なぜ日本は誤解されるのか
中国、韓国だけでなく欧米も含む“世界”によって、日本はたびたび誤解をされてきた。多くの見過ごされてきた事実を掘り起こし、ジャーナリスティックな視点で「日本観」を再構築する作業が、いま求められている。
- 書籍:定価1100円(本体1000円)
- 電子書籍:定価880円(本体800円)
- 2014.03発行
内容
<「はじめに」より>
中国、韓国における「反日」の動きについては、中韓両国の国内事情によるところが大きい。だがより大きな問題は、この二国だけでなく欧米も含む〝世界〟によって、日本がたびたび誤解をされ、正しく理解されてこなかったことではないだろうか。(中略)多くの見過ごされてきた事実を掘り起こし、ジャーナリスティックな視点で「日本観」を再構築する作業が、いま求められている。
Chapter 1:誤解される日本
右傾化から歴史問題、靖国神社、「失われた10年」論争まで。日本はなぜ誤解されてきたのか。
Chapter 2:日本を報じる視点
過去20年間にNewsweekが掲載してきた日本関連記事から「世界から見た日本」を振り返る。
Chapter 3:世界に誇る日本の底力
食文化、おもてなし、環境技術……「日本は遅れている」というメンタリティーを捨て去るために。
◎豪華執筆陣
ジェニファー・リンド(ダートマス大学准教授)
J・バークシャー・ミラー(米戦略国際問題研究所太平洋フォーラム研究員)
冷泉彰彦(在米ジャーナリスト)
安替(ブロガー・コラムニスト)
ダニエル・グロス(「デイリービースト」ビジネスエディター)
パラグ・カンナ(ハイブリッド・リアリティー・インスティテュート共同所長)
アイシャ・カンナ(ハイブリッド・リアリティー・インスティテュート共同所長)
レジス・アルノー(仏フィガロ紙記者、在日フランス商工会議所機関誌フランス・ジャポン・エコー編集長)
ピーター・グリリ(ボストン・ジャパン・ソサエティー元会長)
横田孝(ニューズウィーク日本版編集長)
はじめに
近年、中韓両国との関係が悪化するにつれ、日本についてさまざまな報道や言説が世界で飛び交うようになった。『ニューズウィーク日本版』も例外ではなく、日中・日韓の二国間関係について、他メディアとは異なる切り口から論じてきた。
中国、韓国における「反日」の動きについては、中韓両国の国内事情によるところが大きい。だがより大きな問題は、この二国だけでなく欧米も含む〝世界〟によって、日本がたびたび誤解をされ、正しく理解されてこなかったことではないだろうか。
そんな問題意識から、『ニューズウィーク日本版』は2013年に「なぜ日本は誤解されるのか」という特集を組んだ。右傾化から歴史問題、「失われた10年」論争まで、なぜ色眼鏡で曲解されるかを考え、自らの立ち位置を見つめ直したこの特集は、大きな反響を呼んだ。
これは「Rethinking Japan」すなわち「日本を考え直す」ことにほかならない。隣国との関係が悪化するなかで、多くの見過ごされてきた事実を掘り起こし、ジャーナリスティックな視点で「日本観」を再構築する作業が、いま求められている。
本書では、「なぜ日本は誤解されるのか」特集を一部改稿してまとめ直した。
さらに、過去約20年間にNewsweekに掲載された数多くの日本関連記事の中から、当時の海外メディアの日本観が垣間見える記事を厳選して、「日本を報じる視点」として再掲載している。
当時の情勢や〝空気〟、また記事を執筆した個々の記者の問題意識にも左右されるが、さまざまな視点があり、それが現在の「世界から見た日本」を醸成する土台となっていることがうかがい知れるだろう。
最後の章「世界に誇る日本の底力」では、テクノロジーから食文化、ファッション、おもてなし精神まで、世界を変えたジャパンパワーを取り上げている。
ただし、このテーマの根底に流れるのは、ただの日本賛美ではない。日本は既に文化でも経済でも先進的な国なのに、日本人は「日本は遅れている」という自己卑下のメンタリティーにとらわれているのではないか、という問題提起だ。
これもまた「Rethinking Japan」である。あなた自身が考え直す材料を、本書から見つけ出してほしい。
目次
はじめに
Chapter 1
誤解される日本
日本が世界から誤解される理由
ジェニファー・リンド
絶望的な経済衰退論から軍事国家への右旋回まで
色眼鏡で曲解されてきた日本が「普通の国」に脱皮するには?
