アステイオン78
特集「科学を試す」 中島秀人/城山英明/横山広美/岡本浩一/金森 修/野澤 聡/小林傳司 /上山隆大 対談 山崎正和×三浦雅士「丸谷才一を偲ぶ」 [論考] 「アマチュアリズムの政治と科学─日本野鳥の会の戦中・戦後史」 牧原 出/「支え合う日本人と震災復興―政治経済学の視点から」 田中愛治 [写真で読む研究レポート]「科学アカデミーの誕生」 隠岐さや香など、最新の議論と豪華執筆陣。
- 書籍:定価1047円(本体952円)
- 2013.05発行
内容
特集 科学を試す
真理の根拠として、科学ほど今日広く受け入れられているものはない。
人権や民主主義は欧米の帝国主義だと断ずる独裁者たちも、
自分の延命のためには西洋医学に頼る。
飛行機を飛ばしコンピューターを動かす技術も科学に支えられており、
その威力を否定することは、
思想や信条を問わず二一世紀を生きるわれわれには自殺行為でしかない。
科学に支えられた技術は巨大な発展を遂げ、
その恩恵抜きにわれわれの日常は考えられなくなったが、
科学者の長期にわたる体系的な教育も欠かせなくなった。
そうして養成された科学者は、
さながら自然の啓示を非専門家に説く現代の司祭である。
また科学の諸分野が発達するにつれ、
知識は深く狭いものとなり、
その結果異なった分野の専門家はあたかも異教徒のようになった。
さらに科学・技術の研究は、
時には一国でまかなうことすら難しいほど
大規模な人的・物的資源を要する事業になった。
実際のところ科学ですらすべてを確実に語れるわけではない。
そうなら専門家の見解が相違するとき、
アマチュアはどのようにして判断を下すべきなのか。
科学は真理への道でも、科学者は生身の人間である。
そうなら科学者の知的探究を社会はどう位置づけるべきなのか。
科学の恩恵と裏腹の関係にあるリスクに、
社会はどのような態度を取るべきなのか。
科学者だけに任せておくには科学は重要すぎる。
読者とともに、鋭くそして柔らかく、科学を試してみよう。
目次
●特集 科学を試す
「科学技術の行く手を阻むものは何か」
・・・・・・中島秀人(東京工業大学大学院社会理工学研究科教授)
「つなぐ人材・見渡す組織─複合リスクマネジメントの課題と対応」
・・・・・・城山英明 (東京大学公共政策大学院教授)
「社会のなかの科学者─二つの今日的課題」
・・・・・・横山広美 (東京大学大学院理学系研究科准教授)
「つきまとうリスクと向き合う─定量的思考の必要性」
・・・・・・岡本浩一 (東洋英和女学院大学人間科学部教授)
「3.11の科学思想史的含意」
・・・・・・金森 修(東京大学大学院教育学研究科教授)
「『二つの文化』を超えて―科学史の視点から」
・・・・・・野澤 聡 (東京工業大学世界文明センター・フェロー)
「エンタープライズとしての科学技術」
・・・・・・小林傳司 (大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授)
「知識の探求における公益と私益」
・・・・・・上山隆大(慶應義塾大学総合政策学部教授)
●論考
「アマチュアリズムの政治と科学─日本野鳥の会の戦中・戦後史」
・・・・・・ 牧原 出 (東京大学先端科学技術研究センター教授)
「支え合う日本人と震災復興―政治経済学の視点から」
・・・・・・ 田中愛治 (早稲田大学政治経済学術院教授)
●写真で読む研究レポート
「科学アカデミーの誕生」
・・・・・・ 隠岐さや香 (広島大学大学院総合科学研究科准教授)
●地域は舞台(グラヴィア)
「集落に人を呼び込む祭りの力 ─秋葉祭り (高知県吾川郡仁淀川町)」
・・・・・・ 桑田瑞穂(写真家)
●連載
「リズムの哲学ノート」
・・・・・・ 山崎正和 (劇作家)
●時評
「『海ゆかば』の絵」
・・・・・・ 芳賀 徹 (静岡県立美術館館長)
「ラファエロの通信簿」
・・・・・・ 高階秀爾(大原美術館館長、西洋美術振興財団理事長)
「耳で聴いたオリンピック 一九六四年・聴覚文化の変容」
・・・・・・ 渡辺 裕 (東京大学大学院人文社会系研究科教授)
「サハラのトワレグ族」
・・・・・・ 藤森照信 (工学院大学建築学部教授)
「カネタタキ」
・・・・・・ 奥本大三郎 (ファーブル昆虫館館長)
●世界の思潮
「市民社会から見る日韓」
・・・・・・ 李 承赫(ウォータールー大学付属レニソン大学東アジア学部講師)
「二極化するアメリカ」
・・・・・・ アレクサンダー・スティル(コロンビア大学ジャーナリズムスクール教授)
●対談
「丸谷才一を偲ぶ」
・・・・・・ 山崎正和(劇作家)+三浦雅士(文芸評論家)
●アステイオン編集委員会委員