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名画と解剖学 『マダムX』にはなぜ鎖骨がないのか?

名画と解剖学
原島広至 著
  • 書籍:¥1700(税別)
  • A5判・並製/160ページ
  • ISBN978-4-484-18228-5
  • 12.20発売予定
ミケランジェロは『デルフォイの巫女』の口もとにあえて1本多く歯を描いた。北斎は子どもの頭蓋骨をモデルに大人の幽霊『百物語 こはだ小平』を描いた。レンブラント、ロダン、フェルメール、モディリアーニ、フリーダ・カーロなど、絵画・彫刻29作品の肉体に込められた謎を解く。

書籍

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絵画の鑑賞は、一つの謎解きである。

芸術家は、ときに意識的あるいは無意識的に
モデルの病を描写し、
ときに解剖学の知識を利用して
作品に特別の意味を込める。
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なぜこの人物が描かれているのか? なぜこの姿勢なのか? なぜ背景にこれが描かれているのか? なぜこの色の服なのか? 画家は様々な思いを込めて作品をつくりあげるが、その思いを言葉としてはあまり残していない。それらを探るにはテーマの背景となっている人間関係、歴史、画家個人の生涯に関する情報などが助けになる。たとえば中世ヨーロッパでは寓意絵と呼ばれるような数多くのメッセージを込めた絵画がつくられたが、アクセサリーや小物類の当時の比ゆ的な使われ方がわかると、その絵が表す教訓が見えてくる。同様に、時として解剖学の知識も作品を分析するよい道具となる。

画家には解剖学に通じた者も多くいて、彼らは骨格や筋肉を作品のなかで正確に描写している。解剖学的知識で特別な意味を込めた作品をつくっていることもある。また、画家はモデルとなった人物の病気を期せずして正確に描いていることもある。

それらを踏まえて本書では、こんな謎を紹介している。

・サージェントの『マダムX〈ピエール・ゴートロー夫人〉』は鎖骨が現れるはずの場所に凹凸がない。なぜか?
・『ネフェルティティの胸像』の優美な長い首のラインと、しわ取りボトックス注射の関係とは?
・ミケランジェロはなぜ『デルフォイの巫女』などの作品の口もとに1本多く歯を描いたのか?
・レンブラントは『ダビデ王の手紙を手にしたバテシバの水浴』のバテシバに知らぬうちに疾患を描きこんでいた?
・『手の洞窟』を見ると古代人の右利き・左利き率がわかる?
・モロー、ルーベンスなどプロメテウスを描いた画家は多いが、ついばまれる肝臓の位置を正しく把握していたのは誰か?

近年、研究家は解剖学的な視点からも、数百年間気づかれなかったような芸術作品の事実を次々と再発見している。私たちもじっくり作品を観察することで何か大発見をする可能性がある。

著者

原島広至(はらしま・ひろし)

歴史・サイエンスライター、エディトリアル・デザイナー、マルチメディア・クリエイター。3DCG作家。明治・大正時代の絵はがき蒐集家。サイエンス系の著書に『骨単–語源から覚える解剖学英単語集[骨編]』『肉単』『脳単』『臓単』『生薬単–語源から覚える植物学・生薬学名単語集』『ツボ単』(以上、丸善雄松堂)。解剖学シリーズは韓国語版及び中国語版(簡体字)が既刊。骨単・肉単・ツボ単は中国語版(繁体字)が発売中。『骨単MAP&3D』『骨肉腱え問』『3D踊る肉単』『実験単』 (以上、エヌ・ティー・エス)。『美術解剖学レッスンI 【手・腕編】 (描いて学ぶ美術解剖学シリーズ)』(青幻舎)。『+(プラス) −(マイナス) ×(かける) ÷(わる)のはじまり』(KADOKAWA)がある。歴史・文系の著書に『東京・横浜今昔散歩』『大阪今昔散歩』『神戸今昔散歩』『スカイツリー今昔散歩』『百人一首今昔散歩』『名古屋今昔散歩』『広島今昔散歩』『ワイド版 東京今昔散歩』『ワイド版 横浜今昔散歩』『語源でわかる中学英語 knowの「k」はなぜ発音しないのか? 』(以上、KADOKAWA)。『携帯 東京古地図散歩 ―丸の内編』『携帯 東京古地図散歩 ―浅草編』(以上、青幻舎)などがある。現在、東京メトロ発行の『MetroWalker』(季刊誌)にて、『発見メトロ! メトロ今昔探訪』を連載中。

