闇(ダーク)ネットの住人たち デジタル裏社会の内幕
私たちが調べ物をし、買い物をし、友だちを作る「表層ウェブ」の裏側には、その25倍もの「深層ウェブ」という世界が存在する。そこは創造的で複雑、かつ不穏な世界。しかし、著者が出会ったその住人たちの素顔は、いたって普通の人間であり、身近な存在だった。麻薬の売人から政治的過激派まで、深層ウェブの制作者や利用者を取材し、謎の世界に光を当てた一冊。
- 書籍:定価2200円(本体2,000円)
- 電子書籍:定価1760円(本体1,600円)
- 2015.08.29発行
内容
グーグル、ホットメール、フェイスブック、アマゾンなどおなじみのオンライン世界の向こう側には、自由が限界まで追求され、人々がなりたいものになり、したいことができる、サイト、コミュニティ、カルチャーの、あまり表に現れない巨大なネットワークが存在する。創造的で複雑、かつ、危険で不穏な世界。あなたが考えるより、はるかに身近な世界。
本書は、現在のインターネット、そして、その最も革新的で危険なサブカルチャーである、荒らし、ポルノ作家、麻薬の売人、ハッカー、政治的過激派、コンピュータ科学者、ビットコインプログラマー、自傷行為者、リバタリアン、自警団員などに関する、啓発的な研究だ。さまざまな直接体験、独占インタビュー、そして衝撃的な文献証拠に基づき、自由と匿名の条件下における人間性の驚くべき一面を垣間見せ、変わり続ける謎の世界に光を当てる。
はじめに
本書の大部分は、極めてデリケートで、物議をかもしそうな題材に関する考察である。筆者の主な目的は、論じられることは多いが、(それなりに理由があって)実際に調べられることはほとんどない、ある世界に光を当てることだった。私は本書を通して、自分の意見を脇において、自分が経験したことをできるだけ客観的かつ明確に記録しようと努めた。このような題材について本を書くこと自体を疑問視し、さらに『闇ネットの住人たち』が暴いた情報について懸念する読者もいるかもしれない。筆者の意図は、オンライン上の違法あるいは不道徳な活動を手引きすることではないが、一部の読者が衝突をを受け不快になるような題材が含まれているのも事実だ。
私は研究者として、出会った人々のプライバシーを尊重する義務を感じた。必要に応じて、名前、オンラインのハンドル、個人情報を改変し、またある章では、複数の個人を組み合わせた人物を創造した。また、読者の便宜のため、引用した文章のスペルミスの多く(すべてではない)も修正した。
私は、個人の権利と、彼等や彼等の住む世界を記録することにより生まれると私が信ずる公共の利益との、バランスをとろうと試みた。これは、決して間違いのない方法ではなく、むしろ、さまざまな判断の積み重ねだ、本書中の誤り、欠落、勘違いなどは、すべて私だけに帰するものである。本書に取り上げられた人々が本書によって受ける苦痛や不快感について、あらかじめお詫びしておく。
オンライン社会の変化は速い。あなたが本書を読んでいる頃には、内容の一部は間違いなく変化しているだろうし、ウエブサイトの一部は閉鎖されているだろうし、サブカルチャーは進化しているだろうし、新しい法律も制定されているだろう。だが、その核となっているテーマ、つまり、匿名(真の匿名にせよ、そう思われているだけにせよ)の状況にある人間がどんな行動をとるかは、変わっていないはずである。
ジェイミー・バートレット
2014年7月
目次
はじめに
序 章 自由か死か
第1章 荒らしの素顔を暴く
第2章 一匹狼
第3章 「ゴールト峡谷」へ
第4章 3クリック
第5章 オン・ザ・ロード
第6章 ライト! ウェブカメラ! アクション!
第7章 ウェルテル効果
終 章 ゾルタン対ゼルザン
謝 辞
解説 やわらかな日本のインターネット
巻末注
参考文献
略歴
[著者]
ジェイミー・バートレット JAMIE BARTLETT
シンクタンクDemosの「ソーシャルメディア分析センター」の所長であり、オンラインの社会運動、および、テクノロジーが社会に与える影響を専門とする。ロンドン在住。
●ブックデザイン/竹内雄二
●校閲/円水社
●翻訳協力/トランネット