圧倒的な強さを手に入れる究極の自重筋トレ プリズナートレーニング

プリズナートレーニング
ポール・ウエイド 著

山田雅久 訳

  • 書籍:定価2200円(本体2,000円)
  • 四六判・並製/350ページ
  • ISBN978-4-484-17106-7 C0075
  • 2017.07.28発行
ジム通いはムダ、プロテインは不要! 本書が提唱する自重力トレーニングは、バーベルやマシンで一個一個の筋肉を増していくのと違い、自らの体重を利用するから、体に無理がなく、本当の強さが身に付く。短時間で自宅でも、公園でも、どこでもできるのに、圧倒的強さが手に入る。まさに筋トレの王道、永遠のバイブル。

書籍

Amazon 7net 楽天BOOKS

内容

全米ベストセラーの筋肉トレーニング本、ついに日本上陸!

著者ポール・ウェイドは、凶悪犯を収監する監獄を渡り歩いてきた本物のプリズナー。伝説的強さを誇る恐ろしい受刑者たちや、膨大な書物からトレーニング・テクニックを学び、プログラム化。アメリカの監獄で“コーチ”と言えば、ポール・ウェイドを指す。

まえがき

1969年のこと。崇高な静けさの中で、サフラン色の衣をまとったふたりのチベット僧が瞑想と悟りについて講義していた。場所はケンブリッジ大学。落ち着きがない学生がそれを聞いていた。

僧たちは平和と安らぎを感じさせる穏やかな光を放っていた。ふたりとも、ユーモアをたたえた皺を目の横に寄せていた。まるで、学生たちと、こころの内にある永遠のジョークを分かち合おうとするかのように。「すべてが完璧であり、美しい。そこにあるのは揺らぐこころだけ」。片方の僧が放ったその言葉が、ひとりの学生の頭の中―ある思考からある思考へと休むことなく跳びはねることに疲れ切っていた―を洗い流していった。
言葉を継いで、もう一人の僧が深い瞑想から生まれる内なる自由についてアナロジーを使って話し始めた。「監房に閉じ込められているとしよう。一見、あなたは拘束されている。しかし、内面は自由だ。あなたから内なる自由を奪える人はいない」怒りをぶつけるため、その落ち着きがない学生が席を立った。「なにを根拠に? 監獄は監獄でしょう? 拘束は拘束だ。意思に反したことをされている時、そこに本物の自由はないはずだ!」こころの奥に隠れていたボタンを押されて生じた、そのありきたりな反応は、僧のアナロジーとは似ても似つかぬものだった。

もう一人の僧が、うれしそうに微笑んだ。そして、果てしない誠実さと、一片の皮肉も交えずに言った。「問いを持つことは良いことですよ」と。ぎざぎざした岩を意に介さないせせらぎのように、ふたりの僧は、講義に戻っていった。

それからちょうど40年が経った2009年。ケンブリッジ大学を卒業したその若い学生は、少しだけ賢明に、そして、はるかに穏やかな人間になっていた。彼は、身体開発に情熱を燃やす人たちに捧げるDragon DoorPublications と呼ばれる急拡大するベンチャー出版社を経営していた。

それがいまのわたしだ。そして、ここで、だれも読んだことがないようなエキサイティングな本を紹介しようとしている。監獄に関する本だ。自由についての本、サバイバルについての本でもある。人間性に関する本、強さとパワーについての本でもある。兵士、警察官、消防士、そして、害悪からこの国を守りたいすべての人の手にわたるべき本だ。高校や大学で回し読みしてほしい本であり、プロアスリートや体型が崩れたディスクジョッキーのための本でもある。家からあまり出ない主婦のための本であり、砂時計を逆行させたいベビーブーマーのための本でもある。生きていくための強さを身につけたいだれもが手にすべき本だと言える。

これは、20年以上にわたって自由を剥奪された元囚人によって書かれたものだ。アメリカでもっとも過酷な監獄に収監され、そこでの生存を賭けて野獣のような強さを身につけることを義務づけられた男、体と心以外のすべてを剥ぎ取られながら、自分を鍛えることで、だれからも奪われない自由をつくり出した男の話だ。それは、強靭な肉体、折れない心という名の自由だ。
タイトルは、コンビクト・コンディショニング(本書の原題。〝囚人のコンディショニング【身体的・精神的パフォーマンスを高めつつ、体をととのえること】技術〟)……。コンビクト・コンディショニング? なぜ、こんなタイトルでわたしは本を出版しようとしているのだろう? ならず者を讃える軽薄な内容だと思われるかもしれない。世界でも有数のフィットネス出版社をつくったのに、なんてことを。そんな思いを頭の中で反すうすることになった。
本書のプレビュー版を読んだ著名な専門家の多くが、その内容に夢中になった。実際、そのほとんどが寄せてくれたのは賞賛の嵐だ。しかし、その多くが、タイトルを聞いてしかめ面をしたり、たじろいだりしたのも確かだ。
コンビクト・コンディショニング?「ジョン、信じられないくらいすばらしい内容だよ。でも、もっといいタイトルがあるぞ。この本はすべての兵士、すべての警察官だけでなく、親が子どもに与えるべき本だ。でも、こんなタイトルでいったいだれが読むと言うのかね?」

心がぐらついたのを認めよう。本の内容ではなく、タイトルに。それは大きな〝問い〟だった。わたしは著者のポール・ウェイドの偉業をこのタイトルで売るのだろうか? 本のページにちりばめられた技術から恩恵を受けるはずの何十万もの人々を「コンビクト」そして「コンディショニング」という2つの単語が排除することになるのか? ポールが伝えようとしているビッグ6のすばらしさに気づいた、タイトルを気にしない少数派のための本になるのだろうか?

