の覇権を取られてしまう。さて、どうしたものか?」[ゲーム理論]


※冒頭は[統計]の設問例

目次

序 章 情報科が新しい授業のモデルになる
 
 高校・情報科で何が変わるのか
 「知識重視型」から「問題解決型」へ
 中学・技術科も変わった
 早稲田高校のパソコン教室事情
 「考える」ための7つ道具

 
第1章 デジタルな論理式――論理の効用と限界を知って使いこなそう
 
「論理」と一言で言うけれど
 論理には4種類ある
 記号論理とコンピュータの相性診断
 デジタルの理論からデジタル論理式へ
 
実 習 編
 【実習Ⅰ】論理式を定義する
   4つのパーツ/論理式の論理値を定義する/論理と言葉のズレ
 【実習Ⅱ】真偽判定の仕方
   文章を論理式で表す/真理表を作る/「同値」とは?
 【実習Ⅲ】導出の正誤を判定する
   3つの条件で論理式を立てる/導出の正誤を判定する/論理学を論理する
 論理式クイズ3題
   1枚のカード問題/4枚のカード問題/不思議の国の論理学
 
論理の効用と限界
 パラドックスのからくり
 「ソクラテスは死ぬ」のか?
 「カラスは黒い」のか? 
 論理は便利な道具である

第2章 考え方の作法――根拠も反論も1行で書いてみよう
 
「議論の論理」の使い方
 「バカ」を論証する
 飛躍してナンボの議論術
 「疑え」と言うけれど
 正誤の問題と意思の問題
 説明しない人々
 
実 習 編
 そもそも「議論」とは何なのか?
 考え方の「ひな型」
 【実習Ⅰ】理由を3つ挙げる① 
 【実習Ⅱ】理由を3つ挙げる② 
 【実習Ⅲ】反論する
 【実習Ⅳ】4段論法
 その他の1行作文シリーズ
   問題と解決をセットで挙げる/2つの視点で語る
 
「答えのない問題」への取り組み方
 「論う」という漢字、読めますか?
 「答えのある問題」と「答えのない問題」
 なぜ議論が炎上するのか? 
 「考える力」と「問題解決力」
 マ
 

第3章 視点を立てる道具――ゲーム理論・マインドマップ・モデル化・統計
 
 視野の広さと視点の多さ
 
駆け引きの科学――ゲーム感覚でゲーム理論を楽しもう
 ゲーム理論とは? 
 ゲームの解き方
 【実習Ⅰ】ゲームを変える
 【実習Ⅱ】社会的ジレンマの数々
 【実習Ⅲ】手番を決めて解く
 ゲーム感覚でゲーム理論を楽しもう

最大の情報源は自分である――マインドマップの使い方あれこれ
 マインドマップとは?
 【実習Ⅰ】昔話を1枚の紙に再現しよう
 【実習Ⅱ】思いっきりイメージを広げてみよう
 いつでもマップ思考
 【実習Ⅲ】魔法の9マス紙
 【実習Ⅳ】パワポで「1枚企画書」
 普段使いのマインドマップ
 最大の情報源は自分である
 
自然現象・社会現象をモデルで斬る――モデル化からシミュレーションまで
 「モデル化」とは?
 モデル化からシミュレーションまで
 図解モデルの描き方
 図解モデルの基本形
 【実習Ⅰ】車は無限に速くなる? 
 【実習Ⅱ】やかんのお湯が冷める
 【実習Ⅲ】例題集
 図解の効果
 エクセルの論理性
 
あいまいの科学――「統計」の勘どころをつかむ
 「データ分析」登場
 【実習Ⅰ】なぜ統計はわかりにくいのか? 
 統
 ザツから始めてマシにする
 【実習Ⅱ】正規分布を作る
 統計の勘どころ② 
 【実習Ⅲ】いかさまコインの見分け方
 いかさまコインとまともコインの綱引き合戦

はじめに

 高校の学習内容はバカにしたものじゃありません。実に良くできています。幅広くカバーして、漏れがない。それを修得していれば、世の中の動きが理解できます。新しい動きにもついていけます。さらに深く知りたければ、あとは自力で何とでもできます。高校の学習内容は、その下地として十分です。
 
 そうは言っても、高校のカリキュラムにも弱点があります。2つ挙げましょう。1つは、学習したことが現実社会でどのように実践的に使えるのかという姿が見えにくいことです。もう1つは、最新の知が盛り込まれていないことです。

 さて、私は東京都内にある私立の中高一貫校に勤めています。メインは数学の教員ですが、2003年に新しく「情報科」が始まって、その最初の年から情報科も担当するようになりました。そして思い至ったことは、情報科が他の教科同士をつなぐ役割を担えるということ、そして、高校の学習内容と現実社会をつなぐ役割をも担えるということです。全国の高校でそれが実現できているかどうかはともかく、そんな可能性を情報科は秘めています。

 その可能性を切り拓きたい――そんな想いで、私は情報科に関わっています。

 私が高校・情報科に関わって10年になりますが、その間にいろいろな本を参考にしたり、寄せ集めたりしながら、自前で教材を作ってきました。デジタルの理論を発展させて論理学の基礎まで踏み込んだもの(デジタル論理式)、タイプ練習の一環として始めた作文指導(1行作文)、2012年度から高校数学に入った「データ分析」の内容をもうちょっと膨らませたもの(統計)、情報科の教科書に入っているけれどもそのままでは役に立たないと考えて一から作り直したもの(モデル化とシミュレーション)、高校の教科では学ばないけれども高校時代にぜひ経験させたい内容(ゲーム理論、マインドマップ)など。

 これらは高校レベルの学習内容をやや超えているものが多いのですが、どの項目も授業時間にして4〜5時間程度で実施しているものばかりですから、決して難解なものではありません。それでも、高校で通常学ぶのとはちょっと違った視点・枠組みを提供できるものと、私は考えています。そして、生徒たちの将来に必ず役に立つだろうと思っています。
 
 これらのうちのいくつかを再構成して一般の人々にお見せしたい、情報科の可能性・あるべき姿を全国の先生方にも知ってほしい――そんな想いから生まれたのが本書です。そして、高校生・大学生・社会人の方に試してもらって、力にしてもらいたいと願っています。

略歴

大森 武(おおもり・たけし)
私立早稲田中学・高等学校教諭。
1962年生まれ。85年、早稲田大学理工学部を卒業したのち、同校の数学科教員として勤務。全国の高校で情報科が必修となった2003年からは、数学科と情報科を掛け持ちで担当している。情報科の授業では、生徒はおしゃべり可、立ち歩き可。実は、生徒同士が操作法を教え合ったり、課題を一緒に考えたりすることを当てにしている。そのため、授業の初めに課題を出したら、あとは生徒の間をぶらぶら歩きながら適当におしゃべりして過ごしている。一方、定期試験では「意地でも暗記物は出さない」と言い、「情報科の試験勉強はするな」と言う。だが、多くの生徒は試験のあと、疲れ果ててぐったりするらしい。
●カバーデザイン/大岡喜直(next door design)
●図版制作/朝日メディアインターナショナル
●校正・校閲/円水社