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健康をマネジメントする 人生100年時代、あなたの身体は「資産」である

健康をマネジメントする
横山啓太郎 著
  • 書籍:¥1500(税別)
  • 四六判・並製/240ページ
  • ISBN978-4-484-19219-2 C0030
  • 8.1発売予定
「禁煙しなければ」「過食をやめないと」「運動しなきゃ」……これまでどうしても実践できなかった「緊急でないが重要なこと」。自分の健康をうまく「マネジメント」する方法を、「行動変容外来」の医師が提案。

書籍

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内容

人生100年時代は「死ねない時代」。
「健康な身体」こそ、
あなたが所有しているもののなかで
最も貴重な財産です。



いわゆる「ピンピンコロリ」で天寿を全うする人は20人に1人。
ほとんどの人は「寝たきり」や「認知症」を経て最期を迎えるのが現実です。
医療の発達によって寿命は休息に延びていますが、
それに伴い今後ますます「寝たきり」や「認知症」の期間が長くなる
「死ねないリスク」に直面することになると思われます。
つまり、70代、80代で健康を維持できる人とできない人で、
人生の充実度に雲泥の差が出てくるのは明らかでしょう。

そこで大事になってくるのが、生活習慣病の管理、
すなわち「健康マネジメント」です。
できるだけ老化を遅らせ、100年使える体をつくる。
人生100年を戦略的に生きる意識をもって、
健康マネジメントに取り組みましょう。

スティーブン・コヴィーの『7つの習慣』で、
第3の習慣として紹介されているのが「最優先事項を優先する」。
そこでは「緊急でないが重要なこと」にいかにリソースを割けるかが
人生の充実度を左右すると述べられています。

食事の管理、運動の習慣、禁煙……
これらも「緊急の課題ではない」ためついつい後回しにしてしまって、
なかなか実行できないという人が大多数でしょう。
そこを、どう「実行できる自分」に変えていけるか――

本書は慈恵医大で「行動変容外来」を開設、
新型人間ドック「ライフデザインドック」を始めた著者が、
「健康マネジメント」の3段階を詳しく解説、
今度こそ「実行できる自分」に変わる方法を紹介した1冊です。








はじめに

急性疾患で死ななくなった日本人

「死ねない時代」

 こう聞くと、ドキッとするでしょうか?
 しかし、これはまぎれもない事実です。

 人生100年時代は「死ねない時代」です。医療の進歩やライフスタイルの変化などによって、私たちは脳卒中や心筋梗塞などのいわゆる「急性疾患」で命を落とすことは減少しました。助かる人が増えたのです。
 一方で、長生きするぶん、別のリスクが大きくなっています。それが「認知症」と「寝たきり」です。
 健康なまま死に至るのは20人に1人といわれています。80歳以上まで生きた場合、その半数が認知症になるというデータもあります。
 もちろん、人生70年時代にも認知症や寝たきりになる人はいました。ただ、多くの人はそうなる前に、急性疾患によって人生を終えていました。
 長生きすればするほど、急性疾患よりも認知症や寝たきりになる確率は高くなります。人生100年時代においては急性疾患を防ぐことも大切ですが、認知症や寝たきりのリスクを心配する比重がより増えていくのです。

「老化」に対し、薬は無力

 では、それを防ぐにはどうすればいいでしょうか?
 いまのところ、認知症や寝たきりを薬で防ぐことはできません。なぜなら、認知症や寝たきりは「病気」というより、「老化」の最終段階で引き起こされる体の状態だからです。老化に対し、薬は無力です。薬で老化を抑えることはできないのです。
 ただ、安心してください。老化を完全にくい止めることはできなくとも、老化を遅らせる方法はあります。それが、運動や食事といった生活の土台となる習慣を変えること、です。
 健康のためには運動や食事に気をつかうのはもはやあたりまえ。読者のみなさんならこれまでいやというほど聞いてきたでしょう。健康関連の情報は、テレビや雑誌、インターネット上にあふれています。
 実際に生活習慣に気をつけている人もいます。ただ、日々運動をし、食事に気をつかい、それを継続していくのはなかなか難しい。「それができないから苦労しているんだ」と思う読者も多いでしょう。挑戦したものの長続きせず、挫折した方もおられるかもしれません。

