オーガニックでここまでできる! 「シーズンズ」の庭づくり 12ヶ月

オーガニックでここまでできる!
ポール・スミザー  著

宝塚ガーデンフィールズ 著

  • 書籍:定価2420円(本体2,200円)
  • B5判変型・並製/224ページ(オールカラー)
  • ISBN978-4-484-10205-4
  • 2010.03発行

英国生まれの世界的ガーデンデザイナーががつくった宝塚の英国風ナチュラル庭園「シーズンズ」には、美しい生命力が満ちていて、ポール・スミザーのオーガニックな庭づくりのヒントがいっぱい!ガーデニングファン必携の書です。

書籍

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内容

イギリス、バークシャー州生まれ。英国王立園芸協会ウィズリーガーデンおよび米国ロングウッドガーデンズで園芸学とデザインを学んだ世界的ガーデンデザイナーがつくった宝塚の英国風ナチュラル庭園「シーズンズ」には、美しい生命力が満ちていて、ポール・スミザーのオーガニックな庭づくりのヒントがいっぱい!
12ヶ月の「植栽」「その月に活躍する植物」「その月の作業」と三部構成になっていて、単なる庭園の紹介だけでなく、読者が家庭で実践できるようになっている。四季折々の植物にふれて、気楽に植物との触れ合いを堪能できる。
見て楽しんで、自身の庭づくりにも応用できる。まさに、ガーデニングファン必携の書です。

前書き

この本で紹介する宝塚ガーデンフィールズの英国風ナチュラル庭園「シーズンズ」は、兵庫県宝塚市の街の中心にある。遊園地だった宝塚ファミリーランドが閉園した跡に、2003年につくられた。設計するにあたり、残せる高木をできるだけ残し、通常は廃棄処分される遊園地の瓦礫を生かすことにした。今では周りに高層マンションが建ち並ぶが、一歩庭の中に足を踏み入れると、緑があふれ、静けさの中で、虫の羽音や鳥のさえずりが楽しげに聞こえてくる。この庭では、いろいろな種類の生き物たちに出会うことができる。キアゲハの幼虫が、堂々とセリ科の植物を食べている。カワセミやアオサギが、魚をとりに飛び出してくる。珍しいトンボが、池で産卵する姿も見られる。ここは植物の種類が豊富で、いつも違う花が咲き、実を結び、季節とともに景色がどんどん変わっていく。植物の手入れには化学農薬や化学肥料を使っていないので、それぞれ居心地のいい場所を見つけた生き物たちが、活き活きと暮らし、次の世代を育んでいる。

この本には、単なる庭園の紹介だけではなく、読者の方々が家で実践できる、オーガニックな庭づくりのヒントが詰まっている。近年地球温暖化ばかりがクローズアップされているけれど、私は生き物の種類が急速な勢いで減っていることがとても問題だと考えている。いろいろな生き物と共生するには、植物の種類を増やすことが必須条件だ。水辺や石垣など、自然な素材で隠れ家になるものがあることも大切だ。地球温暖化を防止しようと言われても、どうすればよいか実感が湧かないが、自分の庭やベランダにいろいろな植物を植えることなら、すぐに誰でも実行できる。ベランダの小さなコンテナでも、虫たちは目ざとく見つけてやってくる。種を残せば、鳥たちも食べにくる。庭があてにされ、自分の植えたわずかな植物が、こうして生き物たちの命を支えていることを実感できる。

こども達に自然のことを教えるのにも、庭は一番身近な教室だ。植物を触ったり、虫のことを調べたり、いろいろな体験ができる。小さい頃の体験は、大人になってから物事を判断し、選択するための基礎になる。植物好きの両親に育てられた私の妹は、小さいうちは植物にまったく興味がなかったけれど、子育てをするようになった今では、家庭菜園で無農薬の野菜を育てて近所の人と交流し、こども達の遊ぶ花の庭をつくることに夢中だ。ガーデンデザイナーになった私の基礎も、もちろん小さい頃に遊んだ庭や森にある。だから、今は植物が好きでない人が、ちょっとでもおもしろいと思ってもらえる庭がいい。生き物を相手にしていると、そこにある自然や環境を守りたい気持ちが強くなる。

「シーズンズ」には、日向、日陰、乾燥した所、湿った所、池、壁面、屋上などの様々な場所で、いろいろなテーマのガーデンが用意されている。どんな場所でどんな植物が、無理をせずにのびのびと暮らしているか、四季折々の姿を見て、気に入る植物があれば、ぜひ自分の庭に取り入れてほしい。年中、花がにぎやかに咲くように植え替えられている一年草ばかりでは、不自然で窮屈だ。むしろ葉の多様な美しさに惹かれる。森に入ってみれば、ほとんどの葉は虫に食べられた跡があるものだ。だからといって慌てて消毒する必要はなく、森はそのままで十分美しい生命力に満ちている。庭となると虫食いの葉が一枚でも許せないのはおかしい。完璧でなくてもよい、その方がもっと楽しいと思うと、気持ちが楽になる。気楽に植物とつきあおうよ、と伝えたい。

「シーズンズ」は、私のこの考え方を基に、庭で働くみんなと一緒に作りあげてきた、パブリックガーデンだ。オーガニックでも、ここまでできる。この本と「シーズンズ」を通じて、それぞれが環境を考える、生き方そのものを考えるきっかになればと、心より願っている。

