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「長生き」が地球を滅ぼす 現代人の時間とエネルギー

「長生き」が地球を滅ぼす

現代人の長寿は「不自然」である!ゾウもネズミも心臓は15億回打って止まる。哺乳類共通の法則を人間に当てはめれば、ヒトの寿命は26年。歌う生物学者がラディカルに提起する「人間の時間」の事実と真実!

  • 書籍:定価1760円(本体1,600円)
  • 電子書籍:定価1408円(本体1,280円)
  • 2006.01発行
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内容

生物的時間。この新しい時間の見方を使って現代社会を眺めてみると、少子化、高齢化、エネルギー問題等々、今日の日本が抱えている問題は、すべて時間の捉え方が偏っていることに起因すると著者は主張する。
良く生きるとは、良い時間を生きること。良い時間をつくりだすために、そして現代人を「時間の奴隷」状態から解放するために、歌う生物学者が提起する、時間観のコペルニクス的転回の書!

安定した食糧供給、安全で清潔な都市づくり、頼れる医療、これらは莫大なエネルギーを使用することにより成り立っています。エネルギーをふんだんに使っているからこそ、このような長寿社会が可能になっているのです。だからこれを、エネルギーという代価を支払って寿命という時間を買い取っているのだ、と見ることもできるでしょう。私たち現代人の寿命は、決して自然のままの動物としての寿命ではありません。現代文明がエネルギーを使ってつくり出した人工的な寿命なのです。
本文より

目次

はじめに――時間の見方を変えて生き方を変えよう

プロローグ 東京は悲しいところネズミなみの人口密度で暮らす異常さ
都会の密度はネズミの密度
行動圏はゾウのサイズ
通勤電車は虫かごなみ
満員電車の正しい乗り方
サイズの生物学から現代を考える

第1章 動物の時間動物によって時間は異なる
小さい動物ほど心臓は速い
心臓の時間は体重の1/4乗に比例する
肺も腸も大きいものほどゆっくり動く
大きいものほど寿命も長い
動物の時間は体重の1/4乗に比例する
ゾウの時間・ネズミの時間
違う動物と付き合うには
一生に心臓は一五億回打つ
心臓時計
物理的時間・生物的時間
生物的時間は繰り返しの周期
回る時間・直線的な時間
一生に使うエネルギーは三〇億ジュール
ネズミはF1・ゾウはファミリーカー
時間の速さはエネルギー消費量に比例する
生命と伊勢神宮
回転する生命とエネルギー
時間観は魂である

第2章 動物のエネルギー消費恐竜は意外に小食だった
ティラノサウルスの食事量は?――スケーリング入門
長さ・表面積・体積
エネルギー消費量は酸素消費量で測る
標準代謝率とアロメトリー式
標準代謝率は体重の3/4乗に比例する
変温動物でも3/4乗に比例する
3/4乗則――エネルギーの基本デザイン
体の大きさと食べる量
恒温動物は忙しい・恒温動物は虚しい?
恒時間動物
食糧生産装置としての変温動物

第3章 エネルギー問題を考える日本人はゾウなみのエネルギーを使う
大きなものほどサボッている
サイズの経済学・サイズの政治学
大きいメリット
小さいメリット
現代人のエネルギー消費量
恒環境動物
体を基準に省エネを考える
体は桁で違いを感じる
体と桁はずれのことをしないのが節操
社会人の標準代謝率の推移
体にもとづいた倫理

第4章 現代人の時間人はエネルギーを使って時間を早める
社会生活の時間もエネルギー消費量に比例する
時間のギャップが生み出す不幸
省エネは幸せである
エネルギーで時間を買う
新しい経済学?
メートル法の功罪
代謝時間――新しい時間の見方
子供の時間・大人の時間
代謝時間は高度成長で短くなった
時間環境――環境問題の新視点
国の代謝時間――南北問題と時間
時間をデザインする
生物の根本デザイン
環境にやさしい=環境と相性が良い
日本発の新技術

第5章 ヒトの寿命・現代人の寿命縄文人の寿命は三〇歳
長寿は人工的なもの
昔の寿命は三〇年
人間五〇年から八〇年へ
自己家畜化と自己去勢
人間はもっとも長寿の恒温動物
激しく使えば早くガタがくる
なまけると長生きになるナマケモノ
老化学説
生殖活動が終われば死んだほうがいい?
寿命はピッタリここまでとは決まっていない
老いという煉獄
老人は起きていても半分寝ている?

第6章 老いを生きるヒント–意味のある時間は次世代のために働くことによって生まれる
高齢化社会の生き方を教えてくれるものはない
サバサバした倫理
こらえ性の遺伝子?
エネルギー問題を解決したと考える現代人
植物――長寿の秘訣
昆虫――複数の時間を生きる
卑しい日本人と科学の罪
時間観と責任感
「おまけの人生」
時間の見方を変える
老いの時間をデザインする
待ってました、定年!
老人は働け!
広い意味での生殖活動
団塊の世代の嘆き

エピローグ 天国のつくり方ナマコに学ぶ究極の省エネ
ナマコであそぼう
硬さの変わる皮――ナマコ成功の秘密
この世を天国にする方法

あとがき

読書案内

付録
付録1 哺乳動物の生息密度と体重の関係 哺乳動物の行動圏と体重の関係
付録2 時間のアロメトリー式1――生理的な現象
付録3 時間のアロメトリー式2――一生に関わるもの
付録4 呼吸の時間と心臓の時間 寿命と心臓の時間 寿命と肺の時間
付録5 比代謝率と心周期 比代謝率と呼吸周期 比代謝率と寿命
付録6 ベキ乗と対数とアロメトリー式

索引

著者

本川達雄(もとかわ・たつお)
東京工業大学 大学院生命理工学研究科 教授。1948年仙台に生まれる。東京大学理学部生物学科(動物学)卒。琉球大学助教授、Duke大学visiting associate professorを経て1991年より東京工業大学教授。専門は生物学。棘皮(きょくひ)動物(ナマコ、ウニ、ヒトデ、ウミユリ)の硬さの変わる結合組織の研究や、サイズの生物学の研究をする一方、それをとおして、彼らがどんな独自の世界をつくりあげているかを理解しようと努めている。「30年近くナマコの研究をやっていますが、いまだにこういうイモムシ形の動物は、好きにはなれませんね。でも、ナマコのことを知れば知るほど、ナマコを尊敬できるようになってきました。尊敬できれば、嫌いであっても付き合っていけます。」
科学とは自然の見方、つまり世界観を与えるものだという考えのもとに、生物学的世界観を分かりやすく説く著書を執筆している。1992年に出版した『ゾウの時間 ネズミの時間』(中公新書)は75万部のベストセラーになり、中学・高校の国語教科書に採用されている。
高校の生物の教科書(啓林館)を執筆しており、理科教育も分かりやすく親しみやすいものにしようという考えから、高校で習う生物学の内容を全70曲の歌にしたCD付き参考書(『歌う生物学 必修編』阪急コミュニケーションズ)を刊行。伝統ある参考書(「チャート式シリーズ」数研出版)の改訂にも携わっている。「検定教科書、面白ゲリラ本、正統派参考書とで、高校生物3部作。ここまで徹底してやるのが、生徒への親切だと私は思っています。教育には、親切心がなければなりません。」歌う生物学者としても知られており、CD『ゾウの時間ネズミの時間~歌う生物学』(日本コロムビア)もある。「小生のスローガンは“清く 正しく 貧しく 美しく、めざせ、学問の宝塚!”」

本川研究室(東京工業大学)

●挿画/浜田夏子
●装幀/松田行正+中村晋平