目次

はじめに

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Part I 顔・頚部
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サージェント『マダムX <ピエール・ゴートロー夫人>』
 胸鎖乳突筋 Sternocleidomastoid /鎖骨がない? Clavicle?/肩紐Shoulder strap
彫刻家トトメス『ネフェルティティの胸像』
 頬骨Zygomatic/広頚筋Mesiodens/ホモシスチン尿症homocystinuria
ミケランジェロ『デルフォイの巫女』
 正中歯Mesiodens /デルフォイ Delphoi /システィーナ礼拝堂 Sistine chapel
作者未詳『ラオコーン』
 皺眉筋Corrugator /皺眉筋あれこれ/ラオコーンの後代への影響 /トロイの木馬Trojan horse
モディリアーニ『ジャンヌ・エビュテルヌ』
 白目White of the eyes /大胸筋 Pectoralis major

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Part II 頭蓋骨・脳
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葛飾北斎『百物語 こはだ小平次』
 前頭縫合Frontal suture /十字頭蓋 Frontal suture persistens/セドレツ納骨堂 Sedlec Ossuary /下顎枝Ramus of mandible
ゴッホ『タバコをくわえた頭蓋骨』
 鼻背Dorsum of nose
ペレーダ『ヴァニタス』
 外頭蓋底External surface of cranial base
ミケランジェロ『アダムの創造』
 脳Brain /安静肢位Rest position
 
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Part III 胸部
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マネ『ナナ』
 コルセットと肋骨Corset and Ribs /小説家ゾラと画家マネ
レンブラント『ダビデ王の手紙を手にしたバテシバの水浴』
 乳がんBreast cancer
ジェローム『バテシバ』
フリーダ・カーロ『2人のフリーダ』
 心臓Heart /青の家La Casa Azul

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Part IV 手・腕
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エゴン・シーレ『胸に手を置いた自画像』
 指間ひだInterdigital fold
作者未詳『手の洞窟』
 示指環指比2D:4D digit ratio
古代アッシリア人『ライオンを抱えたギルガメシュ』
 前腕の伸筋群Forearm extensor muscles
フェルメール『牛乳を注ぐ女』

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Part V 背部・腹部
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ミケランジェロ『ダビデ像』
 僧帽筋Trapezius /斜視 Strabismus
ウォンデル『時の翁』
 大円筋Teres major /腓骨頭 Head of fibula
ルーベンス/スナイデルス『縛られたプロメテウス』
 肝臓Liver
ジェローム『ピグマリオンとガラテア』
 脊柱起立筋Erector spinae /僧帽筋Trapezius /彫刻家のアトリエ Atelier of the Sculptor

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Part VI 脚・腰部
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ブグロー『失われた星』
 プレアデス星団 Pleiades /ビーナスのえくぼ Dimples of Venus
ベラスケス『軍神マルス』
 腓腹筋Gastrocnemius /疲れたマルス Tired Mars
ロダン『考える人』
 ロダンとミケランジェロRodin and Michelangelo /長・短趾伸筋Extensor digitorum longus and brevis /趾の長さ Length of the toe and fingers of foot

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Part VII 動物
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ダヴィッド『ベルナール峠からアルプスを越えるボナパルト』
 ウマの大腿二頭筋Biceps femoris of horse /アルプス越え Crossing of the Alps /ベルナール峠Grand-Saint-Bernard
ブリトン・リビエラ『忠誠』
 イヌの前肢・後肢 Forelimb, Hindlimb /飛節 Hock/イヌと感情Dogs and emotion
ブリトン・リビエラ『義務教育』
 イヌの鎖骨? Clavicles of dogs?
フレデリック・ワッツ『ミノタウロス』
 船の帆Sail of the ship /ウシの尾Bull's tail /迷宮ラビュリントスLabyrinth
ハーバート・ジェームズ・ドレイパー『イカロスへの哀歌』
 フウチョウBird of Paradise /風切羽Flight feather /ニンフNymph

おわりに
主要参考文献