ポール・スミザー

目次

はじめに

3月 春が来た!大忙し
【3月の植栽】 春を感じさせる球根植物/春に剪定する植物の足元には球根を植える/球根植物は花壇の奥に植える/多年草や低木と球根植物の組み合わせ
【3月に活躍する植物】 シラー、フリチラリア、ヘレボラス、ユキヤナギなど
【3月の作業】 新芽が動き始める前にコピシングをすませておこう

4月 目をさました多年草たち
【4月の植栽】 原種の球根は固めて植える/春は低い目線で植物の組み合わせを考える/葉の質感の違うものの組み合わせ
【4月に活躍する植物】 モッコウバラ、ユーフォルビア、球根、山野草、花木など
【4月の作業】 多年草は株分けが大切、タネまきもこの時期に

5月 ばら、バラ、薔薇
【5月の植栽】 バラと多年草のオーガニックな組み合わせ/葉色の違いで魅せる/自然なメドウ風の演出には/ハーブガーデンの工夫
【5月に活躍する植物】 バラ、クレマチス、ジギタリス、エリゲロン、スモークツリーなど
【5月の作業】 庭に立体感を出すつる性植物等の仕立て方、春に花の咲いた樹木の剪定

6月 多年草が最も輝く季節
【6月の植栽】 斑入りの植物の組み合わせ/葉をアクセントに活用する/テーマカラーで統一感を出す/葉形・花形の違いを組み合わせる/セージ類の組み合わせ/グラス類を活用してナチュラルに
【6月に活躍する植物】 アメリカアジサイ、アカンサス、コレオプシス、ロビニアなど
【6月の作業】 どんどんふやそう!挿し木の楽しみ、花後のつるバラの手入れ

7月 夏は水辺で涼しげに
【7月の植栽】 水辺の植物の組み合わせ/夏のローズガーデンの植栽/花の少ない夏は葉色で楽しむ
【7月に活躍する植物】 スイレン、ハス、ミソハギ、ブッドレア、ハーブなど
【7月の作業】 水辺の植物の手入れは夏ならではの涼を呼ぶ作業

8月 暑さに負けず、元気いっぱい
【8月の植栽】 印象深い葉の色・形の組み合わせ/暑い夏も元気な植栽
【8月に活躍する植物】 カラーリーフ、ニューサイラン、ルドベキア、センニンソウなど
【8月の作業】 セージ類の切り戻しと、真夏の雑草対策

9月 風を感じる庭づくり
【9月の植栽】 グラス類(イネ科の植物)の組み合わせ/グラス類と多年草の組み合わせ/いつでも葉形・質感の違いを意識して
【9月に活躍する植物】 グラス類、ユーパトリウム、リコリス、カリガネソウなど
【9月の作業】 手間入らずで自然に咲いてくれる原種系の球根を植えよう

10月 ふかふか土の中で根を伸ばす
【10月の植栽】 セージ類の組み合わせ/花後の枯姿も植栽として活かす/シュウメイギクの組み合わせ/秋を彩るグラスや実・種
【10月に活躍する植物】 セージ類、シュウメイギク、スイフヨウ、マルメロなど
【10月の作業】 土が暖かい時期に庭の植栽変更、バーク堆肥の素敵な効用

11月 秋も深まり、葉色も冴える
【11月の植栽】 グラス類の紅葉を楽しむ/晩秋の植栽の協奏曲/秋色の葉のコントラスト
【11月に活躍する植物】 紅葉する植物、コバノセンナ、ツワブキ、秋咲きバラなど
【11月の作業】 種・実の収穫と保存は自然に倣って気負わずに

【コラム】古いものを活かした庭づくり

12月 小鳥たちと仲良くなろう
【12月の植栽】 初冬のセージ類の組み合わせ/冬枯れの庭の楽しみ
【12月に活躍する植物】 マホニア、ウィンターベリー、ガーデンシクラメンなど
【12月の作業】 小鳥の来る庭をつくろう

【コラム】昆虫たちに評判のいい庭

1月 冬の庭の楽しみ
【1月に活躍する植物】 寒さで色づく植物、冬枯れの姿を楽しめる植物など
【1月の作業】 つるバラの誘引と寒肥やり

【コラム】四季を感じる庭づくり

2月 春の足音が聞こえてくる
【2月の植栽】 春を告げる球根の組み合わせ
【2月に活躍する植物】 スノードロップ、クロッカス、シラタマミズキなど
【2月の作業】 道具の手入れと準備体操

【コラム】こどもと一緒にガーデニング

索 引

著者

ポール・スミザー(Paul Smither)
イギリス、バークシャー州生まれ。英国王立園芸協会ウィズリーガーデンおよび米国ロングウッドガーデンズで園芸学とデザインを学ぶ。1997年に有限会社ガーデンルームスを設立。庭の設計、施工および園芸全般に関するコンサルティングや講師として活動。原種系の宿根草類を中心とした自然な雰囲気の庭作りには定評がある。自ら管理する八ケ岳ナチュラルガーデンでは、初心者からプロまでを対象に自然の理にかなったこれからの庭づくりを指導している。テレビ、雑誌など多方面で活躍中。著書は「街の中に四季をつくる」(宝島社)ほか多数。

●装丁・本文デザイン/熊澤正人+内村佳奈

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