「100歳までなんて生きたくない。自分はほどほどの年齢で死んでいいから、好きなように生きたい」と思う人もいることでしょう。しかし私たちは、自分がちょうどいいと思うタイミングで人生を終えることはできないのです。
 いま40歳で健康体の人は、よほどの不摂生をしているのでなければ、苦もなく長生きできてしまいます。だからこそ若いうちから意識して、長生きの結果として訪れる可能性の高い、認知症や寝たきりを防ぐことが重要なのです。
 たとえば運動不足のために60歳で膝を痛め、歩くのに支障が出たとしたら? そう考えてみてください。やりたいこともできず、家にこもりきりの後半生を送ることになるかもしれません。しかも、それが30年、40年つづくかもしれないのです。
 そんな生活にあなたは耐えられるでしょうか。楽しみを享受できずに長生きする甲斐があると思えるでしょうか。

 人生の後半のことなんて今から考えたくないと思う方でも、いまのうちから自分の体を大切にするべき理由があります。それは、日本の「終身雇用」が崩壊しつつある現状です。
 日本の企業は終身雇用・年功序列賃金がベースです。これまでは新卒から定年まで一つの会社に勤めつづける人が大多数でした。会社員生活の途中で入院やケガをしても、国民皆保険制度のおかげで医療費は安くてすみ、給料が全額カットにならないしくみになっています。
 一方、アメリカは何度も転職をする人がめずらしくありません。国民皆保険制度がないため、病院にかかると多額の費用がかかります。病気やケガをすれば働くことができなくなり、仕事を休んだ分は収入減に直結します。そのため、アメリカ人のビジネスパーソンは日本人より健康への意識が高いと私は考えています。
 近年、日本人の働きかたは大きく変わりつつあります。徐々に導入されている成果主義、年功序列賃金の廃止。転職もめずらしくなくなりました。企業も終身雇用で社員を雇いつづけることはできないと認識しはじめています。一つの会社で定年まで勤め上げる。そんな人はますます減っていきます。
 一方で定年は延びる。たとえ60歳定年制でも、年金をもらえるのはまだ先です。これからの日本人は60歳以降も働く必要がありそうです。
 ましてや人生100年時代となると、リタイア後の生活が会社員生活より長くなる可能性もないではありません。そうなるとお金の心配が出てきます。子どもや親戚に迷惑をかけずに人生を最後まで楽しみたければ、それ相応の資金が必要です。できるだけ長く仕事をつづけるためには、まさに「体が資本」。健康を維持しなければ、仕事もプライベートも立ちゆきません
人生100年時代、あなたの体こそがいちばん大事な「資産」なのです

マインドと習慣を変え、老化を遅らせるしかない

 自分の体や健康状態を戦略的にマネジメントしていかなければ、生きることすら難しい。そんな時代に私たちは突入しようとしています。

 そこで私が提案したいことがあります
 それは「マインド」と「習慣」を変えたうえで、「健康マネジメント」をつづけることです

 健康によいことをいきなりはじめても、つづけなければ意味がありません。運動にしても食事にしても、成果が目に見えるまである程度の時間を要します。どんな健康法をやるかも大切ですが、すぐに成果が見えないからとやめたりせず、つづける工夫をすることこそが重要なのです。
 スティーブン・R・コヴィー氏の『7つの習慣』という大ベストセラーがあります。その本で紹介されている「第3の習慣」は、「最優先事項を優先する」でした。その第3の習慣を実践するためには、私たちは「緊急でないが重要なこと」にこそ時間を使うべきだ、と書かれています。
 健康維持のための習慣は、まさにこの「緊急でないが重要なこと」にあたります。このことをどれだけ強く意識しつづけ、そこに時間を割きつづけることができるか。それが死ねない時代、つまり「人生100年時代」の健康マネジメントにとってもっとも重要な視点だと、私は考えています。