しかし、考えれば考えるほど、このタイトルでなければならないと信じるようになっていった。コンビクト・コンディショニングというタイトルこそ、本の内容を語っているからだ。これが、日常的に危険にさらされるという意味では究極の環境から生まれた生存システムだからだ。だれかを餌食にしようと舌なめずりする捕食者が、あなたのことだけは避けようとする。それどころか、そんなことは思いもしなくなる。本書は、そのレベルまであなたを強くパワフルにしていくだろう。そして、捕食者の脳の辺縁系に、劇的かつ誤解されようがない強さとパワーのオーラを伝えるようになる。「馬鹿なことは考えないほうがいいぞ」と。

ポールが監獄で受け継ぎ発展させたこの知恵の貯水池を他の名前で呼ぶことは、ひどい冒涜になる。希少なロックフォールチーズを、よくあるチェダーチーズと呼ぶようなものだ。そんなことをしてはならない。

このタイトルは、本の核心となるメッセージを伝えてもいる。それは、どれほど狭い場所に閉じ込められようが、奪われることがない自由があるというメッセージだ。世界がどんなに狂っていこうが、すばらしい体と心をつくり上げていく自由があるというメッセージでもある。ポール・ウェイドは、その真実の驚くべき生き証人であり、ほかの人がいかにしてその偉業を成し遂げるかについてのマスタープランをこの本の中で示してくれている。

ジョン・デュ・ケイン
Dragon Door Publications CEO

もくじ

まえがき
おことわり

PART 1 準備
CHAPTER 1 イントロダクション
強さへの旅
本物の強さを手に入れるには?
忘れ去られたトレーニング技術
この技術をどう学んだか?(わたしの履歴書)
見習いから指導者へ
消灯!

CHAPTER 2 いにしえのキャリステニクス

強大なパワーを生み出す失われた技術
古代から伝わる自重力トレーニング
強者から強者へと受け継がれていくシステム
20世紀の怪物アスリートたち
強者たちの黄昏
伝統的なキャリステニクスと現代的なキャリステニクス

監獄。いにしえの技術が生き残った場所
コンビクト・コンディショニングの起源
消灯!

CHAPTER 3 監獄アスリートのマニフェスト

自重力トレーニング VS 現代的トレーニング
歪んでしまった身体文化
キル・ザ・ジム
フィットネス界の洗脳
自重力トレーニングの利点
消灯!

CHAPTER 4 コンビクト・コンディショニング

この本について
ビッグ6
10ステップ
マスターステップ
バリエーション
消灯!

CHAPTER 5  ザ・プッシュアップ
鎧のような胸、鋼のような三頭筋をつくる
……(略)

CHAPTER 6 ザ・スクワット
エレベーターケーブルのような太ももをつくる
……(略)

CHAPTER7 ザ・プルアップ
引き戸のような背中、大砲のような上腕をつくる
……(略)

CHAPTER8 ザ・レッグレイズ
地獄のシックスパック
……(略)

CHAPTER9 ザ・ブリッジ
どんな戦いにも耐える背骨をつくる
……(略)

CHAPTER10 ザ・ハンドスタンド・プッシュアップ
健康的でパワフルな肩をつくる
……(略)

PART 3 セルフコーチになるには
CHAPTER11 体を鍛える時の知恵
筋肉鋳造の掟
ウォーミングアップ
ゆっくり始める
トレーニングに勢いをつけていく
筋力を貯金する
馬鹿げたやり方
賢いやり方
強度
進歩を確実にするには?
トラブルシューティング
強化トレーニング
ワークセット数はこう設定する
セット間隔の決め方
トレーニング記録を取る
トレーニングを記録する利点
トレーニングジャーナルの書き方
消灯!

CHAPTER12 ルーチン
ワークアウトのための5つのプログラム

ブザーとともに生きる

外の世界でのトレーニング
5つのトレーニングプログラム
新入り
善行
ベテラン
懲罰房
超人
ハイブリッドプログラム
柔軟で自由な考え方を持て
消灯!

謝辞

略歴

ポール・ウェイド PAUL “COACH” WADE
元囚人にして、すべての自重筋トレの源流にあるキャリステニクス研究の第一人者。1979 年にサン・クエンティン州立刑務所に収監され、その後の23 年間のうちの19 年間を、アンゴラ(別名ザ・ファーム)やマリオン(ザ・ヘルホール)など、アメリカでもっともタフな監獄の中で暮らす。監獄でサバイブするため、肉体を極限まで強靭にするキャリステニクスを研究・実践、〝コンビクト・コンディショニング・システム〟として体系化。監獄内でエントレナドール(スペイン語で 〝コーチ〟を意味する)と呼ばれるまでになる。自重筋トレの世界でバイブルとなった本書はアメリカでベストセラーになっているが、彼の素顔は謎に包まれている。

【訳者】

山田雅久 やまだ・まさひさ
医療ジャーナリスト、翻訳家。主な著書に『脳を老化させない食べ物』(主婦と生活社)、訳書に『脳を最適化する ブレインフィットネス完全ガイド』(CCC メディアハウス)、『フォックス先生の猫マッサージ』(洋泉社)などがある。
カバーイラスト/板垣恵介
カバーデザイン/渡邊民人(TYPEFACE)
本文デザイン/清水真理子(TYPEFACE)
校閲/円水社

Twitter