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80対20の法則 生活実践編
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新装版 楽して幸福を手に入れる 80対20の法則 生活実践編

80対20の法則 生活実践編

週2回働くだけで、今より多くの成果と収入が手に入るとしたら?世界100万部超のベストセラー『人生を変える80対20の法則』の著者が「80対20の法則」を個人の生活に応用するための方法を徹底解説。無駄なことにエネルギーを注いではいけない。賢い怠け者になれ!

  • 書籍:定価1760円(本体1,600円)
  • 電子書籍:定価1408円(本体1,280円)
  • 2013.05発行
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序文

 いまより努力を減らし、コストを減らして、人生のすばらしい贈り物が手に入るとしたら、興味がわかないだろうか。
週二日はたらくだけで、週五日はたらいている今より多くの成果と収入が手に入るとしたら、興味がわかないだろうか。
どんな問題でも解決できるシンプルで万能な解決法があるとしたら、興味がわかないだろうか。
その解決法が、家計をやりくりし、お金を稼ぎ、成功するためだけでなく、人生でもっと大切なこと──愛する人や自分の幸福や充実感のためにも使えるとしたら、興味がわかないだろうか。
きっと、興味がわくだろう。八〇対二〇方式を実践すれば人生は変わる。
八〇対二〇方式は、考え方や行動に革命を引き起こす。だが、実践するのは、思ったよりもはるかにシンプルで簡単だ。
  なぜなのか。世の中の仕組みが一般通念とは逆であることがわかれば、その仕組みに合わせて、少ない労力で欲しいものをもっと手に入れることができる。やることを減らして、人生を楽しみ、多くの成果をあげられるのだ。
この本は、行動について述べているが、行動は減らすものだ。
この本は実用書だが、「行動を増やそう」ではなく、「行動を減らそう」と主張している点で、かなり異色だ。繰り返し指摘されてきたことだが、やり方を変えない限り、ほんとうの意味で生活は改善しない。それはたしかだが、八〇対二〇方式は、全体の労力を減らす方法を教えてくれる。自分が幸せになれることは徹底してやる。だが、それらは日々の行動のごく一部に過ぎないので、全体の労力を減らしながら、生活を変えることができる。考える時間をたっぷりとり、絞り込んだ少数のことに集中して、全体としては労力を減らすのだ。
八〇対二〇方式との出会い
 八〇対二〇方式は自分が発明したものではないので、そのすばらしさはいくらでも宣伝できる。八〇対二〇方式の基になっているのは、企業や経済で成果をあげてきた科学的な法則──八〇対二〇の法則だ。成果の八〇パーセントは、原因や努力の二〇パーセントから生まれる、というものだ。
前著『人生を変える80対20の法則』では、この法則を活用して企業の利益を増やす方法を示した。そして、短い章であったが、個人の生活に取り入れれば、成功と幸福が手に入るとも述べた。だが、八〇対二〇の法則を個人の生活に取り入れることについては、さまざまな議論を巻き起こした。ビジネスのアイデアとしては申し分ないが、それ以外の分野では通用しないとの批判の声もあった。一方で、実生活に取り入れた読者からは、この法則のおかげで人生が変わった、という感謝の声が寄せられた。
『人生を変える80対20の法則』は三四の言語に翻訳され、現在まで一〇〇万部以上売れている。ビジネス系出版社から出版され、ビジネス・コーナーに並び、ビジネス書としてスタートした本は、いつの間にか自己啓発書として扱われ、評価されるようになった。実生活に取り入れて、その効果を実感した読者が友人に話し、その人が本を読んで別の友人に話す、といったように口コミで広がったようだ。