 私は東京慈恵会医科大学の腎臓・高血圧内科の医師です。腎臓内科学が専門で、高血圧などの生活習慣病に悩む患者さんを30年にわたり診つづけてきました。
 かつては高血圧の患者さんに、「血圧が高いと心疾患や脳卒中のリスクが高まりますよ。そうならないように薬を飲みましょう」と降圧剤を出して診察を終える、「ふつう」の医師でした。
 しかし、いくつかの出来事をきっかけに(第1章で詳述します)、私の診療スタイルは変わります。
 高血圧の人に降圧剤を出す「ふつう」の診療もしますが、それとは別に、「行動変容外来」を開設して生活習慣病の患者さんの診療をはじめることにしたのです。
 行動変容外来に来る患者さんは、日々の生活習慣の積み重ねによって高血圧や高脂血症(脂質異常症)、糖尿病などの生活習慣病にかかっています。そんな患者さんに薬だけ出してもなんの解決にもなりません。
 では、そんな患者さんにどんな診療をするのか? それは、「生活習慣の改善」です。生活習慣病になった根本の原因は生活習慣です。日々の行動を変えなければ、治癒は見こめません。
 行動変容外来は、患者さんの「生活習慣を変えることで生活習慣病を治療する外来」なのです。
 私の役割は、そんな患者さんを手助けすることです。生活習慣病の患者さんにとって、本当に価値ある診療とはどんなものか? どうすれば患者さんが心の底から自分の体を替えのきかない大事な「資産」と認識し、健康マネジメントを継続することができるのか? そう自分に問いかけながら、患者さんが主体的に健康マネジメントを考え、つづけていくための意識づけや考えの整理を中心とした診療をおこなっています。

自分に合った健康マネジメントで100年使える体をつくる

 本書では、臨床医として患者さんの体を診つづけてきた30年の実績、行動変容外来を通して得られたマインドと習慣を変えるための知見を生かし、100年使える体をつくる健康マネジメントについて紹介します。
 とはいっても、私が本書で提案するのは「これさえやれば健康になる」というたぐいのお手軽な健康法ではありません。ある健康法が効く人もいればそうでない人もいます。また「健康」とひとことで言っても、どんな状態を健康とみなすかは人によってさまざまです。職業もライフスタイルも違う人に対して「これさえやれば」と一律に同じ健康法や習慣をすすめるのは逆に不親切ではないか、というのが私の考えです。
 あなたに合う生活習慣は、まずあなたが自分自身を知ったうえで、自分で考えていかなくてはなりません。厳しいことをいうようですが、「これさえやれば○○になれる」健康法をなんの疑いもなくやることは、100年使うかもしれない自分の体を他人にまかせるのと同じことだと思ってください。

 本書の最大の目的は、読者のみなさんが自分でマインドと習慣を変えられるようにすることです。自分に合った健康マネジメントをつくれるようになることをめざし、本書は5つの章で構成されています。
 第1章では、現代の医療がめざすものと、人生100年時代に求められる健康のあるべき姿に乖離が生まれていること、また健康維持のためには薬だけにたよるのではなく、習慣を変える必要性があることを医師の視点から解説していきます。
 第2章では、私たちがマインドと習慣を変えて健康マネジメントをするべき理由をお話しします。「7つの習慣」をもとに説明しますから、「7つの習慣」に慣れ親しんだビジネスパーソンの方ほど腹落ちする内容になっているはずです。
 第3章では、いよいよ健康マネジメントのための第1段階、「マインドを変える」について説明していきます。マインドが変わらなければ習慣は変わりませんから、重要な章になります。
 第4章は、健康マネジメントのための第2段階、「自分を知り、どうありたいかを考える」方法を紹介していきます。老化度チェックや性格傾向テストも活用して自分の健康状態を知り、将来、自分がどのような生活を送りたいかから逆算して生活習慣を考えていきます。
 第5章は健康マネジメントのための最終段階、「自分にちょうどいいことを習慣化する」です。運動や食事の習慣改善にあたり知っておいてほしい知識、習慣化をスムーズにするコツをお伝えし、無理のない習慣化をめざしていきます。
 私たちの体や健康は、日々の生活習慣が積み重なった結果できあがったものです。ですからマインドを変えて習慣にアプローチすれば、かならず改善することができます。
 さっそく、第1章からみていきましょう。



