即! ビジネスで使える 新聞記者式 伝わる文章術 数字・ファクト・ロジックで説得力をつくる
「結局、何が言いたいんだ」?
「根拠が弱い! 」
「そのデータ、確かなのか」?
あなたの報告書、提案書、企画書、プレゼン資料、メール……
上司や同僚、取引先からこんなこと言われてませんか?
「伝える」ことが目的のビジネス文書では、うまく書く必要はありません。
必要なのは、人をその気にさせ、納得して読み進めてもらうための方法です。
それを身につけるのに、新聞記者のテクニックが役に立つのです。
日経新聞記者として30年、延べ1万本もの記事を数字とファクトで作ってきた著者が、誰もが納得する文章を、はやく、正確に書く技術を公開。
- 書籍:定価1650円(本体1500円)
- 電子書籍:定価1320円(本体1200円)
- 2021.7発行発行
はじめに
データを揃え、資料も読み込み、いざ企画書作成に取りかかろうとしたのに、パソコンを前に固まってしまった……。
そんな経験ありませんか。
情報が爆発的に生み出される時代にあって、文章に苦手意識を持っているビジネスパーソンは多いようです。作成に膨大な時間がかかったり、それにもかかわらず書き直しを命じられたり、文意が伝わらないために発生したミスの対応に追われたり。
そんなことが重なれば、帰宅する時間も遅くなるし、デートをすっぽかすはめにもなるし、さらには周囲の信頼を失ってしまうかもしれません。
しかし、文章の上手い下手は、生まれつきの能力ではありません。
バレエのプリンシパルらを対象にした研究結果から導き出された「1万時間の法則」をご存じでしょうか。ある分野でスキルを磨いて一流になるには1万時間の練習が必要というものです。実際、一流あるいはプロフェッショナルと呼ばれる人たちは数々の経験や長期間にわたる訓練を積んでいます。
私自身、学生時代の国語の成績はほめられたものではありませんでした。新聞記者になりたての頃は「ベタ記事」のような短い文章を書くのに半日以上四苦八苦しました。しかし、これまで30年間、1万時間を優に超える記者としての経験を積んだ結果、苦手意識を克服し、「伝わる文章」を書けるようになりました。
もちろん、ムダな努力をする必要はありません。
文章には「型」があり、伝えるためには「コツ」があります。その種類は多くありません。「結論」あるいは「主張」を先に書き、それを補足する理由や客観的事実を重要な順に書いていく──ただそれだけです。
わかりやすく伝わる文章をはやく書ければ、生産性が上がり、働き方も変わります。デートに遅れることもなくなるし、周囲の評価も変わってくるでしょう。
文章に苦手意識はなく、作文の成績も良かったのに、上司から「なんだこの文章は! 意味不明だぞ!」とダメ出しを食らった。SNS(交流サイト)では共感を得られる文章が書けるのに、職場では今ひとつ評価されず、納得がいかない。そんな人も意外と多いようです。
こうした〝悲劇〟が起きるのはなぜでしょう。それは、ビジネス文章とSNSとでは求められるものが違うからです。そもそも読み手が違いますし、オン(ビジネス)とオフ(プライベート)、娯楽と実用というように、読まれる場面もまったく異なります。
ビジネスの文章は、書くこと自体が目的ではありません。特に企画・提案書は、相手にこちらが思うように動いてもらうことが目的です。だから、〝きれいな文章〟が〝良い文章〟とは限りません。
ビジネスの現場で川端康成のような名文家やスティーブ・ジョブズのような名スピーカーになる必要はないのです。私たちは彼らとは違った「近道」を見つけ、「簡単に伝わる」文章のテクニックを身につけたいものです。その「近道」として、新聞記者のテクニックが役に立つのです。
本書は新聞記者として培った文章術をお伝えするのが目的です。具体的には、ファクト(客観的事実)、データ(数字)、ロジック(論理)の3つの要素が揃った「説得力」と「納得感」のある文章をはやく書くテクニックです。
すぐにビジネスで使えるように、ポイントごとに例文を入れました。第8章では、長めの文章を書く人のための練習問題を揃えてみました。手を動かしてみることで理解が深まり、コツが身についていきます。
「ローマは一日にしてならず」とは歴史的事実ですが、ムダな努力や遠回りをしない「伝わる文章術」を丁寧にお伝えしていきます。
2021年6月 著 者
目次
はじめに
第1章 伝えるためには「型」がある
1「文章は読んでもらえないもの」
2「伝え方」が求められる時代
3「書きたいこと」と「読みたいこと」にはズレがある
4 読み手は誰か。ターゲットと目的をはっきりさせる
5「共感」してもらう姿勢が足りていますか?
