最新 地図で読む世界情勢 これだけは知っておきたい世界のこと

最新 地図で読む世界情勢
ジャン=クリストフ・ヴィクトル/ドミニク・フシャール/カトリーヌ・バリシュニコフ 著

鳥取絹子 訳

  • 書籍:定価1980円(本体1,800円)
  • 電子書籍:定価1584円(本体1,440円)
  • B5判変型・並製/112ページ
  • ISBN978-4-484-15122-9 C0036
  • 2015.09.16発行

グローバル化が進む「世界の今」がひと目でわかる!
フランス地政学の第一人者と高校の地理・歴史教師が複雑な世界を美しい地図と写真でわかりやすく解説。好奇心をもって生き、学び、行動するために。

書籍

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電子書籍

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内容

フランスの人気長寿テレビ番組LE DESSOUS DES CARTES(地図の下にあるもの)から生まれた『地図で読む世界情勢』シリーズで、最もやさしく地政学を語る最新入門書。明快で生き生きした地図と写真、わかりやすいテキストで、世界の今とこれからを理解する鍵を与えてくれます

グローバル化で世界はどうなる?
遺伝子組換え作物、移民、エコロジカル・フットプリント、温室効果ガス、経済成長、再生可能エネルギー、ジェネリック医薬品、ジニ係数、出生率、スラム街、生物多様性、多国籍企業、デジタル・ディバイド、難民、貧困ライン、フェアトレード、平均寿命、マイクロクレジット、メガロポリス…(用語解説付)
世界のしくみがひと目でわかる!

目次

読者のみなさんへ

第1章 地図で読む世界
●地理学は地球を変形させる
 北を見失わないための羅針盤/ニューヨークで人が起床する時間、シドニーでは眠っている/地球は丸く……地図は平ら/世界の時間を提供する王立天文台
●移動する人類の祖先たち
 ルーシー、小柄ながらも大きな発見/人間の歴史は順応の歴史/私たちの共通の祖先はアフリカで出現
●地図で世界をわがものにする
 中国王朝と、それを取りまく世界/エラトステネスのエクメーネ(人の住む全地)/イドリースィーの世界地図──18年がかりの調査
●さまざまな視点で表現される地図
 ヨーロッパから見た世界、北方の陸地が大きくなっている/オーストラリアから見た世界、世界を逆に見る?/日本から見た世界、重要な太平洋
●世界は本当に結びついているのか?
 インターネットへのアクセスが不平等な世界/インターネットを敵とする国々/増えつづける世界のネットユーザー

第2章 地球と人類
●世界人口が70億人以上に
 20世紀の世界人口の急激な増加/地球の人口はどのように調べるのか?/世界人口の対照的な分布
●世界人口はかつてないほど若くなっている……
 世界の地域における14歳以下の割合/ニジェールの人口、2010年
●それでも世界人口は高齢化している
 小さい子供と高齢者が出会えば、みんなにとって最高!/世界の65歳以上/日本の人口、2010年
●地方から都会へ
 南半球の国と北半球の国/土地を持たない農民たちが土地取得を目指して行動に出る/南では、何百万人もの農民が都会に憧れる
●巨大化して人口が増えつづける大都会
 巨大都市:メガロポリス
●10億人近くがスラム街に住む
 南の国々のスラム街/豊かな国にもスラム街はある
 
第3章 不平等な世界
●「グローバル化」で世界はどうなるか?
 スポーツのグローバル化/1本のジーンズのために5大陸
●グローバル化の鍵となる場所
 海のハイウェーと料金所/現代の海賊たち
●豊かな世界と貧しい世界
 国によって不平等な開発/格差拡大は世界的な傾向
●貧困国はなぜ貧しさから抜け出せないのか?
 ミレニアム開発目標の8項目/貧困から抜け出せない国々/ダイヤモンドでは開発ならず
●世界の食料事情
 遺伝子組み換え作物は解決になるのだろうか?/南半球では、約10億人が空腹を満たしていない
●エイズと不平等
 南の国々でとくに人が亡くなる伝染病/もし治療を受けられていたら……
●世界で7200万人の子供が未就学
 世界では、8人に1人の子供が学校に行っていない/教育は光である!
●子供にも権利がある
 子供は大人と同じと見てはいけない/世界の子供兵士/子供使用人たちの地獄
●なぜ人は祖国を捨てるのか?
 国際的な移民/戦争や迫害から逃れる難民、国内強制移住者、庇護申請者
●異国の地で生きる移民たち
 移民は、経済活動にとって重要な労働者/「行政による留置センター」にいる外国人

