老舗を再生させた十三代がどうしても伝えたい 小さな会社の生きる道。
「ものを売る」ではなく「ブランドをつくる」を実践し、創業300年の麻の老舗を改革した著者が、経営・ブランディング・ものづくり・コミュニケーションの四編から中小企業経営の哲学を説く。コンサルティングに携わった5社の再生物語も公開!
- 書籍:定価1650円(本体1,500円)
- 電子書籍:定価1320円(本体1,200円)
- 2012.09発行
内容
安価な外国製品の流入や市場の縮小に苦悩するものづくり企業は、今後、どのように生きていけばいいのか。
「中小企業こそブランディングだ!」として、創業300年の麻の老舗、中川政七商店の改革を成功させた著者が、自らの経験で培った中小企業経営の哲学をあますことなく披露する。
前半は、「伝統工芸を元気にする!」を会社のビジョンに掲げて著者が関わってきた、5つの小さな会社の事例を紹介。波佐見焼の産地問屋、鍛冶の伝統を守りたい庖丁工房、受注生産を増やしたいカバンメーカー、フローリングに逆襲したいカーペットメーカー、中国産に押されるニットメーカー。それぞれが、「ものづくり」から「ブランドづくり」に至るまでの物語を追う。
後半は、「中小企業の基本的な考え方44」をコンパクトにまとめ、決算書の読み方からビジョンの立て方、商品政策とは何か、までをアドバイス。
小さなものづくり企業の教科書となるべき一冊。
はじめにより
初めての著書である『奈良の小さな会社が表参道ヒルズに店を出すまでの道のり。』(日経BP社刊)を出版してから四年が経った。同書で「日本の伝統工芸を元気にする!」をビジョンとして掲げ、その実現のために経営コンサルティングをはじめるという宣言をした。それをきっかけに、これまでに五社の新ブランド立ち上げに携わった。程度の差はあるが、すべてのブランドが成果を上げている。
それ以前は地方の一メーカーブランドに過ぎなかった中川政七商店が、なぜコンサルティングを成功させることが出来たのか?
その答えは、「ものを売る」という考え方ではなく「ブランドをつくる」という考え方で自社のブランドを研鑽してきた経験にある。私たちが扱う物は「麻」であるが、ブランドをつくるという考え方は物が変わってもそっくりそのまま通用する。
数多くのブランドに関わるなかで、ブランディングを中心とした経営のノウハウは加速度的に磨かれたと実感する。
第1部では、これまでのコンサルティングの事例を時系列でまとめ、臨場感たっぷりに詳細まで紹介している。
第2部では、事例から導き出された小さな会社の生きる術を経営、ブランディング、ものづくり、コミュニケーションの四編に整理し、解説している。
1部、2部を通じて、今もてる限りのすべてをさらけ出したつもりである。ここに書いたことは伝統工芸やものづくりに限った話ではない。また中小企業に限った話でもない。すべての商売に通じることであると思う。
目次
はじめに
第1部 5つのケースにみる小さな会社の生きる道
第1章 産地問屋がオリジナルブランドで価値観を表現する
有限会社マルヒロ(長崎県東彼杵郡波佐見町)
第2章 「世界で一番ちゃんとしたかばん屋さん」になる方法
バッグワークス株式会社(兵庫県豊岡市)
第3章 「普通の」パン切り庖丁で産地の一番星に
株式会社タダフサ(新潟県三条市)
第4章 カーペット業界の三代目、フローリングへの逆襲を誓う
堀田カーペット株式会社(大阪府和泉市)
第5章 新潟発・蓑ポンチョで日本製ニットの復活を目指す
有限会社サイフク(新潟県五泉市)
第2部 ものづくりの会社に必要な考え方
第1章 経営編
第2章 ブランディング編
第3章 ものづくり編
第4章 コミュニケーション編
おわりに
略歴
[著者]
中川淳(なかがわ・じゅん)
京都大学法学部卒業後、富士通株式会社を経て、2002年に家業の中川政七商店に入社。2008年、十三代社長に就任。遊 中川、粋更 kisara、中川政七商店の3ブランドを展開し、伝統工芸をベースにしたSPA(製造小売)業態を確立。
2009年からは「日本の伝統工芸を元気にする!」というビジョンのもと、業界特化型の経営コンサルティング事業を開始。波佐見焼の新ブランド「HASAMI」を大ヒットさせるなど、中小企業のものづくりに精力的に関わっている。著書に『奈良の小さな会社が 表参道ヒルズに店を出すまでの道のり。』『ブランドのはじめかた』(共に日経BP社)。
●装幀/坂川栄治+永井亜矢子(坂川事務所)