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晴れの日に、傘を売る。 waterfront 支持率ナンバーワンの傘を生んだ「良品薄利」の経営

晴れの日に、傘を売る。

かつて高級品だった傘は、いまや「500円」がスタンダード。革命を起こした《ウォーターフロント》を生んだのは、自由が丘の小さな傘メーカー。浪漫を追い求める社長の頭の中は、寝ても醒めても傘のこと――

  • 書籍:定価1650円(本体1,500円)
  • 電子書籍:定価1320円(本体1,200円)
  • 2014.03発行
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内容

主力商品500円、従業員35人、年間販売数1870万本、シェア日本一!

かつて高級品だった傘は、いまや「500円」がスタンダード。革命を起こした《ウォーターフロント》を生んだのは、自由が丘の小さな傘メーカー。浪漫を追い求める社長の頭の中は、寝ても醒めても傘のこと。夢は「折り畳まない折り畳み傘」。浮利を追わず、あくせく生きて、いつか「人類を傘から解放する」。

傘の神様の物語に加え、経営の神髄を語る貴重な本と感動しました。
雑誌でwaterfrontの傘を知り、取り扱いたいと思って電話をしたら、
林さんが来てくださいました。以来十数年、今では無二の親友です。
――――飯田 勧(スーパー「オーケー」代表取締役社長) 

【晴れの日でも売れる傘】
「シェア17%」の秘密/「いい傘を500円で」/小売店とともに/晴れの日に傘を売る
【傘の黒澤プロダクション】
工場あってのメーカー/プロ集団としての会社/「良品薄利」の経営
【唯一の才能、それが「傘づくり」】
終わらない改良/究極の傘をめざして/もっと新しい驚きを
【傘のことだけ考えて生きる】
仕事に浪漫を!/生涯、一所懸命

目次

はじめに――自由が丘・街物語

晴れの日でも売れる傘

 「シェア17%」の秘密 

「市場シェア」より「お客様の支持率」/2000円以上の価値のあるものを500円で売る/ウォーターフロントとシューズセレクション/「お客様が感動する傘」という目標のために

 「いい傘を500円で」 
革命的な傘、「スーパーバリュー500」/新たな価値を創造すると、お客様は感動する/手づくりの「24本骨」が全国展開のきっかけ/安くて小さくて楽しいから、お土産としても人気に/カラフルな売り場づくりで、「選ぶ楽しさ」を生む/傘にピッタリだったアソート販売/「お客様がほしがる商品」を

 小売店とともに 

「あの傘あります」――小売店の創意工夫で売上アップ/500円だからこそ、お客様も小売店も喜ぶ/小売店の売上が上がる工夫を考える/流通は一瞬で変わる/メーカーと小売店がめざすべきもの

 晴れの日に傘を売る 

無手勝流営業の基本は「飛び込み」/「宿題」はもらって帰らず、相手に与えるもの/ランダムな行動で意表を突いた営業をする/晴れた日にも売れるようにするには

 

傘の黒澤プロダクション

 工場あってのメーカー 

職人&内職中心で会社を立ち上げ/下請けだけでなく自社製造もめざして/多くのパーツと工程──手間暇かかる傘の世界/「高品質ものを安い値段で」は創立当初からの信念/中国へ! そして職人たちとの別れ/外注先も下請けも幸せになる工場運営/莫大な在庫で決して品切れさせない

 プロ集団としての会社 

会社運営の理想は「黒澤プロダクション」/役職は一切なし。だからできること/自発的に生まれた委員会とチーム制/ノルマはないが、意欲のある会社/入社試験のない会社──社員が社員を呼ぶ/すばらしい社員たち

 「良品薄利」の経営 
天気のことは天気が解決する/120円の水を80円で売る/浮利を追わず、企業努力で価格を下げる

唯一の才能、それが「傘づくり」

 終わらない改良 

番傘づくりに魅せられた少年/先人たちから託された「宿題」に応えていく/「傘なら才能を活かせるかもしれない」/完成しても、さらに改良を重ねていく/つくってみないとわからないこともある/傘の神様が人を紹介してくれる/「絶対に折れない傘」の材料とは?/お客様の熱意に負けない工夫を/高級時計を見ながら傘のことを考える

 究極の傘をめざして 

傘の文化をもっと豊かに/ネーミング先行でどんどん湧き出すアイデア/「銀行員の日傘」に込められた思い/思いついたら即登録。商標登録は夢のリスト/「折り畳まない折り畳み傘」とは/どうすれば完成イメージに近づけるか考え抜く/人類を傘から解放する

 もっと新しい驚きを 
先人たちの知恵と技術に敬意を払う/500円の傘から3000円の傘まで/インフラと文化、2つのブランドで極める/驚きの技術が当たり前になるように