第4章 世界は均衡が取れているか?
●石油は最大の問題
 石油、戦略上きわめて重要な問題/石油獲得競争
●緊張を生む水源
 ティグリス川とユーフラテス川の水──水と政治の中心問題/メキシコシティの水事情
●国の数がますます増えて、紛争の原因になっている
 クルド人、国家のない民族/独立または自治に向けての政治的動き/南スーダン、いちばん新しい国連加盟国
●人類を分断する壁
 イスラエルとパレスチナの壁、悲劇は日常/壁や囲いはどの大陸にもある
●貧困と紛争
 最も貧しい国に何百万人もの難民/紛争が起きているのは世界でもとくに最貧国
●宗教は地図にできるのか?
 複雑な現象に対して単純すぎる地図/やや複雑でもより正しい地図:イスラム教の例
●強国同士の競争
 2010年2月、オバマ大統領はダライ・ラマと会談して、中国を挑発する/現在の力関係の現実はG20
●欧州連合、平和な区域に
 理解し合うためのエラスムス計画/20世紀の二つの大戦後、敵国とどのように和解するか?
●欧州連合は何をするのか?
 1957年のヨーロッパと2010年のヨーロッパ/ヨーロッパ、変幻自在な「大陸」/欧州人権裁判所は8億人のヨーロッパ人の人権を守っている
 
第5章 大切にしよう! 世界と人類
●危機に直面する民族
 アフリカでは……カラハリ砂漠のブッシュマン/北極圏にはイヌイット族/オセアニアには、イリアンジャヤのパプア人
●脅かされる動植物の生物多様性
 オランウータン/トラ/脅かされる生物多様性
●危機に瀕する土地
 気候変動の深刻な影響、バングラデシュ南西部/広大な領土が森林破壊や砂漠化に脅かされている/熱帯林におおわれている東南アジアのボルネオ島
●海の富が脅かされている
 漁業が海の環境を脅かしている/海はゴミ箱か?
●気候変動と人間の責任
 注意! これが地球を熱くする/北極では氷が急速に解けている/空中への二酸化炭素放出量の増加を示す曲線
●エコロジカル・フットプリントをどのように減らすか?
 人類すべてに地球は一つだけ/再生紙を買って、森林を保護しよう!
●どんなエネルギーを開発すべきか?
 エネルギー革命は必要不可欠/モーリタニアの村にある太陽パネル
●水は不足するのだろうか?
 2020年を見据えた水へのアクセスの不平等/水を節約するにはどうしたらいいか?

第6章 これからの世界を思い描こう
●人道的活動で世界を修復できるか?
 靴の山
●対話の場としての国際連合
 平和の再建に活躍するブルーヘルメット/安全保障理事会とは?
●豊かさをどのように評価すべきか?
 「つねにもっと!」は、理想的な目標か?/自然保護にも値段がつく/世界を評価するためのツール
●変わりゆくアフリカ
 アフリカの大地をプラスチックの汚染から守る闘い/物事を一手に引き受けるミシラ地区の女性たち/アフリカの光ファイバー網
●これから目指すべき世界
 フェアに消費して、具体的な行動を!/もっとグリーンな経済に/世界の貧困と不平等を減らすことは可能!/絶滅危機の植物のための病院
 
もし……[ラドヤード・キップリング]
用語解説

読者のみなさんへ

《いいかね、絶対に成功しないとわかっていることはただ一つ、やってみようとしないことだ》
――ポール=エミール・ヴィクトル[20世紀のフランスの民族学者、南極探検家。本書の著者ジャン=クリストフ・ヴィクトルの父]

《発見者は私にとって英雄である。なぜなら、テラ・インコグニタ(未知の大地)という言葉は、人類の知識の地図に書かれていなかったもののなかで、最も期待を持たせてくれるからだ》
――ダニエル・J・ブーアスティン[20世紀のアメリカの作家、歴史家]

