就活の新常識! 学生のうちに知っておきたい会計
自己分析×会社研究=内定力。会計を知れば「会社研究」でライバルに差をつけられる! 仕事のイメージが作れるから、面接で「即戦力」を売り込める!これからの就職活動に欠かせない新・定番書。
- 書籍:定価1650円(本体1,500円)
- 電子書籍:定価1320円(本体1,200円)
- 2010.04発行
内容
会計を知れば、未来は開ける!
会計を知ると、「会社研究」でライバルに差をつけられます。
エントリーシートの書き方、面接での対応力が違ってきます。
当たり前のことですが、面接を受ける会社のビジネスを知れば知るほど、面接でしっかりとした受け答えをすることができます。でも多くの学生は、自己PR、SPI、エントリーシート等の対策に手一杯で、会社や業界の研究はおろそかになりがちです。自分を伝えるために大切なことは、相手をしっかりと理解することです。そして、相手が受け入れられる表現を使って、自分のことを伝えていかなければなりません。
会社のことを研究すればするほど、その会社にふさわしい自己PRや志望動機を作り上げることができます。また、業界や会社を研究することは志望企業の面接を突破するためだけではなく、どういう職業が自分に向いているかという職業観の確立や社会人になってからの仕事にも役立ちます。(本書「まえがき」より)
本書で学んだ会計を使うことによって、この混沌とした社会の中で未来を切り開く力をつけることができます。社会人になってからも「輝ける自分」になるために、ぜひ本書を役立ててください。
まえがき
バブル崩壊と会計との出会い
私が会計と出会ったのは、バブルの崩壊がきっかけでした。私の中学、高校時代は日本中がバブル景気に浮かれていて、まだまだ日本の強さを信じることのできる時代でした。その当時は、エコノミストが「株が上がる」といえば本当に株が上がり、その姿はまるで未来を言い当てる予言者のようでした。そんな姿を見ているうちに私はエコノミストに憧れるようになり、大学では経済学を勉強しようと思いました。
しかし、バブルの崩壊によってそのような状況は一変しました。私が大学に入った頃には、エコノミストが「日本経済は来年には回復する」と言っても、だんだん景気は悪化していきました。そのような姿を見るにしたがい、エコノミストへの憬れはだんだんと薄れていきました。そして、そのとき考えました。「どうして景気が良くなったり、悪くなったりするんだろう?」と。
私が大学に入る前は景気が良かったため就職活動は楽しそうでしたが、私が大学に入る頃には先輩たちが大変そうに就職活動をするようになりました。この数年間に、日本は好景気から不景気になったのですが、その理由はよく分かりませんでした。もちろん土地や株の価格が下がったことにより景気が悪化したというのは分かっていましたが、なぜ土地や株が下がったのか、そしてこれから自分はどうしていくべきかについて考えるようになりました。
そして、だんだんと「経済っていうのは、目に見えないばくぜんとしたものだよな。目に見えないばくぜんとしたものを勉強するよりは、経済の主役である企業について研究した方が、何か見えてくるかもしれない。企業の業績は会計を勉強すれば分かるのか。じゃあ、会計を勉強してみるか」と考えるようになりました。そして、会計を勉強するようになってからは、今まで目に見えなかったことに気づくようになりました。
例えば、伊勢丹などのデパートは販売している商品の値段も高いですし、建物も立派なのですごく儲かっていると思っていましたが、決算所の数字を見るとあまり儲かっていないことに気づきました。例えば、三越と統合する前の2007年3月期の伊勢丹の決算書を見てみると、営業利益率は4.1%しかありません。営業利益率が4.1%ということは、1万円の商品を売っても410円しか儲からないということです。この数字を見て、「思ったほど儲からないんだな」と感じた方も多いのではないでしょうか。
その他にもいろいろな会社の決算書を見ながら、「この会社は地味だけど、結構儲かっているな」とか「化粧品メーカーは、やっぱり広告宣伝費をたくさん使っているんだ」「メーカーは工場とか生産設備などの固定資産をたくさん持っているな」というように、今までばくぜんと感じていたことを数字で確かめることにより、はっきりと理解できるようになりました。そして、会計と出会ったことが私の進路に大きな影響を与えました。
会計を勉強するメリット
会計を勉強する一番のメリットは、物事の本質が見えるようになることです。今となっては日本の財政が危ないというのは常識ですが、私が大学に入った1992年にはマスコミでもあまりそのような報道はされませんでした。その頃は、「民間は潰れても、国は潰れない。だから公務員になれば、一生食べていくには困らない」と言われていました。
そのとき私は思いました。「なぜ、国は潰れないのだろうか?」と。民間の企業は借金が返せないと倒産してしまいます。同じように国も借金を返せなければ破綻してしまうのではないかと考え、国の財政状態について調べてみたところ、国の借金である国債残高が年々増加していることに気づきました。このペースで国債が増えていけば、いずれ国家財政が破綻してしまうのに、なんで多くの人は気づかないのだろうかと感じました。