傘のことだけ考えて生きる

 仕事に浪漫を! 
はじまりは、東洋医学の治療院/若くして仕事が軌道に乗ったがゆえの迷い/取り柄がないから一生懸命やるしかない/治療院を閉じて飲食・靴の世界へ/これからは傘だけを贔屓して生きる

 生涯、一所懸命 

歳をとったからこそ見えてきた人生の機微/「粋だ」と思わせないのが本当の粋/大切なものを手に入れるために、手放さなければならないものがある/傘づくりのために、すべてを手放した/あくせく生きて、自由意思で傘をつくる/仕事には真心をもって接する/一生懸命と一所懸命。嫌いなことはやらない/「人は死して傘を残す」――「生涯現役」の意気で

おわりに――自由が丘を「傘の街」に!

はじめに

自由が丘・街物語

 いまではすっかりスウィーツの街となった東京・自由が丘に、1979年7月、「サンドケーキ」という名のスウィーツが誕生しました。サンドウィッチとケーキを合体させたような、まったく新しいお菓子です。
 十数種のエッセンスを混ぜ合わせ、黄金色に焼き上げた2枚の生地に、さまざまな具材がはさまれています。アイスクリーム、マロン、バナナ、レーズンなどのほか、ツナやコンビーフ、ポテトサラダ、ベーコン、ウインナーといったフード類もあります。
 これを、ナイフとフォークを使って切り分けて食べます。生地はクリーミーでまろやか。ひと口含んだときに口いっぱいに広がっていくのは、おいしさを超えた幸福感……。サンドケーキは人々を虜にしました。
 瞬く間に若者たちが集まり始め、多くの雑誌でも話題になり、休日には近県から、長い休暇や行楽シーズンには全国からの旅行客が集まりました。修学旅行から抜け出してきた高校生が、店の前で記念撮影をする光景も見られました。
 その店の名は、「花時計」。30坪足らずの店内は、ピンクのテントに白い壁面、ところどころに緑が配され、中央には白い時計台が左右に翼を広げていました。メルヘンチックな世界が、人々に非日常の空間を与え、ひとときの安らぎをもたらしたのです。

 しかし、これほどの人気を博した店さえも、オーナーの「本当にほしいものを手に入れるには、いま手に持っているものを手放さなければならない」という認識から、一瞬のうちに幕を下ろすことになりました。
 オーナーは、30年前の僕です。店を閉めてでも手に入れたかった(やりたかった)のは、傘づくり。
 当時を知るお客様からは、「なんとかもう一度サンドケーキを食べたい」「あのとき、もっと食べておけばよかった」という悲鳴に近い声が、いまでも届きます。一度でも口にした人は決して忘れられない味、それがサンドケーキでした。
 宝塚歌劇団のトップスターが、ある日突然、惜しむ間もなく引退してしまったようなものかもしれません。神秘のレシピは固く封印されたまま、再び世に出ることはない。幻の味は、伝説となったのです。
 この「花時計」こそ、2014年春に同じ自由が丘に誕生する「Cool Magic SHU'S(クール・マジック・シューズ)」のルーツなのかもしれません。
「クール・マジック」とは、「かっこよく、ありえない」ということ。「かっこよく、ありえないスウィーツ」が、「かっこよく、ありえない傘」となって甦るのです。
 自由が丘から始まり、代官山を巡って、自由が丘にたどり着いた、夢のような小さな旅――それが、僕と僕の傘が歩んできた道のりです。
 そして、いま、新しい伝説の幕が上がります。伝説のサラブレッド「セクレタリアト」が多くの人に夢と感動を与えたように、ロマンチックでドラマチックなエピソードに彩られた、傘物語の始まりです。

略歴

林 秀信(はやし・ひでのぶ)
株式会社シューズセレクション代表取締役社長。
1946年、長崎県生まれ。上京後、飲食店経営などを経て、洋傘の研究開発に着手。86年、生産から加工、販売までの一貫した流通の確立を目指して同社を設立。有名ブランドのOEM受注生産で得た技術的基盤を背景に、2000年、「SUPER VLE(スーパーバリュー)500」シリーズを発表。超薄型の折り畳み傘「ポケフラット」は月間売上30万本という大ヒット商品となり、「2004年 日経優秀製品・サービス賞」を受賞。高機能・高品質でありながら、500円・1000円という超低価格の傘で注目を集め、販売数を伸ばし続けている。独自商品の開発に力を入れ、国内外で取得した特許等の産業財産権は161件。従業員35人という少数精鋭の経営で、年間販売数1870万本(2013年)、全国シェア17%を誇る。

●装幀/坂川栄治+永井亜矢子(坂川事務所)