 本書は、一つの野心と願望から生まれた。

まず野心である
 この世界はわくわくするほど面白い。つねに発見があって、たえず新しい風が吹き、新たな価値が生まれ、進化している。そこで、これからこの本を読むみなさんに、地理と政治について一刻も早く話したいと思ったのである。目的は三つある。
❶ みなさんが毎日、知らず知らずに受け取っている情報を整理するのを助けるためである。想像を超えて拡散する写真や映像には過激なものも多く、それらをすべて鵜呑みにしないように。
❷ みなさんが現在生きている世界を理解するための道具を提供し、その世界でできるだけ早く、明日と言わず、仲間を待たずとも、行動を起こしてもらうためである。
❸ 最後に、みなさんの今後の人生に、いくつかのアイデアを提供するためである。好奇心を持って生き、探求し、開拓して、人と同じことをしてはいけない。そして、他人が考えそうなことを気にしてはいけない。
 しかし、これだけは知っておいてもらいたい。現在もこれからも、この世界は非常に厳しいということだ。
 世界は20 年前よりずっと豊かになっている? 貧困はアジアで大幅に減っている? それは確かだが、この豊かさの世界への配分はますます悪くなってい
る。だから、動かぬ富を前に、人々が富のあるところへ移動するのも当然ではないだろうか?
 世界で民主主義を唱える国は20 年前より多くなっている? これも確かである。それでも現在もなお、「考え」が違うというだけで投獄され、罰せられるという事実に、どうして無関心でいられるだろう?

次に願望である
 本書の元になっているのは、1991 年から、テレビ局のアルテで毎週放送されている地理と政治の十数分間の番組である。2005 年に初めて本になり、次いで2007 年に第2 弾が出た。毎回、この試みを通して、複雑な世界を簡単な手段で、しかも単純化せずに説明できることを証明した。拠り所にしたのはまさに、視聴者や読者それぞれの知性である。
 それでも、私たちは幾度となく、微妙な違いをどう表現するかで決断を迫られた。この世界をできるだけありのままに反映し、それを簡単に理解できるように
するためである。
 たとえば、「豊かな国」と「貧しい国」の概念はまだ通用するのだろうか? 同じメキシコでも、首都メキシコシティには非常に豊かなメキシコ人がおり、チアパス州には非常に貧しいメキシコ人がいる。また、中国の福建省には超のつく大富豪がいる一方、パリには非常に貧しいフランス人がいる。
 私たちは世界を「北(半球)」の国と「南(半球)」の国に分けてはいないだろうか? たとえば、地球温暖化の複雑な交渉では、中国はいまだに南の国に組みこまれ、米国は北になっている。その中国は2011 年、二酸化炭素排出量でアメリカを抜いて世界1 位になった。アメリカが輸入する消費財の大部分を作っているのがその中国である。
 北と南、豊かな国と貧しい国。これらは世界情勢ではよく使われている言葉だが、いまでは単純すぎるのではないだろうか。というのも、経済や人口の移動、移民、そしてもちろんグローバル化によって、地理がゆがんできているからだ。グローバル化に関しては、これからわかるように、すべてが……グローバルというにはほど遠い。
 私たちは、どんなに難しい問題でも、解答の出発点となるものは見つけられると考えている。知識というものは少しずつ積み重ね、蓄積することによって構築される。そこで私たちは、巻末に用語解説を付け、みなさんの興味や気分、必要に応じて読んでもらえるようにした。
 この本が、みなさんが世界の仕組みや、当事者たち、そこから持ち上がる問題を発見する第一歩となることを願っている。そして、それに立ち向かってほしいと願っている。
 読者のみなさん、世界は大きくて複雑で、不正もあれば、残虐なこともあり、なかなか思うようにはいかないだろう。しかし、知っておいてほしいのは、何一つ定かではないということだ。自分の目で見て、決断するのはみなさんである。

ジャン=クリストフ・ヴィクトル
カトリーヌ・バリシュニコフ
ドミニク・フシャール

略歴

[著者]
ジャン=クリストフ・ヴィクトル Jean−Christophe Victor
1947年生まれ。地政学と国際関係学のフランス人学者。地図・地政学研究所代表。『地図で読む世界情勢』シリーズの発案者。

ドミニク・フシャール Dominique Fouchard
カトリーヌ・バリシュニコフ Catherine Barichnikoff
中学・高校の歴史・地理の教師。

[訳者]
鳥取絹子 とっとり・きぬこ
1947年、富山県生まれ。フランス語翻訳家、ジャーナリスト。
著書に『大人のための「星の王子さま」』『「星の王子さま」隠された物語』『フランス流美味の探究』、訳書に『地図で読む世界情勢』シリーズのほか、『サン=テグジュペリ 伝説の愛』『庭師が語るヴェルサイユ』『フランス人は子どもにふりまわされない』『退屈の小さな哲学』『移民と現代フランス』など多数。

●日本版ブックデザイン/松田行正+日向麻梨子(マツダオフィス)
●日本版編集協力/片桐克博(編集室カナール)

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