また、同時に企業は成長と衰退を繰り返していくということにも気づきました。バブル時代においては、銀行や不動産などの資産をたくさん抱えている企業の業績が絶好調でしたが、デフレ時代には資産の値下がりにより大きなダメージを受けました。このように考えると、たとえ自分が就職するときの花形産業であっても、10年後、20年後は分からないと感じました。
大学卒業から定年退職までの間は、約40年あります。40年という時間を考えると、公務員も絶対大丈夫だとも思えませんし、たとえその当時の花形企業に入ることができたとしても、リストラなどによって一生その組織にはいられないかもしれないという危機感を感じました。そうすると、自分の専門分野を持つことによって競争力を身につけ、いくつもの組織で働いていくというキャリアプランが良いのではないかと思いました。
そのときに自分の専門分野を何にしようかと迷ったのですが、会計を勉強することによっていろいろなものが見えてきたので、会計士という仕事が向いているのではないかと思いました。そして会計士の試験に合格した後は、少しでも早く仕事ができるようになりたいと思い、外資系会計事務所に入って日々の仕事に励みました。
ここまでお話ししたことは、みなさんにとっては当たり前のことかもしれませんが、15年くらい前はあまりこのように感じる人はいませんでした。最も簡単に結果を出す方法は、世の中を大きな視点から分析し、多くの人が気づく前に行動するということです。私が就職した頃は外資系企業よりも日本の大企業に入る方がステータスでしたので、今ほど外資に入るのは難しくなかったと思います。
本書で学べる内容
情報化時代に価値があるのは、情報(知識)ではなく、手に入れた情報を使っていかに自分が直面している問題を解決するかという知的生産力です。そこで本書では、会計の細かい知識ではなく、会計を就職活動や社会人になってからの仕事に役立てる方法にポイントを絞って説明していきます。本書で紹介する内容は、次のとおりです。
第2章 決算書の読み方を覚えよう
第3章 あこがれの会社を分析してみよう
第4章 就職活動に役立つ会社情報を入手する
第5章 有価証券報告書の使い方を覚えよう
第6章 エコと会計
第7章 社会人に必要な3つの数字力
第1章の「会計についての10の疑問」では、会計をはじめて勉強する方が疑問に感じる点について、Q&A形式で説明しています。第2章の「決算書の読み方を覚えよう」で決算書の基本について説明した後、第3章の「あこがれの会社を分析してみよう」では、大学生の就職先として人気の高い電通や博報堂、三菱商事、三井物産などを分析してみたいと思います。
第4章の「就職活動に役立つ会社情報を入手する」では、インターネットや書籍などの様々な情報源から会社を分析するために役立つ情報の入手方法を説明します。第5章では有価証券報告書の効率的な使い方を、第6章の「エコと会計」では環境会計や企業の社会的責任(CSR)などを紹介します。そして、第7章ではみなさんが社会人になったときに必要となる数字力について説明します。
私は以前、就職活動を目的としたサークルにゲストとして参加したことがあります。そのときに多くの学生と話して感じたことは、しっかりとした志望動機を言える学生はとても少ないということでした。もちろん、みなさんマニュアル本などを読みながら面接対策はしているので「○○という理由で、○○業界の仕事をしたい」というような志望動機を言うことはできます。
しかしながら、もう少し突っ込んで「○○業界っていってもいろんな仕事があるよね。もう少し具体的に○○業界でどういう仕事がしたいかを教えてもらえないかな」と質問すると、ほとんどの学生は答えにつまってしまいました。
その中で1人、具体的な会社名をあげて志望動機をしっかりと話すことができた学生がいました。その学生と15分ほど話しているうちに感じたことは「まだ会社にも入っていないのに、よくその会社のビジネスをここまで理解しているな。きっと○○社に入ったらすぐに仕事ができるようになるだろうな」ということです。そして、後日彼から「○○社に内定しました」というメールが届きました。
これは当たり前のことですが、面接を受ける会社のビジネスを知れば知るほど、面接でしっかりとした受け答えをすることができます。でも多くの学生は、自己PR、SPI、エントリーシート等の対策に手一杯で、会社や業界の研究はおろそかになりがちです。自分を伝えるために大切なことは、相手をしっかりと理解することです。そして、相手が受け入れられる表現を使って、自分のことを伝えていかなければなりません。
会社のことを研究すればするほど、その会社にふさわしい自己PRや志望動機を作り上げることができます。また、業界や会社を研究することは志望企業の面接を突破するためだけではなく、どういう職業が自分に向いているかという職業観の確立や社会人になってからの仕事にも役立ちます。
現在大学で勉強されているみなさんは、もうしばらくしたら就職活動を通じて社会に出て行くことになると思います。私自身、大学という閉じられた世界から、社会という開かれた世界に出て行くときには大きな不安を感じました。本書で学んだ会計を使うことによって、この混沌とした社会の中で未来を切り開く力をつけることができれば、著者としてこのうえない喜びを感じます。
2010年4月
目次
まえがき
第1章 会計についての10の疑問
Q1 大学時代に会計を勉強するメリットは何ですか?
