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別れのフーガ
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別れのフーガ 或る美学者の『愛と再生の断章』

キム・ジニョン 著

小笠原藤子 訳

別れのフーガ

  • 書籍:定価2420円(本体2200円)
  • 電子書籍:定価2420円(本体2200円)
  • 2026.7発行
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内容

悲しみの終わりには不在があり、
不在の終わりには実在があるのか。

ハン・ガンが3回読んだ名著『朝のピアノ』の著者が、長きにわたって書き溜めていた「愛と不在」の記録。

2018年、ひとりの美学者がこの世を去った。その死後、遺された原稿から見つかった「愛」と「別れ」をめぐるまとまった思索の断片を収録したのが本作だ。

絶筆となった前作『朝のピアノ』で見せた、死の影をも「生の輝き」へと変える透徹した眼差し。その原点ともいえる瑞々しい知性が、息づく。

■時間をかけて熟成された、愛の解読

本書の言葉は、美学者でありながらひとりの人間である著者が、愛と別れを経験し、思考し苦悩した長い時間の集積だ。愛する人がいなくなった後の世界を、あるいは愛そのものの困難を、私たちはどう受け止めるべきか。バルザック、バルト、プルースト、カフカといった古今東西の知の巨匠たちと対話しながら、著者はその答えを自らの感覚で手繰り寄せていく。

■日常という「聖域」に宿る記憶

著者は綴る。

〈戻って顔を洗い横になると、耐えきれない寂しさが押し寄せる。洗顔する間に、何か顔を失ってしまったかのように〉

顔を洗うこと、コーヒーを飲むこと、ただ静かに座っていること。そんな当たり前の日常が、「不在の誰か」と繋がっていく。身体に刻まれた記憶の地層を丁寧に剥がし、言葉という光を当てることで、失われたはずの愛が「実在」として立ち上がる。

■或る美学者が遺した、普遍的な愛のフーガ

複数の旋律が重なり合い、ひとつの音楽を形作る「フーガ」のように、本書に並ぶ断章は、時に孤独を、時に歓喜を奏でながら、読む者を深い静寂へと誘う。

喪失の痛みの中にいる人、愛することの困難に立ちすくむ人、そして言葉の持つ力を信じたい人へ。美学者キム・ジニョンが人生という旅の途上で遺した、祈りのような一冊だ。

プロフィール

キム・ジニョン
哲学者/美学者 高麗大学ドイツ語独文学科と同大学院を卒業し、ドイツのフライブルク大学大学院(博士課程)留学。フランクフルト学派の批判理論、特にアドルノとベンヤミンの哲学と美学、ロラン・バルトをはじめとするフランス後期構造主義を学ぶ。小説、写真、音楽領域の美的現象を読み解きながら、資本主義の文化および神話的な捉えられ方を明らかにし、解体しようと試みた。市井の批判精神の不在が、今日の不当な権力を横行させる根本的な原因であると考え、新聞・雑誌にコラムを寄稿。韓国国内の大学で教鞭をとり、哲学アカデミーの代表も務めた。

著書に『朝のピアノ 或る美学者の『愛と生』の日記』(小笠原藤子訳、CEメディアハウス)。バルト『喪の日記』の韓国語翻訳者としても知られる。

小笠原藤子(おがさわら・ふじこ)
上智大学大学院ドイツ文学専攻「文学修士」。現在、慶應義塾大学・國學院大學他でドイツ語講師を務める傍ら、精力的に韓国語出版翻訳に携わる。訳書にキム・ジニョン『朝のピアノ 或る美学者の『愛と生』の日記』(CEメディアハウス)、コ・ミョンファン『本は人生を生き抜く最強の武器である』(Discover21)、キム・ウンジュ『+1cm DREAM』(文響社)、イ・ギョンヘ『ある日、僕が死にました』(KADOKAWA)など多数。

装画:小林夏美
装幀:宮本亜由美
校正:株式会社文字工房燦光
DTP:有限会社マーリンクレイン