 七年経ったいまでも、世界中から電子メールや手紙が途絶えることはなく、その数は増えている。ビジネスについて書いたものは少なく、自分の幸福度や能率がどれだけ上がったかについて綴ったものがほとんどだ。自分にとって大事なごく少数の人間関係や問題に専念することで、心にゆとりができ、キャリアアップし、不毛な競争の踏み車から脱出できたという。これまでは、そうしないことへの罪悪感から、自分にとって重要でないことに一生懸命になり、時間を無駄にしてきたが、八〇対二〇の法則を取り入れた結果、罪悪感から解放されたという声もあった。八〇対二〇の法則のおかげで、自分は何者なのか、人生に何を求めるのかという原点に戻れたという。
私自身の場合もまったくおなじだ。八〇対二〇の法則が、自分にとって何が大事かを教えてくれた。一九九〇年、わたしは、いわゆるふつうのキャリアを捨てた。経営コンサルタントをやめ、気ままに生きることにしたのだ。充実した生活を送るには、ある程度の「仕事」も必要だが、人生のために仕事があるのであって、仕事を主にはしないと心に決めた。それ以来、本の執筆のほか、力仕事は人に任せる「怠惰な起業家」として幅広い活動をしているが、わくわくしないことは一切していない。
 決心して以来、南アフリカでの一年間の仕事以外、「決まった仕事」は持たず、多くの時間を、家族や友だち、人生の楽しみのためにとっている。ロンドン、ケープタウン、スペイン南部に家を持ち、たいてい親友と一緒に、数か月ずつ滞在する生活を楽しんでいる。かといって、引退したわけではない。どんな基準で見ても、四六時中はたらいていた頃より、はるかに多くの成果をあげている。しかもゆったりしたライフスタイルを楽しみながら。
誰だって、労力を減らし、願望を充たすことで、大きな恩恵を受けられる。わたしはそう確信している。人生のバランスを見直せば、いまより健康になり幸福になれるうえに、はるかに大きな成功をつかめるのだ。成功の定義は人それぞれだとしても。
なぜ、また本を書くのか
ふたりの人物の存在なくして、この本は生まれなかった。ひとりは、ケープタウンでレストランを経営する友人のスティーヴ・ゲルソウスキーだ。スティーヴは活発で精力的、とても聡明な人物だ。その彼に、「『人生を変える80対20の法則』はむずかしくて、一〇ページしか読めなかった」と言われて、大きなショックを受けた。
「冗談だろう」というわたしに、こう言った。
「冗談なんかじゃない。数字に大学教授のご高説に統計ばかり。僕の手には負えない。いい本だと聞いたから読もうとしたんだが、どうしてもダメだった」
 スティーヴがダメなんじゃない、そう思わせた自分がダメなのだと気がついた。『人生を変える80対20の法則』は、気軽に読めるやさしい本だと思っていた。だが、個人向けに書いた後半部分はやさしいが、ビジネスに関する記述も多く、一般の人たちを退屈させていたのも事実だ。大きな考え方はあくまでシンプルなのに、ビジネス編を最初にもってきたため、むずかしいという印象を与えてしまったのだ。
あの本で、手探りしながら八〇対二〇の法則を生活に生かす方法を述べたとき、わたしはアイデアを提示するだけで、アイデアをつかみ、活用するのは読者に任せていた。「幸せになるために、これを実践すべきだ」という言い方をするべきだった。
 もうひとり、オーストラリア人の友人、ローレンス・トルツからも刺激を受けた。彼からは、こんな電子メールをもらった。「書いてある内容はすばらしいが、わたしとしては、所得や教育水準を問わず、あらゆるレベルの人にこの法則を活用してもらいたい。誰もが身の回りの問題解決に、この法則を使えるということを、やさしく解説した本は書けないだろうか。『人生を変える80対20の法則』はビジネスマンやプロ向けだ。一般の人や学問に縁のない人のために本を書いてくれないか。たとえば、好きな仕事につくとか、資産を整理するといった単純なことに、八〇対二〇の法則を活用する方法を示せないだろうか」
「できる。それはいいアイデアだ。いますぐ取りかかろう」とわたしは答えた。こうして出来上がったのが、この本だ。
八〇対二〇方式の仕組み
 まさに、これから八〇対二〇方式の仕組みをこの本で述べていくのだが、柱となるアイデアはふたつしかないので、簡単にふれておこう。
▪焦点の法則──絞り込むほど豊かになれる。
