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ココ・シャネル
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ココ・シャネル 時代に挑戦した炎の女

ココ・シャネル

黒いミニ・ドレス、ブレードで縁取りをしたジャケット・スーツ、二色コンビのパンプス、マトラッセラインのバッグ…… ファッションの一大帝国を築き上げた、世界で最も有名な女性の人生。

  • 書籍:定価1540円(本体1,400円)
  • 2009.08発行
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内容

今年7月には大地真央主演の舞台「ガブリエル・シャネル」(新橋演舞場)、鳳蘭主演のミュージカル「ココ」(ル・テアトル銀座)が、9月の中旬には映画「ココ・アヴァン・シャネル」(「アメリ」のオドレイ・トトゥ主演)が公開、さらに年末年始頃には映画「シャネルとストラビンスキー」(アナ・ムグラリス主演)も公開予定と、2009年はなんといっても「シャネル・イヤー」。俄然注目が集まるココ・シャネルの波乱と栄光に満ちた生涯をシンプルかつエレガントに綴った伝記。

いつかあなたが悲しみの淵に沈み、
すべてを失くし、
ひとりぼっちになった時、
いつでも相談できる友人をひとり持つことね。
あとは仕事よ。    ――ココ・シャネル

はじめに

日本語版への序文

黒いミニ・ドレス、ブレードで縁取りをしたジャケット・スーツ、二色コンビのパンプス、マトラッセラインのバッグ。ココ・シャネルほどフランス的なイメージを強く感じさせるものはほかにない。〈偉大なマドモワゼル〉のデザインしたファッションは、上品でエレガントなパリの顔となり、そのエレガンスははるか遠くの国々の国境を通り過ぎていくことになった。海外に進出してからのシャネルは、フランスを代表するイコン(聖なるシンボル)以上の存在であり、ファッションの世界的な文化遺産であるからだ。

ココ・シャネルのサクセス・ストーリーは、フランスにおける女性の歴史において特異なケースだ。フランス中央山地のセヴェンヌ地方で生まれたこの質素な田舎娘が、ほかに例を見ないほど並外れた出世を成しとげ、フランスだけでなく世界規模でファッション界の女王となることを誰が想像しただろうか。信じがたい運命の糸に操られ、この両親のない少女は先を見通す才能の力によって、世界を支配する正真正銘の大企業のトップに登りつめることになる。

ココの偉大な力は自分の才能を認めさせることを心得ていたからであり、いくつもの国境を越えて世界じゅうでファッションの権化となる。とりわけ日本では、完璧さへの恒常的で魅惑的な探求は、ごく自然に豪華品の世界を通して表現されている。

世界的な高級品を扱う企業のなかで、今日シャネルは最も伝説的な企業であることは間違いない。シャネルと日本との愛の歴史は、マリリン・モンローとともに1954年のあの日から始まった。羽田空港に到着したマリリンは、夜何を身につけて眠るのかを尋ねたジャーナリストに、「シャネルの5番の香りだけよ」と、ためらいもなく答えたのだ。そのときシャネルの伝説が生まれた。けれどその9年後、ケネディ大統領が暗殺され、ジャクリーン夫人のピンクのスーツが夫の血に染まるという血なまぐさい事件がブランド・イメージの力に付け加わることも必要だったと言えるかもしれない。

シャネルの国際的な輝かしい名声に対して、それ以降の時代は何の影響力も持たないが、ココが起こした婦人服の革命や、女性たちの生活の実情を把握すべき判断力にはふさわしい名声である。シャネルが初めて作品を発表したのは、第一次世界大戦の真っただ中である。その戦争でひとつの世界が崩壊し、その戦争によって婦人服も新たな時代を迎えることを彼女はわかっていたのだ。ココ・シャネルは根っからの革新的な女性である。彼女がフランス国外で成功している理由はまさにそこに存する。

シャネルが日本人にこよなく愛されているとしたら、シャネルのコンセプトがあの有名なシャネル銀座のビルのなかに具現されているからだ。日本人がこのビルのなかで、シャネル・ブランドの精神も感じ取っているということである。それはこの伝統と現代性とのハーモニー。比類のないひとつの現象である。

2009年6月
エリザベート・ヴァイスマン

目次

日本語版への序文

Chapitre 1 翼を持たずに生まれたのなら……
Chapitre 2 人生の試練、それがどんなものかわかっているわ……
Chapitre 3 ハンサム、とってもハンサムで心をそそる……
Chapitre 4 女性たちの身体を自由にしてあげたわ……
Chapitre 5 その女(ひと)はうつろな目をして泣いていた……
Chapitre 6 あんな服、続くはずがないわ……
Chapitre 7 この暇と金持ちのあさましい退屈さに……
Chapitre 8 いつかあなたが悲しみの淵に沈み……
Chapitre 9 職場で座り込みのストライキをするですって……
Chapitre 10 ディオールがなんなのよ……

参考資料

訳者あとがき

著者

エリザベート・ヴァイスマン(Elisabeth Weissman)
パリ政治学院卒。社会問題を専門とするエッセイスト、ジャーナリスト。情報産業のプロ養成専門学校の講師。フランスの日刊新聞『ル・モンド』『リュマニテ』の記者を経て、テレビのドキュメンタリー番組を制作。最近では、1968年世代の性別の違いによる老いをテーマに研究および著作を発表している。

訳者

深味純子(ふかみ じゅんこ)
東京生まれ。文京女子短期大学卒業。1991年、シャンソン評論家・大野修平氏に師事。1996年1月、サルヴァトーレ・アダモ『人生の流れのままに』(イーストウエストジャパン)で歌詞対訳家としてデビュー。その後、フランソワーズ・アルディ、アンリ・サルヴァドール、サンセヴェリーノ、ミッシェル・デルペッシュなどシャンソンの伝統を引き継いだシンガー・ソングライターから新進気鋭のアーティストまで、アルバム収録曲の歌詞対訳、曲目解説などを担当。

●装丁・本文デザイン/松田行正+加藤愛子
●編集協力/片桐克博(編集室カナール)