目次

はじめに
 急性疾患で死ななくなった日本人 
「老化」に対し、薬は無力 
 マインドと習慣を変え、老化を遅らせるしかない 
 自分に合った健康マネジメントで100年使える体をつくる 

第1章 現代医療は人生100年に対応していない

「人生100年時代」は「死ねない時代」 
「人生100年」なのに、医療は「人生70年」のまま 
「老化」に対して現代医療はお手上げ状態 
 現代医療は「マーカー偏重」 
 私の診療スタイルを変えさせた患者さん 
 老化に効くのは「習慣」を軸とした健康マネジメント 
 患者さんの気づきと習慣化を助ける「行動変容外来」 

第2章 健康マネジメントで人生100年を幸せに生きる

 ますます長くなる定年後の人生をどう生きるか 
 どうせ長生きするなら主体的に健康を選ぶべき 
 本人は健康意識を高めなければ幸せになれない 
 なぜ桂歌丸さんは酸素チューブ姿で高座にあがったか 
「緊急でないが重要なこと」が未来を変える

第3章 健康マネジメントの第1段階「マインドを変える」

 健康マネジメントは「アセットマネジメント」 
「自己肯定感」が低いから習慣化に失敗する 
 自己肯定感を保つ① 自分を客観視する
 自己肯定感を保つ② 自分の「好き」に落としこむ 
 自己肯定感を保つ③ 自分を甘やかす 
 自己肯定感を保つ④ 自分でなく「人のせい」にする 
 自己肯定感を保つ⑤「子育て」するように自分をみる 
 自己肯定感を保つ⑥「自分にちょうどいいこと」をやる 

第4章 健康マネジメントの第2段階
   「自分を知り、どうありたいかを考える」

 個別・連続的・動的データを集める 
 スマートウォッチで自分の体のデータをとる 
 健康診断の結果を「継時的」にみる 
「10年後老化度チェック」で未来の自分を知る 
「性格傾向テスト」で自分の向き不向きを知る 
 将来「どうありたいか」を考える
 トップアスリートは「緊急でないが重要なこと」の達人 

第5章 健康マネジメントの第3段階
   「自分にちょうどいいことを習慣化する」


「マインドフルネス・フック」で自分の体に目を向ける 
 運動で毛細血管を増やし、認知機能を改善させる 
 脳の神経細胞ネットワークは年代別に強化する 
 血圧と塩分の関係を知っておこう 
 血圧と睡眠の関係を知っておこう 
 ダイエットに我慢は禁物。低いハードルではじめる 
「習慣化のための21のメソッド」で成功体験を積み重ねよう 

おわりに 

主要参考文献 


略歴

横山啓太郎(よこやま けいたろう)
東京慈恵会医科大学教授、行動変容外来診療医長。
慈恵医大晴海トリトンクリニック所長。
1958年生まれ。1985年東京慈恵会医科大学医学部卒業。国立病院医療センターで内科研修後、東京慈恵会医科大学第二内科、虎の門病院腎センター勤務を経て、東京慈恵会医科大学内科学講座(腎臓・高血圧内科)講師、准教授、教授。2016年、大学病院として日本初の「行動変容外来」を開設、診療医長に。2019年には寝たきりのリスクを減らす新型人間ドック「ライフデザインドック」を慈恵医大晴海トリトンクリニックにてスタートさせた。日本内科学会認定医・総合内科専門医、日本腎臓学会認定専門医、日本透析医学会指導医。主な研究分野は、慢性腎臓病の進展制御と合併症研究、Ca制御機構に関する研究、血管石灰化研究、生活習慣病行動変容。
最も難しい家族の行動変容に取りかかるも自分の行動変容が近道と考えて実践、自らの行動変容に成功する。朝7時には神宮外苑ゴルフ練習場で汗を流し、そのフォームに対して患者さんからアドバイスをもらっている。






●装丁・本文デザイン/轡田昭彦+坪井朋子
●企画協力/岩谷洋昌
●編集協力/横山瑠美
●校正/円水社