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茶の湯デザイン
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茶の湯デザイン

ペン編集部 編

木村宗慎 著

茶の湯デザイン

あの幻の名特集が、内容を大幅増補して、ついに書籍化!茶室、茶碗、茶筅や茶杓、釜などの茶道具、茶の湯に欠かせない花、菓子、懐石、そして抹茶まで、日本が誇る総合芸術の魅力のすべてを網羅した完全保存版。

  • 書籍:定価1980円(本体1,800円)
  • 2009.10発行
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内容

《あの“幻”の名特集が、内容を大幅増補して、ついに書籍化!》
その昔、中国から渡来した茶は、時を経て「茶の湯」というアートになった。
戦国の時代に変革のときを迎え、いまも受け継がれる伝統美の極みだ。
ある茶人は、こう言った。「茶の湯の本質は、センスや美意識にある」
千利休が時代の寵児だった頃から、茶の湯はずっと、
互いの美意識を発露して、客をもてなすクリエイティブな遊びだったのだ。
茶室を知り、茶碗の魅力を解き明かし、
茶筅、茶器、茶杓など、茶道具の斬新なデザインに目を瞠る。
そして、茶の湯に欠かせない花、懐石、美しい菓子から抹茶まで、
伝統に磨き上げられた「茶の湯デザイン」を、いまこそ学ぼうではないか。

前書き

「ユニバーサルデザイン」という単語が登場して久しいが、ふたつの点で、極めて狭義の意味合いで使われているようだ。
まず第一に、モノ=プロダクトのデザインを指すに留まっている。そもそも「デザイン」という言葉の語源をご存じだろうか? 「ディ・サイン(de-sign)」署名がない――つまり、どこの誰がつくったかわからないが、誰もがみんな知っている――そのような造形を、はたまた状況を指したものだ。現在、我々の生活を彩るモダンなプロダクトのみが「デザイン」ではない。
第二に、ユニバーサルといっても、健常者と障害者、高齢者や幼年の区別を無くすことを意味し、時代や国といった人と人、モノとモノ、あるいはモノと人を分かつあらゆる障害を越えて普遍的である……という強い意味で使われているのではない。
世界を見渡すと、単なる今日的工業生産品を指す狭義の意味でなく、広義の本来的なユニバーサルデザインが、実は随所に存在している。時代の波に洗われながらも、消え去ることなく洗練の度を増し、政治的にも、文化的にも国境を越えて、人の心の琴線を打ち震わせる“美”。
日本にもいくつか残されたそんなユニバーサルデザインのひとつが、茶の湯だ。千利休に代表はされても、実際には武将・職人・商人など、身分や時代、貧富の垣根を超越して、多くの日本人の手で編み上げられた茶の湯には、“伝統”のひと言では語りきれない魅力がある。
受け皿となる茶室空間から、しつらえの代表格である花、茶碗、茶器、茶杓といったさまざまな道具、果ては懐石や菓子、当然、抹茶まで。茶の湯という文化を構成する要素、その魅力のひとつひとつを広く、かつ狭く、デザインの観点から可能な限り解きほぐして味わいつくすこと、それが本書の目的である。
数ある日本の「伝統文化」と呼ばれるものの中でも最も幅広く、北大路魯山人をはじめ多くの人から「美的趣味の総合大学」と言わしめた茶の湯。その広さと、奥行きは計り知れないものがある。 ひと言で「おもてなし」の文化だとよく言われるが、果たして実態は? 茶の湯はデザインか? アートか? 読者諸氏の御意見やいかに。
いずれにせよ、多くの人がいま一度、日本の文化に興味を持って、自分たちの日々の暮らしの一部に再び活かす、その小さなきっかけのひとつに本書がなることを願って、本編に入ろう。

