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戦略的思考とは何か エール大学式「ゲーム理論」の発想法

A・ディキシット/B・ネイルバフ 著

菅野 隆/嶋津祐一 著

戦略的思考とは何か

エール大学で教授される戦略思考の原点を、ビジネス・映画・スポーツ・国際政治などの実例でわかりやすく解説。

  • 書籍:定価4058円(本体3,689円)
  • 電子書籍:定価3246円(本体2,951円)
  • 1991/09発行
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著者まえがき

戦略的思考とは、相手がこちらを出し抜こうとしているのを承知したうえで、さらにその上をいく技である。職場や家庭で、この戦略的思考を活用する機会は実に多い。ビジネスマンや企業には競争下で生き抜くための戦略が必要である。政治家には選挙キャンペーンの戦略や政策実現のための立法上の戦略がいる。フットボールのコーチはグラウンドでプレーする選手のために戦略を練る。子供をうまく教育しようと考えている両親もアマチュアの戦略家である(子供のほうがプロであることが多いようだが)。また四〇年間にわたって超大国の核戦略は、人類の生存にかかわってきた。
このように状況が多様な中で優れた戦略的思考を行なうことは、研ぎ澄まされた技のような難しさがある。しかし、戦略的思考の基礎は、いくつかの簡単な法則からなっていて、戦略の科学とでも呼ぶべきものが次第に発達してきた。この本は、これらの法則を身につけることで、どのようなバックグラウンドや職種の人もより良い戦略家になれるという確信に基づいて書かれている。
戦略的思考の科学はゲーム理論と呼ばれる。これは比較的新しい学問分野で約五〇年の歴史しかない。しかしその間すでに多くの実際の戦略に役立ってきた。しかし、他の科学分野と同様、難解な専門用語や数学が使われるため、専門家以外の人にはわかりにくいものとなっている。本書はそれらの難解な数学や専門用語の使用をなるべく避け、多くの重要な考え方をわかりやすく説明するように努めた。抽象的な理論のかわりに、実例とケース・スタディを用い、簡単な数式とグラフや表で理解できるようになっている。(以下省略)

目次

著者まえがき

日本語版への序
序章 戦略的思考とは何か

第1部 ゲーム理論の基本的コンセプト

第1章 戦略ショートショート
ホットハンド/アメリカズ・カップ/囚人のジレンマ/ルターとド・ゴールの頑固戦略/ねずみの相談/個別判断の落とし穴/賽は投げられた/ミックス戦略/不公正な賭け/ゲーム理論とタクシー/ショートショート教訓集/ケース・スタディ1 赤と黒

第2章 交互行動ゲーム
君の番だよ、チャーリー・ブラウン/二種類の戦略的相互作用/戦略のルール1/意思決定樹形図とゲーム樹形図/複雑な樹形図/価格交渉/戦争と平和/イギリス人のゲーム/ケース・スタディ2 トム・オズボーンと一九八四年オレンジボウル

第3章 同時進行ゲーム
絶対優位の戦略/特集記事をめぐる戦い/絶対劣位の戦略/戦略の均衡点/均衡点の過多・過少/ケース・スタディ3 乗っ取り屋の価格オファー/第1部エピローグ

第2部 基本的コンセプトの発展

第4章 囚人のジレンマ
協力を実現するには/裏切りを見つける方法/裏切り者の処罰/隠された処罰/罰則の選択/反復行動/反復行動に替わる案/ケース・スタディ4 議会対連邦準備理事会

第5章 戦略活用行動
条件なしの行動/脅しと約束/警告と確言/核抑止力/共和党対民主党/戦略活用行動の応用形/鶏首に牛刀/ケース・スタディ5 ボーイングは飛んでいく

第6章 実行の確約
信頼性への八つの道/祖国のために捧げる命/断われない誘い/ケース・スタディ6 IBMからコンピュータを借りるのがよいか?

第7章 予測不能性
確率を均等にするには/テニスの駆け引き/正しいミックスを選ぶべき理由/相手の無作為に頼ってはいけない理由/相手の技術が変化したときに、自分の最善のミックスを変化させる方法/無作為を実現する方法/一回きりの勝負/噓のボディー・ガード/驚きの要素/発見の構図/ケース・スタディ7 ノルマンディ上陸作戦/補論:階段じゃんけん/第2部エピローグ

第3部 ゲーム理論の戦略的状況への応用

第8章 瀬戸際戦略
不確実性を導入する理由/危険のメカニズム/危険のコントロール/瀬戸際からの脱出/瀬戸際からの踏み外し/核の瀬戸際戦略/ケース・スタディ8 大西洋の瀬戸際戦略

第9章 協力と協調
誰がために鐘型カーブは鳴る/ベイ・ブリッジ/キーボード文字の配列/スピード違反/住みわけの理由/孤独なトップの座/政治家とアップルサイダー/株式市場と美人コンテスト/要約/ケース・スタディ9 歯科医配置の処方

第10章 投票
同数の投票/中間層への投票/単純投票/法廷での順番/頭脳プレーヤー/偉人たちの肖像/汝の敵を愛せよ/ケース・スタディ10 予算のカクテル

第11章 交渉
交渉でのハンディキャップ制度/相対的ダメージ/瀬戸際戦略とスト/複数事項の同時交渉/ケース・スタディ11 もらうよりやるほうがよい/付録:辛抱の美徳

第12章 誘因(インセンティブ)
努力に対する報酬制度/ジョイント・ベンチャーの組み方/入札の戦略/ケース・スタディ12 落札のリスク

第13章 ケース・スタディ
となりの芝生は青い/徴兵登録の強制/三者決闘/ポイズンピル/必勝法があるのはだれだ/フットボール・シーズン到来/衰退市場から撤退するタイミング/ノブレスオブリージ(大国の義務)/ガソリンスタンドの価格提示/ベイ・ブリッジ パートⅡ/公共財の悲劇/一ドルの値段/リア王の悩み/米国政府対アルコア/二重の誤りは正しいのと同じ/勝負も大詰め/瀬戸際戦略と陪審員/干渉の自由/タクシーの営業認可証/拳銃よさらば/寄付の構造/再分配の限界/ラスベガスのスロットマシン

訳者あとがき

著者

アビナッシュ・ディキシット(Avinash Dixit)
プリンストン大学教授。邦訳された著書に『戦略的思考をどう実践するか』(CCCメディアハウス)、『経済政策の政治経済学』(日本経済新聞社)。

バリー・ネイルバフ(Barry Nalebuff)
エール大学教授。邦訳された著書に『ゲーム理論で勝つ経営』(日本経済新聞社)『戦略的思考をどう実践するか』『エール大学式4つの思考道具箱』(いずれもCCCメディアハウス)。