欧米も誇張する日本の「右傾化」
J・バークシャー・ミラー、横田 孝
中国・韓国の主張をうのみにし、誤解を広げる欧米メディア
日本の外交・安全保障政策はなぜ曲解されるのか
国益を損なう「河野談話」見直し
冷泉彰彦
従軍慰安婦問題で「軍の強制連行」を否定しても
日本の名誉回復にはならないし、さらなる誤解を招くだけだ
僕が「反日」をやめた理由
安替
徹底的な反日派だった南京出身者は
なぜ日本への見方を根底から変えることになったか
中韓には見えない靖国神社の実像
J・バークシャー・ミラー
A級戦犯の遺体が埋葬された、過去の行いを美化する場所?
誤解や頑なな感情論を脇に置くと見えてくるもの
日本は衰退などしていない
ダニエル・グロス
欧米が反面教師とする「失われた10年」論は
この国の本当の実力を見落としている
Chapter 2
日本を報じる視点
阪神・淡路大震災で称賛された日本人の我慢強さ
日本版1995年2月1日号/英語版1995年1月30日号 掲載
戦争責任に向き合わない日本への批判
日本版1995年7月26日号/英語版1995年7月24日号 掲載
日本のビジネス風土が変わるという期待
日本版1998年4月1日号/英語版1998年3月30日号 掲載
「改革者」コイズミはニュースバリューの宝庫だった
日本版2003年10月15日号/英語版2003年10月13日号 掲載
スキャンダルに執着し過ぎる国民性への疑問
日本版2010年6月2日号/英語版2010年5月24日・31日号 掲載
東日本大震災に遭った日本人へのエール
日本版2011年3月30日号/英語版2011年3月28日号・4月4日号 掲載
Chapter 3
世界に誇る日本の底力
外国の評価を気にする時代は終わった
横田 孝
テクノロジーや文化、震災で見せた忍耐のほかにも
世界に誇れる底知れない「日本力」がある
日出づる国が向かうハイブリッドな未来
パラグ・カンナ、アイシャ・カンナ
テクノロジーの社会への応用に前向きな日本は
人間と機械が「共進化」する新時代のパイオニアになる
世界を変えた日本の革新的アイデア10
1 ハイテクトイレ
2 おもてなし
3 温室効果ガス観測技術衛星
4 ストリートファッション
5 iPS細胞
6 テレビ番組
7 日本食
8 ロボット
9 もったいない
10 地雷撤去
日本の治安が最高なのは共同体パワーのおかげ
レジス・アルノー
外国に比べれば、麻薬も詐欺も盗難もないも同然
その理由は自分がコミュニティーの一員という意識の強さだ
アメリカで歌舞伎が愛される理由
ピーター・グリリ
日本といえば「フジヤマ、ゲイシャ」だったアメリカ人
その思い込みを覆してきたのは役者の芸の力だ
日本が誇る外食文化はレストランだけじゃない
レジス・アルノー
生産者やグルメ評論家、製氷業者もネットワークの一部
「食」の質が高い理由は高級店の多さだけじゃない
試験走行に「ふた冬」使う新幹線の安全性
冷泉彰彦
工事が終了し、車両も完成しているのになぜまだ開業しないのか
技術面から見る日本の鉄道の「安全性」思想
年表
執筆者プロフィール
●表紙・本文デザイン/萩原 睦(志岐デザイン事務所)
●DTP/秋元真菜美(志岐デザイン事務所)
●校正/竹内輝夫