目次

はじめに

◆空間◆
名席を訪ねて知る、茶室というデザイン
有楽苑 如庵――アイデアに溢れた、 “小気味”よい空間。
大徳寺 三玄院 篁庵――ポスト利休を象徴する、開放的な茶室。
妙喜庵 待庵――わずか二畳に凝縮された、利休の美意識。
大徳寺 孤篷庵 忘筌――時代の変化を取り込む、巧みなデザイン
名席のディテールを伝える、「起こし絵図」
“真・行・草”で知る、茶室という空間。
二条城 黒書院――茶の湯の空間は、書院造りに遡る。
大徳寺 孤篷庵 直入軒――落ち着いた品格が漂う、遠州の書院造り。
大徳寺 聚光院 閑隠席――利休の精神を、随所に感じる草庵。
表千家 不審菴――立体的な天井と、端正な柱が美しく調和。
桂離宮/修学院離宮――茶室と住居が融合した、ふたつの離宮。
床のしつらえにも“真・行・草”がある。
匠が工夫を凝らした、茶室建築の変遷。
現代の茶室空間に、求められるものは?
クリエイターが提案する、モダン茶室。
佐川美術館「樂吉左衞門館」――水没する小間と水上の広間が、非日常へと誘う。
隈研吾「TEEHAUS」/「浮庵」――茶室は、素材のよさや可能性を見極める実験室。
椅子とテーブルの茶の湯、「立礼」は是か非か。
利休時代、こんな自由な茶室があった!――黄金の茶室/蛍籠

さらに理解を深める、キーワード集。一

◆道具◆
◇茶碗◇茶碗はどのように、変遷してきたか。
樂茶碗――15代続く茶の湯の理想形は、いまなお進化中。
高麗茶碗――茶人たちが見出した、「不完全」という名の美。
国焼茶碗――萩や唐津など、日本で開花した個性豊かな器。
◇茶筅◇カタチに秘められた、流派による美意識。
◇掛軸◇書のなかに、茶会のテーマを象徴する。
◇薄茶器◇茶の湯の奥深さを示す、ミニマルなフォルム
◇濃茶器◇一国一城の価値もあった、ブランド茶入。
◇水指◇“オンリーワン”のためなら、海外発注も。
◇釜◇鋳物ゆえに豊富な、造形のバリエーション
◇茶杓◇茶人自ら手で削る、究極の造形美。
◇箱書◇茶人の心意気が、道具の価値を高める。
◇自然素材◇「使い捨て」にこそ、もてなしの心が宿る。
◇茶人好み◇茶人がアート・ディレクションした名品たち。
◇見立て◇「見立て」「やつし」「取り合わせ」の醍醐味。

さらに理解を深める、キーワード集。二

◆花◆
「花」と「茶の湯」、その絢なる関係とは。

さらに理解を深める、キーワード集。三

◆菓子◆
季節を表し、一期一会の茶席を彩る。

さらに理解を深める、キーワード集。四

◆懐石◆
茶事のための料理、「懐石」を読み解く。
◇盃・椀◇一瞬にして目を奪われる、ユニークな意匠。
◇箸◇崇高な思いが生んだ、機能美の極致。
互いの美意識を交わす、“一客一亭”の茶会。

さらに理解を深める、キーワード集。五

◆抹茶◆
お茶に込められた、もてなしの心。
いちばん美味い抹茶は、ここで作られる。

栄西から始まった、茶の湯の歴史を学ぶ。

私見としての「茶の湯の原理」、試論としての「茶の湯デザイン」

おわりに

著者

木村宗慎(きむら そうしん)
茶人。本名・慎太郎。1976年愛媛県宇和島市生まれ。神戸大学卒業。裏千家茶道を学び、97年に茶道「芳心会」を立ち上げ京都・東京に教室を主宰。そのかたわら「茶の湯」を柱に雑誌、テレビ、CM、展覧会イベントなどの監修・コーディネートや執筆活動を行う。ミラノ・サローネやフランクフルト工芸美術館の展示など、国内外のデザイナーやクリエイターとの幅広いコラボレートを通して、茶の湯のいまを問い続けている。著書に『所作美人』(サンマーク出版)など。
www.hoshinkai.jp

編者

ペン編集部

●ブックデザイン/SANKAKUSHA
●カバーデザイン/佐藤光生(SANKAKUSHA)