アステイオン97
【特集】ウクライナ戦争――世界の視点から
今年2月24日にロシアがウクライナに対して「特別軍事作戦」と称して始めた戦争は世界に衝撃を与えた。冷戦時代には東西対立の緊張によって、冷戦後は対立関係の解消によって、ヨーロッパは「平和の地域」のはずだった。そのヨーロッパでロシアが大規模な軍事侵攻を行うことは大半の専門家にとっても予想を超えた事態だった。
(略) 日々の戦況から離れて俯瞰することで見えてくるものがあるのではないか。そういう問題意識から今特集では内外の専門家にさまざまな角度からの分析を求めた。もちろん戦争は進行中であり、本特集も夏頃までの状況を前提とした暫定的な考察であるから限界はある。それでも今特集が読者にとって、この不幸な戦争とこれからの世界について考える機会となることを祈りたい。(「巻頭言」より一部抜粋)
<特集>デイヴィッド・A・ウェルチ/廣瀬陽子/アンドリー・ポルトノフ/鈴木一人/竹森俊平/マリー・ラル/野嶋 剛/秋山信将/中西 寬
<対談>ビル・エモット+田所昌幸
<写真で読む研究レポート>李 賢晙/稲賀繁美
<世界の思潮>沼野恭子/梅澤 礼/鵜戸 聡/向山直佑/白川方明 <時評>高階秀爾/渡辺 裕/藤森照信 /渡辺 靖 /武田 徹/合六 強/松本佐保/岩間陽子/青柳いづみこ/阿川尚之
<連載企画>櫻井悟史 +プラダン・ゴウランガ・チャラン+三谷宗一郎+宮野公樹
<連載>岡本隆司/奥本大三郎/五百旗頭 真
- 書籍:定価1100円(本体1000円)
- 2022.11.18発行
目次
■特集■
ウクライナ戦争が提起する五つの論点
・・・・・・・デイヴィッド・A・ウェルチ
プーチンはなぜ予想外の戦争を始めたか
・・・・・・・廣瀬陽子
ウクライナの抵抗力の源泉――プーチンの理解を超えた多様性の力
・・・・・・・アンドリー・ポルトノフ
「相互依存の罠」――経済の武器化に潜む落とし穴
・・・・・・・鈴木一人
二つの神話の崩壊とエネルギー地政学の復活
・・・・・・・竹森俊平
南アジアとウクライナ戦争――カギとなる中国要因
・・・・・・・マリー・ラル
台湾で「他者」となる中国
・・・・・・・野嶋 剛
リアリズムの誘惑、リベラリズムの憂鬱――問われる核の役割
・・・・・・・秋山信将
「大きな物語」なき時代の戦争と二十一世紀の平和の条件
・・・・・・・中西 寬
■対談 ■
超大国間競争へと回帰する世界
・・・・・・・ビル・エモット+田所昌幸
世界の思潮
文学は魂の糧
・・・・・・・沼野恭子
心中とフェミサイド――一八八八年シャンビージュ事件
・・・・・・・梅澤 礼
テロとナチスとアルジェリア
・・・・・・・鵜戸 聡
ヨーロッパ中心主義への挑戦――国際関係論の現場から
・・・・・・・向山直佑
ポール・ボルカーの残したもの
・・・・・・・白川方明
■時評■
歌枕――名所と愛の世界
・・・・・・・高階秀爾
文化資源としての校歌――その変容に秘められたドラマ
・・・・・・・渡辺 裕
建築への関心の高まり
・・・・・・・藤森照信
大きな振幅を生むアメリカ例外主義
・・・・・・・渡辺 靖
ウクライナと日本の核――感情の前景化にあらがって
・・・・・・・武田 徹
「かりそめの停戦」に抗うウクライナの人々
・・・・・・・合六 強
ウクライナ戦争が映し出す宗教と政治
・・・・・・・松本佐保
女がリベラルに目覚める時
・・・・・・・岩間陽子
ヴィンテージ・ピアノ
・・・・・・・青柳いづみこ
寂しい港、寂しい日本
・・・・・・・阿川尚之
■写真で読む研究レポート ■
ニューヨークと崔承喜
・・・・・・・李 賢晙
Avidya on Spider’s Web 蜘蛛の巣上の無明――電子の網目へと仮想化する蜘蛛手の街にて
・・・・・・・稲賀繁美
■連載企画「超えるのではなく辿る、二つの文化」■
解く理系に問う文系
・・・・・・・櫻井悟史 +プラダン・ゴウランガ・チャラン+三谷宗一郎+宮野公樹
■連載■
今みなおす江南史――「マンジ」の変貌
・・・・・・・岡本隆司
昆虫学事始――日本の昆虫研究を支えた人々
・・・・・・・奥本大三郎
平成史――冷戦後の国際変動と日本
・・・・・・・五百旗頭 真
●アステイオン編集委員会委員
委員長 田所昌幸
岡本隆司
武田徹
張 競
土居丈朗
中西 寛
●ブックデザイン/清原一隆(KIYO DESIGN)
●表紙画/安斉将
●ロゴ/荒田秀也・清原一隆(KIYO DESIGN)
●翻訳協力/ジャネット・アシュビー/斉藤裕一
●校閲/竹内輝夫
●編集協力/CCCメディアハウス書籍編集部