もしドラえもんの「ひみつ道具」が実現したら

もしドラえもんの「ひみつ道具」が実現したらタケコプターで読み解く経済入門

藤野英人著

書籍：定価1540円(本体1,400円)
電子書籍：定価1078円(本体980円)
四六判・並製／184ページ
ISBN978-4-484-10220-7 C0030
2010.08発行

ビジネス・自己啓発 / 経済・経営 /

世の中のしくみがわかれば、経済がわかる。経済がわかれば、世の中のしくみがわかる。もしあの道具が実現したら……を発想のベースに投資のプロが経済と世の中の“ひみつ”を解き明かす、まったく新しい経済入門書。

書籍

電子書籍

内容

もし、タケコプターがいまの日本に実現したら……。
生活が一変して、新しいビジネスや価値観が生まれるだろう。
いち早く対応するのはどの企業？　衰退する産業はある？
そう考えるだけで、なんだかわくわくしてきませんか？
自由に想像を膨らませれば、どこまでも発想が広がっていきます。
そうすることで、経済だけでなく、世の中全体のしくみが見えてくるのです。
もしあの道具が実現したら……を発想のベースに、
投資のプロが経済と世の中の“ひみつ”を解き明かします。
《のび太でもわかる！？　まったく新しい経済入門》

はじめに

「あんなこといいな　できたらいいな」で始まるドラえもんのアニメのテーマソング。タイムマシン、どこでもドア、タケコプター、アンキパン……。子ども時代に「もしドラえもんがいたら」「もしドラえもんの『ひみつ道具』があったら」と思ったことのある人は多いのではないでしょうか。私も、もしあの道具があったらこんなことをしてみたいなあと、よく想像していました。
この本は、ドラえもんの「ひみつ道具」について詳細に解説する本ではありません。もしドラえもんの「ひみつ道具」がいまの社会に実現したら、人々の生活や社会、文化、経済にどんな影響が出てくるだろうということを、かなり真面目に述べています。荒唐無稽な設定に真剣に答えて、考えるところに、この本の真骨頂があります。

もし空を飛べたら、ものすごいスピードで地面を移動できたら、遠く離れている映像を映し出すことができたら、という夢や情熱が原動力となって、飛行機や自動車やテレビは生まれました。そして、多くの人たちがさらに知恵を絞り、飛行機や自動車やテレビを使って、新しいサービスや商品を開発してきました。
米アップルのスティーブ・ジョブズという人の情熱と行動によって「iPad」が生まれました。一枚の板のような美しいガラス基板で、新聞や雑誌を見たり、映画を見たり、遠くの人とコミュニケーションをしたりすることができたらいいな、という彼の夢が、iPadという形で実現したわけです。
夢はバトンタッチされます。新しい商品やサービスが出てきたら、それを工夫して使うことによって、それまでになかったサービスを展開したり、それを利用して商売にしたり、その商品を凌ぐ新製品を開発したりして、さらに市場を大きくしていきます。
日本ではベンチャーの雄、孫正義社長のソフトバンクが、iPadの販売によってシェアを上げようと全力を尽くしています。それに対してNTTドコモは、WiFiルーターを売り出すことでソフトバンクの進撃を食い止めようとしています。
大塚製薬では営業マンにiPadを持たせて、効率的な営業ツールとして活用し始めました。その試みはカーディーラーやマンション販売の営業にも広がり、やがては営業マンの必須ツールになるかもしれません。美しい映像や詳細なプレゼンテーション資料を顧客にスマートに見せることで商売が拡大するならば、ノートパソコンの代わりにiPadが使われることが増えるに違いありません。
また、iPadの中で動く画期的なソフトウェアを開発することで、大きく成長する企業も出てくるでしょう。日本の伝統的な革製品会社が、iPadをおしゃれに入れる革のケースを作り、商売の機会にしていくかもしれません。
むしろ現実の社会こそ、「もし○○○が△△したら」ということを考えながら、ビジネスが展開されていると言ってもいいでしょう。実際に、起業家や経営者、商品企画担当者なども同じように、ひとつの商品やサービスが社会に出ることによってどのようなインパクトを与えるか、いつも考えながら仕事をしています。
「少子高齢化の波に対抗するには」「ユニクロの販売攻勢に立ち向かうためには」「中国との競争に打ち勝っていくには」……。こういった課題を抱え、うんうん唸りながら、首を捻りながら頭を働かせて、新商品開発が進められ、実際に商品やサービスとして世の中に出ていくのです。
iPadが発売されると聞いて、長蛇の列を作ってそれをゲットし、使い倒すことは、社会に対するひとつの参加方法です。一方で、iPadが出ることによってどのような社会の変化やビジネスの機会が発生するかを研究し、虎視眈々と準備を進めていくことは、ビジネスマンや経営者にとっておそらく成功習慣だと思われます。

この本は、「もしタケコプターが実現したら」「もしガリバートンネルが実現したら」と一つひとつ考えながら、現役のファンドマネジャーであり、アナリストである筆者が考えた「妄想」を読者のみなさまに提示します。これは答えではなく、ひとつの考え方です。
さらに、敷居が高いと思われているであろう経済や投資などについても、それぞれのお話の中に詰め込まれています。
私は毎日のように、多くの起業家や経営者とお会いして、ビジネスについての話をお聞きしています。そして、企業の未来についてイメージを膨らませながら、投資できる会社かできない会社かを考えています。
この本は、その思考のプロセスの追体験でもあります。対話形式の構成になっていますので、この本を読むときには、ぜひ「自分だったらどうする」と考えながら読んでください。
また、この本には、具体的な会社の名前がたくさん出てきます。もし興味をもったら、その会社のホームページを見るなどして、さらに調べてみましょう。
また、基本的な経済用語や最近のトレンドについても、なるべく多く触れるよう心がけました。スペースの都合で十分な解説はできていませんが、大枠はつかめるように解説したつもりです。それらの用語や話題についても、もっと知りたいと思うものがあれば、ぜひ自分で調べてみてください。その際に役に立つと思われる参考書籍も適宜紹介しておきました。
この本は「のび太でもわかる」ようにやさしく楽しく解説していますが、決してレベルの低い内容ではありません。
そして、ここに書いてあることは、前述したように「答え」ではありません。そもそも、未来に答えはありません。私たちは答えのない未来に向かって、手探りしながら前に進んでいくしかないのです。
この本は、未来を手探りしながら進んでいく本です。想像力の翼を広げ、好奇心に身をゆだねながら、ドラえもんの「ひみつ道具」を頼りに、私たちの未来を一緒に考えていきましょう。

著者

藤野英人（ふじの・ひでと）
レオス・キャピタルワークス創業者・取締役CIO（最高運用責任者）。
1990年早稲田大学法学部卒業後、野村投資顧問（現野村アセットマネジメント）入社。ジャーディンフレミング投信・投資顧問（現JP モルガン・アセット・マネジメント）などを経て、2003年に独立。レオス・キャピタルワークス設立。09年より現職。中小型・成長株の運用経験が長く、ファンドマネジャーとして豊富なキャリアを持つ。東証アカデミーフェロー。明治大学非常勤講師。
著書『スリッパの法則』（PHP文庫）、『トップファンドマネジャーの負けない株の黄金則』（ビジネス社）、『運用のプロが教える草食系投資』（共著／日本経済新聞出版社）など。
twitterアカウント ●@fu4
レオス・キャピタルワークス株式会社 ●http://www.rheos.jp/

●編集協力／宮本恵理子
●カバーデザイン／熊澤正人＋中村聡（パワーハウス）
●本文デザイン・DTP／マッドハウス
●校正／円水社

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