Q2 会計について簡単に教えて下さい
Q3 会計の勉強に挫折しました
Q4 簿記を勉強すれば会社のことが分かりますか?
Q5 簿記の効率的な勉強法を教えて下さい
Q6 決算書はどこで手に入りますか?
Q7 儲かっている会社は良い会社なのですか?
Q8 決算書を読めるようになると仕事に役立ちますか?
Q9 どうやったら数字に強くなれますか?
Q10 売り手市場と買い手市場はどちらが得ですか?
第2章 決算書の読み方を覚えよう
1 決算書とは何か
2 2種類の決算書
3 財務3表とセグメント情報
第3章 あこがれの会社を分析してみよう
1 決算書を分析する前に知っておきたいこと
1 2種類の分析方法
2 分析の手順
2 有名企業の決算書を分析する
1 TSUTAYAのビジネスを分析する
2 広告代理店のビジネスを分析する 電通vs.博報堂
3 総合商社のビジネスを分析する 三菱商事vs.三井物産
3 優良企業の探し方
第4章 就職活動に役立つ会社情報を入手する
1 会社が発信している情報を入手する
決算説明会資料/アニュアルレポート/CSRレポート/有価証券報告書/ニュースリリース/その他
2 会社以外が発信している情報を入手する
日本経済新聞/書籍、ビジネス情報誌/ブログ、ホームページ/テレビ
3 就職活動に関連して入手する
会社案内パンフレット、企業の採用ページ、会社説明会/就活用の書籍/OB訪問/合同採用説明会/大学の就職支援室の利用/就職活動サイト
4 実際にサービスを利用する
第5章 有価証券報告書の使い方を覚えよう
1 有価証券報告書の入手方法
2 有価証券報告書の内容
3 カルチュア・コンビニエンス・クラブの有価証券報告書を分析する
主要な経営指標等の推移/沿革/事業の内容/従業員の状況/役員の状況/決算書の分析
4 有価証券報告書から分かること
第6章 エコと会計
1 環境報告書
環境報告書とは何か/環境会計/シャープの環境報告書を分析する
2 企業の社会的責任(CSR)
CSRとは何か/マクドナルドとサントリーのCSR報告書を比較する
エコノミーからエコロジーへ
3 社会的責任投資(SRI)
社会的スクリーン/SRI株価指数と組み入れ銘柄/これからのSRI
第7章 社会人に必要な3つの数字力
1 ビジネス数字
ビジネス数字とは何か/ビジネス数字力を高めるお勧め本
2 管理会計
管理会計とは何か/管理会計力を高めるお勧め本
3 財務会計
財務会計とは何か/財務会計力を高めるお勧め本
あとがき 自己PRでお悩みの方へ
著者
望月 実(もちづき・みのる)
1972年名古屋市生まれ。立教大学卒業後、大手監査法人入社。監査、株式公開業務、会計コンサルティング等を担当。2002年に独立し、望月公認会計士事務所を設立。ドラッカー学会会員。現在は、就活やキャリアアップにおいて「数字センス」で状況を切り開いていく方法を伝えることをミッションとして、日本人を数字に強くするための活動を展開。執筆、講演、テレビ出演などを通じ、わかりやすく親身なアプローチと温かな視点には定評があり、切実な悩みを抱えながらもがんばっている就活生やビジネスマンの支持を集める。著書に『有価証券報告書を使った決算書速読術』『最小限の数字でビジネスを見抜く決算書分析術』(阪急コミュニケーションズ)、『数字の習慣』(総合法令出版)、『数字は語る』(日本経済新聞出版社)、『問題は「数字センス」で8割解決する』(技術評論社)、『課長の会計力』『会計のトリセツ』『会計を使って経済ニュースの謎を解く』(日本実業出版社)がある。
花房幸範(はなふさ・ゆきのり)
鳥取市生まれ。中央大学商学部卒業後、大手監査法人入社。監査業務の他、株式公開、デューデリジェンス業務等に携わる。その後、投資会社にて財務経理部長としてM&A に従事。現在は会計コンサルタントとして幅広く企業の経営をサポートする傍ら、地元の鳥取県をはじめとする地域再生に取り組んでいる。また会社経営のノウハウを農業ビジネスに取り入れるべく奮闘中。自身が最重要のビジネスツールの1つと考える「会計」を若手に教える活動もしている。著書に『有価証券報告書を使った決算書速読術』『最小限の数字でビジネスを見抜く決算書分析術』(阪急コミュニケーションズ)。
●装丁・本文デザイン/轡田昭彦+坪井朋子