6 論理的(ロジカル)に訴える
7 英語は世界共通語だが
8 感情・感覚にも訴える
9 最初の3行が勝負
10 導入部の工夫
11 相手が興味を持ちそうな話題から入る
12 真摯に書く
13 書き始めに準備する──箇条書きのススメ
14 威力を発揮する「5W1H」「6W3H」
15 一文には1つの要素だけ
16 主語と述語を近づける
17「が」で文章をつなげない
18 形容詞もできるだけ使わない
19 助詞の「の」、語尾の「です」の連続使用に注意
第2章 文章の構成を考える
1 長い文章に価値はない
2 コンパクトに書く手本、それが新聞記事
3「逆三角形」で〝頑丈な〟文章を
4 文章を削る勇気を持つ
5 長い文章なら「理由」と「事例」を充実させる
6 文章構成はサンドイッチで
7 読者の疑問・反論に先手を打つ
8 OPQA法
第3章 ファクトと数字の大切さ
1「誰かに何かをしてもらう」ために書く
2 共感してもらうための「納得感」
3 客観的事実が書かれているか
4 ファクトとは何か
5 誰もが納得する事例やデータを盛り込む
6「5人前」は適切な分量か?
7 数字は主張に説得力を持たせる
8 数字に特別なセンスはいらない
9 受験数学とは違う「仕事の数字」
10 威力を発揮する「割り算」
11 比較するクセをつけよう
12 その数字は「東京ドーム何個分」?
13 受け手の想像力をかき立てる言葉で
第4章 ロジックとは「流れ」が自然なこと
1 ファクトの活用に必要なスキル
2 論理的とは「わかる」ということ
3 直感や感情に訴えかけることも重要だが……
4 スムーズな流れの「雲・雨・傘」理論
5 モレなく、ダブリなく
6 定性的なファクトを数字に置き換える
7「数字」「ファクト」「ロジック」は年齢や性別、国籍の違いを超える
8 データ分析について、知っておきたいこと
第5章 「伝わる文章」のために
1 目標は中学生でもわかる文章
2 読み手に納得してもらうテクニックのおさらい
3 相手の「メリット」か「デメリットの回避」を絡める
4 読者が求めているのは「ドリルではなく穴」
5 読み手を想定する
6 中学生でもわかる数字を使う
7 コピーライティングに学ぶ
8「100人乗っても大丈夫! 」
9 論理と「思い」の合わせ技
10 ベストな提案・企画書はA4判1枚
11 メールを書く3つの原則
12 読みやすいメール
13 ひとつ上をいくメール術
第6章 データの集め方と使い方
1 データの見つけ方
2 仮説を立てることで新しい発見も
3 最低限の知識を持つ習慣を
4 信頼されるためのファクト活用
5 ロジックとは「数式」、ファクトとは「数字」
6 ファクトなのかオピニオンなのか
7 データは裏付け
8 言葉ではなく数字で理解する
9 信頼できるデータは科学的な方法によって得られる
10 情報を集めることから書くことは始まる
11 景気を見るときに有効な失業率や消費者物価指数
第7章 さて、文章を書く前に
1 背景や根拠を考える
2 現地・現物を重視する
3 その情報は「筋がよいのか、悪いのか」
4 生活者の実態がリアルにわかる国勢調査
5 政府統計は情報の宝庫
6 午後3時過ぎにTDnetを見る
7 お役立ち情報源
8 まずは原資料・原典に当たる
9 一次情報はグーグルで検索しても出てこない
10 インターネット検索のコツ
11 国会図書館に行ってみる
12 侮れない高校「政治・経済」の資料集
13 情報が正しいかどうかを見分ける力
第8章 実際に文章を書いてみる
1 文章のテーマ、目的、読者を明確に意識する
2 まずタイトルを考え、メモ書きで書く内容を整理する
3 タイトルとメモ書きを意識した練習 1
4 タイトルとメモ書きを意識した練習 2
5 タイトルとメモ書きを意識した練習 3
6 コンパクトな文章を書く練習
7 主張は冒頭部分に。そして読み手の疑問に答えていく
8 総合的な練習問題(情報収集→分析→主張)
9 主張に解釈を加えてみる
10 文章も品質管理を
おわりに
著者略歴
白鳥和生(しろとり かずお)
株式会社日本経済新聞社 編集総合編集センター 調査グループ次長。
明治学院大学国際学部卒業後、1990年に日本経済新聞社に入社。編集局記者として小売り、卸・物流、外食、食品メーカー、流通政策の取材を長く担当した。『日経MJ』デスクを経て、2014年調査部次長、2021年から現職。著書(いずれも共著)に『ようこそ小売業の世界へ』(商業界)、『2050年 超高齢社会のコミュニティ構想』(岩波書店)、『流通と小売経営』(創成社)などがある。仕事の旁ら日本大学大学院総合社会情報研究科でCSR(企業の社会的責任)を研究し、2020 年に博士(総合社会文化)の学位を取得。消費生活アドバイザー資格を持つほか、國學院大学経済学部非常勤講師(現代ビジネス、マーケティング)、日本フードサービス学会理事なども務める。
●ブックデザイン/轡田昭彦+坪井朋子
●校正/円水社