▪進歩の法則──少ない努力で多くの成果をあげられる。
 焦点の法則はむずかしくない。第1章で、望む結果の八〇パーセントは、行動の二〇パーセントから生まれるという考え方を説明する。だとすれば、望む結果を手に入れ、自分が大切にする人やモノを助けるために重要なのは、労力のごく一部だということになる。残りは無駄なのだ。
 自分にとって大事なこと、自分の生活を豊かにするものを見極め、もっとも大事なものに絞り込めば絞り込むほど豊かになれることがわかる。決定的に重要なごく少数のことに集中すれば、人生は味わい深く、報われるものになる。
この本は、自分にとってほんとうに大事なことは何なのか、それらに焦点を合わせる方法を知る手がかりになるはずだ。
二番目のアイデア、「少ない努力で多くの成果をあげられる」は、それほど明確ではない。進歩の法則とは、エネルギーや汗、不安を少なくしながら、多くの成果をあげられる、というものだ。物事を劇的に改善するだけでなく、少ない努力でそうできる。この考え方は画期的であり、一般通念と反している。だからこそ、慎重に検討する価値がある。
本書では、「自分自身」、「仕事と成功」、「お金」、「人間関係」、「シンプルな生活」の五つの分野で、焦点の法則と進歩の法則を活用する方法を示す。そして、ひとりひとりが行動計画を立て、生活を変える一助となることを目指している。
序文
第1部 はじめに
第1章 大きな考え方
八〇対二〇の法則は、生活のあらゆる側面にあてはまる
第2章 労力は少なく、成果は多く
個人は「八〇対二〇の法則」を生かしきれていない/どうすれば、少ない労力で幸せになれるのだろうか/むずかしいことが簡単になる/少ない労力で多くの成果をあげよう──最後のフロンティア
第3章 時間はわが手に
あなたの「幸せの島」は何だろうか?/あなたの「成果の島」は何だろうか?/夢見る貧しい事務員/時間管理ではなく、時間革命へ/時間の革命家/「いま、この時」に生きる/人生で大事なことを改善する
第2部 生活そして人生に生かす八〇対二〇の法則
第4章 強みの二〇パーセントに絞る
自分は何者か? 何になりたいのか?/焦点を絞り、個性を生かせば、人生は楽になる/焦点を絞り、個性を伸ばせば幸せになれる/八〇対二〇方式で焦点を絞り、改善する
第5章 仕事と成功を楽しむ
賢い怠け者/大成功している人たちは、どこがどう違うのか?/八〇対二〇方式で仕事と成功を謳歌する
第6章 お金の謎を解く
なぜ二〇パーセントが八四パーセントを所有しているのか?/八〇対二〇方式──より少ないお金で、人生のエネルギーを増やす/八〇対二〇方式でお金の恩恵を受ける
第7章 八〇対二〇方式の人間関係
人間関係が増えて幸せになったのか/量か質か/愛すべき人/幸せな家族/友人関係/八〇対二〇方式で大きな愛をつかむ
第8章 すばらしきシンプル人生
すばらしい人生とは/「多くの労力で多くの成果」を求める踏み車から抜け出す方法/
八〇対二〇方式で、シンプルですばらしい毎日を送る

第3部 実現に向けて
第9章 節約型のポジティブな行動パワー
第10章 八〇対二〇方式の幸せ計画
終わりの言葉
謝辞
原注
訳者あとがき

略歴

[著者]
リチャード・コッチ Richard Koch
起業家、投資家、経営コンサルタント。ボストン・コンサルティング・グループやベイン・アンド・カンパニーで、数多くの欧米の優良企業のアドバイザーを務めた後、1983年に2人のパートナーと、コンサルティング会社L.E.K.を設立(89年に独立)。『人生を変える80対20の法則』(阪急コミュニケーションズ)は、34の言語に翻訳され100万部超のベストセラー。最新刊は『The 80/20 Manager』。

[訳者]
高遠裕子 たかはし・ゆうこ

翻訳家。主な訳書に『新版 人生を変える80対20の法則』(共訳)『20歳のときに知っておきたかったこと』『未来を発明するためにいまできること』(いずれも阪急コミュニケーションズ)、『心のなかの幸福のバケツ』『経営は「実行」』(ともに日本経済新聞出版社)。

●装丁・本文デザイン/轡田昭彦+坪井明子
●校閲/竹内輝夫